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| 頭にかぶせられたヘルメット。そこから伸びている接続コードを通じて、彼女の頭脳を引き裂き、掻き乱す洗脳パルス。 装置の横には白衣の男。 不気味な笑いを浮かべてデータを確認。 「まだ、レベル3か、思ったよりもしぶとい女だな」 また、パルスに強度が――。 「むむむっ……」 限界強度を超えようとしたその時―― どーん! 激しい轟音とともに、地下室の電気が消え、あたりは真っ暗になりました。 男は動転して周囲を見渡しますが、電気が消え、非常灯のみの明かりでよく分りません。 「なにがあったんだ!?」 怒鳴った直後に、どかどかどかと足音が聞こえました。 ズドン! ズドン! 地下室の扉を叩く音とショットガンの銃声――。 打ち破られた扉の向こうから、催涙弾らしきものが投げ込まれ、地下室は催涙ガスを含んだ濛々たる白煙に包まれて、なにがなんだか解らなくなりました。 そうして彼女は意識を失ったのでした。 数日後の深夜…… 彼女は警察病院のベッドの上で気がつきました。 「もう大丈夫、マッドキラーは逮捕されたのよ。あなたのような犠牲者を何人も出したけど、警察の活躍で見事解決。ブレインドームは閉鎖され、二度と悲劇が起きることはないわ」 看護婦がやさしく慰めました。 洗脳攻めから解放された彼女は、一見したところ元気を取り戻したかのようです。しかし、自分が何をされたか、悪魔の研究室でのことは全く覚えてないようでした。 「しょうがないわね」 舌打ちの後、一瞬看護婦の顔に険が射して、 「何か……?」 「いえ、なんでもないわよ」 看護婦は元の柔和な白衣の天使に戻って、 「さあ、今日は社会復帰への第二段階として、高度な治療を行ないますからね」 「ち、治療ってなんですか?」 「心配ないわ。ゆったりと、リラックスして受けられる治療よ」 そう言って彼女はストレッチャーに乗せられ、個室病棟奥の脳神経内科・外科センターというところに連れて行かれました。 「あ、これは……!?」 目を丸くして驚きました。 彼女が連れて行かれたのは、せっかく助け出された地獄の実験室とおなじ雰囲気の、作りも置かれている物もおんなじ部屋だったのです。 しかも、またあのヘルメットをかぶせられたのでした。 「なにをするんですか? ここはどこなんですか? あなたがたはいったい誰なんですか?」 ツカツカツカと足音がして、白衣の男性医師が入ってきました。 「江波君が教えたとおり、ここは警察病院なんだよ」 「では、なぜまたおなじ装置を……」 「毒をもって毒を制するの流儀にて、いちばん最適な治療法を見つけだすためなんだよ。そのためには少しガマンしなければね」 そういって看護婦と二人がかりで押さえ込み、嫌がる彼女を薄暗い一室に置かれた金属製ベットに横たえ、手足と胴体を固定して完全に動きを封じてしまったのでした。 すでに頭にはヘルメットが装着され、ヘルメットからは何本ものコードが延びており、そのコードは大型のコンピュータに接続されています。何から何まであの日とおんなじです。 「イヤや、イヤや、イヤだよーっ!」 警察病院の秘密の地下室で、治療という名の拷問が開始されました。 ビビビ、ジジジジ…… コンピューターのランプが点滅するたびに、彼女は体を激しく硬直させます。 ビビビッ、ジ、ジジジ…… 「う、うわあああっっ……!」 また、激しい悲鳴――。 「ほら、あの男がすぐそこにいて、君を苦しめているよ。あの時とおんなじだろう?」 医者は質問しながら装置を可動し、ヘルメットに接続されたコードを通じて彼女の頭脳はぎしぎしと痛めつけられました。 「ひええーっ!」 いつしか観察する医者が悪魔の形相になって責め立て、看護婦までがうっとりと微笑みかけます。 その場の情況は元のブレインドームの地獄を再現し、彼女の意識もそこに引き戻されているのでした。 古い記憶よサヨウナラ、新しい意識よコンニチハ。そしてその新しい記憶とは、男性に性的奉仕をする娼婦となるべく、理性も尊厳も棄てた性奴隷になりきることだったのです。 マッドキラーの誘惑のささやき。 「お前は明日から娼婦となるのだ」 それが2人も3人にも増えて、 「淫売となって世界中の男に奉仕するのだ」 「さあ」 「さあ」 「さあさあさあさあ」 「お次の番だよ」 ぐるぐるぐるぐる暗示をかける何人ものマッドが回転し出しました。 |
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| だが、実際には彼女の目の前には警察病院の医者と看護婦がいるのみです。 洗脳解析を受けさせる手術台の横でモニターを眺め、苦しい解析治療に反応する彼女とを交互に観察しているのでした。 何かの兆候を発見して二人は顔を見合わせました。 いつしか悲鳴は聞こえなくなり、彼女の口からうわごとのような言葉が洩れました。 「わ、わたしは借金で首が回らなくなったのではないの……なのにマッドの奴、わたしの美貌につけこみ、わたしまで自分が経営する売春宿で働かせるなんて。そんなの友達じゃない」 そうか、こいつとマッドは知り合いだったのか、その友達まで金儲けの道具に使おうとしていたのか、マッドの真実の一端が掴めて医者も看護婦もニンマリとして頷き合いました。 そのうち「はあ、はあはあ……」と呼吸が荒くなり、彼女の体全体が赤く火照り始め、乳首がピンとそそり立ちました。 医者も看護婦も目を丸くしました。 彼女は性的な興奮を味わっているようです。 医者も看護婦も、ついつい下の方にも目を向けました。看護婦はポッと顔を赤らめ、医者は興奮して股間のテントを立てました。 その時、 「イヤやイヤや! 見ず知らずの男とエッチするなんてイヤや。瑞季(みずき)のオマンコはマッドにハメてもらうため取っといたんや!」 半狂乱の余り、地金のお国言葉まで飛び出した彼女は、すっかり本心を現わしてしまった。 「こ、この子、まさか、2か月前から失踪していた警察庁長官の姪御さん!?」 「そういえば言葉から何から……しかし、上手く整形されたものですねえー」 しかし、それより何より彼女の口から出た淫乱卑猥な下賤言葉が問題でした。 「もー、たまらん!」 「わたしも我慢出来ません!」 何がたまらんのか何が我慢できぬのか、2人は股間を押さえながら手術室を飛び出しました。 ただ、廊下に出た医者と看護婦の会話が中まで聞こえていました。 「もう少し締め上げれば、もっと決定的な情報が得られるはずだ。そしたらマッドの逃げた先も突き止められ俺たちの手柄になる」 「では、そのための継続治療と荒療治の許可を上に進言するのですね」 「長官の姪御という話は、まだ伏せてな」 「では、その前に宿直室で……」 「あの子の股間の淫らな洪水を見たからには抜かずにおられなくなった」 「わたしもですよぉー、センセ!」 「とにかく厳重警護を言いつけておいて……」 その後は遠くすぎて聞こえません。 が、手術室のベッドに取り残されたまま、二人の会話を聞いていた彼女の瞳は欲情した牝猫のように潤み、宙を漂っていたのです。 約1時間から2時間後―― 上司の裁可を得てもどった医者と看護婦は、開け放たれた扉の奥の手術室の、ヘルメットを床に転がし、装置のコードをばらけさせた乱雑状態に愕然としました。 さっきまで彼女が寝ていたベッドの脇では、廊下で警護していたはずの警官が頸をへし折られ、下着ごとズボンを下げた無様な半裸体となり死んでいました。 「なんてこった!」 「だけど、先生。この人のこの顔……!?」 看護婦の言葉で医者がようやく観察者の目に戻ってよく確認しました。そして「あっ!!」と絶句しました。 死体となった警官は舌を出し、よだれを垂らし、まるで御馳走にありついたような満足の笑みすら浮かべていたのです。医者にも看護婦にも、やっと殺害時の情況が呑み込めました。 マッドキラーの彼女に対する洗脳プログラムは完成されていたのでした。 大都会の夜の街を徘徊しながら、欲望のおもむくまま第二、第三の犠牲者を求め、誘惑の魔の手を伸ばしている彼女――その姿を想像しながら医者も看護婦も、しばし茫然と凍り付いているしかありませんでした。 |
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