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JR上野駅の公園口を出て歩くことおよそ100メートル、右手に見える箱形の建物が国立西洋美術館。秋晴れの昼下がり、多くの人がル・コルビュジエ設計の建物へと吸いこまれていった。 |
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【第1章】松方コレクションを知っていますか?
【文】前橋重二 【イラストレーション】浅賀行雄
絵画・彫刻だけで約2000点、浮世絵を含めると、一時は総数1万点におよんだとされる作品群は、いつ、どこで、どのようにして集められたのか? 世界中を飛び回った豪胆な実業家、松方幸次郎の生涯をたどりながら、知っているようで知らない、巨大コレクションの秘密にせまる。
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平成バブル期のニッポンでは、マネーゲームの果てににわかコレクターたちが、やれゴッホだのルノワールだのと、海外で高価な絵画を買いつけて話題をあつめた。貧弱だった日本の西洋美術コレクションが、これで少しはゆたかになるのと、海外で高価な絵画を買いつけて話題をあつめた。貧弱だった日本の西洋美術コレクションが、これで少しはゆたかになるのではと、淡い期待を抱かしめるほどの勢いだったが、バブルがはじけてみれば、新たに到来した美術品のほとんどは安値で海外に持ち去られてしまうという体たらく。
似たような経済バブルは大正初年にもあった。第1次大戦の勃発でヨーロッパの生産力がガタ落ちし、新興日本の工業製品は引く手あまた、物資輸送の根幹をつかさどる海運業や造船業はなかでも活況をきわめるという図式。いわゆる成金ブームで、料亭の玄関が暗いからと十円札に火をつけて足元を照らしたり、純銀の胸像をつくって豪華さを競ったり、朝鮮半島に虎退治に遠征したりといったおバカな奇行が話題となったが、大戦が終われば元の黙阿弥(もくあみ)、1920年の恐慌ですべてを失った者も少なくなかった。
そんなお大尽遊びに成金たちが浮かれていたころ、ひとりの日本人実業家が、ヨーロッパで着々と絵画を買いあつめていた。一世一代のチャンスをものにして大金をつかんだ川崎造船所の初代社長、松方幸次郎(1865〜1950)である。
(続きは本誌でお楽しみください)
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日本に《ミロのビーナス》がやってきたのは1964年のこと。4月29日の祝日、西洋美術館の前は女神を目指し、ご覧のとおりの大行列! 撮影=小島啓佑[新潮社]
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天井の高い広々とした部屋は、絵画の修復研究室。絵画修復師の岡崎純生さんが、16世紀イタリアのエミリア派《ヴィーナスとキューピッド》※相手に、コツコツと作業をつづけていた。 |
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開館50周年記念事業◆展覧会案内◆ |
◆ルーヴル美術館展―17世紀ヨーロッパ絵画― |
2月28日→6月14日 |
◆古代ローマ帝国の遺産―栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ― |
9月19日→12月13日 |
◆フランク・ブラングィン展 |
2010年2月23日→5月30日 |
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小企画展にも注目! |
◆小企画展【ル・コルビュジエと国立西洋美術館】6月4日→8月30日 |
◆【所蔵版画展(仮)】7月7日→8月16日 |
◆小企画展【ローマ、未来の原風景(仮)】9月19日→12月13日 |
◆小企画展【所蔵水彩素描展(仮)】2010年2月23日→5月30日 |
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