|
日本テレビの「24時間テレソン〜愛は地球を救う」を見た。8月26日(土)夜8時から始まって翌る日の8時までの24時間番組であった。
大竹しのぶが、萩本欽一が、ピンクレディーが日本中の視聴者に笑いかけ、番組の進行につれて電話で寄金の申込が寄せられる。
確実な集計は出ていないが、24時間中の寄金額は約4億5千万円であると言う。
●火を付けた男
その数日前、「下町タイムス」の編集長、今泉さん(註:今泉清さん=故人)と会っている。
「下町タイムス」は墨東地区を中心に発行されているミニコミ紙で、今泉さんとは「月刊障間」発行時以来の付き合いである。
今泉さんの持って来た話はこうである。
「浅草を若者と共に考え直す意味から、10月16日に『下町タイムス』主催でフォークコンサートをする事になり、会場に浅草公会堂を一日借りる事になった。しかしこちらで出来る催しは夜の時間の分だけが精一杯で、昼間は今のところ空けてある。せっかく空いているなら『障問』(註:月刊障害者問題。すでに創刊2年を超えて、略称は読者間でも通用していた)のPRにでも使って欲しい」
もちろんこちらの負担金は無料で、夜の部の有料券には昼間の会場費も含まれているのである。
俺は考えあぐねた末に承諾した。引き受ける以上はその催しの遂行のためにかなりの時間がさかれる訳で、そんな事をやってはいられないという時間的事情はあったが、それにも増してやってみたいと心を動かす2つの理由があった。
●本物を演じる
昼の部を使わせてもらう事に決め、第一に申し出たのは「芝居」をやりたいという希望だった。
今泉さんは障害者で楽器を使える仲間を集めてフォークでもやらないか位に考えていたのだが、俺は夜の部でやるフォークを昼にまで持込む気はなかった。演りたかったのは芝居だ。
「『座頭市と忠治』をやるんだ。忠治は落目の上に中風でヨイヨイになっている時の忠治にする。そして座頭市は本物のメクラが演じ、ヨイヨイの忠治は本物のカクワが演じる。差別語タブーの風潮を徹底的に逆なでにするのだ。障害による格好悪さを逆に笑い飛ばすのだ」
この提案に、今泉さんは手をたたいて同意した。
心を動かした理由のひとつはその事であり、もうひとつは「障問」の運営がピンチの境にあるという事だった。観客を動員して「障間」バックナンバーの一括ファイルをプレミア付きで売る事であった。
●製作費80万円
芝居をやるに当り、今泉さんが演出補として紹介してくれた人が本物の芝居を手がけている人で、どちらかと言うと俺同様、今度の“火”に油をかけた人物である(註:実際は「補佐」どころか全面的演出で支援してくれた、浅草ではホンモノの喜劇を数多く手がけてきたその道のプロ、飯田一男さん)。
彼は「折角やるのだから」と大道具、小道具、着付、化粧など一切のソロバンをはじき、芝居だけでの製作費120万円という数字を出した。
俺は時代劇芝居をやる事の金のかかり方にびっくりしたものだ。スポンサーの今泉さんも難色を示し、削りに削って80万円という線まで抑える事には成功した。これ以上削れば「学芸会」になるまで詰めたのでその線は崩せない。
それにしても80万円は今泉さんにとってもしょい切れぬ金で、半分の40万円をこちらで背負う事になり、今や寄付金集めにも奔走している次第である。大変な事を始めたものだ(註:写真は9月18日付朝日新聞)。
●テレビヘの反逆
だが、俺は後悔していない。
それよりもテレビに対して反逆してみたい気持ちがある。
キャッチフレーズの「年寄りに棺桶を、身障者に〈電動式〉愛の手を」とは、御承知のように「24時間テレソン」のパロディーである。
いかに多くの金が集まろうとも、現実的に障害者の教育権は確立されず、就職状況も良くならず、地域に生きようとする障害者を温かく迎える住居もありはしないのだ。ましてや人並の結婚やマイホームなど遠い夢だ。
24時間ブッ続けで何を提起したかったのか。「気の毒だ」「可哀想だ」という同情心はあっても、障害者の心になって悩み合おうという仲間はまだまだ少ない。所詮合理性の上に成り立った「電動式愛の手」にすぎないのだ。
表面ゾラを装って差別語を規制したり、クイズ番組やのど自慢に障害者を出さないテレビがどうして人の心を変えられるものか。
俺はそういう世の中を思いきり笑い飛ばしてやりたいのだ。
月刊障害者問題1978.10.15発行
第30号より |
|