S42年新人強化 ニペソツ・石狩岳 M班

  
ルート十勝三股駅−杉沢出合−ニペソツ−前天狗−△1578m(温泉山)手前川上岳石狩岳−シュナイダーコース分岐音更山−十石峠−三股駅
日付1967年(昭和42年)6月3日〜6日
同行者L.M、後輩7名
感想詳細記録を下方に記載



小天狗よりウペペサンケ山天狗より音更岳、ユニ石狩岳
天狗より川上岳、後ろは表大雪ニペソツを背景に
温泉岳付近から天狗岳、ニペソツ石狩・音更のコルから石狩岳方面

「道標」記録より
6月3日 快晴
 8:45 三股着 9:15 杉沢出合い 11:10 小天狗と前天狗のコル 12:50 前天狗デポ 14:10 ニペソツ 15:40 デポ 17:10 テント設営(8時間行動)
 落合・新得間にて十勝の峰々が朝もやに浮かんでいる。清水を過ぎるあたりから右手の車窓には残雪に輝く北日高が飛び込んで来た。剣岳・芽室岳、等すばらしい。三股の駅へ降りるとニペソツをはじめ裏大雪が新緑も鮮やかに眼前に少しも隠すことなく、その雄姿をあらわした。今年は雪が非常に少ないとのこと。
 いよいよ第1歩。ここでよく径を沢沿いに直っすぐ行く人もあったらしいが、計画を立てる際にコースをしっかり調べておけば、16の沢と杉沢の間の尾根をはじめから登るのであるから、沢を渡って尾根に取りつくのに当然である。
 杉沢出合いから2時間弱で小天狗と前天狗のコルに出る。余り早いので我ながら驚く。嬉しい悲鳴という奴ダ。正面に通称オッパイ山(ピリベツ岳と西クマネシリ山)を見ながら快晴無風の中で昼食。
 前天狗の登りは潅木がうるさい。また残雪で径が隠れることもしばしば。これを登りきればあの特徴あるニペソツが見える、と言いきかせつつ登る。12:50 見える。風が少し強い。デポして空身でニペへ向かう。14:10 待望のニペソツ頂上。風は少しあったが見えること見えること。全スト。下ホロから十勝岳、美瑛岳、オプタテシケ、トムラウシ、化雲、旭、川上、石狩、ニセイカウシュペの連山、音更、ユニ石狩、等々。ニペの頂上のケルンに東壁を直攀するというAACHのM氏あてに、日東紅茶の白缶の中へ「富士」と伝言を入れておく。例の写真も。いつまでも居たい気持ちを振り切って下山。天狗岳の北にあるピークへの登りはさすがにこたえる。
6月4日 曇のち小雨
 6:45 出発 8:45 前天狗を下り切った所 11:55 温泉山500米南でテント設営(5時間行動)
 天気は雲が高く悪くはなかった。キャンプサイトから水場まで下り気味にトラバースし国境稜線に取り付く。百米位は高山植物と比較的低い這松のゆるい下り。径は踏み分け程度。デポ旗あり。凄い下り。全くイヤな下りだ。あたりはしだいに上から灰色につつまれる。でもニペソツのピークがまた趣の異なった鋭い岩峰をのぞかせている。
 8:45 やっと下り終わる。いよいよブッシュ漕ぎが始まる地点だ。全くガスってしまった。残雪の上で休憩。
 このあたりでKパーティにであうであろうと声をかける。返事あり。次第に声が近くなりあたりにガサガサという音。きたない顔現れる。イルワ、イルワ、一族郎党引き連れての感がぴったり。でもやはり懐かしい。嬉しい、というのがいつわらぬところだ。T氏開口一番「金ナイカ?」色気がナイネー。お互いに情報を交換し「天狗の登りは凄いぞ」「川上の上りも消耗ダゾー」と脅かしたり脅かされたり。健闘と無事を祈って 9:15 に分かれる。このころからガスは霧雨となり更に小雨となる。
 十時、Maパーティがだだっぴろいド真ん中にテントを引っかぶっている。ショボクレタ顔をしている。2日も3日も11時間行動だとか。温泉山を越したあたりに雪渓があるとのこと。我々もそこまで行くことにして別れる。
 温泉山の南5百米位の所に残雪があって平らなところがあったのでテント地とする。
6月5日 ガス時々雨
 9:00 出発 9:35 1,578m 10:25 1,478m 11:45 1,712m 13:25 川上岳北西尾根に入りこむ 14:00 径 16:00 石狩岳 16:30 シュナイダーコースとの分岐のコルにてテント設営(7時間半行動)
 不安と期待をもって外に出ると深いガスと雨。停滞とする。ゴロゴロしている時にHoパーティ来る。サブのY氏張り切っている。天狗まで行くとのこと。頑張るネ。見送ってゴロゴロしようとしていると急に明るくなってボヤーッとした白い太陽がヌーッと姿を現した。皆あせり出す。出ることにする。
 13:25 川上岳。Kからの伝言あり。雨でふやけたウグイス豆、当然ながらいただきました。7日からはいるOパーティへデポ旗に伝言を書いて先を急ぐ。川上岳からは今迄通りの感覚でどんどん行く。どうも変だ。気がつくと川上からNWの尾根に入っている。戻って川上に向かう途中、径に出る。石狩岳に向かう。
 ブヨ沢まで行く予定だったが全員空腹でバテ気味だったのでテンパル。前日の雨の中での焚火に味をしめて再度試みる。木がすっかり濡れているし新聞紙もよく燃えない。二度三度と失敗、最後にメタをほんの少し拝借して挑戦。チョロチョロ。あとは1年目が交代で必死の看病の結果、成功する。最初にマッチをつけてから1時間はかかった。飯は焚火で炊く。やはりこれでなきゃネー。
この晩のシチューは全く見事。こんなうまいシチュー恐らく先にも後にもないであろう。どんなホテルででもあれ程のものは、あの値段では絶対に口に出来ない。今後、食べたい奴はMuが食計を担当しているパーティに入るべし。
6月6日 強風 雨
 6:40 出発 7:20 音更山 北の尾根に入る。戻って径 8:20 ブヨ沢 9:00 十石峠(1,596m) 9:40 最終水場 10:30 登山口 12:30 三股駅(6時間行動)
 4時半起床。ひどい雨。昨日は出ておいて本当に良かった。2、3日は回復しそうにもない。層雲峡への下りも放棄。ユニ石狩岳もやめて下山することにする。
 雨と十勝側から吹き上げる強風のため、体温が奪われて仕様がない。立ち止まっただけでも寒い。ピッチをあげて汗でも出そうとするがダメ。7:20 音更山。ここで磁石を切らずに歩いたため北の尾根に入る。すぐ戻って径。雨、風ますますひどくなる。9:00 1,596米。立派な道標アリ。十国峠と銘されていた。層雲峡へは天気さえよければ十分行けそうである。Ho、Hiの伝言あり。つつじが満開の径をひたすら下る。1年目2人ものすごく早い。12:30 十勝三股駅 ストーブが燃えていた。
反省=
 まずいえることは天候に恵まれなかったということ。しかし1日目のニペソツが晴れ、中央高地をほしいままに見ることが出来たことで1年目も満足した様子であった。
 この合宿は1年目に夏合宿を遂行しうる能力(体力、テント生活の馴れ)を強化するためのものだが、体力に関してはまず問題はないと思う。我々の場合、行動時間が最高で8時間であったからかもしれないけれども。またパッキングにしても皆んなスマートでうまいものです。天気図はまだ無理でしょう。でもそんなに一から十まで1度にすることもないと思う。テント設営、ホエーブスの操作は出来るようだ。
 行動に関しては、当初計画の十石峠から層雲峡への下りを放棄したのは、あの場合は仕方がないであろう。それにあのコースは沢コースあるので増水を考えると当然であるかも知れない。また6日の日に行動したことについては、十分問題の残るところだと思う。あの天気では本来は当然停滞です。あれで行動するのでは停滞など全く不必要と言えるでしょう。層雲峡を放棄したので日程にも余裕があったのだから。やはりあの日は停滞すべきであったと思う。(たとえ、翌日も同様の天気であっても)
 今山行は天候不順だったので雨具の必要性を痛感した。傘は平地以外は行動中にはダメである。行動中は常に両手を空けて置くことが大切である。ポンチョはブッシュこぎで破損しやすいけれども、尾根歩きには役に立ち、やはりないのとあるのとではかなりの差があった。
 最後ではあるが、2年目は実によくやってくれた。3年目がゴロゴロしていても、エッセンなどは1年目を指図してちゃんとやってくれた。(テントでは3年目は少しタイマンであったみたい。深くお詫びをすると共に、あらためて感謝する。)I氏には終始トップを行ってもらった。ご苦労様でした。(M記) 

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