伊豆ワンデリング

  
記録「道標」記録より
7月29日 晴 天城高原ロッジ
7月30日 晴 万二郎岳-->万三郎岳-->戸塚峠-->八丁池
7月31日 曇 石廊崎にて海水浴
8月1日 晴 いわし30匹とる 海岸ワンデリング-->妻良着(バスにて)
8月2日 晴 1日中海水浴
8月3日 晴のち曇 船にて松崎着-->水泳
8月4日 晴 船にて戸田着-->山道-->井田-->大瀬着-->夕食まで水泳
8月5日 晴 船にて沼津まで行って解散
日付1966年(昭和41年)7月29日〜8月5日
同行者L.H,SL.T
感想下記にTの随筆掲載



石廊崎妻良
松崎



「道標」より「伊豆漫歩」T 真樹
 現れ出でたるノッポとデブとヤセのメガネトリオ。顔も産まれも異なるが、いざ参ろうと伊豆地に旅立ったのは時に昭和41年7月29日。ところが伊豆は暑い。純道産子のノッポとヤセは、四六のがまならねど大粒の汗がターラタラ。デブはと見れば、これ又ターラタラ。ああー奴も人の子だったと、ノッポとヤセは一安心。何か書きにくいね、やはり。気取らずに行こう。気取らずに。
 初日は天城高原ロッジにテントを張る。広々とした草原、澄んだ空、実に空気がうまい。高ーい空に月がポツンと寂しそうだった。
 2日目はいさささか厳しかった。霧にかすむ遠笠山を後に、馬酔木、サルスベリなど北海道には見られない木々の生い茂る万二郎、万三郎の天城連山を、康成のロマンを求めてひたすら歩いたのだが、むせかえる様な熱気のため三人とも完バテ。特にヤセがひどかったが、大したペースの乱れもなく、予定通り下田へ出て、近くの海水浴場の一つの爪木崎にテントを張った。下田は群れ寄った海水浴客でごった返すような混雑。短パンにポロシャッツそして背中にはこきたない大きなキスリング。これでは素晴らしいアバンチュールなぞ望むべくも無いかな・・・。
 翌3日目は下田へ出て買出しをした後、バスにて伊豆半島の突端石廊崎へ向い、そこでテントを張ったが、ものすごい人出で、テント数もざっと見渡しただけで四、五十は下らない。ビキニの可愛い子ちゃんが沢山いるだろうと思っていたのだが、あらガッカリ。目についた範囲ではたった1人。それも亭主と揃いの水着を着た人妻と来たもんだ。3人共さえないを連発して、ビールを飲んで気勢をあげることで意見が一致。食計からの特別会計により、缶ビール1本でその夜はもだえることなしにスヤスヤとねむれたのだから、我々も実に安く出来ているものだ。
 月が変わって4日目は8月1日。8時半に石廊崎を出発。出入りの激しい磯が続き、これからが伊豆のハイライト。灯台に訪れる人が意外と多い。白い灯台は絶壁の突端にヒッソリとたたずみ、真青な海をやさしく見下ろしていた。石廊のキャンプ地より2Km程の地点で、高巻きも下巻きもできない所にぶつかり、ロッククライミング的な事までしたが駄目で海岸行きを断念。それで4時間程水遊び(水泳ではない)に興じた。イワシの小さいのが、岩に囲まれた美しい海水中に青い影を写しており、近くにいた釣人に教えられて、石の艦砲射撃によりイワシを陸に追い上げ、3人の協力よろしく30尾の大漁。とにかくおもしろかった。海岸線も美しく、顔は勿論全身にオリーブ油を塗って男性美を磨き、最高にご機嫌。その後石廊崎に戻り、下加茂へ出、当初の目的地妻良へ行った。土地の人が非常に親切で、露営には最適と見て停滞することに決定。
 明けて5日目。7時半起床。テントの中は熱気でムンムンしている。又々快晴である。3人共1日中泳ぎまくった。金ヅチのヤセもウルトラ自由型で十数m泳げるようになった。ここの景色も仲々良い。緑の松をたたえた岩々が穏やかな海を囲み、夕焼けを写した海面は美しい縞模様を描き、小魚が時々ピョンと跳ねてそれを壊す。はるか離れた海面上を50cmの所まで飛び跳ね、小気味が良い。静かな海は青くあるいは黒く広がり、孤独さを一層感じさせた。素晴らしいワンデリングだ!
 6日目は妻良より船で松崎へ出た。昼頃に松崎に着き、テントを張ったとたんにものすごい夕立。夕立が去った後のすがしき中を3人揃って水泳(水遊びじゃない)を楽しんだ。その後買出しをしたが、とある魚屋の娘に一目惚れ。雛にはまれな美人というのはあの人の事だろう。晩食はとりたてのイカとアジの丸焼き、それにトマトを三つ食べて人間にかえった心地になった。リゾートでミュージックを楽しみながらコカコーラを飲んで、チョッピリ豪華な雰囲気を味わった。海に向けての花火は美しかった。花火がパッと光る瞬間、海がピカッと光るような錯覚を覚えた。デブの友人よりスイカの差し入れがあって、ガツガツ食べた。あー良い夜だ。
 7日目 久し振りに山行の気分であった。5時半に起きて、8時に松崎出航。堂ヶ島は船から見た限りでは、さほど素晴らしくはなかった。だが岩の真中をつら抜くトンネルの向こうに海が見えたりして、なんとなく興味をそそられた。10時40分に戸田に着き、そこから山を登ったり下ったりする事4時間の末、やっと大瀬着。大瀬岬は砂嘴状に突き出た岬で緑の木陰が美しかった。それにも増して、西伊豆のライトブルーの広がりの何と魅惑的で眩惑的な事よ。スーッと吸い込まれてしまいそうな程だ。それにひきかえ山の苛酷な事よ。何もしないでいてさえ汗だくになるのに、そこを黙々と登るのだからたまったものではない。ノッポとヤセなぞ、シャッツをしぼったら、汗水がジャージャーとこぼれた程だ。それにしてもノッポもデブもタフだ。
 8日目はワンデリング最終日。昼間まで大瀬の浜で泳ぎ、それから船で沼津へ、そして富士宮には4時半に着いた。デブの家に着いた途端、安心したせいか疲れを感じた。その晩スーパーラージビフテキを食べ、ビールを飲んで元気回復。数々の思い出にひたりながら、8日ぶりの蒲団の上で安らかに眠りについた。ムニャムニャ、後はおぼろ・・・。  

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