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| 中世の城塞を思わす、高くそびえた石塀で仕切られた第七種特別女子収容所――。 幌付きトラックの荷台から降りたった女たちは、外界とへだてて建物の周囲に高くそびえる堅固な石塀を見上げておどろいた。塀の途中途中には監視塔がそなわり、見張りの兵士とともに各々2基の銃座がなかと外に向けてどっしり据えられている。 「ビストロ! ビストロ!」 看守長リリアン・スタイナーが、ロシア語の「急げ!」を連発し、あとは片言のロシア語で身振り手ぶりをまじえて女たちに命令を伝えた。 「並べっ、塀の前にっ!」 整列させられたところから見た敷地内の光景は、木造ないしは煉瓦づくりのバラックが何棟も建ち並び、要所要所にこれまた機銃付き監視塔が建つ堅固な備えは、脱出不可能な現実情況をこれ以上ないほど囚われの女たちの胸に刻み込んだ。 「全員、整列しました!」 リリアンが所長へ報告した。 到着した囚人たちは、鉄道を経由して長旅してきた割には、それほどやつれたようすもなかった。壁のまえにならばせた女たちを、リリアンはさっそく品定めする目になって、じろじろながめまわしている。 ロシア語に堪能な中年のSS軍医アンケ・リュッカーが、囚人たちを見まわして訓辞を垂れた。 「みんな、よく憶えておけ。この壁と建物のあいだはイエローゾーンといって、監視のついた日課の散歩などのとき以外は出てはならない場所だ。もし、収容棟から一歩でも出ようものなら、脱走者とみなして射殺する!」 アンケが外と中と二方向を見上げ、指さしながら重ねていった。 「見ろ。あっちからも、こっちからも十字砲火を浴びせられ蜂の巣にされると思えっ!」 ざわめき、そして一同の顔に緊張がはしった。 アンケの訓辞は耳にタコと聞き流し、所長のヘルガは一人の欠員もないことに満足した。彼女が最初に目を向けたのは、この日着いた33人のなかではいちばんの年長者だった。 「おまえはたしか、ターニャだったな?」 アンケに負けず劣らず堪能なロシア語で語りかけた。 「はい、憶えていてくださり光栄です」 大人の女の、色気と気品をただよわせたターニャが、そこではうやうやしくお辞儀して、かしずいた。 「さっきから見ていたようすでは、おまえ、もしやドイツ語がわかるのではないか?」 「はい。故郷ヴィリツァでは、あなた様の国の軍人さんのお一人からお情けをかけられ、ちょっとした知り合いになれましたもので……」 「そうか、そうか」 ヘルガは満足そうに顔をほころばせ、何度もうなずいた。 そのターニャの横には、まだ子どもらしさも抜け切れないおさな顔があった。それが特別浮いて見えるのは、立ち姿が妙にアンバランスだからだ。 「おまえはオルガ」 ヘルガが、少女のあごを取って引き寄せた。ぽっちゃりした頬に、金色の産毛が夕陽に映えていた。 「そんなにこわがらなくていい」 「お、恐れ入ります」 まだ、ぶるぶる震えている。道中なにかあったかとも思ったが、気になるもう一人を求めて10人ほど素通りした。 ヘルガが心に留めた者とは、ほとんど全員が繊細さとしなやかさをただよわす女性体型のなか、冬服のうえからでも筋肉質なたくましさが感じられる直線精悍体型の女だった。 「おまえはヴェラだったな」 「……………」 「こいつ、所長のおことばに対し黙っているとはなんだっ!」 アンケが警棒でヴェラの胸を小突き、きびしい警句をあたえた。 「調べ書きでは、パルチザンのスナイパーだったそうな。それも腕のいい……」 「……………」 豹か鷹を思わせるするどい目が無言のままでヘルガをとらえている。 「なかなかしぶとそうな面がまえだ。さぞや友軍を悩ましてくれたことだろう。だが、ここでその腕は通用せんぞ」 アンケがドイツ語になってヘルガに耳打ちした。 「来月の慰安パーティーには、モスクワ包囲戦から還った将校も見えられるよし」 「あの戦いでは誰もが部下を失っている。復讐心から、なぶり殺ししたいヤカラもいそうだが……」 「おもしろいですね」 アンケはほくそ笑んだが、ヴェラに個人的興味が湧くヘルガにしてみれば、そんなことでむざむざ殺させるわけにはいかなかった。 「この女の出自は伏せろ。いま、この場からいないことにする。だから今日着いた女は33人ではなく、32人。例の“不測の事態”を利用するんだ」 「はっ」 不承不承という顔でアンケがうなずき、そばにいる部下に「連れてゆけ」と命じた。 悲鳴が起きて、さっき通りすぎたあたりがさわがしくなった。 「なんだっ」 いち早くその場にかけつけたアンケが、リリアンとオルガのいさかいに気づいたが、同時にビッコをひきながらあとずさるようすに、目を丸くしておどろいた。 「こいつ……わたしに逆らって――」 囚人の抗議など予想外のことで、すっかり色をうしなったリリアンがアンケに加勢をもとめてきた。 「おまえ、“ウサギ”か?」 アンケの用いた「ウサギ」とは、足をひきずって歩く身障者を差すことばで、その存在は3年前開設したラーフェンスブリュック(女性専用収容所)でも認められ、そこでは「拘留者仲間ばかりか、当の身障者みずから“ウサギ”を呼称していた」と記録にはある。 「貴様、ウサギの分際で逆らうとは――」 敵意を込めた眼差しで見返すオルガに、アンケはニヤッと笑うと腰のホルスターに手をかけた。 「この場で始末してやる」 ルガーを抜きかけたアンケをヘルガが制した。 「だいじな人材をムダに消耗する気?」 一時火花を散らせ、2人はたがいの耳にだけとどく声で応酬しあった。 「新入り一日目は囚人への見せしめに、1人2人は処刑するのが慣例のはず。こんな役立たずを選んだのも、そのためでは?」 「!」 長靴を鳴らし、ヘルガがナチ式敬礼のポーズをとった。 「捕虜を無意味に損なうことは国益に反するばかりか、総統閣下への不忠にもつながる行為」と、これは周囲に聞こえるよう堂々とした声で宣言した。 「だったら、なんでこんなクズを……」 アンケが吐き捨てるように言った。 すぐそばにはブルブル震えながら、マヒした片足を健康なほうの足で支え、やっと立っているかのようなオルガの姿があった。 「ビッコは〈あそこ〉の締まりが良いというではないか。それにいろんな趣味の客がいることくらい、古参のあなたなら百も承知のはず」 ヘルガはそこまでいって一呼吸おき、またオルガのあごを取って「だが」とつづけた。 「――抵抗したお前にも、それ相応の罰が必要……そうだな。夜を待って、わたしが仕置きすることにしよう」 オルガを見おろすヘルガの目が、そのとき妖しくうるんだ。 「よいな?」と、アンケにもリリアンにも確認して、囚人一同に向きなおった。 「では、全員なかへ!」 ヘルガの号令一下、32人が最初にくぐった収容棟の入り口付近に、[処置室]と表示された部屋があった。 |
| そこは病院の診察室を広くした感じの部屋で、すでに何人ものSS女兵士と、ただ一人の男のSSであるロベルトが、白衣ならぬナチの黒服姿で待ち受け、囚人たちが入ってくるなり、いっせいに下卑た視線を浴びせかけた。 「服を脱げ。全員、裸になれ!」 アンケの命令で、女たちは長旅に備えて重ね着してきたコートを脱ぎ、ジャケットを脱ぎ、それらをSSが差しだす脱衣カゴに入れていく。 「ビストロ!」 「だって、ここで着替えるなんて……」 即座に平手打ちが飛んだ。みんな、脱衣の手を止めてそっちを見る。そばかす混じりの顔の少女がリリアンから打擲(ちょうちゃく)を受けているところだった。 アンケが駆け寄る。見れば着ているものからなにから、いいとこ出のお嬢さんタイプだ。 「名前は?」 「ゾーヤといいます」 「だったらゾーヤ。おまえ、なにを勘違いしている。ここをどこだと思っている」 アンケににらまれ、ゾーヤと名乗った少女はしかたなく、のろのろと服を脱ぎはじめた。 上半身裸になったとき、ぶるんと張り出した乳房の、思いもかけぬ量感と白さにリリアンが舌なめずりして見入った。嗜虐の虫が止めどもなくうずいているにちがいない。 凝視にうろたえつつもゾーヤはスカートを脱ぎ、ズロースを下げ、全裸になってからも、ただ、おろおろ胸やら下やらを隠すのに躍起となっていた。 アンケが咳払いをひとつして、流暢なロシア語でいつもの弁舌をふるった。 「朝の点呼時に聞かせるべきところ、この際だからいっておく。よく聞くがよい。 おまえたちスラヴ人などという者は、[畜生類の寄せ集め]として、ほんらいなれば生きる価値もないところ、この収容所によって名誉ある任務をあたえられた。 その任務とは、我が総統閣下と祖国ドイツのためはたらく友軍将兵を慰労する役目であり、性欲処理要員としての職務を全う、その身を捧げて奉仕することである」 ひとしきり訓辞を垂れたアンケに代わって、出しゃばりリリアンに番がまわった。 「ビストロ! 順番に奥へっ」 部屋の隅にベッドが3つ、それぞれに2人ずつ兵士が付いて、そのうちの1人は剃毛係としてカミソリを手に待ちかまえている。剃毛役のひとりがロベルトだった。 「そのまえに“ポケット”検査だ」 いつの間にか、リリアンの右手には二本指サックがはまっていて、その指を囚人の股間にズブリと挿入した。 「あ、うーっ」 「じっとしてろっ」 にたりと笑い、指の根本まで挿入すると念入りにかき回し、またゆっくりと膣から抜き出した。ぬめりを帯びた指を一瞥したあと、 「こんどはうしろだ。腹ばいになれ」と命ずるが、ことばが通じないのでベッド付き兵士が手伝って身体を反転させた。 「いやあーっ」 「しずかにしろ!」 ゲンコを腰骨にたたきつけて黙らせると、こんどは中指だけ突き立て、刺激的な淫検で存分に濡れそぼった割れ目に沿わせ、力を込めて一気に固くすぼまったアヌス穴にひねり入れた。 「つーっ!」 「ふんっ。変なものは残してないよな」 たっぷりとひねり込んだあとで抜き出した指を鼻にかざすと、やおら部下がはやした。 「こいつら、いつだって腹減らしですよ。いまのロシアに食うもんなどありますか」 「だったらクソもでないか」 そういってリリアンは「きゃははははっ」と、癇性な高笑いを部屋中に響かせた。 そのときにはアンケがさっきの娘の腕をつかみ、みなの耳にもとどくよう言い聞かせた。 「おまえたち露助がなぜスラヴ人と呼ばれているか知ってるか? それはスレイヴ(奴隷)だからだ。スレイヴであるスラヴなどというクズに、わが誇りあるドイツ将兵慰安という大任が下される。これにまさる名誉があるかっ」 そうして「行け」と、突き放した。リリアンがあとを受け、引き立てていった。 「おまえも、そこにならべっ」 ずっとその間、所長のヘルガはロベルトのちかくで全体をながめていた。リリアンの威張り散らすようすも、滔々(とうとう)とまくしたてるアンケの演説にも、黙って耳をかたむけていた。 そばかす少女のゾーヤにみんなの目が向いたときだけ、ヘルガはすくなからず満悦した。その表情の変化をアンケが見のがさなかった。 「なんだ。“見せしめ要員”はウサギではなく、あの娘だったか」 ヘルガの腹の底を見抜いてほくそ笑んだ。 それからのヘルガは、かたときもゾーヤから目をはなすことがなかった。 「貴様らブタどもに羞恥など無用だっ」 また、アンケが怒鳴っている。 そのかたわらではリリアンが、「ビストロ!」「ビストロ!」をくりかえしている。 乱暴に押し倒す兵士。おおきく足を広げる兵士。それから、膣とアヌスに指を入れての検査とつづき、すべてが段取りどおりで、すべてが流れ作業だった。 ロベルトのベッドから、恥ずかしそうに腰をかがめ、みんなのまえにもどる女。入れちがいに例の少女が歩いていき、ベッドにあがった。 流れ作業は、ときにより特に念入りな場合がある。その例外にゾーヤが当たった。 雪のように白くて豊満な乳房を満足そうにながめ、リリアンは生つばを呑みこんだ。このこまっしゃくれの淫蕩女SSは、乳房のおおきな女がことのほか好みだった。 「こいつは剃毛のあとで――。さあ、ロブ、このブタ娘にシャボンは必要ないわ。ゆっくりと時間をかけて剃り上げて」 「へへぇー」とうなずいた男は、「剃毛こそ天職」と心得ているヤカラである。 嬉々として、バカのように口を半開きにしたロベルトが、カミソリを持って少女の股間に挑みかかった。 こわごわと密生する陰毛の根本にカミソリの刃が押し当てられ、ぞりっとひと刷毛(はけ)こそげ取った瞬間、「ひいーっ!」と笛のような悲鳴が叫ばれた。 ぞりっ、ぞりぞりっ……こそげ取るたび悲鳴が起きた。 「よし。こんどはわたしが」 マル禿げになった股間を満足して見下ろしていたリリアンが、あおむけの股間を観音開きにして指でなぶりはじめた。 「うむ、むうぅー……」 ゾーヤの眉間に深いしわが刻まれた。 リリアンの手が、リズミカルに前後に動き、出し入れされる2本指は、出し入れされるごとにぐっしょりとした輝きを増した。 「くっ……」 目がきつく閉じられ、歯をくいしばる口元がぶるぶる震えた。腰の横に伸ばされた手が、固くシーツを握りしめた。 ピンクの秘唇が、乱暴に翻弄されるたびに、じくじくと愛液をにじませ、照明にきらきらと映えつつ複雑なしわをきざむ。 ――なにかがはじまる! なぶりながら、ねっとりと潤むリリアンの瞳、辱められつつ、らんらんと輝くゾーヤの瞳。双方の瞳から受けた直感から、ヘルガはあらたな展開を確信した。 「ううっ!」 そのときゾーヤの苦悶も限界点いっぱいに達していた。リリアンになぶられる亀裂のそこここから凌辱のしずくが糸となり、そのうちのいくつかはポタポタとしたたり落ちて、シーツに点々とした染みをつくっていた。 「いやああーっ!」 処置室中にひびきわたる悲鳴――。 豊満な乳房が、ぶるんと揺れて、あおむけの上半身がおおきく反りかえったとき、ばたばたとあばれる下半身がリリアンをはねのけ、ロベルトを蹴りつけた。 「貴様ぁあー……」 床に降りたリリアンが、凄い形相で振り返った。なにか怒鳴ろうとするのをアンケが制し、代わりにヘルガに進言した。 「所長、このウジ虫に制裁を! いいですね?」 「まあ、よかろう」 もったいをつけながらも、表情はまんざらでもないようすだった。 ゾーヤは兵士2人に引き立てられ、全裸のまま中庭へと連れ出された。 「囚着を下げ与える。剃毛が終わった者から身につけよ」 薄いピンク色の囚着が渡されることになった。すでにほとんどの者が剃毛をすませており、めいめい受け取った囚着を手にすると、左胸に縫いつけられた赤い逆三角の識別標と登録番号リボンとを見くらべていた。識別標に印刷された黒文字は全員「R」である。 「与えるのは上下ひとつつづきのそれ一枚のみ。なぜならば、おまえたちはいついかなる場所でも、われらSSの求めあるときは従い、身体を開いて奉仕せねばならん。その際、下着は邪魔でしかないからだ。 ただし、生理の者は例外とする。 ちなみに、識別標にある[R]は“露助”であることを示す頭文字だ」 そのあとアンケは、いま現在生理にある者の挙手を命じた。 ここでもオルガは目立ち、裸のうえに囚着をまとうときにも、マヒした足や腰を好奇の目で見る下っ端SSにまとわりつかれていた。 ヘルガが割って入った。すると部下たちは、たちまちその場をはなれた。 「おまえは、わたしのそばにおれ」 「はい」 それからほどなくして、先に抜けたヴェラと、さっき出たゾーヤをのぞく31人全員そろいの囚着を身につけたころ、外からもどった兵士が報告した。 「準備ができましたっ」 「では、所長――」 「わかった。みんな、中庭に出よっ!」 アンケの先導でリリアンと囚人たちが出て、他のSSが出て、それからさっそうとした大股歩きで出ていく所長ヘルガのあとを、不自由そうに足を引きずったオルガが必死に追いかけた。 |
| “仕置きの場”は、収容所到着時に女たちが整列させられた中庭の一角にあたり、そこへ囚着に着替えさせられた女たちが出されたころには、陽も落ちてすっかり暗くなっていた。 突如として宿舎の側の監視塔からサーチライトが照らされ、光のシャワーのなかに“いけにえ”の裸身がさらされた。哀れなゾーヤは全裸で目かくしをされ、石壁のまえに垂れている鎖と枷で両手を吊られていた。 「あの……」という声にヘルガが振り向くと、ターニャがすぐそばまできていた。 「おまえの願いはわかるが、それを聞きとどけてやることはできぬ。ここに適応できぬ者は生きてはいけぬのだから」 「そんな、無慈悲な。どうか、お情けを――」 「くどいっ!」 びしっといい放って、ヘルガはみなを見わたした。 「おまえたちも、とくと見物して肝に銘ぜよ。ここではなにごとにも逆らわず、素直に準ずるのが身のためだということを。さもなくば、あの娘の姿が明日のおまえたちの姿となるっ!」 ゾーヤは、すこしまえまでの負けん気がウソのように全身でガタガタ震えていた。両手に鉄輪をはめられ、バンザイさせられ、涙をボロボロこぼして泣き叫んだ。 「お許しをー。もう決して逆らったりはしませんから殺さないでっ!」 「殺しはせんっ!」 凛としたヘルガの一声で静まりかえり、そのなかを見物のSS兵士の人垣をかき分けて登場したのは――。 リリアンだった。全裸で吊られた少女の真正面3メートルちかくへだてたところに立ち、手にはいつも持参の乗馬鞭ではなく、太くて長い一本鞭を下げていた。地面に延びる頑丈な蔓草のような鞭の全長は2メートルをゆうに越えている。 制服を脱いでTシャツ姿になると、季節はずれの薄着のすそからでた二の腕は、ぱんぱんに筋肉が張って、はち切れんばかりだった。 「リリアンは鞭さばきの名手よ」と、アンケが上着をあずかりながら説明し、さらにつづけてこういった。 「ねらった場所にかならず命中させる――」 そのことばが終わるや否や、びゅっと鞭がうなりをあげ、悲鳴が上がった。周囲がどよめいた。いつ飛んだか、いつ打ったか、目にも止まらぬ早ワザで、しかしたしかに少女の量感のある乳房のかたほうに、乳首にかかって赤い条痕がきざまれていた。 「いやああーっ!」 つづけて2発、3発、おなじ乳房の乳首をめがけて正確に飛び、その鞭がリリアンの手にもどったとき、乳首が切れて烈しく血を流していた。 「ああー、あっ、あっ……」 泣き叫び、身悶え、苦しまぎれに手枷をガチャガチャいわせて真っ裸の全身を揺すったから、腹にも太腿にも乳房から流れる血の跡が点々とつけられ、処刑ショーははやくも陰惨な雰囲気にたちこめられていた。 リリアンの目が嗜虐にぎらついた。舌なめずりして唇を湿らせた。 「きゃあっはっはっはっ……!」 癇性な笑いのあとで、また鞭が飛んだ。その際には、リリアンの鞭を持つ手の微妙なひねりぐあい、暗い空中にカマ首をもたげた蛇のように鞭が跳ね上がり、すぐまた急降下して無傷なほうの真っ白い乳房を直撃して赤い条痕を刻むまでを、こんどこそは周囲の皆も目を皿にして確認したのだった。 「ぎゃあああーっ!」 狂ったようなゾーヤの悲鳴。ぴっ、ぴっと付けられる赤い鞭跡は最初の条痕に交差して数を増していき、やはり3発目で乳首から血を飛び散らせ、血をしたたらせることになった。 「いやああーっ、やめてええーっ!」 凄まじい悲鳴とともに、またガチャガチャ、鉄枷とチェーンが音をたて、鞭の直撃を避けようとして少女の身体はひたすら腹をへこませたへっぴり腰になるが、それはいたずらに固い鉄の戒めを華奢な手首に食いこませるだけだった。 「いやっ、ぎゃあっ!」 「こいつぅー、逃げるとこうだぞっ」 怒ったリリアンの7発目は下から上に突き上げ、ゾーヤの肉づきのよい尻をしこたま叩いて腰を引き立たせ、8発目、9発目ではこんどは逆に上体をのけぞらせ、傷口から流す血の糸を生白い全身のあちこちに増やすだけだった。 ばしーっ、ばしーっと尻を打つ響きは、乳首を打つよりは派手に響き、そのため見物のSSらからはやんやの喝采を浴びることになった。 ゾーヤの身体は鞭打たれるたびに電気じかけの玩具のようにガクン、ガクンと跳ねまわり、おもしろがるナチの連中とはちがい、女囚たちにとっては我が身が打たれるような切実さがあった。 「やめて、やめてよぉ……」 両手を握り合わせ、祈るようにつぶやくオルガを、ヘルガの冷たい視線がさっきからずっととらえつづけていた。 リリアンが、それまでとまったくちがった姿勢をとった。腰を低くして、鞭の取っ手部分を握る右手と、しなった先をつまむ左手の両手で、ゴム鉄砲を撃つ要領で水平にかまえたのである。 ゾーヤが、またまっすぐに立って、鞭打ちの洗礼をうけいれるべく、目かくしされた顔を屹然として前に向けた。 「よーし、いい覚悟だ」 リリアンが口元をゆがめた。 固唾を呑んで見守る周囲と、その不気味な静けさのなか耳をそばだて、かすかな風の音さえ聞き漏らすまいと神経を集中する少女―― びしっ。 そのとき空を切る音が走ったと思う瞬間、水平にまっすぐ飛んだ鞭の先は、血まみれの乳首をはじき飛ばし、血の雨を散らせた。 「ぎゃあああーっ!」 絶叫につづけて、もう片方の乳首も。 「ぎゃっ」と、一瞬の叫びにつづけて、「ぎゃああっ!」と尾を引く悲痛な絶叫。ゾーヤが髪を振り乱して泣き叫びつづけた。 リリアンが三たび水平打ちに身がまえたとき、 「やめよっ!」 ヘルガが中止を命じた。 「治療不能の身体にされては困る。鞭打ちはそのあたりでやめるが良い」 チェーンの鉄枷に手首をあずけ、ボロ雑巾のように垂れ下がった身体のゾーヤは失禁もしていた。ぴったり閉じた内股を、汗とはちがうものが伝っていた。 「むごい……」と、ターニャがつぶやいた。 血まみれの乳首は、周囲の目には、もはやちぎれているとしか見えぬ凄惨さだった。 「おねんねは、まだだっ」 アンケが目かくしをひっぺがし、頬を2、3発張ってゾーヤを正気づかせたとき、兵士が2人、小机とバケツを持ってあらわれた。 「鞭のあとは〈アメ〉だっ」 いまさっき引き出された小机がゾーヤの前に置かれた。そして吊りの拘束を解かれたゾーヤは、上半身腹ばいに寝かされた。 小机と見えたのは表面が板ではなく、横棒を等間隔に渡した仕置き台で、四隅に革拘束帯も備えていた。ただ、その姿勢で拘束帯は役に立たず、バンザイさせたゾーヤの手首を台に固定するには手錠をつかった。 「ふん、いいかっこうだ」 リリアンが突き出た尻から下の脚も大きく開き、ここでも手錠をつかって足首を台の支柱に固定した。そうしておいて、バケツから太さと形が異なる張り型を取り出し、ゾーヤの目の前に1本1本ならべていった。 「みんなを前にっ!」 ただでさえ目を覆いたい光景を、みせしめの意味から囚人たちを前に出すべく兵士に押しやらせて、その兵士らもあとにつづくから、たちまち仕置き台の周りは見物の人だかりでいっぱいになった。 「おまえも行くがよい」 ヘルガのうながしに、オルガは「いやっ」と首を振り、ここでは案外に強情なところを見せた。ただ、2人の位置からでも人と人のすき間から仕置きは充分うかがえ、ヘルガは無理強いしなかった。 リリアンが、指サックをはめ、その指が肉づきのよい双臀の陰に隠れた。兵士に無理矢理上げさせられたゾーヤの顔が苦悶にひきつる。 「濡れてきた濡れてきた」 右手の動きがせわしなくなる。 ゾーヤの苦悶に、ひきつれが加わり、「うっ、うーっ」という呻きに、「あ、ああ」という甘美な響きがまじった。 たっぷりとなぶって引き出した指の濡れぐあいを確かめたあと、リリアンは最初に挿入すべき〈獲物〉をつかんだ。 張り型と見えたのは、いかにも〈それ用〉につくったとおぼしき警棒で、もっこり先がふくらんだ、長さ30センチほどの棒を持ったリリアンの手が尻の向こう側に隠れ、隠れたと思う瞬間「ううーっ」と烈しい呻き声がゾーヤの苦悶の顔から発せられた。 「ううーっ!」 呻きは一瞬、強い調子に変わるが、そのあとからは「あっ」「ひっ」と断続的に発せられるちいさな呻きに変わる。 リリアンの腕が、責めに高じてせわしなく動くが、その動きが10回に1度くらいの割で緩慢になると、「うーっ!」「むーっ!」と、そのときだけ呻きが強い調子に変わる。 「子ブクロを突き上げられる気分はどうだ?」 「ううむうっ!」 顔をいっぱいにひきつらせながら、ゾーヤが唇を噛んだ。 ヘルガは「おや?」と思った。 仕置きの場を見ているオルガの目に、なにかしら粘っこいものがが感じられたからだ。頬に差す赤味は羞恥なのか、興奮の証しなのか。ヘルガの胸はすくなからず騒いだ。 リリアンの手が動きを止め、ゆっくり抜き出された警棒は、ぬるぬるした輝きを放ってゾーヤの目の前に置かれた。つづいて2本目を手に取る。 「こんどは、すこしきついぞ」 リリアンが手にした2本目は、さっきのよりは太く、それにくわえて螺旋状のえぐれとひねりが利かされたもので、見るからに刺激的な細工の張り型だった。 「うーっ」 また悲痛な呻きが上がった。ゾーヤの首がのけぞった。 こんどのリリアンは、一時挿入に手こずり、それからゆっくり、ぐいっとねじり込み、それにつれてゾーヤの苦悶の声も表情も際だった。 「うぐぐうー、いやっ!」 歯を食いしばって剥いた目が、半白眼になっている。苦痛だけなのか、それともある種快感がないまぜになっているのか、しかとは判断しかねる複雑な苦悶の表情だ。 「ふふふ……見ろ、おまえたち」 アンケがゾーヤの股間を下から見上げながら実況検分している。 「こいつ、際限もなくよだれを垂らしているぞ。よほど棒キャンデーが美味いと見える」 「いやっ、ちがうっ!」 必死に首を振るゾーヤに、リリアンの手がさらに勢いづいて突き動かされる。 ゾーヤを見ているオルガに、ヘルガは無性に「なぶりたい!」と思った。そう思うやいなや、手は自然にオルガの囚着に触れていた。 はっと身がまえるオルガを「動くなっ」と制す。 ヘルガの手が、ゆっくり囚着をたくしあげていく。粗末なピンク地の裾が持ちあがり、太腿が見え、脚の付け根が見え、白い尻の谷間までが見えた。割れ目をこじ開けたいが、そうするにはヘルガが屈み腰になる必要がある。 別の趣向を思いついた。 「自慰をせよ」 「え?」 「いま、この場でオナニーするのだ。まず、指を口にしゃぶって十分に濡らし、それからあそこに入れて愛撫するのだ。その姿を見たいっ」 断固とした意志。しかも、ここでは最高権力者であるSS収容所長の命令になど逆らえるはずもなく、いわれるままに、まず指を口に含んでしゃぶりはじめた。 「やはり、二本指でするのか?」 しゃぶりながら、こっくりうなずいた。 処刑の場では、太くて刺激的な形をした張り型が、ぐっしょりと濡れた状態で抜き出され、さっき並べた警棒の横に置かれたところだ。 オルガが、ツバキで濡れた指を自分のなかに入れたとき、「ううーっ!」と烈しいゾーヤの呻き声が起こって、オルガがびくんと肩をそびやかした。しかし、それは一瞬のことで、オルガのなかで指が動いた。 「良い良い。気持ちを楽に、気分を出して……」 ほとんどの者が処刑の場に耳目を集中するなか、そこにいるのは2人だけだ。その安心にまぎれてか、オルガが自慰行為にのめり込もうとしているのが、うっとりとした表情から見てとれた。 前のほうでは見物の兵隊たちから静かなどよめきが起こっていた。 「棒キャンディーには飽きたわ」と言い、早くも張り型レイプに飽きたリリアンが右手に手術用のゴム手袋をはめ、その手にゼリー液をたっぷり塗りつけたことから、残酷な展開を期待した見物衆から喝采を受けていたのだ。 すでにゾーヤの目の前には、ぐっしょり体液で濡れそぼった刺激性の張り型が、はじめに使われた警棒の横に仲良くならべられていた。 「全身の力を抜け」 ニヤッと笑い、こぶしに形を変えた手が、また尻の陰に隠れた。 「いやあーっ!」 目を見開いて絶叫するゾーヤ。その悲鳴を愉しみつつ、リリアンの責めはますます凶暴になる。レイプにおよぼうとするこぶしに加えられる力のほどが、ゾーヤの双臀の向こうでうごめく二の腕の変化からわかる。 リリアンの二の腕の筋肉がぱんぱんに張り、ぐぐっと前に突き出されたと思うや、耳をつんざく絶叫が響いた。 「うぎゃっ、ぎゃああーっ!」 「入ったぁー!」 歓声をあげるリリアン。ピストン運動が開始され、せわしなく前後する二の腕。残虐ファックの激痛をこらえ、叫びをあげながらのけぞる顔、その顔を見つめる囚人たちやSS看守、警備兵らの顔、顔、顔……。 そのとき―― 「あ、ああ……」と、オルガのうっとりした顔から、甘美な声が漏れた。 が、それは思わず洩らしたことのようで、そのあとは感じていながら「うっ」「くっ」と、ひたすら声を洩らすまいと耐える姿になっていた。 「誰にも聞こえぬ。もっと声を上げよっ」と、乙女心の羞恥の感情を知りつつ、いや、それだからこそあえてヘルガは残酷心から無理強いし、喜悦の声を強要した。 「ぎゃあーっ!」 処刑の場で絶叫が起こった。そして、がっくりとゾーヤが首を垂れた。 なにが起こったのかはわからぬが、その絶叫を合図に処刑が終わったようだった。 手錠をはずされ、引き立てられたゾーヤの乳房に、仕置き台の横木に押しつけられてできた赤あざが、横二本線となってくっきり刻まれていた。 「連れて行け」 アンケはそのあとで、たっぷりと脅しをくれるのも忘れなかった。 「今夜からはこのリリアンがおまえのオンリーさんだ。これから毎晩可愛がってもらえるから、せいぜい楽しみにしているんだな」 うつろな目をしたまま、声もなかった。 それから兵士に抱えられた。全身を汗で光らせ、乳首からは流血の跡が見られるものの、腰から下は台で見えず、股間から血が流れているかどうかは確認することができなかった。 放心したようになっているオルガに、ヘルガはこう言った。 「おまえの今夜の相手はわたしだ。他のものがどうこうすることはないので、安心して旅の疲れと垢をゆっくり湯で落とすがよい」 オルガの顔に緊張が走ったが、あきらめてうなずいた。 「あの娘のように仕置きを受けるのですね?」 「おまえに、あのような酷いことはせん。だが、すこしは覚悟しておくことだ。しつこいことでは、わたしもアンケやリリアンに負けはせん。たっぷりと泣かせてやるぞ」 オルガががっくりと頭を垂れた。 向こうではアンケが指示を下している。 「囚人どもは宿舎に入り、風呂があたえられる。十分に身を清めたあと、各自割り当てられた部屋で迎えを待て」 そうして、めいめい囚人たちは宿舎のある建物へと案内されたが、そのときには各自に誰かしら目をつけたSSや警備兵が付いており、1人に1人、あるいは複数が付き、人によっては10人、20人と大人数の兵士に囲まれて歩く者もあった。 「あの者にとっては、今夜は地獄となるな」 ヘルガは事務的な口調でつぶやき、「おまえも行け」とオルガをうながした。 その地獄の夜が、すぐそこまできていた。 |
| ターニャは、慰安個室のベッドで、あおむけ大の字縛りにされていた。囚着はつけてはいたが、腰ひもは解かれ、前開きボタンも上から下まではずされていた。 ブランデーグラスをかたむけながら、じっと見ている軍服のままのSS軍医、アンケ。顔を赤らめ、目つきも怪しい。もう、そうとうできているようだった。 「おまえの年では、わたしくらい年季がはいった者でないと満足に反応しないと思ってね。むふふふふぅ……」 緊張し、青ざめた顔のターニャをいたぶることに、早くも興奮している。 アンケの手がボタンのとれた囚着を、まず右、つぎに左と開いて裸にさらす。美乳に触れた手が軽くつまんで乳首をひねりだし、ピンクの頂点を親指の腹でやわやわと刺激したあと、一気に股間までのびて、剥き玉子の双丘をつまんで、割れ目をひねりあげ、濡れ光る秘貝の中身をむき出しにした。 「もう、こんなに濡れて……おまえ、けっこう好きもののようだね」 「う、うそよ、そんなっ……!」 「いいさ、そのほうが嬲(なぶ)り甲斐がある」 グラスを置いた。かたわらのトレイには懐中電灯やガラス棒、微妙に形をちがえた棒状の医具などが、ところせましとならべられている。 「たっぷりと泣くがいい」 そういっておいて、まず懐中電灯を取った。明かりに照らされたターニャの局部。その頂点に位置する小豆大の肉球は弾けんばかりにふくらみ、包皮を上方に押しやって卑猥な光沢を放っていた。 いったん懐中電灯を置き、アンケがガラス棒の先にゼリー液をつけると、ふたたび明かりで局部を照らし、棒をちかづけ、その先をクリトリスのうえで円弧を描いて動かしはじめる。 「あっ、あうっ、んっ」 悲痛な声を発し、四肢の自由を奪われた素裸の全身があがく。 「動くなっ!」 その一声で、大の字にされたつややかな全身はピタリと静止した。 「動くなよ。動くとガラス棒がへし折れ、だいじな部分を傷つける」 そういってターニャのうえにのしかかり、腰をおさえつけるものの、棒の先にとらえられたちいさな肉球は、ひとりでに逃げまわる。その逃げまわるクリトリスを執拗に追い回すガラス棒。 やがて円運動に左右の動きがくわわって、そこへ指先の力までがプラスされた。 「うぐっ、くうあぁっ」 はやくも赤味がかったターニャのクリトリスは、アンケのあやつるガラス棒の巧みな動きに反応して右に、左にのたうちまわる。 「くくく……ふっふふふふふ……」 アンケは、すっかり加虐に没頭しきっている。 ぐりっ、ぐりぐりっ……ゆっくりだが確実に深紅のこまかな肉球を捕らえ、容赦なく急所をいたぶり苛むアンケのガラス棒。 ターニャの腰はいつしか、びくん、びくんとおもしろいように跳ね上がる。 「さあ、ここにもう1本、ガラス棒があるわ。これをどう使うかわかる? くっふふふ……」 「あ……あ、あっ……」 涙をいっぱいに溜めた目が必死に首を振って許し乞いをする。 「すこし痛いが、こんどのは傷つけると治療困難におちいる場所だから、絶対に動くなよ」 「いや。いやあっ!」 許しを乞う声など無視して、アンケが懐中電灯を置いて、2本目のガラス棒に手をのばす。それを持ってゆっくりと狙いさだめ、あろうことか敏感で脆弱な排泄器官に一気に挿入した。 「ぎゃあぁぁぁぁーっ……」 耐えがたい悲鳴が起こり、大の字に開かれた女体が身動きもかなわぬまま、全身の筋をくっきり浮き立たせていた。 収容棟の1ブロックは、収容所を管理・統括するSS職員用慰安個室が、ながい廊下の左右にわたってびっしりつづいている。そこでは非番の兵士が、昼間のうちに目をつけた慰安囚を夕方から連れ込み、深夜、あるいは明け方ちかくまでかけて、趣向を凝らしたやり方でしつこく責めさいなむのである。今夜は新入り女囚を迎え、いつになく盛り上がっている部屋も多い。 所長のヘルガとて例外ではなかった。 彼女の場合は所長特権により、豪邸のリビングルームもかくやと見まごう将校向け特別慰安個室がつかわれ、その夜も豪華な調度や名画が飾られたなか、ウィスキーグラスをかたむけ、目当ての囚人が連れられてくるのを、いまやおそしと待ちかまえていた。 あ、ああ……う、くくぅー…… となりの部屋から、責められる女囚の悲鳴が聞こえてくる。ぼそぼそとなにごとかつぶやく兵士の声も聞こえているが、アンケでもリリアンでもないようだ。 また、反対どなりからは…… ひっ、ひいーっ! 烈しい悲鳴が飛び込んだ。詰問する兵士のことば調から、そこでは拷問がおこなわれているにちがいなかった。 ぎゃああーっ、という絶叫に、不気味な笑い声がかぶさった。そして、悲鳴のあとは、すすり泣く声に変わった。それにじっと耳をかたむけていると、さまざまな妄想が渦巻いて、ヘルガはなおいっそうの嗜虐心をそそられるのだった。 それから間もなく2組の足音が近づいたが、そのうちの1つにはかなりの特徴があった。ぱたっ、すーっ、ぱたっ、すーっ、と、両方の足音に間隔と調子のずれが、はっきりと聞きとれるのだった。 ヘルガの胸がこれ以上ないほど期待の高鳴りをみせたとき、ノックがして、リリアンがオルガを連れてあらわれた。 澄ました顔のリリアンの横で、上気した顔をうつ向けたオルガは、湯上がりのシャボンの匂いを発散させていた。 「では」と下がりかけたところを、「待ちなさい」と止めた。 「おまえは、やっぱりあの娘を?」 「はあ、まあ」 リリアンは、なぜか答をにごした。 「昼間の女、名前は……」 「たしか……」 「いや、いい。もう、多分憶えることも……」 「はあ?」 「下がってよし」 ドアが閉まって、寝室にはヘルガとオルガ2人きりになった。 ヘルガはあたらしいグラスを用意した。 ウイスキーを注いですすめたとき、また、となりから悲鳴が飛び込み、オルガがぶるっと肩をすくめた。 「心配するな。おまえに酷いことはせん。さ、飲みなさい」 「はい」 アルコールに口をつけ、うっと顔をしかめたあと、無理に飲み干すオルガの顔を、ヘルガは満足そうにながめていた。 アンケのターニャへのクリ責めは、ガラス棒から金属製の医具へと変わり、さらに執拗さと濃密さを増していた。 「同性にここを嬲(なぶ)られる気分はどう? さあ、言ってごらん? ほら、ほーらっ!」 懐中電灯の明かりのなか、鉗子の先でつままれ、ぷっくらと押し出された充血した核を、ピンセットのとがった先が微妙な力かげんで突つきまわす。 「あっ、ひっ……」 切なそうに身悶えする腰。そして腹――剥き玉子の割れ目は、いやらしく濡れて光っている。膣孔からにじみ出る絶頂液が白い糸を引いてながれ、シーツの染みを広げていた。 「どうだ? 男などにもてあそばれるよりは、はるかに感じるだろう?」 アンケがピンセットをにぎる手に、力を込めた。 「うああーっ」と、一転よがり声が悲鳴に変わった。 「これが拷問だ。だが、これはどうだ?」 また力を抜いて、ほとんど静止した状態で微妙にかげんする。ターニャの急所はびりびりと鋭い快感につつまれ、それが証拠に、またたらたらと乳白色の淫水をしたたらせている。 「あ、あぁ……」 汗ばんでてかるターニャの顔が、風呂上がりののぼせた表情になっている。はあはあと喘いでもいる。 さらに5分たち、10分ちかくがたった。 「ううーっ、う、うあああーっ!」 シーツにのばされた大の字の手足の先が空をかきむしり、はげしい呻きとともに全身に痙攣が走って何度目かの絶頂をむかえた。シーツの染みは失禁あとのようにおびただしいものになっていた。 「おまえは、いい淫売になるよ」 「いや。いやあー……」 心と身体は皮肉だ。つよく意志で拒否しながらも、身体は酷くてしつような刺激にびんびん反応し、ぱっくりと開いた秘唇をつたって淫水を垂らしつづけている。 そしてアンケの口元には、勝ち誇った征服者の笑みが浮かぶ。 「露助の淫売めが。このよがり汁はなんだ? おまえが根っからの淫売だという証拠にすぎんではないか」 「うっ、くっ……」 「これから何日もかけ、おまえの身体をどんな変態プレイにも反応する身体に改造してやる。その間せいぜい愉しませてもらうからな」 そういってアンケが不気味な笑いを洩らしたとき、ターニャの頬を涙がつたった。 「さあ、こんどは後ろだ」 アンケの手が染みの広がるシーツと尻のあいだにねじ込まれ、うごめいたとき、ターニャの絶叫が響きわたった。 ぎゃあああーっ! 遠くからの叫びが、リリアンの耳にもとどいた。 となりの部屋からは、突っ伏したような呻きが聞こえている。 そして、いま、この部屋では、ぴちゃぴちゃという水音に混じって…… 「ひぃーっ!」 感極まった泣き叫び声が発せられた。 リリアンの手術用の手袋をした手がピストン連動するたび、甲高い泣き叫び声であたり一面陰惨な雰囲気にとりまかれ、ベッドに投げ出された白い両足の先が、むなしく空をかきむしっている。 ぐっしょりと濡れた手袋の腕が、ゆっくりと引き抜かれた。 薄いゴム手袋を、密着した腕から勢いよくはずしたとき、しぶきが飛んでリリアンの頬にもかかった。 「ちっ」 舌打ちして顔をゆがめた。 「ここへきたからには、お嬢さんのように澄まし顔でいられないばかりか、ハラワタのなかまでさらしものにされる性奴隷の身だということがよくわかっただろう」 血のまじった淫水やら汗やらなにやらシーツにぶちまけ、全身をひくつかせながらはげしく嗚咽しているのは、昼間しこたまブチのめされたお嬢さん育ちの娘だった。 「いったん休ませてやる。もどったら、こんどはうしろだ。覚悟して待ってなよ」 コルセットのうえにナイトガウンをはおり、手燭を持って飛び出すと、慰安個室のドアも開け放したままに、リリアンは廊下の奥へと歩きだした。 囚人ブロックの一角の急坂を降りきった先に、地下の懲罰倉へ降りる隠し扉があり、鉄扉を開けたところから階段が通じている。 手燭で真っ暗な足もとを照らしながら、一歩一歩慎重に階段を降りた。 いくつかならんだ懲罰用個室監房から、目当ての番号をみつけ、錠をさし込んで閂(かんぬき)をこじ開け、重い鉄扉を押してなかへはいる。 「勇敢なるパルチザンの戦士さん、光のない地下の住み心地はどんなだった?」 手燭の明かりをかざすと仄明るいなか、ぎらぎらと輝く2つの瞳が真っ向からリリアンを睨んできた。 「ナチの犬め。何しにきたっ!」 「まだ口答えする元気があるようね」 そういったと思うやいなや、拘束帯で自由を奪われ、丸くなるしかない身体のところかまわず鞭が飛んで、はげしく肉を打つ音が地下の天井に反響した。 「これだけ打たれて声ひとつ立てないとは……しぶとい奴っ。では、これならどうだっ!」 ヴェラの前にかがんだリリアンが、腕を下に向けて身体を低くした直後、ヴェラの口からケダモノの咆哮が発せられた。「うっ、うーっ」という烈しい呻きに合わせ、リリアンの腕の先がミノムシのように丸くなったヴェラの身体の中心に突き刺さろうとしているときだった。 「ぎゃあああーっ!」 烈しい絶叫が響きわたったとき、リリアンの身体が30センチほど低く沈んだ。そしてその身体がゆっくりと上下に揺れた。 「痛いか? どうだ、痛いか?」 「へ、変態っ! 恥を知れっ!」 闇のなかに、リリアンの癇性な笑い声が甲高く、けたたましく響きわたった。 |
| そしてヘルガの部屋――。 オルガの頬に酔いの赤味が差したのを見とどけ、ヘルガは上下ひとつながりの囚人着のベルトをゆるめ、肩から胸までをはだけさせた。ぴちぴちにはちきれそうな乳房が、つややかな輝きをもってあらわれた。 片方をつまんで軽くにぎると、弾力が指を押し返した。 「国に恋人は?」 「いえ……」といいつつ、はっきり否定するでもなく、あいまいな表情で眉間に憂いを刻んだ。 囚着をすべて取り去った。椅子にかけた全裸の足の片方が痛々しいほど細かった。マヒしたほうの脚は全体に細く、逆に健康なほうの脚はマヒした脚をおぎない、よけいな筋肉をつけた分ふつうよりかは太目に見えた。 「ベッドに上がるがよい」 「はい」 立って椅子からベッドに移ったオルガは、マヒした足を手でかばいながら両足をそろえて伸ばし、あおむけに寝そべった。 ヘルガが膝の下に手を入れて、両脚を持ち上げた。尻から股間にかけて、恥ずかしい部分がいっぱいにさらされた。 つるりと剃られた剥き玉子のような局部に、ピンクの襞が意外なほどあっさりとした淫裂となって伸び、それが切れたそばに固くすぼまった菊門があった。 「処女、ではないよな」 「え? あ、はい」 指を2本まで入れようとしたとき、「うーっ」といって身体をそらそうとした。 「動くなっ」 その瞬間、金縛りに遭ったようにぴたりと止まったオルガの膣を、ヘルガはぐりぐりとなぶりにかかった。 指は固さを感じたまま、なかなか入っていかなかった。とっさに処女ではないかと思ったくらいだ。 「口を開けろ」 オルガはいわれたとおり、あんぐりと口を開けた。その口の前へ、いま膣をなぶりにかかった指を持っていった。 「しゃぶれ」 「?」 一時きょとんとした顔のオルガは、しかたなく目の前に突き出された中指、人差し指を口にくわえ、ペロペロなめはじめた。 「もっと、よだれをつかってぬるぬるにしゃぶるのだ」 そういわれて初めて察したようだった。オルガは両手でヘルガの指を押しいただくように持つと、口のなかによだれをいっぱいためてからしゃぶった。 「よし」 ヘルガはずるずるになった二本指をオルガのピンクの淫裂に沿わせ、ふたたび挿入におよんだ。 やや抵抗を感じながらも、たっぷりと奥まで挿入し、ひねりを利かせて一回転したとき、「うっ」と呻いてオルガが眉間にしわを深く刻んだ。 処女ではないが、 「ほとんど男を知らないな」 「……………」 のぼせたような顔のオルガの髪を手ですかし、顎を取って自分のほうに向かせた。その顔にあるのは、まさしく処女の怯えだった。 マヒした足と健康な足とを見くらべ、心の奥底にねむっていた倒錯性が、暗い残酷な感情をかき立てた。ヘルガのなかで鬼火が燃えた。 「脚に力を込めよ」 「え?」 「カタワな足をかばうつもりで、利き足で踏んばってみるのだ」 そういっておいて、ヘルガは膣に入れた指に全神経を集中した。 淫らな実験とは気づかず、素直に応じたオルガは一度深呼吸して、それからぐっと力をこめて踏んばった。健康なほうの足の太腿やふくらはぎに筋が浮き立った。 「もっと強く!」 しきりとあおり立てる。こんどもオルガは素直に応じて、顔が真っ赤になるくらい力んだ。そして、そのときヘルガの指は感じた。潤った肉の洞窟で遊ぶ指を、きゅっと締めつける力をたしかに感じとった。 「良い良い。なかなか良い締めぐあいだぞ」 「はっ!」と声に出して、オルガが初めてヘルガの企みを知った。こんどは恥ずかしさで赤らめた顔を、両手で覆った。 「いやっ」 「なにを言うっ」 ヘルガは厳しくいさめた。 「思い上がるなっ。おまえの命が、いまここにあるはなんのお陰か。カタワがカタワの特性を活かしたればこそ、その身にお客がつき、慰安婦として生きていくことができる。生きていけるだけでなく、高い地位を得ることすら夢ではないのだ」 「サーカスの見世物みたいに?」 「見世物のなにが悪い。それとも〈ガス室〉送りになって死ぬのが本望とでもいうのか?」 「ガス室?」と、オルガはきょとんとした。 ロシア人のオルガは知るまいが、ガス室はユダヤ人だけでなく、ドイツに生きる身障者にとっても特別に忌まわしい呪われた意味があった。 「まあ良い。さあ、もう一度締めつけてみよ」 そう強いて、2度、3度、指の締めつけを愉しんでいるとき、烈しい銃撃音を耳にした。 オルガがびっくりして跳ね起きた。 ドアが叩かれ、ヘルガは立って行ってチェーンロックをはずし、錠を開けた。リリアンが血相変えて入ってきた。 「脱走ですっ」 「それで?」 「規則どおりすみやかに処理しました。脱走者は……」 「おまえが昼間、生け贄にした娘だろ?」 「はあ……」 バカのように口を開けておどろいた顔をした。 「行け。邪魔するな」 リリアンを下がらせ、ベッドにもどるヘルガを、オルガが怖いくらい暗い表情になって迎えた。 「わかっていたのですね、こうなることを……。だから、さっきあの人が入ってきたときも、あの子の名前を確かめなかった。だって、もう確かめる必要もないのだから……」 それだけ言うと、オルガは両手で顔を覆って、ひとしきり泣いた。そしてそのあと、涙の顔を非難いっぱいにして向きなおり、つぶやいた。 「恐ろしい方……」 その一言でヘルガは切れた。 「だまれっ!」と叫び、顔が腫れあがるほどの烈しい平手打ちをくれた。 「思い上がるなと言ったはずだぞ! いいかっ。貴様のような出来損ないのウサギふぜい、いつだって叩き殺せるんだ。今後わたしに生意気な口を利いたらただでは済まぬっ!」 「……………!」 オルガの目から涙があふれた。そのあと恐怖からか、憤怒からか、屈辱からか、まるで熱病にでもかかったようにブルブルと全身をふるわせた。 「脚を開け」 命令するヘルガの手に乗馬鞭が握られていた。 オルガは膝を曲げた足をおずおずと開いて、股間をさらした。 「また、おまえが自分を慰めるところが見たい。夕方のつづきだ。〈あのとき〉は処刑の興奮で邪魔されたが、こんどこそ最後までやって見せるのだ」 「!」 ぽかんとするオルガを、残酷なことばが打ちのめす。 「ふんっ。どうせ貴様のようなチンバカタワ、だれからも相手されぬのだろう。ひとりで慰めるときはどうするのか、見てやる。やれっ」 「……………」 オルガが憤るような哀しむような目で見返す。 「さっさとやれ。 ウソ演技などしようものなら鞭を飛ばすが、その際にはリリアンのようなわけにはいかぬ。どこに飛ぶかわからぬから心してかかれ」 オルガが観念した。 哀しい目をしたまま両手を伸ばし、すっかり剃られて丸坊主にされた部分に手を添え、慰めはじめた。左手で割れ目を開いて右手で敏感な中心を慰める。だが、さすがにやりにくそうだ。 その不器用な指づかいを、ヘルガがかがんで頬づえついてのぞき込む。 指がうごめくたび、シーツを踏んだ足の腿やふくらはぎに筋が浮き立つ。産毛を光らせる頬をぴくぴくさせ、生つばを呑んだりもする。が、それ以上その気になれないようだ。 「どれ、手伝ってやろう」 ヘルガが早くも業を煮やしてベッドに腰をあずけ、横につくとオルガの左手と右手を自分の左手と右手でつかみ、微妙な力かげんをくわえて間接愛撫をはじめた。 「どうだ、まだ感じないか?」 「あ、う……」 「さあ、ここか? それとも、ここなのか?」 ヘルガの手をとおした間接オナニーは、オルガに不思議な反応を呼び起こさせ、いつしかその顔は恍惚顔に変わりつつあった。 「ああ、う、くうっ……」 「さあ、滑りが良くなった。濡れてきたな」 「う、恥ずかしいです」 「良い良い。濡れるが良い。萌えるが良い」 そう言って、オルガの手を取って動くヘルガの手の動きはますます大胆に、刺激的にうごめきはじめた。 そのうちには、ぴちゃぴちゃと水音までさせるようになり、オルガは昼間のうぶ顔が信じられないような恍惚顔となっていった。 「ああ、うう……」 「のぼりつめるが良い。泣いても叫んでも良いぞ」 ヘルガはなお、間接愛撫に力を込める。烈しさを増す。 ぴちゃぴちゃという音はいっぱいに高まり、オルガの反応もよりきわだつ。 シーツを踏みしめる脚に浮かぶ筋がぴくぴくしている。悶え声をあげ、のけぞる身体はヘルガにもたれかかるまでになり、 「あーっ!」と、一声発してオルガは果てた。 ぬるぬるになった手をのけさせ、のぞき込んだ剥き玉子の中心は、半ば開きかげんのピンクの淫裂から、白濁の愛液をしたたらせていた。 ヘルガは満足げにほほえむと、制服のポケットからだしたハンケチで手を拭き、ベッドから立った。 「まだ、昼間の罰を与えていなかったな」 そう言って、ヘルガはオルガの上体をあおむけに倒すと、手首にロープを結んでベッドの支柱に縛りつけた。足首も同様にして、全裸の身体は大の字にさらされた。 そうしておいて、いよいよ道具を運んできて、ベッドわきの椅子のうえにセットした。 「これがどういうものか、おまえにわかるか?」 本体は四角い箱状のもので、そこにコードが何本も付けられ、端がクリップ状になったものやらなにやら、床に散らばっている。 「本来は拷問につかう器械だが……」 そう言いかけたとたん、オルガがさっと顔色を変えた。 「ふっ」と笑ってことばをつづけた。 「わたしはおまえのような子を可愛がるにも、よくこれを用いる」 「電気……」 「そう。電気を流す装置だ」 「恐ろしい!」 ヘルガが笑った。そのときのヘルガの笑いが、オルガには底知れず暗い笑いに見えた。 「おまえはこれで、2度『恐ろしい』を使ったな。わたしがそんなに恐ろしいか?」 自嘲を浮かべてコードを1本拾いあげた。そして、その先端をつまむと、クリップの先を開いてオルガの目の前に突き出した。 「これをどこに結ぼうか。ん?」 オルガが泣きそうな顔で必死に首を振った。そのときに、形のいい乳房も揺れた。みずみずしく見えて、どことなくまだ固さを感じさせる青い果実のような――。 その片方を握って、ぷくっと乳首を押し出すと、そこへクリップの一端を挟みつけた。 「痛いっ!」 顔をしかめて苦痛を訴えたが、歯牙にもかけずヘルガはもう片方の乳房の先にもコードの先を結んだ。 「わたしは好きではないんだが、ゲシュタポは拷問するとき、よくここを選んで電気を通す。乳首は男も女も共通の責めどころだが」 ヘルガが装置に手を延ばし、なにごとか設定をほじこした。それが変圧ダイヤルであることをオルガは知らない。 「まず、昼間の反抗の罰だ」 そう言ってスイッチを入れた。 「ぎゃあああーっ!」 絶叫が部屋中に反響した。 ヘルガは変圧ダイヤルに手を置いたまま、身悶え、泣き叫ぶ苦しがりようを凝視した。5秒、10秒……絶叫はつづいた。 「ぎゃあっ、ぎゃあああーっ!」 耳をつんざくとは、そのときのオルガの叫びようをいうのであろうが、ヘルガの仕置きは生半可なものではすまなかった。 スイッチが切られた。 悲鳴は止んで、はあはあ、ぜいぜい、烈しい喘ぎが発せられた。しっとりと汗ばむ胸の隆起がおおきく揺れていた。 また、唐突にスイッチが入れられ、びっくりしたような顔からふたたび絶叫が発せられた。 「ぎゃあああーっ、いやああーっ!」 泣き叫び、のけぞり、コードを結ばれた上半身をめちゃくちゃに暴れさせたが、そんなことで挟みつけられたクリップがはずれようもない。 「うぎゃっ、ぎゃああっ!」 身体をくねらせ、のたうち回る全身に、びっしょりと汗が光った。 スイッチが切られた。 がっくりと力を失ってベッドに沈むオルガの全身。汗で光る胸や腹をおおきく息づかせ、また烈しい喘ぎが繰り返された。ヘルガはそれらの変化をじっと見入っていた。 「どうだ? 仕置きはつらいだろ?」 「ゆるして、もう……」 その顔と声を震わせ、必死に許しを乞うた。 ヘルガは満足顔になって、片方の乳首からクリップをはずした。 「心臓に近い乳首を責めるということは、死に至らしめる率も高いということだ。ゲシュタポはバカよ。さっさと殺してしまってなんの楽しみがある」 ヘルガが、ふっふっと笑った。 いったんは仕置きの終了と解釈して、オルガが涙をこぼさんばかりにして、なんどもなんども頭を下げた。しかし、もう片方の乳首はそのままだ。 「さて、ほかにはどこが感じるか」 「!」 ヘルガが、またオルガの身体のあちこちを見まわした。 「まだ、わたしに逆らった罰が残っているのを、よもや忘れたのではあるまいな」 そういってオルガの上体から離れると、あらたに2本のコードを持ってきて、股間をのぞき込んだ。そして剥き玉子の割れ目をひねりあげ、まずぬるぬるに光っているピンクの淫裂の両方に挟みつけたあと、 「最後は、やっぱりここしかないな」 と、クリトリスをつまみ上げ、さっき乳首の一方から外したクリップをはさみ付けた。 「ひいっ!」 のけぞる泣き顔から悲痛な呻き声が発せられ、乳房の下にあばら骨がくっきり浮きでた。 ヘルガが立って部屋の調度のひとつである蓄音機に手をかけ、レコードを1枚セットした。針を落とすと、回転するレコードが静かなピアノ曲を奏でた。 「ショパンのセレナーデのなかの一曲だが、わたしのいちばん好きな曲でな。こういうときに聴くのも一興だが……」 うっとりした顔で曲に合わせてハミングした。 ひとしきり終えると、電流装置のスイッチを入れ、変圧ダイヤルをゆっくりと回した。オルガの目がだんだんおおきく見開かれる。そして―― 「ぎゃあああーっ!」 また、絶叫が部屋中に反響した。 「ふぅー、ふん、ふふふー……」と、微笑み、リズムを取ってハミングしながら、オルガへの電気責めに興じるヘルガ、その目はサディスティックにぎらぎら光っている。 「うっ、うーっ!」 身体を震わせて身悶えながらも、オルガの目はまっすぐヘルガを見すえていた。その視線をはね返して昂然と言い放った。 「わたしが憎いと思ったら、わたしに勝つことだ」 「勝つ?……」 「そうだ。しぶとく生き抜き、なにがあろうと、わたしより永く生きることだ」 ヘルガは変圧ダイヤルをおおきく回転させた。 「ぎゃあっ、ぎゃあああーっ!」 耳をつんざくオルガの絶叫――。 その絶望的な叫びに、ヘルガのハミングとレコードから流れるピアノの旋律が重なり合った。 |
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プロローグ 第1章 スラヴ・スレイブ 第2章 アンケ・リュッカー 第3章 ヴェラ・フェドビッチ (前篇) 同 (後篇・1) 同 (後篇・2) * 主な登場人物一覧 "美しき野獣" イルマ |