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1 市民活動と公民館

<入間地区公民館連絡協議会研究委員会レポート>

 6.自治する力を育てる公民館職員の新たな役割


 (1)市民と職員の新しいかたち
@ 職員主導型から市民活動支援型へ
 この章は初めて公民館へ人事異動で配属された方に特に読んでいただきたいと思って書きました。そのため、ベテランの職員、公民館利用者の方々には少々物足りない部分があるかも知れませんが、どうぞご容赦下さい。
 さて公民館へようこそ!今までにあなたがどのような職場を経験されたか分かりませんが、ここで仕事の取り組み方を見直した方がいいかも知れません。特に自分で1から10までやらないと気がすまない責任感過多の人要注意です。公民館とは、あなたがいままでやってこられた事務処理の能力とはかなり質の異なるものを要求されるところなのです。通常の事務処理能力だけで、公民館の仕事を進めるのはかなり難しいといえるでしょう。 ではどういう能力が求められるかというと机上の能力だけでなく、人とのコミュニケーション能力や人材発見・育成能力が必要になってきます。
 以下に具体例をあげてみましょう。例えばコンサートなどの大きなイベントを開催しようとしたとき、公民館職員だけの少ない職員では運営しきれないことがほとんどです。仮に苦労してやれたとしても、担当者が異動したら次の人が同様の苦労をしてしまうこともしばしば。このようなことを防ぐためにはスタッフを集めて、その中からリーダーを選び主導的立場となってイベントを運営してもらうことが望ましいのです。つまり職員が事業を企画して進めるかたちから、市民が企画して進めるかたちをとり、職員がこれを支援することが、望ましいスタイルなのです。
A 市民主体で活動し、職員は応援団に
 ある団体が地域において何か活動をする(以下『市民活動』と呼びます。)場合にも全く同じことが言えます。市民活動においては、市民が主体的に行ない、公民館職員はこれを支援し、バックアップする態勢をつくることが肝要です。市民活動を円滑に行うためには、市民自らリーダーとなるべき人を選び運営してもらう方法が、最もまとまりやすく効果的なことといえるでしょう。つまり職員は市民活動の実行部隊である市民のよき応援団であるべきなのです。
B 市民と職員のパートナーシップ
 市民活動をムリなく進めるには、市民と職員のあ・うんの呼吸が二人三脚のようにピッタリあっていることが求められます。その優れたパートナーシップが互いの力を活性化しもてる力以上の活動を実践することも可能となります。それを実現するためには職員にも様々な能力が要求されます。具体的には次の章に述べますが、調整者としての能力、活動を容易にし促進する能力、住民組織と関係機関とのネットワークを活用して市民とのコミュニケーション能力及びリーダー等の人材育成能力が必要となってくるのです。

(2)これからの公民館職員に求められる役割
 市民活動を主体者にやってもらうのでは、職員のすることが何もないではないか、と憤慨している方もおられるかもしれません。でも大丈夫。ちゃんと公民館職員でなければできないことがたくさんあります。
 従来、職員は「黒子」として働くことが求められてきました。自身は目立たないように主体者の活動をサポートすることがこれまでの仕事だったのです。しかしこれからは公民館職員が以下の3つの役割を果たし、主体者の市民活動をリードしていく必要があるといえましょう。
@ 学習のコーディネーター
 ある団体の市民活動を行う過程における必要な課題学習の企画、他団体との交渉、講師の先生の手配など、市民活動そのものに関することではなく、その支援、調整を行う人を指します。コーディネーターは活動団体の人事や財政上の権限をもっていません。それにもかかわらず団体の活動を上手に導いていくためには、コーディネーター本人の資質、能力、経験がかなり必要といえそうです。例えていえば、学生時代の応援部のようなものと考えられるでしょう。直訳すると「調整者」となるように、団体の内部の調整、他団体との対外的な調整とその任務は多岐にわたります。活動場所(公民館の貸し館や他のより適切な施設)の確保、・事業に対する市・町の補助制度の紹介、補助金の申請方法の確認、事業傷害保険等の加入、ボランティアに関する講座を開き、主体者の活動に対する理解を深めてもらうなどなど。団体が市民活動を行い目的を達成するまでの過程において、主体者の求めに応じて公民館職員が上手にサポートをしていくことが、市民活動をスムーズにしてもらうコツとなります。ただし決してやり過ぎてはいけません。上手にと書いたのはそのためです。やり過ぎると、団体の活動を通して得られる主体者の個々のメンバーの達成感を奪ってしまうことがあるからです。更に団体に対して活動を「お願いする」「お願いされる」感覚が職員にないことも肝要です。主体者が活動を「自分達がやった」と感じ、満足感を得ることが市民活動の明日への原動力につながるのです。団体の自主性を尊重しその環境を整備するのがコーディネーターの役割です。
A ファシリテー夕ー
 聞きなれない言葉ですが、facilitatorという英語で直訳すると、「促進者」となります。
 団体が活動を行いやすくするのが「コーディネーター」なら、ファシリテー夕ーは団体が活動を進めていく上でのよきアドバイザーというところでしょう。事業計画を作成する上でのアドバイス、活動の指針を考え、方向性を与える、活動を阻害する要因を取り除くなど、活動を推進する面での環境整備を行うことが勤めです。例えるなら、マラソン有力選手のペースメーカーのように、邪魔することなく選手(団体)をゴール(市民活動)へと導くことがすぐれたファシリテー夕ーの仕事となります。
B コミュニティーワーカー
 直訳すると、コミュニティーワーク(地域援助技術)を行う者ということになります。具体的には、地域づくり等の問題を、住民の主体的な参加により解決がなされるよう調査し、住民組織と関係機関とのネットワーク、社会資源の開発、情報提供などの一連の支援を行う人を指します。前2項の職員の役割が市民活動の主体者に対する内部的な支援であるのに対し、対外的な活動を通じて支援していくのがコミュニティーワーカーの役目といえるでしょう。その目的は地域社会の個人・集団の相互作用を増進させ、主体者が市民活動を行いやすくすることです。

(3)公民館職員の自己変革に向けて
@ 職員の個人的技量を公民館の組織的能力へ〜市民活動支援マニュアルの作成〜
 役所や町役場で主に事務を担当してきた職員が公民館へ異動してくるということも多々あります。この場合、私自身もそうでしたが仕事内容のギャップが大きく、かなりとまどってしまうことがあるのです。入間公連でも公民館初任者研修会を開催してできるだけスムーズに初任者が公民館になじめるよう努力していますが、公民館の仕事は言葉だけでは説明しにくい部分が多く、決して十分とはいえません。「主体者の育成・支援の仕方」などもベテランが個人的な技量として異動と共に持っていってしまわないようマニュアル化しておき、公民館の集団的能力として代々維持するよう配慮すべきでしょう。こうすることにより、市民活動を停滞させず、かつ公民館職員のバトンタッチをスムーズに行うことが可能となります。
A 学習と交流による学びあいで自己改革を
 地域に密着した施設というメリットと裏腹に公民館は、その立地的な理由から、職員が「井の中の蛙」になり易いという問題をはらんでいます。同じ市の他の公民館や他市の公民館の状況を把握しづらいため、主体者への支援や事業運営などのあらゆる面で独りよがりになりやすいのです。私もこの「入間公連研究委員会」に参加するまでは、他の公民館の状況は殆ど知りませんでした。団体指導が独善的にならないために職員自身学習を行いかつ公民館同士の横の交流を絶やさず、常に自己改革を行いましょう。研修会等に参加するあるいは、他館の事業を見学するのもよい方法だと思います。こうした公民館同士の学び合いが、それぞれの職員個人の能力を触発させ効果的な事業運営に貢献するでしょう。

(4)地域を知り、その未来へ向けた研究・調査活動を
 地域固有の問題点を発見し、人のつながりを作りその解決に向けた市民活動を支援するためにまず必要なことは「地域をよく知る」ことです。そして、社会全体の状況がどんどん変化していくのと同様に、地域も状況が刻一刻と変化していきます。公民館職員はこうした変化を常に見据え、地域の未来像をイメージして常に研究・調査を続け、課題と解決法を考えて地域の力を引き出していかなくてはなりません。第1章で述べた市民と職員の関係、第2章で述べた公民館職員に求められる能力も、この目的を達成するために他ならないのです。
 さていかがでしたでしょうか。私の拙文が少しでも公民館初任者の方のお役に立てれば幸いです。公民館で学んだことはきっと他の職場でもお役に立つはず。それだけ奥の深い面白い仕事だと思います。皆さんが地域の埋もれた活力を存分に引き出されることを期待しています。
                          萩原智明(入間市立金子公民館)

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