京都でマンガン修行


14日(7:00)東京駅→(9:33)京都駅→(10:15)保津峡駅→(11:10-14:15)保津鉱山 →(14:50)保津峡駅→(16:30)京都駅→(19:10)東京駅

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坑口で武村先生の説明を聞く

益富地学会館の催しに参加するため遠征した。マンガンの本場・京都で滿俺(ま んがん)放浪記の武村道雄先生が案内してくれるっていうんなら行かない手はな い。新幹線で京都まで駆けつける。集合場所の保津峡は京都から6駅目、乗車時 間約20分と都市近郊の駅だ。にもかかわらず、近くに民家はまったくない。わず かにトロッコ鉄道の駅が見えるだけの山の中で、「秘境駅」と呼ばれるのも納得。 そこに採集かに参加する約30人が集合。武村先生から簡単な説明を受ける。「黄 鉄鉱色で針状の結晶」の針ニッケル鉱も採れるという話に一同気合が入る。

益富地学会館の旗を先頭に水尾川沿いの道をぞろぞろ進む。林道を左に分けた ちょっと先で道が広くなる。その道路わきのガレ場を下って対岸に渡る。小沢沿 いに道をさかのぼると二又に着く。ここが最初の坑口。もう少し登るとチャート の基盤岩が露出した小滝が現れる。武村先生によればマンガン鉱床の基盤が見ら れるのは珍しいとのこと。この上に幅1メートル弱の鉱床があったらしい。そこ ら中に縦坑が残っている。説明もそこそこに聞きながらさっそく沢に降りる。こ の鉱山はズリがなく、沢の中に鉱石が点在しているからだ。

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滝になった基盤岩を観察

石の間に埋もれているまっ黒で丸っこい鉱石を掘り返す。結構硬い上に苦労して 割ったら白に灰色のシマが入った菱マンガン鉱−−というパターンが多い。誰か が割ったおこぼれから探した方が効率がいい。ここからでるピンクの鉱物はパイ ロクスマンガン石なんだそうだ。組成がほとんど同じなので見た目はばら輝石と まったく変わらない。パイマンといえば田口鉱山の結晶した標本が有名だが、そ れとは似ても似付かぬ姿だ。珍しい鉱物かと思えば、こちらのマンガン山では一 般的らしい。なあんだ。それでも関東ではめったにお目にかかれる鉱物ではない。 みてくれに文句をいわず、ありがたく収める。

鉱石の数は少ないが、大きいので割りがいがある。しかし、真っ黒な酸化皮膜を はぐのは思いのほか力がいる。汗だくになってハンマーをふるう。マンガンの標 本はある程度の大きさがあった方がいいというが、この作業を考えるとほどほど にしておきたい。菱マンガン鉱の中に銀白色の金属鉱物を発見。武村先生に見て もらうと「黄銅鉱が近くにあるから、四面銅鉱ではないか」という鑑定だった。 なるほど、そうやって判定するのか。

会館の採集会には同好会員以外も参加している。必ずしも鉱物愛好者ばかりでは ない。同志会の採集会とは雰囲気が違って、そこがまたおもしろい。採集した石 を「庭石にならないか」「玄関に飾りたい」という質問も飛び交っていた。それ に対して武村先生や主催者は▽ちゃんと洗う▽日光やほこりにさらさない▽ラッ プなどに包む−−など酸化を防ぐ保存方法を丁寧に説明していた。そんな感じな ので、ぼくもいろいろと聞きやすかった。鉱物の種類にこだわって採集している 人もいたが、きれいな石を楽しく見つけたいという感じの人も多かった。

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沢に入って鉱石を探す

勉強さえできれば、標本には欲を出さないつもりだったけど、産地に立つとそう はいかない。できれば標本の少ないテフロ石とアレガニー石が欲しいなって。で も、この産地は菱マンばかり。たいていは菱マン交じりで割れ口がキラキラして いて判別が難しい物が多い。下流部では小さな破片しかなかった。しかたがない ので二酸化マンガンのかたまりをいくつか拾う。

出合い付近で水晶がびっしりと付いた苔むした石を発見。最大2センチくらいの 結晶が付いた群晶をはがして、周りに声をかける。若い人の3人グループが飛ん でくる。「生えてるところは初めて見ました」としきりに感心している。「この 水晶、大きくなりませんか」と聞く人もいた。石が大きすぎて手も足も出ない様 子なのでタガネで小割りにする。他にも花崗岩のポケットに立派なのが見つかっ たが、場所が悪くて取り出すのは無理と判断。周囲の人たちも同じ意見だった。 みんなで観察して目の保養にした。こんな場合は粘土を詰めて割るという技もあ ることを教えてもらった。

採集会はこの後、近くの壁岩でコノドントやバシェギー石の採集へと続いたが、 今回はこれで十分満足。一行とお別れして駅に戻る。花園で大江理工社に寄って ミネラライトとラベルを買って帰る。採集できた鉱物はパイロクスマンガン石、 テフロ石、アレガニー石、ヤコブス鉱、菱マンガン鉱、二酸化マンガン鉱、四面 銅鉱など。特別なものが採れた訳じゃないけど、同定や保存方法などが勉強でき たのは収穫。京都の駅弁も食えたし、十分におもしろかった。