●アマルガム合金とは

アマルガム合金は、190年前より世界で歯科治療の際に使用されてきた合金です。銀、スズなどの金属に、水銀を加えてできています。

日本の歯科医院では使用されることはなくなりましたが、1970年代まではどこの歯科医院でも日常的に銀歯として治療に使用されていました。

歯科用アマルガム

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●アマルガム合金の歴史

アマルガム合金は、1826年にフランスの歯科医師が、銀貨(銀:90%、銅:10%)をやすりで削った粉に水銀を混ぜて初めて使用しました。初期のアマルガム合金は非常に性能の悪いものでした。

1929年にアメリカでアマルガム合金の規格が定められ、その後アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、日本の研究者によって急速に性能が進歩しました。

日本では1958年にアマルガム合金の規格(JIS規格)が定められ、1970年代までは歯科治療で盛んに使用されました。1970年にはつめ物の8割にアマルガム合金が使用されました。

1980年代になると、アマルガム合金に代わるものとして水銀を全く使用しない「ガリウム練成合金(ガリウムアロイ)」が開発されたほか、プラスチック(コンポジットレジン)や他の金属による治療が普及したため急速に使用されなくなりました。

日本ではアマルガム合金は2016年に健康保険から外され、2020年に製造禁止、世界では2034年までにアマルガム合金の製造、輸出入を禁止することが、2025年の国際条約(水銀に関する水俣条約)で決められました。

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アマルガム合金の組成

日本では、アマルガム合金はJIS規格(日本工業規格)により、水銀の含有量は3%以下に抑えられています。水銀のほか、銀、スズ、銅、亜鉛が含まれます。


アマルガムの組成(JIS規格、1958年制定、その後改正)
銀(65%以上)/スズ(25%以上)/銅(6%以下)/亜鉛(2%以下)/水銀(3%以下)

※よく誤解されること
アマルガム合金の水銀含有量は3%以下と定められています。成分の50%が水銀ではありません。アマルガム合金に使用される水銀は、水俣病の原因となった有機水銀(メチル水銀)とは異なったものです。




アマルガム合金の安全性

インターネットには、アマルガム合金の危険性について記載されたサイトがたくさんあります。これは、アマルガム合金から発生する水銀がアレルギーなどの原因と疑われているからです。

その一方で、アマルガム合金の使用は、問題ないという意見や研究も数多くあります。アマルガム合金は、日本では国が使用を認め、健康保険適応の歯科金属でもありました。

日本を含めた119カ国の政府が参加した水銀規制条約をめぐる国連の政府間交渉委員会(2010年)においても、WHO(世界保健機関)は「アマルガム合金は耐久性に優れ、価格も安く、一般的に患者には金属アレルギーがある人を除き安全と考える」と発言しています。

日本歯科医師会でも2013年に「歯科用アマルガムの使用に関する見解」を発表し、歯科用アマルガムの廃絶を取り組みながらも、既に口の中に入っているアマルガム合金は、虫歯にならいない限りは、原則として外すべきではないとの判断をしています。環境省も同様の見解を発表しています。

残念ながら、科学的な根拠がない奇抜な研究を持ち上げて、アマルガム合金の危険性をいたずらに訴えて高価な治療をすすめる、商業主義的な医療機関や会社もごく一部で見られます。

一例として自閉症関連団体の多くは、「自閉症の原因は水銀である」との説に対して科学的根拠のないものとして否定しており、時折報道されるこの説に困惑しています。

なお、アマルガム合金に使用される水銀は、水俣病の原因となった有機水銀(メチル水銀)とは異なったものです。


インターネット上で記載されたことがあるアマルガム合金が引きおこす症状
自閉スペクトラム症(自閉症)/ADHD(注意欠陥・多動性障害)/腎障害/聴力障害/アレルギー/がん/リウマチ/肺炎/歯肉炎/多発性硬化症/食欲不振/食欲減退/虚弱/頭痛/めまい/うつ病/情緒不安定/感覚異常/疲労/不眠/居眠り/不妊/記憶障害/アルツハイマー病/パーキンソン病/多発性硬化症/手の震え/アトピー性皮膚炎/腎臓、肝臓、脳などに水銀が蓄積/歯の損失
※上記のほとんどは科学的な根拠がないとされています。


自閉症と水銀自閉症と水銀



●水銀の摂取量

水銀は、地中、海水、大気中など自然界に存在する金属です。そのため、ニッケル、クロム、亜鉛、銅などの金属と同様に、私たちの食べる食物の中にも含まれています。

水銀の摂取としては、口内に銀歯として入っているアマルガム合金のほか、予防接種(インフルエンザ、3種混合、2種混合)の保存剤(チメロサール)、魚介類などの食品による摂取があげられます。摂取された水銀は尿や便に排出されていきます。


一般環境からの1日の水銀摂取量(μgHg/1日、WHO)
アマルガム合金(3.1−17.0)/魚介類(2.34)/他の食物(0.25)/水(0.0035)/空気(0.001)



●妊婦が注意すべき魚介類の種類とその摂食量の目安


2003年に厚生労働省は有機水銀(メチル水銀)の問題から、妊婦のキンメダイ、クロマグロ、ミナミマグロ、クロムツなどの魚を大量に摂取しないよう呼びかけました。ただし、通常の摂取量では問題なく、過剰反応は無用としています。


摂取量の目安
バンドウイルカ(1回約80gとして妊婦は2ヶ月に1回まで)/コビレゴンドウ(1回約80gとして妊婦は2週間に1回まで)/キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチ、エッチュウバカガイ、マッコウクジラ(1回約80gとして妊婦は週に1回まで)/キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ、ヨシキリザメ、イシイルカ(1回約80gとして妊婦は週に2回まで)

※魚介類の消費形態ごとの一般的な重量は以下のとおりです。
  寿司、刺身(一貫または一切れあたり)15g程度  切り身(一切れあたり)80g程度



魚介類の総水銀値
魚介類の総水銀値
日本では、魚肉に含まれる水銀の安全基準を総水銀値で0.4ppm(メチル水銀では0.3ppm)としており、これ以下では一生食べ続けても健康には影響しないとしています。また、総水銀値の高い魚介類でも、大量に食べ 続けない限り問題ないとしています。



●水銀と毛髪検査

WHO(世界保健機関)が定める健康影響がないとされている毛髪水銀値は、成人では50ppm以下とされています。体内にとりこまれたメチル水銀(有機水銀)は、少しずつ尿や便に排泄されます。

体内のメチル水銀が半分になる期間は約70日で、計算では1年後には取り込まれたメチル水銀の97%が自然に排出されます。


毛髪の水銀値
毛髪の水銀値



●当クリニックでは

当クリニックでは、開院以来アマルガム合金を使用した歯科治療は一切おこなっておりません。無理にアマルガム合金の除去をおすすめするようなこともありません。

患者様のご希望があったときや、アマルガム合金に含まれる水銀やスズなどの金属にアレルギーがあるときに、アマルガム合金の除去治療をおこなっております。



※歯科金属アレルギー治療をご希望の方は、お手数ですが事前にご予約ください。

※当クリニックへのアクセスについては、下記のページをご覧ください。
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