ホンタへもどる

(ロックの採点 ★★★★★が満点)




楽園をください


1999年アメリカ/カラー/スコープサイズ/138分
アン・リー監督 ジェームズ・シェイマス脚本
出演 トビー・マグワイア スキート・ウーリッチ
ジム・カヴィーゼル ジェフリー・ライト ジュエル

 アメリカ南北戦争を描いた映画は『風と共に去りぬ』があまりに有名だが,南部が主舞台とあって俺としては最初とっつきが悪かった。それは南部=黒人搾取,北部=奴隷解放という単純図式からで,白人将校に指揮されて壮絶な全滅を遂げた黒人部隊を描いた『グローリー』にしても,「白人は俺たちのために戦っている」という,黒人の過大に引け目なセリフにも違和感を覚えた。しかし,状況とその中で生きる人間の心のありようはことほど単純ではない。
 この映画の舞台となるカンザスやミズーリでは,南北戦争の様相はただの戦争とは異っていた。南部派,北部派が住民同志の間で対立し,両派のゲリラが文字どおり血で血を洗う殺し合いを繰り返していた。ここでの主人公,ジェイク(トビー・マグワイア)や,彼の無二の親友で,映画の開巻早々父親を北部派ゲリラに殺されたジャック(スキート・ウーリッチ)もばりばりの南部派で,ジョン(ジム・カヴィーゼル)の指揮下に加わり,北軍の軍服を着て敵に近づき,スキを見て一気に皆殺しにするという冷酷な手口で報復ゲリラをつづけていた。
 彼らはもちろん,奴隷制度には最初何の疑問も持たないから,ジョージ(サイモン・ベイカー)についている元奴隷の黒人・ホルト(ジェフリー・ライト)が対等に扱われ,拳銃まで持っていることが不思議だ。俺はそのことより,ホルトがなぜ黒人解放を唱える北部派を倒す側にいるのかが不思議だった。やがて,野営地近くの牧場の美しい戦争未亡人・スー(ジュエル)と出会うことで,ジェイクとジャックの間に微妙な三角関係が生まれ,部隊内の空気も揺れる。そして戦いのさなかジャックが敵弾を受け,満足な手当もできず死ぬ。
 やがて南部派は大部隊を率い,物語のクライマックスである「ローレンスの大虐殺」へとなだれ込む。しかし,そこからが物語の本命である。女以外は見境なく皆殺しにする戦いの冷酷さにジェイクは疑問を感じる。さらに味方以外の黒人は頭の皮を剥がれる。町の広場にうず高く積まれた同胞の死骸にホルトの心はうずく。やがて二人は打ち溶け合い,ジャックと共に無為な殺しをやめさせようとして,冷酷な殺人鬼・ピット(ジョナサン・リース・マイヤーズ)にうとまれ,戦闘のどさくさまぎれに,味方であるはずのピットから撃たれる。ジョージはホルトの腕の中で死ぬ。
 すべてに疲れ,傷の介抱にスーが身を寄せるエヴァンス牧場に落ち着いたとき,ジェイクとホルトに戦いの意志も目的も薄らいでいた。スーはジャックとのただ一度の交わりで子をもうけていた。周囲のジェイクに対する誤解はかえって二人の関係を深め,ジェイクはスーと結婚する羽目になる。また,ジョージとは友人関係と思っていたホルトも,結局は金で買われた身であるというくびきからは逃れられず,彼が死んだことで真の解放感に目覚める。今ではテキサスに売られて行った母親が気にかかるばかりだ。
 そして,幕切れは映画を見はじめたときとは打って変わって爽やかですがすがしい。そう,これは南北戦争という地獄の中で翻弄された青春の成長記なのだ。
★★★★


ラッシュアワー2


2001年アメリカ/カラー/シネマスコープサイズ/90分
ブレット・ラトナー監督
出演 ジャッキー・チェン クリス・タッカー
   チャン・ツィイー ジョン・ローン
ロセリン・サンチェス

 今回は,ぐっと趣向を変えて,あたし,中国人の美人殺し屋,フー・リ(チャン・ツィイー)が解説するよ。自分で美人と紹介するなんて,うっとりするなー。
 なにか言った? うっせーなーっ。黙って聞いてろよー。でないと,ブッ飛ばすぞーっ!
 この場合のブッ飛ばすってーのは,殴るとか蹴るとかいうんじゃない。格闘技も抜群だけどさあ,爆弾よ,爆弾。あたしって走る爆弾娘っていわれてんだわさー(これって北京語?)。日本でもその名で指名手配されてるカルト宗教の子がいるんだって? 応援したくなるわよね。
 今回のヤマは香港が舞台なんだよ。それものっけからあたしが登場し,アメリカ大使館を爆破しちゃう。気の毒にニセ札密造団の捜査をしていた関税官が2人死んじゃった。でも,しかたないよ。あたしらの仕事,邪魔したんだから。2人くらいっていうけど,無益な殺しはしないわけよ。オサマ・ビンなんとかいうのとは違うからね(もっとも,こいつが例の大事件の首謀者かどうかわかんないけどね)。
 そう,もうおわかりのように,あたしは香港マフィア「トライアッド」の一員で,リッキー・タン(ジョン・ローン)と組んで超精巧なニセ札「スーパービル」を大量密造し,ひと儲けたくらんでいるというわけよ。
 ところが大使館爆破事件をかぎつけ,のこのこ出しゃばってきたのがイカレ黒人のカーター刑事(クリス・タッカー)と,ニヤケ中年・リー警部(ジャッキー・チェン)コンビだ(リーといえば昔は若くて可愛いかったけど,いまじゃいいオッサンになったよね)。こいつら,そもそも休暇で香港にきていて,好きで首突っ込んできたのだから,とんだお邪魔ムシ。そんなに仕事したけりゃ,本国へ帰りゃいいんだよ。向こうじゃそれこそ,ネコの手も借りたいときだろうに……。
 あたしらの仲間には,もうひとりいい女がいるんだよ。いい女といっても,あたしには負けるけどね。イザベラ(ロセリン・サンチェス)というプエルトリコ系の美人で,あたしゃ男にゃ興味ないけどさ,この女となら寝てもいいと思うな。ただ,敵か味方かイマイチわかんないとこある。それに,ミスター・タンもなんとなく食えない。だから,あたしは自分で組織を動かしたいと密かに思ってる。
 まあ,こんなぐあいにさ,虚々実々,お互い腹の探り合いのなかに,カンフー混じりのアクションが展開するわけよ。CGなんかじゃないよ。体を張った肉弾戦なんだから。
 言っとくけど,何があったってあたしは不死身だからね。『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』じゃあるまいし,死んでたらこんな解説できるわけないじゃん。それどころか,パート3にも出て,あの2人を今回以上にキリキリ舞いさせてやろうと思ってるくらいなんだ。
 ところで今回の点数は……えーっ!? なによっ,星3つなのー? あんたも木っ端みじんにしてあげようか。え,違うって? 星3つは全部あたしフー・リにだって? うれしいこと言ってくれるじゃん。(「スミマセン,どうかひどい目にだけはあわせないで」と合掌しているホンマ)
★★★


RETURNER〈リターナー〉


2002年日本/カラー/ビスタサイズ/116分
山崎貴監督
出演 金城武 鈴木杏
岸谷五朗 樹木希林

 2002年10月19日夜,ところはヨコハマ港に浮かぶ貨物船甲板上。闇金奪還が仕事の“リターナー”宮本(金城武)は,仇敵・溝口(岸谷五朗)と再会,少年時代の親友を殺された怨みを晴らすべく,激しい銃火をまじえる。と,そのとき,暗い宙の一角にプラズマ光線が光り,その光の穴からボロボロの身なりの少女(鈴木杏)が降ってきて,敵のひとりと見誤って銃を撃ってしまった。
 溝口との決着は預け,宮本は意識を失った少女を下宿に連れ帰る。幸い銃弾は防弾プレートで阻まれており,目覚めた少女はミリと名乗った。そして西暦2084年の未来から戦略時間兵器を使ってこの時代にきた,未来ではダグラと呼ぶ宇宙生物が地球を攻撃,人類は滅亡寸前。自分はその最初の一匹の命を断つべく,この時代に飛んできた,自分といっしょに戦ってほしいと申しでるが,宮本は雲をつかむ話と一蹴,いったんは追い出してしまう。
 ここまでで何分だろう。ワイヤーワークによる舞うような銃撃アクションも目をみはるが,なによりおどろきはミリが語る未来社会での戦闘。彼女はタイムマシンでくる前は2084年のチベット・ラサの秘密基地で,大勢の大人たちとダグラの侵入を迎え撃っていたのだ。その戦闘場面が凄い! 金がかけられなかった1作目『ターミネーター』のSFXはとっくに超え,ヒットの余勢で金をかけた2作目『ターミネーター2』のSFX未来戦の場面をも超える迫力。「日本の特撮もついにここまで!」の感,大だった。
 だが,なんといっても注目は鈴木杏の可愛いさ。最初は岩崎ひろみが若づくりして出てきたかと勘違いしたが,経歴を見たらなんと15歳! 俺の「美少女マニア」度もいいかげんなものだ。こんなことは今にはじまったことではない。ずいぶん前にも,SPEED(スピード)と聞いて,キアヌ・リーブス主演のパニック・アクション映画の題名しか思い浮かばなかったくらいだから。
 そう思って意識して見はじめたら,あちこち気になりだす。「10月20日…」,「10月21日…」と,画面のすみに日付がタイプされるけど,1日,2日とたつうち,ボロボロの衣裳はともかく,衣裳以外の汚れが気になる。顔に泥はついたままだし,そのうち画面から汗臭さまで感じられるしで,「風呂くらい入れよナ」と(杏ちゃんの入浴場面や裸が見たい欲望もプラスして),文句のひとつも言いたくなった。
 話はつくばの国立宇宙研へと飛ぶ。ダグラの一匹目を追ってミリ,宮本,溝口が地球の未来を賭けたバトルを繰り広げるのだが,そこからは『E・T』ばり。傷ついたダグラの赤ちゃんを宇宙に返そうという話になり,せっかくの特撮技術がありながら尻すぼみ状態。これは構成のまずさだ。体感時間を20倍に引きのばすソニックムーバー(発射された銃弾がスローモーションに見える)アクションが売り物といっても,しょせん『マトリックス』のパクリ。溝口のキャラクターもコワれ過ぎ,漫画チックにしか見えず怖くないという欠点もあり,ちょっと残念だ。
 とはいえ樹木希林ら脇役もそろい,笑わせる場面もふんだん。近頃の日本映画では,飽きさせない出来。
★★★


リベラ・メ


2000年韓国/カラー/ビスタサイズ/119分
ヤン・ユノ監督
出演 チェ・ミンス チャ・スンウォン
ユ・ジテ キム・キュリ

 「ハリウッド映画を観ない」(可能な限りというか,なるべくというか,本当は観たい)誓いを立ててから,その手の映画,つまりアクション映画中毒だ。バンバン撃ち合う,ガシャガシャぶっ壊し合う映画が観たい。予告編に釣られて,誓いを破りそうだ。どこかやってくれないかと思っていたら,またまた韓国映画がやってくれた。
 消防士が主役である。それにサイコサスペンスがからんだ放火テロというから全編アツい! 熱い,圧い,暑い映画は嫌いだ。だから,『タワーリング・インフェルノ』も録画したきり観ていない。やっと観るつもりになった『バックドラフト』は,放送のWOWOWが自粛で他の映画と差し替え,観られなかった。同時多発テロがらみだと思ったら,新宿歌舞伎町の雑居ビル火災の影響だという。ちょっと前にも『119』という邦画があったが,これは火消しの場面はゼロ。映画パンフレットの解説でも,この3つしか出てこないから,消防士を題材にした映画はほんと少ないようだ。
 火災発生。クムジョン第85消防署に出動命令がくだる。このところ釜山全域に原因不明の火災が続発していた。隊員のサンウ(チェ・ミンス)は,その日も高層住宅の火災に向かい,後輩をともなって危険区域に突入し,果敢な消火活動を果たすが,闇から自分を見ている何者かの目を感じていた。そして,次の火災現場はガソリンスタンド。ボヤということで隊員の気はゆるむが,サンウは現場に向かう途中「邪魔するな」と,相手が何者とも知れぬ謎の警告電話を受けていた。果たしてボヤ火災は見えざる敵の恐るべきワナだった。火事現場を見守る黒山の野次馬のなかに不審な人物を確認した。若いその男(チャ・スンウォン)は,オーケストラの指揮者がタクトを振るう動きを見せた。と,その瞬間,地下のガソリンタンクが大爆発bb逃げる間もなく何人かの隊員とスタンド職員が犠牲になる。いったい誰が,なんの目的で……。バスに飛び乗って逃げた男の不敵な笑いが,いつまでもサンウの心に引っかかる。
 『犯則王』という映画で花札が出てきて,韓国にも日本に似た文化があるものとまたまた親しみを感じたが,そういえば本作で出てくる消防車もゼッケンは「119」。ちなみに同じ119は中国と台湾。アメリカは911,イギリスは999,オーストラリアは000,ニュージーランドは111だという(映画パンフレットの資料による)。とにかく,消防士の服装からなにから,セリフがなければ日本とは変わらない。
 映画は,このあとぐいぐいサスペンスとアクションで盛り上げる。正直冒頭の住宅火災ではアクションのキレが悪く,メリハリにも欠け,もたつきを感じた。しかしガソリンスタンド火災以降は,爆発,炎上,火災シーンの迫力も頭に「ド」がつくほど。とにかく,観ていて熱い,痛い。また,幼少時のトラウマから犯罪に走る犯人像にも同情をおぼえる。その点,ハリウッド映画にくらべて,スカーッとしない。それが良くもあり,気に入らない人もいよう。観終わって,余韻が重いのだ。
 焼けただれた死体の場面が続いたり,裸にされ虐待される子どもの場面も酷い。観るには勇気がいる映画。
★★★


ル・ブレ


2002年フランス/カラー/シネマスコープサイズ/108分
アラン・ベルベリアン,フレデリック・フォレスティア監督
出演 ジェラール・ランヴァン ブノワ・ポールブールド
ジョセ・ガルシア ロッシ・デ・パルマ
ジャイモン・ハンスゥ

 フランス映画も,ちかごろグンと活きが良く,はじけている。単純なだけのハリウッド映画なんぞはメじゃない。物語の荒唐無稽さ,出てくる人間のいいかげんさでは,たしかにB級の部類に入るだろうが,ここまでB級に徹すればほめるしかない。こんなおもしろい映画が,ひと月たらずで終わるなんてもったいない。日本の映画観客は,どこを見ているのかと嘆かわしくもなる。
 のっけからギャング同士の出入りがある。ポーカー賭博の最中,警察と通じた裏切り者が発覚,その場で射殺される。と,そこへ警察が踏み込み全員逮捕,裏切り者を粛清したモルテス(ジェラール・ランヴァン)も,弟を殺された恨み骨髄のトルコ(ジョセ・ガルシア)も刑務所送り。ところがトルコだけ先に出所し,弟の復讐を果たすためモルテスを待つ身に。一方モルテスは,看守のレジオ(ブノワ・ポールブールド)に頼んで買った宝くじが,なんと1500万ユーロ(約17億円)の大金を当てて有頂天。ところがレジオが,ささいなことから夫婦喧嘩を演じ,ワイフのポーリーヌ(ロッシ・デ・パルマ)は,宝くじを預かったことなど忘れ,怒って家出。看護婦として救護所につく仕事で,アフリカの砂漠ラリーへと旅立つ。妻を追うレジオ,まんまと猫ババされたとキレて脱獄を果たすモルテス,弟の仇とそれを追うトルコ。さらに警察も。ダカール・ラリーをはさみ,追いつ追われつの爆笑追跡劇がはじまる。
 「フランスを恐怖に陥れた犯罪王」といわれている割にはC調,どこかとぼけた味もある主人公モルテスはじめ,出てくる人間が,そろいもそろってコワれた個性。モルテスと組むレジオは大分ネジがゆるみ,おしゃべりで,お調子者で,ドジ,かんじんなときに取り返しのつかぬ失敗をやらかすバカ。仇役トルコは,なぜか名前をクルドと呼びまちがえられ,そのたびに誰彼かまわず銃をぶっ放す分裂狂。このクルドの子分が金歯のメガだが,あの『007/私を愛したスパイ』にでてくるジョーズそっくり,デカイ図体と腕力だけが頼りの単細胞。そして極めつけ超オカシイ人間はレジオのカミさんポーリーヌ,超個性的な顔の没個性女性と思いきや,最後のほうでは八面六臂のイカレギャグとぶっ飛びアクション。そのほかには,クールでダンディ,でもどこか抜けてる黒人警官ユッスール,ピラニアに手を噛まされても吐かない,モルテスの相棒コワルスキーなどなど,おかしな人間のオンパレードなのだ。
 冒頭近くのカー・チェイスで,支柱を失った大観覧車が転がり回る大パニックに抱腹驚嘆,とんでもないアクションの始まりと思った。引き続きアクション連打はあるものの超大仕掛けはそこだけ。どうせなら,同程度の仕掛けをうしろにも用意しろと欲張るが,本作の主眼は人間喜劇にあるのではないか。とにかくC調なズレ,手前勝手な暴走,それらアンバランスが乾いた笑いをかもす連続活劇。まさにハードボイルド・ジェットコースター・ブラックコメディー・ノンストップパニックムービーといえる快作(怪作か?)だ。さらに「富は万人に平等に」という幕切れ──おっと,そんな生真面目ぶったものでもないか。
★★★★


ルムンバの叫び


2000年フランス=ベルギー=ドイツ=ハイチ合作
カラー/ビスタサイズ/115分
ラウル・ペック監督
出演 エリック・エブアニー アレックス・デスカス
テオフィル・ムッサ・ソウィエ マカ・コット

 なんだか,映画紹介のまえに映画館紹介するのが通例みたいになったが,今回初めて行ったのはBOX東中野という映画館。地味な作品ばかり上映する映画館だが,大江戸線を降りてすぐのところにあった。
 アメリカの対テロ=アフガン報復爆撃に抗議の意味もこめ,とうぶん純正ハリウッド映画はできるだけ見ないことにした。そうなると,娯楽路線一辺倒というわけにはいかず,これまで遠ざかってきた日本映画や,地味な作品にも眼を向けることになり,おっつけ観る映画のジャンルも拡大してくる。まったくいいことだ。
 そこで本作だが,あのジョン・F・ケネディの時代,アフリカのコンゴで,これほどおぞましい出来事があったということに,まず驚かされる。冒頭,2人の白人が3人の黒人の死体を積んだトラックを運転して登場する。彼らは夜の闇にまぎれ,人知れず死体を運び込み,斧やスコップをふるって解体の所業にでる。すでに腐臭をはなっているのだろう,吐き気にむせながら……。わずか3カ月の独立国家を支えた男の,あまりにも酷い最期だった。
 なにかにつけて資料として引用する毎日新聞社刊「昭和史全記録」を開くと,1960年の「コンゴ独立」の項の記述はわずか以下の通り。これを見ても世界の関心の低さがわかる。
〈6・30 コンゴ共和国,ベルギーから独立。カサヴブ大統領,ルムンバ首相。→7・11 カタンガ州首相チョンベ,分離独立宣言。コンゴ紛争はじまる。→7・15 国連軍コンゴ到着。→9・14 軍司令官モブツ,反ルムンバ・クーデター。→12・2  ルムンバ首相逮捕〉
 コンゴの植民地化は1885年,時のベルギー国王,レオポルド2世の私領地としてのコンゴ自由国成立に端を発した。そこでは苛酷で非人道的な収奪が強行され,国際世論の非難に抗しきれないベルギー政府は1908年,議会に植民大臣を置き,ベルギー領コンゴとして支配する植民地に変更。しかしその後も奴隷的統治はつづき,国民のあいだにはうっ積と不満が火山のマグマのように沈殿していく。
 一介の郵便局員であったパトリス・ルムンバ(エリック・エブアニー)は,若くして祖国独立の理想に燃え,隷属的な現体制の打破めざし,日々その機会をうかがっていた。一度は政治資金横領の罪で投獄されるが,彼の商才を見込んだベルギー人ビジネスマンの計らいで出所,以後は恩人の彼を助け,巧みな話術と商才で驚異的なビールの売り上を達成,それによって「ルムンバ人気」まで高めた。
 彼は同志をひきいて選挙に勝利し,独立を実効あるものにするための組閣を図る。だが,ベルギー政府はそれを許さない。独立式典の会場でのルムンバの演説は,これまで虐げられてきた同胞の自立心を喚起するには十分すぎるほど激烈な内容だった。かいらい政権による骨抜き独立をもくろんだベルギーの怒りは大きい。内戦勃発の悲劇を避けるため,妥協策としての政敵カサヴブとの連立だったが,宗主国ベルギーは黒人国家を許さぬ他の列強の画策とも結んで,軍部を取り込みルムンバ打倒をめざす……。
 それにしても,大国のエゴのなんと残酷なことか。世界政治の醜い暗部を見る結末でどうにもやりきれぬ。
★★★


レイン


2000年タイ/カラー/ビスタサイズ/106分
オキサイド・パン,ダニー・パン監督・脚本
出演 パワリット・モングコンビシット ビセーク・インタラカンチット
プリムシニー・ラタナソバァー パタラワリン・ティムクン

 タイ,バンコクbb。その街を根城に,つぎつぎと標的に狙いをさだめ,確実にしとめていく凄腕の殺し屋がいた。その名はコン(パワリット・モングコンビシット)。殺しの手口はマシーンそのもので,必殺の一撃で相手を倒しつつ,情け容赦もなく2発目,3発目ととどめをさし,血の海に沈めていく。冒頭,コンの仕事の手際良さが,粒子の荒いモノクロ画面に,かなり引いた構図で,まるで隠しカメラが撮ったような映像で描かれる。そして,タイルの床に広がる血の海に,スタッフ名,キャスト名などが浮かんで流れるオープニングタイトルロールの斬新さ! タイ映画だからダサいだろうなんて偏見はないつもりだったが,しかし,このスタイルの良さには唸った。
 コンは,生まれつき耳が聞こえず,近所の子どもらからひどいイジメにも遭ってきた。差別は日常茶飯事だったろう。孤独な心を都会の闇に閉じ込め,コンはアルバイト先の射撃場で,殺し屋ジョー(ビセーク・インタラカンチット)と知り合う。殺し屋独特の嗅覚からなにかを察したジョーは,自分の拳銃を渡して的を撃てと命じる。弾はすべてど真ん中を射ていた。的にかつてのいじめっ子の顔をダブらせ,隠れて射撃練習した成果だった。こうして,コンはジョーの良き相棒となる。仕事の連絡はジョーの愛人オーム(パタラワリン・ティムクン)がつとめた。ところが,ジョーが襲撃に失敗して利き腕を撃たれ,殺し屋生命を断たれる。そうなるとコンは恩人ジョーを養うため,ますます殺し屋稼業に精を出す。あるときコンは,風邪薬を買いに薬屋に立ち寄り,そこで働く少女フォン(プリムシニー・ラタナソパアー)のやさしさに触れた。殺伐だったコンの生活に朝日が射す。それが悲劇のはじまりだった。
 トロント国際映画祭で絶賛され,国際批評家連盟賞を受賞した本作を監督したのは双子の兄弟。その異色コンビが,原作・脚本・監督・編集を分担して作り上げた本作は,全編シャープでキレの良い演出bb。随所につづく殺しの場面は,実際の殺しを見ているようなリアル感がある。ただ,ヒット(暗殺)場面のテンポの良すぎぶりに,こんなにかんたんに殺していいのかねとも思った。主人公が外界との接触を断たれた聴覚障害者では社会性にもうとく,憎しみを抱いて育った出生が出生ならしかたないかとも思った。とにかく,『レイン』では命の価値が軽すぎる。
 そう思ってパンフレットを開いたら,これが障害者だから,そうでないからの問題ではなく,全体誇張でも荒唐無稽でもないようだ。99年現在,タイの殺し屋防止センター(そんなセンターがあるというのも凄い!)が調べてリストにした数は866人,他の関係機関の調査とも併せると国内の殺し屋総数はざっと1500人。犯罪の複雑性から,ほとんど捕まっておらず,犯人には罪の意識も薄いとのこと。依頼人の話を鵜呑みに,標的はすべて「悪人」と信じきっているようだ。それにしても捕まれば極刑というのに,1件あたりの殺しの報酬がわずかUS2000ドル。ビジネスや政治がらみの殺人が,年間およそ300件は発生しているという。
 ともあれ,タイのアクションも負けてはいない。
★★★


六月の蛇


2002年日本/特色白黒/スタンダードサイズ/77分
塚本晋也製作・監督・脚本・撮影・美術・編集・出演
出演 黒沢あすか 神足裕司
寺島進 不破万作 田口トモロオ

 『六月の蛇』が面白そうだ。エッチな雰囲気もいい。だが,塚本晋也はホラーの監督ではないか。俺はホラーが好きでない。とりあえず観てみるか。そんな気で出かけた。
 ビスタ画面の予告篇が終わり,本篇に入るやスタンダード画面に。そこへ青味がかった白黒映像。いまどき珍しい。と,交わされるセリフや,擬音が,予告篇よりは音量がかなり大きい(あとで訊いたら,音量アップは監督の意向とのこと)。なお少したつと,こんどは重低音効果で言い知れぬ不安感にかきたてられた。映画にとって,こういうあざとさは邪道ではないかと,まずは疑ってかかった。
 心の健康センターに勤める電話相談員りん子(黒沢あすか)。今日も礼に訪れた母子に気を良くし,いままた死の病にある青年(塚本晋也)に励ましのことばをかけている。そんなある日,「DANNA NI HIMITU」の伝言と携帯電話といっしょに,盗撮写真が届く。膨大な数の連続写真。そこに写っているのは電動バイブに悶える経過をとらえた,生の自分の赤裸々な記録だった。送り主はいつかの相談の相手で,「ネガを返す条件に,ノーパンの上から超ミニをはいて街なかを歩け」ととんでもないことを要求する。
 松嶋菜々子がすっぽんぽんになったとて,フィギアの脚出しルック以上の色気も感じられないだろう。だが,素人風美人の黒沢あすかならゴックンものまちがいなし。ネットのアマチュア素人ヌードが萌えモノなのとおなじだ。
 もともと美人にはちがいないが,野暮ったい服装とメガネ顔で最初は鼻持ちならなかった(キャラクター設定のうまさだ)。死を前にした青年にとって,一見健康で非のうちどころなく見えるりん子など,それでなくともストーカーくらいしたくなる。ダンナ(神足裕司)というのが異常な潔癖症で,そのため性交渉もとんとないらしく,だから大人のオモチャのお世話になって昇天したところ,青年にフォーカスされ,弱みを握られてしまったことになる。
 その後が凄い。セックスやSMがあるわけでないのに,メガネを外し、生身の裸をさらしていくりん子の変貌ぶりとともに感じるエッチ度の興奮! これはなんの効果か!?
 バイブを買え,それを体に装着しろ,リモコンで作動させた状態で八百屋でナスとキュウリとバナナを買え──そんな要求の連続に慄き,身を震わせながら従うりん子。その変態行為を通し,「常識」と「世間体」という薄紙を一枚一枚はがしながら,女の本性をさらけ出していく過程。それがびしょびしょと降り続く雨をバックに連綿とつづられていく。視姦,盗撮,屈辱,隷従……まさにSMの極致の一変形といった映画的進行のなか,後半以降のホラー仕立てもまったく気にならない。雨とストロボの光のシャワーのなか演じられる絶叫オナニーシーンは,本作白眉中の白眉。
 清々しい春と蒸し蒸しする夏にはさまれ,じめじめ憂うつな季節。こういう時季には身内のエロスが妖しくざわめく。倒錯を夢想する心が,より過激な変態を妄想したりする。そんな心のありように『六月の蛇』は妙にはまる映画だ。そして,夜な夜な枕元に出没する黒沢あすかの脚線の残像。これがこの先なかなか消えそうにもない。
★★★★


ロード・オブ・ザ・リング


2001年アメリカ/カラー/スコープサイズ/178分
ピーター・ジャクソン監督・脚本
出演 イライジャ・ウッド イアン・マッケラン
リブ・タイラー ビゴ・モーテンセン ショーン・アスティン

 ずいぶん前,まだレーザーディスクが1枚平均1万円近くもするころ,同じ原作のアニメ化である『指輪物語』(1978年アメリカ,ラルフ・バクシ監督)がLDソフト化された。「本物の役者を使って事前にライブ・アクション・フィルムを1本撮り,これを1コマ1コマ,丹念忠実にアニメに書き直していく“ロートスコーピング方式”」という,当時としては画期的手法を取り入れたアニメだった。
 遥か大昔,「中の国」と呼ばれていた地球。そこでは万能無敵の指輪をめぐり,勇気と機知に富んだホビット族の若者,老魔法使い,小人族ドワーフ,人間,妖精エルフなど,平和を望むそれら“白の勢力”に対し,指輪を手に入れ,世界を支配下に置こうとする“闇の勢力”の魔手が迫っていた……アニメ『指輪物語』は,トールキンが20年の歳月をかけて書き上げた長大な三部作。アニメでは第2部「二つの塔」の中盤まで描かれ,「画期的手法」を駆使した大作だったが,製作を急ぎすぎたせいか随所で手抜きが見られ,これ以後続編がでたという話もついぞ聞かれない。
 実写版の本作では原作とおなじ三部作として,今後随時封切られるとのこと。24年前にはアニメでしかかなわなかった描写を,アニメをも遥かに凌駕する映像で描いているのだから,映画技術の進歩とは,驚くべき進化だ。
 ホビット村のビルボは,自分の111歳の誕生を祝う催しの席上,突如村人たちの前から姿を消す。彼の手元には数奇な運命を経てきた魔法の指輪が握られていた。それを持って旅に出るはずだったが,魔法使いのガンダルフが現れ,指輪は養子のフロドに残して行けと諭す。そしてフロドの前で指輪を燃え盛る暖炉の火に投げ込んだ。と,不滅の指輪には,今までになかった呪文の文字が。それこそ,冥王サウロンが創ったといわれる,この世を闇に変える能力を有する指輪だったのだ。この世を悪の手先から守るためには,指輪を滅びの山の火口に投げ込むしかない。指輪を求め,迫るサウロンの手先。フロドは旅に出る。ホビット族の若者3人,白の賢者サルマンの加勢を得るべく一行を離れたガンダルフに代わり,剣の達人アラゴルンを加え旅は続くが,闇の手先に追いつかれ戦闘になる。激しい戦いで手傷を負ったフロド。苦難にめげそうになる彼の前に現れたのは,エルフ族の女王ガラドリエルだった。
 友情と自己犠牲をテーマに,サバイバルと勇気を描いた映画という。だが,しょせんゲーム感覚の映画。登場人物たちに感情移入できる魅力が感じられないから,スペクタクルの迫力やクリーチャーの造形の豊かさには驚かされても,それ以上の感動が湧かない。全編で2時間58分。その間を通し,最後の方では白の勢力一人一人の結束に,それなりの説得力は感じられた。でも,それって侵略戦争しながらも,ゲリラと戦う過程で戦友がつぎつぎ殺されていくから,戦いの意義を考える前に敵への憎しみで結束が強まるのと似てない? もちろん映画とは関係ない話だが……。
 ちなみに先述の『指輪物語』,後がないのに本作の前評判にあやかり映画に先立つこと2月,さっそくDVD化されたという。いやはや商魂たくましいことよ。
★★★


ロード・トゥ・パーディション


2002年アメリカ/カラー/シネマスコープサイズ/119分
サム・メンデス監督  ディヴィッド・セルフ脚本
出演 トム・ハンクス ポール・ニューマン
ダニエル・クレイグ タイラー・ホークリン
ジュード・ロウ

 画面いっぱい広がる冬ざれの湖面。それを見つめつつ,背中を見せてたたずむ12歳のマイケル・ジュニア(タイラー・ホークリン)は,父(トム・ハンクス)とともに旅した6週間を振り返る。1931年のことだった──。
 雪に染まるイリノイ州ロックアイランド。マイケル少年は弟や母と幸せに暮らすが,尊敬する父の仕事が気になっていた。日ごろ面倒見のいいルーニーさん(ポール・ニューマン)の下で働いていることだけはたしかだが,ある夜,仕事に向かう父とコナーおじさん(ダニエル・クレイグ)の車のトランクに隠れ,2人が組のいざこざから仲間を射殺する現場を見てしまう。仰天して逃げ出すマイケル。惨劇はコナーの短慮が招いた暴挙だったが,雨のなかでうずくまる息子を見てマイケル・サリヴァンは絶句,コナーに対しては息子の口止めを固く約束するしかなかった。
 ルーニーはアイルランド系マフィアのボス,コナーはその息子。極貧だったマイケルはルーニーの恩義を受け,組では汚れ仕事を一手に引き受け,厚い信頼を得ていた。一方,コナーはバカ息子。これ以上父から冷遇されるのはたまらんと,チビマイケルの口封じにサリヴァン家に侵入,妻と下の子を誤って殺す。怒りに燃えるサリヴァン。息子を渡せとルーニーに迫るがバカ息子でも血は争えない。大金を積んで説得するが,マイケルに一蹴される。
 いわゆるマフィアものだが,子どもの視点で描くことに力点を置き,リアルな犯罪映画にしあがった。この手の名作には『ゴッドファーザー』が思いつくが,父と子の情愛映画としては,それ以上に胸迫る。母や弟の死を自分の好奇心が招いた結果と悔い,罪の意識に傷つく息子を,「お前のせいじゃない」と抱きしめるマイケルの父親像が泣かせる。
 常々,映画であれ小説であれ,そこに生活感を活写することこそ大事と考えていた。内田吐夢監督『宮本武蔵』5部作も,武者修行時代の4作までは剣に悩むことはあっても,生活それ自体にリアル感が乏しかったが,法典ヶ原で孤児・伊織と知り合う「厳流島の決斗」ではちがった。荒田を耕し村人とまじわる部分を描くことによって,武蔵像にリアルな存在感がくわわった。また黒土三男脚本のTVドラマ『とんぼ』では,若いヤクザがまっとうな暮らしを夢見,組を抜けるために起こる抗争劇を描くが,青春ホームドラマ的要素を濃く盛り込むことで,非情な世界のリアル感が際立ち怖いくらいの迫力だった。どんなに派手に見せても,人間味や生活感が乏しければ凡作に堕すことが多い。その点本作で描き込まれた人間味と生活感は極上の本物。
 パーディションとは,冒頭の湖を見はらす小さな町名。その叔母宅を息子の安住の地にと向かう旅が題名の由来だが,ルーニー一家と訣別したマイケルが訪ねるシカゴへは,カポネ逮捕後の一家を牛耳るフランク・ニティに頼るため。だがルーニーはニティまで抱き込み,凄腕の殺し屋マクガイア(ジュード・ロウ)まで差し向ける。孤立無援のフランクはある秘策に出る。やがてルーニー一家を追いつめるクライマックスは再び雨の中。闇の中から彼らをしとめる銃撃場面は神々しいばかりの美しさだ。
★★★★★


ロンドン・ドッグス


2000年イギリス/カラー/ビスタサイズ/100分
ドミニク・アンシアーノ監督・脚本
出演 ジョニー・リー・ミラー ジュード・ロウ
レイ・ウィンストン

 鑑賞中の飲食を禁じる映画館があれば,逆にお菓子をプレゼントする映画館がある。くばられたのはカロリー食品なのだが,食わずぎらいでそのままにしておいたものを,次の入場でまたもらった。「前のが残ってるのに」と戸惑うと,「こんなおいしいものはありません,どうぞお試しを」と受付嬢が笑顔で推奨。もどってから食べてみた。シナモン味のビスケットだが,俺の口にはとても合わない。クスリくさい感じがしてしかたないのだ。しかし,身近の人間の2人までが絶賛している。人の好みはわからぬ。
 映画もおなじで俺には本作,どうもいただけなかった。
 郵便配達夫のジョニー(ジョニー・リー・ミラー)は仕事に行きづまり,現状からの脱却を夢みていた。いまの彼のあこがれは,ギャングの顔役,レイ(レイ・ウィンストン)であり,自分もそんな人間になりたいと願う。そこでレイのもとではたらく親友,ジュード(ジュード・ロウ)に頼み込み,なんとか一員にくわえてもらう。
 ギャングといえば派手な抗争。そんな中で命を張り合い,やがてボスへとのしあがっていくbbそう思っていたジョニーの図式はみごとにはずれる。レイときた日にはカラオケ狂いで,本職顔負けに立派なスーツを着込み,おおぜいの部下を前にいい調子でマイク片手に歌っている。ボスがこの調子だから,部下も負けずおとらずシー調だ。このへんのずれたおかしさが本作の見どころか。
 しかし,ドンパチやりたいジョニーにとっては収まりがつかず,なにかにつけて過激な行為に出ようとする。こうして穏健いちずにファミリーを仕切るレイを尻目に,ジョニーの軽挙妄動はギャング同士の火種をかきたてる。強奪あり,暗殺あり,リンチありと,なんでもござれの暴力沙汰が,とぼけた笑いをまじえてどんどん展開されていく。
 多数の登場人物のドラマが錯綜するスタイルはタランティーノ流,アルトマン流ともいえるが,空回りの感。
 ところで余談になるが,新宿で映画を観る日は,なぜか大事件と重なる。前回レイトショーを観た夜は,帰るとすぐテレビに歌舞伎町ビルで出火の字幕。なんだ,2時間前まで映画を観ていたすぐ近くじゃないかと。しかし,それが44人も死ぬ大火災とわかるのは,翌日のテレビをつけたときだった。帰りの大江戸線駅へと向かう途中,風俗嬢やヤーさん風,なぜか,すれ違った人の姿が妙に印象に残っていた。いずれにせよ人の運命はわからぬものだ。そして今回,この映画の帰りでは,一つ手前の駅で降りてスーパーで買いものした。酒のつまみに少し奮発したのは,この日が実父の命日だったため。親父を偲びつつ,衛星放送で録画した『銭形平次』(大川橋蔵主演)を1回分たっぷり見て,ニュースでもとチャンネルを切り替えたところ,黒煙を上げるペンタゴンが映り,次いで世界貿易センター,ツインタワービルへと激突する旅客機を巻き込んだ自爆テロ映像。びっくりしたのなんのって……。
 事件によりハリウッドが『ダイ・ハード』的映画製作の自粛というが,自粛といわず禁止くらいがちょうどいい。殺伐として人間性を無視した活劇などもういらない。
★★