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IIC−Japan 講演会参加報告

1999年2月24日、IIC-Japanの講演会が、東京国立文化財研究所にて行われました。講演内容は、「地震によるアッシジ文化財被災その後」で、講師は同研究所の保存科学部長である三浦定俊氏でした。当日は、冷たい雨の降るあいにくの天候でしたが、会場の会議室には多くの聴講者が、集まりました。

 このイタリア中部の地震は、1997年・9月26日に発生したのもので、ご存知の通り、アッシジを中心として寺院建造物、壁画、展示物…等に多大の被害を与え、地震発生後一年半が経過した現在もその復興作業が続けられています。今回、三浦氏が1月17日〜23日にかけて視察された内容が、OHPとスライドをまじえながら発表報告されました。

 今回の視察にあたっては,イタリア政府から地震復興の日本への技術協力の要請があったもので、オプションとしての次の3項を提案した結果、

  1. 建造物の耐震技術協力
  2. 壁画の修復技術協力
  3. 美術品、展示物の耐震技術協力

イタリア政府からは、3.の項目について特にお願いしたいとのことでした。

  日本は、過去の阪神淡路大震災の被災経験からも、展示物等における耐震技術…特に展示ケースの免震技術においては、世界的みてもトップクラスであり、今回、同じ先進国の中で2大地震国である日本とイタリア間でこの様な技術交流がなされた事は、まさにその直面する課題の大きさを感じさせるものでした。

 スライドでは、聖フランチェスコ大聖堂(チマブエ・ジョットの壁画を含む)の被害及び、現在までの復興状況が紹介されました。ちなみにこの地震では1回目の被害調査にあたった4人が、直後の再地震で亡くなっています。当初の,被害状況は聖フランチェスコ大聖堂で…崩落面積178.14u、崩落漆喰片約10万個以上、彩色漆喰付着煉瓦4,140個と報告されています。現状でそれなりに修復が進んでいるものの、細部の復元等、特に壁画関連の修復では、まだまだ先の見とうしがつかないのが、現状のようです。今後の予定は、1999年・12月・25日までに建物(上・下の2つのお堂)の修復を終え、壁画(丸天井)に関しては白い壁のままスライドの画像投影して、その状態で法王によるクリスマス・ミサが行われるとのことでした。

 続いて、今回の視察の第一目的であるイタリアの展示ケースへの日本の免震技術の応用についての話がありました。ミラノの展示ケースメーカーであるゴピオン工房の様子や、実際のオルビエート大聖堂での使用状況が紹介されました。キリストの聖体布を展示したケースや、元々その聖体布が収められていた七宝容器の密閉展示ケースの構造等も紹介されました。特に密閉展示ケースにおいては、銀素材を使用した作品に対して空気フィルターが有効であるとのことでした。しかし肝心の免震構造は、全ての地震の揺れに対応できているものではなかったようでした。

 それで、今回中央修復研究所との協議の結果、聖フランチェスコ大聖堂の宝物室の耐震対策、なかでもステンドグラス用の新しい展示ケースの製作を予定している為、その免震対策を日本側に要請したいとのことでした。

 今回の、講演を聴いて感じた事は、あらためて地震の突発的発生の危険性と、それに対する防御策(耐震及び免震)の重要性でありました。既に、少しずつ忘れ去られようとしている阪神淡路大震災ですが、又必ず起こるであろう震災について、定期的な意識の回復と継続を心がけたいと感じた次第です。

 尚、現在 「アッシジ・聖フランチェスコ大聖堂博物館展」が、世界各地で開催されています。

  フランス・パリ(プチパレ、1998年11月15日〜1999年2月15日)

  アメリカ・ニューヨーク(メトロポリタン美術館、1999年3月15日〜6月15日)

  日本・神戸(?)朝日新聞社主催(1999年7月15日〜10月15日予定)

 

 講演の最後に「イタリア中部地震文化財支援募金事務局」の塚田全彦氏(国立西洋美術館)から 『HELP ASSISI!』…現在までの支援募金についての報告がありました。これからもひき続き、この支援募金をお願いしたいとのことでした。尚、この募金の詳細につきましては、下記にお問い合わせ頂くか、この修復家の集いホームページにアクセスしてみて下さい。

 〒110 東京都台東区上野公園7-7  国立西洋美術館内

      TEL.(03)3828-5131代表/ FAX(03)3828−5797

 国立西洋美術館ホームページURL

          http://www.nmwa.go.jp/index-j.html

 「修復家の集い」ホームページURL 

          http://www.aimia-net.com/member.htm

  イタリア政府文化財省ホームページURL        

          http://www.beniculturali.it/interven.html


  報告:岡崎純生