カチカチの雪に完敗


28日(20:00)阿佐ヶ谷→(23:20)菅平・目沢山荘、29日(9:30)山荘出発→ (10:00)奥ダボスリフト終点→(11:20)標高2000メートル地点→(11:50)ヘリポー ト→(12:00)根子岳頂上→(12:15)ヘリポート→(12:46)奥ダボスリフト終点→ (15:00)山荘着→30日(12:00)菅平出発→(16:30)大泉学園

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後方には後立の山々がくっきり

「今年は雪が多い」という目沢さんの話に期待して菅平にやってきた。お天気は 二つ玉がやってくるので、29日の午後から崩れ30日は雪という予報だ。今回はい つものメンバーに雲稜会の新人・A山さんが加わる。ところがリーダーの雨宮さ んが風邪をひき、山荘に着くなりダウンしてしまった。29日は小原さんをリーダー に5人で山に登ることになった。

"迷わず2日券"、"とりあえず1日券"、"無理しないで回数券"などそれぞれの思惑 でリフト券を買ってダボスを出発。奥ダボスリフトの終点でシールを着けて登り 出す。天気快晴だが、風が強い。頭上を越えていくヘリは機体を斜めにして飛ん でいく。きょうは登る人も多いがヘリの飛来も多くにぎやかだ。

どんどん進んでいく河野さん、A木さんをA山さんと追う。シール歩きも山スキー も初めてというA山さんだが、山ヤだけあって馬力があり、遅れをとることはな い。スキーを背負い、スノーシューで登ってくる小原さんの方が、傾斜がきつく なるところでは遅れ気味になる。自分も装備が重いといっても新人に遅れを取る わけにはいかない。食い下がって付いていく。

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スノーシューの小原さん

まあ、そんな感じでみんな飛ばしていたから、休憩ポイントに予定していた避難 小屋を全員がすっかり見逃してしまった。みな口をそろえて「注意していたけど 気が付かなかった」というけど本当かな。調子よく登っていたので、風が冷たい なか無理して休みたくなかったというのが正直なところだろう。避難小屋をはる かに通り越した標高2000メートル付近で申し訳程度の休憩をとる。吹きっさらし のうえ、黒雲が空を覆い始めたものだからじっとしていると寒い。みな食料を口 にすることもできずに小原さんの到着まで耐える。

雪煙が舞い、圧雪された"道"が分かりづらくなる。指導標に沿って本来のツアー コースを進む。踏み固められたルートは強風でも雪が飛ばされずに残るため、周 囲より盛り上がっている。地吹雪のなかではラトラックの道よりずっと分かりや すく、歩きやすい。背の高い針葉樹が並び立つヘリポートわきに着くと風はピタッ と収まりホッと一息つきながら一本とる。小原さんは5分ほどで追い付く。ここ から下れば楽だろうなという考えも一瞬浮かぶが、「山ヤは頂上を踏んでなんぼ じゃ。ただのスキーヤーとは違う。オーッ!」とカラ元気を出して踏ん張る。

そうはいっても、頂上への急な雪壁と、それを越えてからの容赦ない強風は半端 じゃない。風に磨かれてカリカリになった斜面を、滑落しながらも気合と根性で クリア。頂上では温暖前線の通過に伴う強い南風は雪煙を舞い上げながら、容赦 なく吹きつける。景色を楽しむゆとりもなく、黙々とシールをしまって滑降の準 備をする。

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雪煙が舞い上がる根子岳頂上

さて出発、となったとき登りはずっと先頭だった河野さんが「おれ、スキーは得 意でないから」と尻込みする。それで喜んでトップをいかせてもらう。直下の急 斜面は早い順番の方が雪があって下りやすいのだ。思いっきり雪をけ散らし、横 滑りで一気に降りる。ハアー気分いい。しかし、いい思いをできたのもそこまで だった。ヘリポートから下は風で固められた雪にてこずる。一方、河野さんはみ ながそろうのも待ちきれず飛び出すと、あっという間に姿が見えなくなってしまっ た。一昨年、無理やり滑らされた新雪での苦労をまだ忘れられないようで、逃げ るようにぶっ飛んでいった。

2000メートルくらいまでは転びながらもなんとか新雪でターンができた。離され ながらもA木さんやA山さんの姿を追えた。しかし、下るにつれてウインドパッ クされたガチガチの凸凹にスキーを取られ、外側に飛ばされる転倒が多くなった。 それでも、根性で圧雪されたコースをはずして滑った。山スキー初心者のA山さ んがいるから大丈夫だろうと高をくくっていた。ところが、いつの間にか小原さ んはもちろんA山さんの姿も見えなくなってしまった。完全に置いてきぼりを食 らった。今度は開き直って新雪に突っ込み、また転ぶ。だいたいどういうパター ンで転ぶか分かってはきたが、簡単に滑りは修正できない。これが実力というも のなのか。

となりで同じようにヘナヘナ滑っているショートスキーヤーとボーダーコンビを 横目で見ながらもうひと踏ん張りする。だんだん傾斜が緩くなり、ターンが間延 びしてきたので圧雪コースに戻る。とたんにスムーズに滑れるようになる。でも、 ゲレンデの延長のようなところで滑れてもうれしくない。できるかぎりぶっ飛ん だら、河野さん以外はリフト終点でみんなちゃんと待っててくれた。「お待たせ して申し訳ない」というと5分前に着いたところだといってくれ、ありがたかっ た。5分は長いよ。

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滑降の準備を黙々とする

ゲレ食で昼食を取り、ふたたびダボスでスキーの練習。体軸を傾けて滑る課題に 取り組むが、なんだか思うようにいかない。そういえば、今回がシーズン初めて のスキーだった。うまくいかないわけだ。4本ほど滑ったら、みんなに付き合っ て奥ダボスに戻る。しかし、急斜面をまじめに攻めたらエッジを引っかけて大転 倒してしまう。これに懲りてすごすごと引き揚げたが、このとき肋骨が1本いっ てしまったらしく、翌日から数日間は腹がよじれると痛かった。

夜中は風がすごかったが、翌朝はガス。見通しが利かないのでパスする人もいた が4人で出撃した。この日は緩斜面でストックなしで滑る練習を2時間やって感触 をつかんだ。早い時間は天気が悪かったが、昼ごろには菅平を去るのが恨めしい ほど晴れた。風邪が悪化した雨宮さんは結局、スキーを履くことはなかった。そ れでも、十分な休養を取ったら、帰れる程度には回復して一安心。早い時間に出 発できたので真田温泉に寄ってもずいぶん早い時間に帰れた。練習不足のまま本 番に臨んだことを胸を押さえながら反省する。