【一項十三頁十六行】
「怠惰であるというのはそれ即ち、休息である。
怠惰であれ。
我ら信徒、快楽を持ちて怠惰とし、其を広めよ。
命の火を灯し神に捧げよ。
無数の火は世を照らし安寧を齎す。
我らが主ヴァルンツェの御心に背くべからず。
我ら楽を広めし者なり」
【五項三百六十四頁二十二行】
「『祈りは届かず、祈りは叶わず、祈りの果てに何を見出す』
神の言葉に人は答えた。
『祈りによりて心は救われ、祈りによりてこの身は救われ、信仰を持ちて人々は救われました』
『人の子よ。我は祈りを聞きはせぬ。人の子よ。それでも尚も祈るのか』
『無為の果てにあろうとも、我らは人でしかありません。安寧を願い、安寧の中散り、安寧を産むのが我ら人』
『愚かしい……だがその祈りは叶えられよう。幾万の果てに、幾億の果てに』
『我ら人の子ら。人の子を産み、人として生き、人を楽しみましょう。その信仰を糧として』
『人の子よ。今を生きよ。今を楽しむがよい。それが果てを打ち崩し、永劫の安寧を齎すであろう』」
【ヴァルンツェ聖典第十六版 シュリアム・ブルーフェルト解釈版】