子供のためのババのお話

ヴィクシェパ (不安定なこころ)

  ある村に有名な弁護士がいました。かれはいつもパンチャクシャリ マントラ(五文字マントラ)を唱えていました。毎日かれのプージャ ルームからかれの唱える「オム ナマ シヴァヤ」が響いていました。

  あるひかれがプージャ ルームにいると、ひとりの村人が緊急の要件でかれに会いにきました。男は居合わせた弁護士の嫁に「弁護士さんは家にいますか?」と訪ねました。嫁は、「舅はいま、靴屋の店にいます」と大声で答えました。嫁の言葉を聞いた弁護士は出てくると、嫁を怒鳴りつけました。「なんだと?おまえは今なんと言った? わしはプージャ ルームでパンチャクシャリ マントラを唱えていたのに、おまえはわしが靴屋にいると言った。おまえは頭がどうかしたのか?」

  嫁はしずかに答えました。「おとうさま! あなたはパンチャクシャリ マントラを唱えながら何度わたしにお聞きになりましたか?靴屋はわしの靴を修繕して届けに来たかね?修繕のために靴をわたしてから六日も経った;まだかれは靴を届けてこない! よし、靴屋を呼んで来い。ぶちのめしてやる、と。おとうさま、あなたはそう言いませんでしたか?」

 「あなたは本当にパンチャクシャリ マントラを唱えていたのですか? そのあいだずっと靴屋のことを考えていたのではありませんか?」とかの女はたずねました。弁護士は自分の過ちを悟り嫁の知性を褒めました。

 祈り、バジャン、ジャパ(神の御名の念唱)、デイヤナ(瞑想)をしているときは他のことをいっさい考えてはなりません;すべての注意を神のみに向けなさい。こころがありとあらゆるいらぬことを追いかけて集中できないのはヴィクシェパ(こころの不安定)が原因です。集中を達成するためには規則正しい霊性修行と神の恩寵が必要です。

Sanathana Sarathi March 2005 issue, page94