今日だけ江戸っ子

私は生まれも育ちも東京以外。江戸以外。親子3代続いた立派な田舎モノ。
そんな私が憧れるのは、江戸っ子の粋。


***最後の江戸っ子が眠る場所***

私は作家池波正太郎さんが大好きだ。(私の中では、彼が最後の江戸っ子である。)
私が歴史小説好きになったのは、池波さんのおかげだろう。
一番好きな作品は『炎の武士』という戦国時代の短編小説で、作品全体に流れている
心意気は、私の美学の基本となっている。
将来、もしものことがあった場合、棺桶の中に必ず入れて欲しい一冊である。
そんな私の池波正太郎好きを知っている友人が、台東区に「池波正太郎文庫」が
あると教えてくれて、過日、一緒に行ってきた。

上田にある池波正太郎真田太平館は行った事があっが、こんな近くにゆかりの記念館が
あったとは…池波正太郎ファンと吹聴していたのに、私ったら、あまりにもお粗末君…(^^;;;)

場所は、かっぱ橋のすぐ近く。
台東区立中央図書館(台東区西浅草3-25-16 03-5246-5911)の中にある。
ココ、すごいです!予想以上に充実している。侮るべからず。

まずは、"池波さんといえばこの写真"という見慣れた写真がバーーンとお出迎え。
蔵書数は勿論のこと、なんといっても、池波さんの書斎が再現されていて、友人と
書棚の本を見てはキャーキャー言ってしまった♪
いや、正確に言うと、キャーキャー言うほど華やいだ雰囲気ではなく、ボソボソと
能書きをタレながら、ガラスケースに涎もたらさんばかりに擦り寄っていた、
迷惑な客だったかもしれない(^^;;;)

たまたま直筆の原稿も展示期間中だった為、字の勢いがどうの、句読点がどうのと
かなりマニアックな鑑賞だった。
本人的には、とっても楽しくて満足、満足な時間でした。

さて、ここで、小一時間ほど遊んだあと、どちらからともなく「池波さんのお墓へ行こう!」
ということになった。手がかりは、浅草周辺の「西光寺」。
これだけ本があるんだから、すぐ見つかるだろうとタカをくくって、軽く、市街地図で調べてみた。

ない!ない!!ないーーー!!!
調べ物博士の友人が、かなり丹念に見てくれたが、ない!!

最後の手段で図書館の人に聞いてみたら、なんと、お寺がマンションみたいになっている
とのお言葉。

寺がマンション?私の頭の中ではイコールに結ばれない単語二つ。
史跡めぐりをしていると、一般ぴぃぽぉが入っていけないお寺というのはよくあることなので、
外観が見られれば本望くらいに思って、一抹の不可解さを残しながらも、いざ出発!

到着(笑)!
意外とあっさり、目指す西光寺は見つかった。
ホントだ。マンション…というか、普通の家だ…。私の概念にある"寺"ではない。
墓石や卒塔婆が垣間見られれば…なんて思っていたものの、そんなもの見えるわけがない。
全てが、建物の中に収まっているようだ。
もしかして、奥に庭がひらけているのかも!とかすかな期待を胸に、裏へ回ってみたが
住宅が密集していて、まず庭はないと思われた。
(確認していないので、もし、裏に、人知れず広大な墓所があったらごめんなさい>西光寺)

建物の中にどのように眠っているのだろうか…。
ああ…江戸っ子の終の棲家が地に根ざしてないんだ…。
直に、季節も感じられず、風も流れず、土のない、喧騒もない、そんな場所で、タバコを
ふかしている池波さんを思い浮かべて、勝手に哀しくなってしまった…。

ああ…花のお江戸よ、come back!

江戸っ子を感じたいなら、池波正太郎文庫の中のほうがリアルかも。
創られたリアルが本物を越えるなんて…いいのか日本。

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以下、友人が調べてくれた池波正太郎文庫関連HPです。
興味があったら覗いてみてね。
《 開館の時の紹介記事 
http://www.tansei.net/shisetsu/ikenami/main.htm 》
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2002.6.18


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