私たちの日常生活の中…日頃、何気なく暮らしている環境、時間、そして多くの 周辺事物に於て、ふと気がついてみると「ああ随分と古くなってしまった!」とか 「こんなに傷んでしまった!」等…誰もがいつかは体験し認めざるを得ない現実… 「老化〜劣化」の事例が多く存在します。例えば…夢にまで見た「マイホーム購入」 念願だった「マイカー」の購入…最初の内は、勿論…「新品!」誰しも大事にしよう と常に手入れを怠らず…しかし1年、2年、5年〜10年と月・日(時間)が経過する に従って、汚れ、傷つき、色が褪せ、そして最後には…もはや実用的にも限界!と ここで多くの人達は又次の新しい「家」・「車」のことを考え始めることでしょう。 しかし、同じ家・車でも、使っている人の中には5年〜10年と経過しても、しっかり と「輝き」や「性能」を保っている…そんな事例を見た事があるはずです。これは多く の場合、ひとえに、その持ち主(オーナー)の日頃の「手入れ」の賜物である訳です。 |
外階段塗装の鉄錆 |
屋根側面(ハブ板)の塗装剥れ |
ベランダ塗装の鉄錆び |
上記では、実用品としての「家」・「車」の事例を挙げましたが、実は「美術品」こそ、この「手入れ」が如何に大事であるか!この点では、全く同じことなのです。 「美術品は、車や家とは違うもの」と考えてしまいそうですが、長いサイクルでみた劣化(自然劣化を含む)は全く同じなのです。美術品の中でも、例えば…絵画・彫刻・工芸品・建築物…等、更に夫々の素材・技法等によっては、もっと細かく分類されますが、何れにしても「保存環境」の適切さ、及び日頃からの「手入れ」「メンテナンス」の有無が、これらの美術品の保存性を大きく左右するのです。 |
油彩画・画面部分 洗浄比較(右半分経年汚損) |
油彩画・裏面部分 キャンバス裏面(木枠老化・黴・しみ) |
しかし、いくら手入れを充分に行っていても、元々その「美術品」が構造的に不安定であれば、特定の時期を過ぎると急速に劣化が進行します。また、逆にかなり堅牢なものであっても、長い年月の間には、少しずつ劣化が進行してしまいます。 実は、この地球上に存在する「モノ」が永久的に劣化しないという事はありえません。ですから、いかにこの「劣化速度」を遅くする事ができるか!ということが重要な事なのです。 |
油彩画・画面部分比較 |
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修復後同箇所(固着完了) |
ここでは主として絵画の「修復・保存」という事でお話しをしますが、まず第一には 作品の「保存」ということが挙げられます。次に、どうしても傷んでしまった場合での 「修復処置」について、事例をお見せしながら実際の「修復作業・工程」を含めて ご紹介します。また「修復上の倫理問題」等についてもその時々に述べていきたい と思います。 |
油彩画・画面部分比較 |
修復前 |
修復後 |