色鮮やかな鉱物がうれしい船岡鉱山


25日(8:15)大阪駅=(9:03)京都駅=(10:12)船岡駅→(10:40-15:15)船岡鉱山→ (15:45)船岡駅=(17:05)京都駅

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鉱山の入り口で説明を受ける

赤白珪石や重晶石などが採れる船岡鉱山はおもしろそうな産地だと前から目を付 けていた。そこで鉱物鑑定士研修会の一環として益富地学会館が鉱物採集勉強会 をやるというので、取材の都合をつけて飛んでいった。もちろん、採集方法など の基本もちゃんと勉強するつもりで。

船岡駅に集合した参加者は26人。30分ほどぞろぞろと歩いて産地に向かう。林道 入り口で説明を受ける。船岡鉱山は丹波帯中の黒鉱型鉱床で明治末期から大正時 代にかけて銅・亜鉛などを採集、小規模な精錬も行っていたという。産出鉱物は 黄鉄鉱、黄銅鉱、閃亜鉛鉱、重晶石、赤白珪石(朱色碧玉)、石英、方解石、そ れに銅・亜鉛が酸化したり水に解けたりしてできる二次鉱物が有名なんだそうだ。 黒鉱型鉱床なら金属鉱物の結晶は期待できないし、二次鉱物はみな同じに見えて よく分からん。やっぱり狙いは重晶石と真っ赤な碧玉でしょう。

とはいっても、標本を見せられると青や緑が鮮やかな二次鉱物は否が応でも目立 つ。「おお、これが藍銅鉱か」。目の覚めるような藍色が頭の中にインプットさ れる。樹脂のようにべったりと緑の皮膜がへばりついた珪孔雀石も分かりやすい。 ブロシャン銅鉱、孔雀石、含銅アロフェン、水亜鉛銅鉱...まだまだ美しい二次 鉱物は山ほどあるが、悲しいかなこんなに覚えられない。沢に転がる小石には、 そこここに緑の鉱物が浮き出ている。が、みんな孔雀石にしか見えない。

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枯れ沢で鉱物を探す

沢の流れをながめていると、緑色の物が見えた。あまりにも鮮やかな緑なのでてっ きりビニールのような人工物だと思った。念のためにすくい上げてみると濃い緑 色の皮膜が乗った石だった。珪孔雀石だ。小さいけれどいい標本。ここでは、や たらハンマーを振るわず、よく見て探した方がよさそうだ。赤白珪石はいくらで もあるが、「これぞ碧玉」っていうのは少ない。

朱色鮮やかな碧玉を探し出したものの、やたら重い。半分は擦れて丸まり白っぽ い。怪しい! 割ってみたら中身は細粒の黄鉄鉱だった。だまされたと思ったが、 白い部分に小さな板状結晶がある。おお、この結晶形は、お目当ての重晶石では ないか。いとも簡単に採集できてやや拍子抜けした。ここの重晶石には▽黄鉄鉱 の晶洞中の結晶▽針鉄鉱上の結晶▽褐鉄鉱に埋もれた結晶▽赤白珪石の脈―など の産状が観察できた。結晶はいずれも2ミリ以下の極小サイズ。針鉄鉱上のもの は透明、黄鉄鉱に埋もれているものは白色、褐鉄鉱中のものは透明だが、黄色い 粉まみれで美しくない。

沢をさかのぼっていくとやがて水が消え、石がゴロゴロしてくる。ここからが本 命か。重晶石に執着して本隊から遅れてしまうが、お昼になったのでえん堤下で 腰を落ち着ける。その場には、ぼくのほかに若いのと船岡鉱山に精通したベテラ ンさんが居合わせていろいろと話をする。その近辺で含銅アロフェンと藍銅鉱を 採集する。含銅アロフェンは水色の非晶質の鉱物。厚みがあって樹脂のような感 じが分かりやすい。ただ、非晶質だから色や形はさまざまで、とらえどころがな い部分もある。藍銅鉱はその名のとおり色に特徴がある。しかし、いまいち同定 に自信はなかったので講師の岡本先生に鑑定してもらった。

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露頭の解説をする岡本講師(右)

石積みえん堤を登ると沢は深くえぐれてくる。みんなは神社付近で石をガシガシ やっている。やや過密状態で、あまり落ち着いて探せる雰囲気にない。鉱山最上 部には坑口が三つほどあり、岡本先生が地層について解説してくれた。今時の鉱 山は鉱脈のずっと下方から掘り進み、傾斜を利用して鉱石を運ぶけれど閉山時に は埋め戻してしまうため鉱物が残らないのだそうだ。だから、ここのように鉱脈 を直接掘った古いタイプの鉱山の方が鉱物採集には適しているという話は勉強に なった。

最後に採集した鉱物を同定したり、それをスケッチしたりして、その場で流れ解 散となった。今回は勉強会だから採集した鉱物を同定してこん包時にメモを書き 込んだ。いつもあわただしくザックに詰め込んでいたことを反省する。帰り道で しぶとく採集したため1本電車に乗り遅れた。若いのと2人で話をしながら駅に向 かった。取り残され組はぼくらだけかと思ったら、駅には数人お仲間がいて鉱物 談義に花が咲いた。昨年からブームになった奈良県天川村のレインボーガーネッ ト騒動にはみんな反発を感じているようで、見識ある同好の士の存在はうれしかっ た。電車の待ち時間30分はあっという間だった。

本日の採集鉱物は碧玉、重晶石、黄鉄鉱、黄銅鉱、水晶、針鉄鉱、褐鉄鉱、藍銅 鉱、珪孔雀石、含銅アロフェン、孔雀石、水亜鉛銅鉱など。孔雀石は、よく標本 も見ずに「どうせ緑の皮」と思ってまじめに採集しなかったが、じっくり見ると 孔雀の羽のように美しい繊維状の結晶だった。もっとまじめに探せばよかったと 反省した。