10日(4:50)保谷駅=(6:55)三峰口駅=(7:45)出合→(8:25)六助沢出合→ (11:40-11:55)尾根上の鉱山施設跡→(13:00-13:20)六助沢出合→(14:10)出合 =(15:03)三峰口駅=(17:40)大泉学園
保谷始発の一番電車で秩父鉱山に行く。今回は六助沢を狙うため早立ち。三峰口 7時発のバスに乗る。ぼく意外に2人も! 客がいて驚く。彼らはカメラを持ってい る。そうだ。紅葉シーズンに入ったんだ。出合から歩いて大黒に付くと突然、ラ ジオ体操の音楽が鳴り響いた。鉱山の操業時刻になったのだろう。いつも静かだっ たから稼動していることを初めて実感した。広河原林道の工事はまだ終わってな かったが、六助沢出合の作業は時刻が早いためか何もしていなかった。真新しい 側壁に掛けられたアルミ梯子を使って沢に下りる。
木のはしごが腐りかけだったりするが、順調にえん堤2つを越える。2年前に採集 した硫化の塊が残っている。真っ黒なマンガン塊を割るとはっきりした繊維状結 晶のバスタム石が出た。白―ピンク―あめ色と色は美しい鉱物だが、ムチャクチャ 堅い。マンガン+繊維状結晶は最強(最凶?)の取り合わせだ。整形し、黒皮を はぐのにひと汗流した。巨岩帯を左から越すと平らな鉱山施設跡地に出る。正面 は岩壁で行き止まり。本流は左に向きを変え、ゴルジュに続いている。少し沢通 しに進んでみるが、行き詰まる。無理はしない。引き返して右岸を見上げると、 導水パイプが尾根を巻いて奥に続いている。道はこのパイプ沿いにあるらしい。 ルンゼ―小尾根と強引に登る。ロープがある。正解だ。
紅葉が美しかった六助沢上流部 |
落ち葉で埋もれ消えかかったトラバース道を進む。途中完全に道が流れ、わずか なくぼみを拾って横切る斜面がある。右下の沢床まで50度くらいの傾斜で真っ直 ぐ切れ落ちている。標高差は20メートル位か。落ちても死にはしないと思うが、 めちゃ緊張する。か細い道をたどって消耗。2つ目の小沢を渡るところで一息入 れる。ここは閃緑岩ばかりで鉱石は見当たらないが、しつこく探したら緑れん石 があった。ラッキー。ほんのわずか歩くと河原に降り立つ。ホッとする。
沢水がさびで黄色く濁り、大理石を薄汚く染めている。貯鉱が近いことが分かる。 焼けた鉱石がそこら中に転がっている。ピンクのバスタム石のかけらを拾う。ば ら輝石かもしれない。ゴーロの河原歩きは難しくないが、右目の焦点がずれた状 態では、対岸に渡ろうと石を伝うとき距離感がつかみづらい。こんなときは、早 いとこ手術をした方がいいかなと思う。何となく付いている道をたどると、左岸 を突き上げるルンゼに行き当たる。ここは、はっきりした結晶形が残る金属鉱物 が集中している。上部に何かありそうだ。少し観察して先に進む。
傾斜が急になったところから右手のガレ場に取りつく。グズグズで悪い。垂れ下 がった残置ロープまでのトラバースは一歩も気が抜けない。つかんだらゴボウで 一気に尾根まで上がる。安全が確認できない鎖やロープはつかまないのが登山の 常識だが、「今回は鉱物採集。登山じゃない」と屁理屈をこねてすがる。新しそ うなロープは「地獄に仏」。思わず拝んでしまう。尾根にあがってもすぐに落ち 葉トラバースが現れ、気は休まらない。もう、本当に勘弁してほしいというのが 正直な気持ち。ふたたび沢床に降りると、二俣に出る。
本流は真っ直ぐだが、導水チューブは右の枝沢に向かっている。まっ黄色に染まっ た沢も右が怪しいといっている。もう、いいだろうとも思ったが、まだ時間もあ る。石英塊に閃亜鉛鉱の結晶が付いたものを見つける。ただ、体長1ミリほどの 黄色いヒルがびっしりと付いている。一瞬ヒルむ。ヒルは休眠中のようだし、手 袋もしているから何も問題はない。だけど、取り除くのに手間が掛かりそうなの であきらめる。歯ブラシを忘れたのも痛かった。途中に倒木がたまっているが、 もう少し、沢を詰めてみる。奥の二俣で右のルンゼに入ると水が枯れる。左岸か ら斜面に上がると踏み跡が現れる。斜面を巻いて続くその道をたどる。
黄鉄鉱がゴロゴロしていた鉱山施設跡 |
踏み跡はジグを切って高度を上げていく。尾根を詰めると展望が開けた鉱山施設 跡にでた。周囲の山々が紅葉に染まっている。ケーブルの残がいがあるから、貯 鉱から鉱石を下ろす場所だったのだろう。辺りには黄鉄鉱がゴロゴロと転がって いた。黄鉄鉱はもうげっぷが出そうなほど見た。飯を食いながら観察する。水晶 の間に乗った閃亜鉛鉱を採集した。右手前方にズリが見えたが、近づいたら大崩 落地だった。ビルくらいの大理石がいくつも転がっていた。もう少し、登らない と貯鉱には行き着けないようだ。本日はここまでとし、下山する。
下りは沢に降りず、踏み跡をたどった。すると大崩落地から続くルンゼに下りた。 落ち葉の積もったルンゼを尻滑りで快適に下る。砂防えん堤で右側の尾根に移る。 取り付きがいやらしいが、ロープがある。ありがたや、ありがたや。尾根を下る とルンゼを詰めた巻き道に出合う。ルンゼの下りは迷わずロープにぶら下がる。 ここでちょっと鉱物を探す。鉱物もあったが、休眠状態の山ビルもいた。不安と 緊張で消耗しまくった登りに比べたら、下りは楽なものだった。懸案のトラバー スもロープに頼り切ってこなせた。ただ、無地のロープは劣化も少なく、支点も しっかりしていたが、トラロープは支点の怪しいのがあった。
予定より早く六助沢出合に着いた。工事の人影がなかったので広河原沢まで出て のんびり食事をする。いまの状態なら、こちらから林道に上がるより、六助沢の 方から側壁を登った方が楽だ。途中、時間があったので山鳥河原に降りて自然金 を探す。石英は見つかったが、金はない。透明な水晶があると思ったが、どうも 結晶の形が違う。石膏だった。喜び勇んでひと切れ採集する。
バスはなんと2台連なってやってきた。前の車両に乗るとすでに立っている人が いた。途中のへんぴなバス停からも次々と客が乗ってきた。いつもはほぼ貸切状 態なのに。ずっと立ちっぱなしだったけれど、さすが紅葉シーズンと妙に感動し た。三峰口駅では、いつものソバやも売り切れたのか閉店していた。西武秩父で はソバを食っている間に最後のアカモミタケが売り切れてしまったのが心残り。 後はナメコ、クリタケ、ムラサキシメジとキノコシーズンの終了を告げるものば かりで、ちょっと寂しかった。
本日の収穫は閃亜鉛鉱、バスタム石、石膏、それに六助沢上部の情報。量は少な いが質は高い。しかし、いいことばかりではなかった。汚れを取ろうと石膏を洗 いまくったら、結晶が溶けてなくなってしまった。硫酸塩鉱物には水に溶けるも のがあるということは知っていたが、結局自分は愚かなアライグマだったのか。 そういえば、益富地学会館のFさんは「水に溶ける物なんて鉱物として認めん」 そうだ。その話を聞いたときは「じゃ岩塩はどうなるの」とか思ったものだ。し かし、いまはその気持ち、分かります。ぼくも声を大にしていいたい。水に溶け るような根性なしは鉱物とはいえない!!