16日(7:10)新宿→(10:35)赤岩橋→(10:50-13:00)石灰沢→(13:20-14:00)小倉沢 河原→(14:10)赤岩橋→(18:00)新宿
スピネルを探す採集会参加者 |
何度も通った秩父鉱山だけど、石灰沢はまだ訪れたことがなかった。金属鉱物は 出なくて、ベスブ石や灰ばんざくろ石などのスカルン鉱物が多産する秩父鉱山で は珍しい産地だ。鉱物同志会がそこで採集会をやるというので喜んで参加した。 マイクロバス2台に約50人の参加者が分乗して、中央高速・雁坂トンネル経由で 中津川に至る。雁坂トンネルを通るのは初めて。トンネルの前後で地形ががらっ と変わるのがよく分かる。これは甲州側がなだらかに風化する石英閃緑岩である のに対して、秩父側は四万十帯の堆積岩が浸食されずに残ったためと説明があっ た。沢を登れば一目瞭然。秩父側にはチャートの切り立った滝やゴルジュが多く、 反対側は花崗岩の美しいナメ滝が多く、初心者向きだ。
バスを赤岩橋で降り、小倉沢を渡って石灰沢に入る。出発時は雨だったが、現地 は曇りでひと安心。それでも一応長靴を履いて出撃する。底がぐにゃぐにゃで歩 きづらいが、ぬれを気にしなくていいのは気楽だ。食えそうなキノコがあちこち に顔を出している。確かめたり、採ったりする暇はない。産地の枝沢出合に着く も、目的の母岩がなかなか見つけられない。毎度のことだが、事前にいくつかの サンプルを見たものの、頭に残っているのは若草色のベスブ石と青いスピネルだ け。もう少し記憶の許容量を増やしたいとは思うのだが、...。とりあえず、枝 沢に入ってみんなと横並びで石を割ってみる。
あいさつする堀会長 |
しかし、割っても割っても出てくるのは白い断面だけ。お目当てのスピネルには かすりもせず、気持ちばかりが焦る。となりの人とは2メートルも離れていない。 周りを取り囲まれてカンカンやられるのは精神衛生上よくない。何とか青い「シ ミ」をたたき出して、その場を脱出する。本沢でベスブの結晶を探す。これだけ 人がいるともうカスも残ってないのではと弱気になる。幹事さんが大きな母岩を 砕いてくれた。無色透明な灰ばんざくろ石の微細結晶の間に、脈状に青い粒々が 入っている。みな目の色を変えて群がったけれど、たくさんありすぎて「みなさ ん、スピネル様ですからね」といわれるほど、あちこちに破片が残った。同様に 雲母状のクリントン石も採集できた。
本沢で淡褐色透明の結晶を拾う。灰ばんざくろ石! と喜んだが、幹事のNさん に「うーん、ベスブでしょう」といわれてしまう。そういわれれば、長方形の柱 面が見えるし、裏側は若草色のベスブ石だった。はぁ〜。ベスブは褐色短柱状の 透明結晶も拾えた。方解石の犬牙状結晶はちょっとうれしかった。飯を食う時間 も惜しんで探し回ったざくろ石は、ついに見つけられなかった。そろそろ下ると いう時間になっても枝沢で1人で石をたたく参加者がいた。誰かと思ったら、鉱 物同志会会長の堀先生だった。
小倉沢の河原で鉱物を探す |
下山中に青いシミのある転石を見つけた。割るとスピネルがいっぱい詰まってい た。喜び勇んで破片をいくつもザックに放り込んだ。母岩は若草色のベスブ石で 結晶面もいくらか出ていたが、スピネルは塊状態で結晶形も不明りょうだった。 質より量という感じ。本隊は小倉沢の河原に降りてしまったが、一部の人はえん 堤上に残ってクリントン石の結晶を探していた。
小倉沢の河原では電気石を探す。粗粒の石英閃緑岩に真っ黒な脈として入ってい る。小さな晶洞に細い針状―放射状結晶が立っているものを見つけたが、電気石 にしては色が薄い。いまいち自信がなかったので堀先生に確かめてもらった。 「電気石ですね。茶色いものもありますから。間違いありません」という先生の お墨付きが今回の最大の収穫だ。ラベルには、「堀先生鑑定の電気石」と書いて おこう。灰ばんざくろ石に磁鉄鉱の粒々が入ったものも採集でき、満足してバス に引き揚げる。
バスで隣りの席だったKさんは、ぼくと同じく電車バス派の採集スタイルだっ た。石灰沢も一度きたことがあるそうで、「出合から1時間くらいですよ」と軽 くいっていた。一辺が2センチ以上はある黄鉄鉱が採れる道伸窪に行きたいとい い、迷っていた。過去に落石で死亡事故があった所だから。2センチと聞けばぼ くだって目の色が変わる。だけど、落石は防ぎようがない場合もあるから怖い。 黄鉄鉱ごとき、いや鉱物ごときで命を掛けてはいけないよ。
帰って石の整理をしていたら、ほぼ無色の石灰沢産灰ばんざくろ石が出てきた。 いつ採ったのか全く覚えていない。小倉沢産のものも小粒だけれど結晶がいっぱ い付いていた。スピネルもおこぼれ採集品に濃青色八面体の結晶が乗っていた。 スピネルは本来濃青色だが、母岩の色によって青緑や水色に見えたりする。結晶 は無色の灰ばんざくろ石の中から出る。真っ白で重い母岩が狙い目ということだ。 堅さも半端じゃない。それにしても、スピネル様をたくさん採りすぎた。若草色 のベスブ石に染み込んだ青緑のシミは結構きれいだが、やや持て余し気味。毎回、 反省材料には事欠かない。