雪の京都で鉱物修行じゃ


5日(22:40)新宿駅=(23:05)東京駅=6日(6:05)名古屋駅=(9:45)京都駅= (11:00)船岡駅→(11:45-15:45)船岡鉱山→(16:10)船岡駅=(17:05)花園駅= (17:20)宇多野ユースホステル、7日(9:30)宇多野ユースホステル= (10:20-11:42)益富地学会館=(12:00-13:00)京都駅=(22:08)池袋駅

Kenくん、N尾くんのレベルアップを図るため冬休みを利用して京都に行った。 経費節減のため青春18きっぷを使うなど貧乏旅行に徹し、1人当たり10300円弱に 収めた。それだけに各駅停車の旅はかなり疲れた。それでも、雪に埋もれた鉱物 を掘り出すなど苦労もあったけれど、楽しく充実した2日間だった。

5日午後11時43分に東京駅を出る夜行快速「ムーンライトながら」で出発。暖房 は良く効いているし、リクライニングするシートは快適だけど、目がさえて眠れ ない。すでに満席の列車に、自由席になる小田原からさらにどっと乗ってくる。 Kenくんは時々寝ていたが、ぼくの方は静岡―浜松間で少しうとうとしたくらい。 30分ほど停車する豊橋駅では駅の様子を見て回った。高架になっていて昔の面影 はなかった。6日午前6時、やっと名古屋に到着。入場券を買って新幹線の待合室 に入り、弁当を買って食べる。ここは売店の前にいすとテーブルがあって便利。

7時にN尾くんと合流。ところが、予定していた電車がない! 慌てて時刻表で確 認する。休日の時刻と間違えていたが、無事に大垣行きの快速に乗る。ちょうど 通勤時間帯に当たったためすごく込んでいた。やっと座れたと思ったらもう終点。 米原行きに乗り換え。今度は初めから座れる、ふう。関ケ原は雪がすごい。ホー ムにも1メートルくらい積もっている。米原から新快速に乗り換えるとまた満員。 トイレ前のスペースに陣取り京都まで頑張る。

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船岡鉱山の神社と御神木

京都での乗り換え時間は19分。その間にソバを食う。ここからはちょっとゆった りできる。と思ったら、地形図の見方などを説明しているうちにいつの間にか園 部。急いで乗り換えるとやっと次の駅が目的地の船岡だ。しかし、駅に着いてびっ くり。あたり一面雪景色だ。○| ̄|_ 園部の降雨量はずっと0だったはずなの に。産地は林の中だから大丈夫だろうとかすかな期待をもって目的地に向かう。

駅からはKenくんとN尾くん自身が、地形図とコンパスを使って行き先を定める。 最初に現在地と進行方向を合わせるのだが、これが難しい。自分の向いている方 向と地図の向きがなかなか一致しない。ようやく方向が定まり歩き出しても道を 曲がるともとのもくあみになる。地図とコンパスを正しく使うことはベテラン登 山者でもほとんどできていないので、初めてでうまくいかないのは無理もない。 だけど野外活動では基本だから徹底してやる。常に現在地を正しく示すまではで きなかったが、鉱山近くまでは間違えることなくたどり着いた。林道入り口で迷っ たところは地形を読む難しさがあったので助け舟を出した。

杉林の中も雪はあった。雪のない沢の中をのぞきながら進む。途中、雪の重みで 竹が倒れ、道をふさいでいる個所もあった。そんな状態でも転石から孔雀石や珪 孔雀石、含銅アロフェンなど緑―青色の鉱物を拾い集める。冷たいと思った沢水 は温かく感じられたのは意外だった。碧玉や重晶石を探すも良いものは見つから ない。黄鉄鉱の塊を割ったN尾くんが「においがする」という。硫化物を割ると 独特の硫黄臭がする。大事な鑑定のポイントだ。上流部は水が枯れ少し探しやす い。

登れば登るほど雪は深くなる感じだ。それでも、もうちょっと先に進んでみる。 古い石積みえん堤は落ち葉の上に雪が積もって状態がよくない。しかし、鎖場の 横断よりはここを直登した方が安全だ。ハンマーで落ち葉と雪をかき落として登 る。ちょっとした冬季登はんの雰囲気だが、2人とも余裕をもって登り切る。こ の先は雪に埋もれた溝に入る。「ここ掘れワンワン」で頑張ると、表面に孔雀石 や珪孔雀石が付いた石が出てくる。場所によって当たり外れがあるようだ。しか し、こう条件が悪いと緑色の鉱物以外はなかなか目に入らない。

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お汁粉を飲んでくつろぐN尾くんとKenくん

神社の前でパンとお汁粉で休憩する。密度の濃いシュトレーンは少量でも腹にた まるので冬場にはありがたい食料だ。メタで湯を沸かしてつくったお汁粉は少々 熱すぎた。KenくんとN尾くんはコップを雪の中に埋めながら冷ましていた。こ の辺りで積雪10センチくらい。ときどき風に舞って雪がぱらつく。山の中だなあ と感じる。ふたたび採集を再開するが、2人は身が入っていない。緊張感が切れ てしまったようだ。お互いが近づき過ぎると危ないと注意しても効果なし。異極 鉱も採れたので下山にかかる。途中、根性で藍銅鉱を掘り出し、面目を保つ。

帰りは急ぐ。電車が1時間に1本しかないこともあるが、N尾くんからトイレ非常 事態宣言が出たからだ。野グソ楽しいよ―と勧めるのだが、「死んでもいや」と いう。そこまで嫌わなくてもいいじゃないと思うんだけども、ここは彼の意見を 尊重しよう。船岡駅にはトイレがない。電車で1駅の園部まで頑張って事無きを えた。園部から花園までは3人とも疲れ切ってぐっすりと寝た。時間と労力の節 約で花園からユースまではタクシーを利用。暗くなる直前に本日のお宿・宇多野 ユースホステルに到着。

3人ともユースに泊まるのは初めての体験だ。ねぐらは2段ベッドが4つの8人部屋。 それが廊下をはさんで左右に並んでいる。古い寮のような雰囲気でなかなか良い。 利用者も友好的でKenくんとN尾くんはよく話し掛けられていた。本日は中国か らの団体さんもきていてかなりにぎやかだ。夕食後、食堂でその日の成果を並べ ていたら、中国の女性から「この近くで採れたのか」「どんな場所で採れるのか」 など英語でいろいろ質問を受けたので「ワンアウアー・フロムキョート」「オー ルド・マイン」「カッパ―・ミネラル」などとなんとか説明した。

勉強会は採集鉱物の鑑定会になってしまった。でも、現地では重晶石と見立てた ものが方解石だったり、珪孔雀石と思っていたら孔雀石だったりして、これが難 しかった。孔雀石、珪孔雀石、含銅アロフェンは似ている部分が多く鑑定の自信 が揺らいだ。炭酸塩鉱物が塩酸に溶けるしくみや、元素周期表について説明しよ うと考えていたが、3人とも疲れ切っていて、そこまでいたらなかった。午後10 時の消灯を待たずにさっさと寝た。はしゃいでいた2人も10時半には寝たようだ。

7日。起きたら雪が降っていた。一時は吹雪のように激しく降り、京都の街が白 くなった。バイキング方式の朝食を、あれもこれもといやしく目いっぱい食う。 益富地学会館までは市バス1本で行けるので9時半までゆっくりとくつろぐ。Ken くんとN尾くんの2人は2段ベッドの上部がよほど気に入ったようで、潜伏したま ま出てこない。出発間際はあたふたしたが、予定通りの時刻にユースを出る。

バスに乗って間もなくKenくんが「財布を忘れた」と騒ぎ出す。しかし、ユース に電話すると忘れ物はないという。ザックをかき回したらちゃんと出てきて一安 心。喜んだのもつかの間、こんどはバスに帽子を忘れた。それでも本人はご機嫌 だった。その勢いで益富地学会館に入る。

3階展示室には、ちゃんと「船岡鉱山の鉱物」コーナーがあった。ありがたく3 人で標本を拝む。Kenくんは深緑色をしたブロシャン銅鉱の見事な結晶にいたく 感心する。お願いして赤銅鉱をケースから出して見せてもらう。一見、黒っぽく てどこが「赤」だろうと思ったが、よく観察するとほんのりと赤い色が浮かび上 がる。周りを孔雀石が覆っているところも見分けるポイントだ。これで納得。やっ ぱり良い標本を見ると勉強になる。1階のお店でハンマー、タガネ、標本箱、ラ ベル、書籍を買い込む。N尾くんは図鑑を買う。会館の藤原さんと永富さんが、 1人1人の質問にていねいに答えてくれたことをKenくんもN尾くんも好感を持っ て受け止めていた。東京周辺にもこんな施設がほしいものだ。

地下鉄で京都駅まで行き、またソバを食って東海道線のホームに行く。ここでま たまた、電車の時刻を間違えた。12時34分の電車を39分だと思い込んでいて乗り 遅れた。こんなこともあろうかと次の電車でも22時前に東京に着くよう「保険」 は掛けてあるからいいのだが。それよりも、東海道線は土曜でも込んでいるのに は驚いた。京都―米原間はもちろん、米原―大垣間も立たなければならなかった。 ようやく席が空いたのは熱海を過ぎてから。小田原からはふたたび込みだした。 さすがに大垣からは学んで、早めに並んで座ったが、ローカル線では考えられな い。

車中で反省会を開き、今後の予定などを話し合う。一息ついて、うとうとしてい るともう名古屋だ。半分寝ぼけながらN尾くんとお別れする。昔住んでいた岡崎 周辺の景色はずいぶん変わってしまったところもあったけれど、懐かしかった。 街中を避けて、一瞬で通り過ぎる新幹線では味わえない風景だ。

豊橋、浜松、沼津、熱海、さらに大船で湘南新宿ラインに乗り換えて池袋に午後 10時8分に到着した。西武線に乗ってやっと今合宿のすべての日程を終了。Kenく んお疲れさまでした。この京都合宿は移動手段や宿舎など自分の好みの部分が多 かったけれど、さすがに疲れた。KenくんとN尾くんはよく付き合ってくれた。 京都はまだまだおもしろい産地がある。ユースも好評だったので、また行きたい。 でも、次回はもうちょっと楽をさせてもらおう。

じっくり見てやっと分かるほどのしょぼい標本も含めればその後の観察で採集鉱 物は孔雀石、珪孔雀石、含銅アロフェン、藍銅鉱、重晶石、黄鉄鉱、黄銅鉱、異 極鉱、針鉄鉱、亜鉛孔雀石、ヒシンゲル石、菱亜鉛鉱、褐鉄鉱と13種類ほどある ことが分かった。閃亜鉛鉱がなかったのは残念だけれど、異極鉱とともに、透明 な菱亜鉛鉱や水色の亜鉛孔雀石など亜鉛の二次鉱物があったのはうれしかった。