3日(7:00)大泉学園→(9:20)水戸駅→(10:50)錫高野林道入り口→(13:50)トパー ズのズリ取り付き→(15:20)高取山→(17:05)トパーズのズリ取り付き→ (17:55)ビバーク地(最初のズリ)、4日(8:00-10:00)青物のズリ→ (10:00-12:20)最初のズリ→(12:55)錫高野山崎バス停→(14:10)水戸駅→ (16:30)大泉学園
採集会のリベンジというわけではない。野宿がしたかっただけといってしまうと 実もふたもないから、「高取山に登る」という大義名分を付けて所属山岳会に 「山行計画」を出す。いくら鉱物採集でも基本的には山中をほっつき歩くんだか ら。それなりの備えもいる訳だ。もちろん、お目当ての鉱物採集もある。
いつもよりゆっくりと出発。石塚車庫前からタクシーに乗る。念のため山崎のバ ス停で時刻表を確認すると前回と違っていた。土休日は13時12分の1本だけになっ てしまった。知らなかったらアウトだった。林道ではぶっ飛んできたオフロード バイク7台に追い抜かれる。余裕があると寄り道が多くなる。さっそく、えん堤 上でトパーズを見つける。後から同好の士が1人きたのでトパーズのズリに急ぐ。 はやる気持ちを抑えてつつ、入り口で弁当を食う。
錫高野のズリ。こんなのがあちこちにある |
前回より上部でトパーズの露頭はあるのか様子を見たい。2週間前に採集してい た場所には先客が3人いた。腰にビクを付けてヤブを歩き回っている。鉱物採集 ではなさそうだ。しばらく進むと左手に坑口が現れる。ここで埋まっている石を 掘り返したら1センチくらいのトパーズが出た。しかし、母岩を割っているうち に肝心の結晶は飛んでいってしまった。鉱物採集なんてこんなものよ...と割り 切って空身で先を急ぐ。
斜面は急でヤブっぽくなってもズリは続く。新しい割れ口の大石も転がっている。 崩落かと思ったが、それらしい露頭はない。穿孔跡がついているから沢沿いにズ リ石が埋まっているらしい。登るにしたがって結晶面の目立つ石が多くなるけれ ど、いい部分は削り取られた後だ。踏み跡が薄くなる中を強引に登りきると鞍部。 反対側に高取鉱山跡が見える。赤と白のツツジがちょうど満開だ。左手に一登り で三角点はあるが展望はない高取山頂上に着く。直下にトパーズの露頭がある。 削り取られて小さな脈しか残っていない。ま、こんなもんでしょう。とりあえず ザックのデポ地まで下る。少しねちっこく周囲を調べて林道まで戻る。
まだ十分に明るいので青物のズリで金属鉱物を探す。孔雀石を頼りに銅鉱物のめ ぼしをつけるが、いまいち自信が持てない。黒いかたまりはたぶん、銅藍だろう。 錆びていると黄鉄鉱と黄銅鉱の区別も難しい。割られた石を観察して硫砒鉄鉱ら しき金属を採集する。銅藍と硫砒鉄鉱が採集できれば当初の目的は果たせる。と りあえず、ビバーク地を探しに戻る。
冬より水が少なく、ほんの十数メートルほどの沢で水をくむ。第2のズリの上方 で、風の当たらない場所でシートを広げる。何も食わず採集に没頭していたので、 適当な味噌パスタでもおいしかった。こうして味覚がゆがんでいくのか。200グ ラムは足りなかった。あめ湯を飲んでシュラフカバーにもぐりこむ。7時のニュー スを聞いたら寝た。しかし、寒くてすぐに目が覚める。すべて着込んでポンチョ とツェルトをかぶっても、だ。22時に茶、1時と3時にはパンを食う。それでちょっ とはうとうとしたが、寒さは身にしみた。これがビバーク訓練さ。星がきれいじゃ ないか。一晩くらい寝なくても死にはしないさ...と自分に言い聞かせて、ただ ひたすら耐える。
金属鉱物を採集した青物のズリ |
とはいっても、辛い一夜というわけではない。もともと、快適性を多少犠牲にし て装備を切り詰めてきたわけだし。それに、ぐっすり寝られなくても、やっぱり 自然の中で一晩過ごすのは楽しいものだよ。羽音も立てずに近づいたフクロウが 不気味に鳴く声やら、小動物がカサカサと動く音やら、野宿の醍醐味は十分堪能 できた。怪しい気配がいっぱいあって、自然の真っただ中にいるって感じだ。こ の雰囲気はテントの中にいちゃ、分からない。ただ、秩父の山中に比べたらはる かに獣の気配が乏しく静か過ぎるのは少し残念だ。
4日は4時半には起きて周囲で採集。昨日の石と合わせて鑑定、トリミングして整 理する。金属鉱物は慣れてくると区別がつくようになる。シートが乾くのを待っ て撤収。青物のズリを上まで登ってみるが成果なし。トパーズを採りにきた親子 連れに「十分にありますよ」と答える。下のズリに戻って水晶を探す。蛍石や微 小トパーズはいくらでもあるが、ないんだな水晶は。温かい陽気に集中力が途切 れた。引き揚げようとしているとさっきの親子に会う。父親が拾った大物を見せ てもらう。ちょっと黄色味がかったきれいな結晶だった。大したもんだよお父さ ん。13時12分のバスに乗ったらちょうどスーパーひたちに間に合い、早く帰れた。
今回は水晶、トパーズ、錫石、鉄マンガン重石、蛍石、黄鉄鉱、黄銅鉱、硫砒鉄 鉱、銅藍が採集できた。しかし、最大の収穫は、これらの金属鉱物の違いが分か るようになったこと。以前採集した標本を確認してみたら、今回新たに採集した と思っていた黄銅鉱、硫砒鉄鉱、銅藍がちゃんと入っていた。結局、あるものを また拾ってきたわけだ。それでも、十分に満足した2日間だった。