茂倉沢でバナジン鉱物をたたく


19日(7:35)大泉学園=(10:24)桐生駅=(10:55)梅田南小前→(11:10-15:00)茂倉沢鉱山→(15:40)桐生女子高前=(16:10)桐生駅=(19:40)大泉学園

もう2カ月以上山にいっていない。天気予報は芳しくなかったが、出掛けずにい られない。とはいっても、この間は忙しくて、山にいく計画を立てるゆとりさえ なかった。前日に「明日はどこに行こう」とおろおろするなんて情けない話だ。 思案した結果、桐生のマンガン山・茂倉沢鉱山にいってみようと決めた。

茂倉沢といえば、日本産新鉱物の「長島石」や「鈴木石」などバナジウムを含む マンガン鉱物が出ることで超有名な産地だ。長島さん、鈴木さんにロスコー雲母 を加えて「V3」あるいは「バナジン3きょうだい」と呼ばれたりしているらし い。3人きょうだいとの対面は狭き門らしいが、きれいなばら輝石が採れればそ れでいいや。欲をこくとろくなことはないから。

宇都宮線、両毛線と乗り継いで桐生駅へ。そこからバスで梅田に向かうつもりだっ たが、時間短縮のためタクシーで南小前まで入る。バス停から鉱山入り口までは 15分くらい。場所は比較的分かりやすい。すぐに沢に降りて鉱石を探す。まだ、 鉱山から遠いからかマンガン気は少ない。鉱山の旧道が沢のわきに現れるが、か なり荒れていて沢の中の方が歩きやすい。小さなマンガン片は落ちているが、こ ぶしより大きな塊はない。割った跡すらほとんどない。

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暗い杉林の中を流れる茂倉沢

小さいマンガン片を観察すると黒っぽいアズキ炭マンとばら輝石が多い。高品位 鉱の炭マンはもろく、炭マン混じりの白っぽいばら輝石はめちゃくちゃ堅い。ば ら輝石やハウスマン鉱が霜降り状態になった鉱石もある。赤みが強く透明感のあ るアレガニー石や黒い筋状のヤコブス鉱とともに緑色の緑マンが入っていたりす る。数は少ないが、結晶質で濃いピンクのばら輝石もテフロ石を伴って出る。

お目当てのバナジン鉱物は粗い結晶のばら輝石にきているという。が、しかし、 ないんだな。そんな都合のいい鉱石は。転石の間を目を皿のようにして探すも落 ちているマンガン片はせいぜい饅頭サイズだ。割るというよりは、つぶすという 感じ。はぁ〜。気合が入らない。そんなんだから、「鈴木さ〜ん、おるすです かぁ」と声もかけずにガンガンやって黒皮をはぎ、カット石用に砕いた。で、後 からよく見たら緑色の微細な染みが点々と入っていた。

数少ないマンガン片を追って上流へ。林道終点あたりが一番鉱石が多そうだった。 こぶし大の石を拾って割ってみると結晶形が分かるほど粗いばら輝石がいくつか 残っていた。しかし、予定していたバスをパスしてしまったので、鉱石のありそ うな場所を確認して引き揚げる。

このころから強い風が杉林の中を吹き抜けるようになる。山を降りると、里はちょ うど梅の季節で春らしい雰囲気が漂っていた。しかし、押し戻されるほどの突風 にはまいった。これも春らしいといえなくはないのだが。朝のうちは雨が降るよ うな予報だったが、ずっと青空が広がっていた。気が付かなかったけれど、低気 圧が通過したようだ。ふきっさらしの中をバスターミナルになっている桐生女子 高前まで歩く。ちょうどバスが止まっていて、WBCのラジオ放送を流していた。 タイミングよく、準決勝で日本が韓国に快勝する瞬間を聞くことができた。

小山に着くと強風で利根川を渡れないということで、列車が止まっていた。新幹 線に乗り換える人がずいぶんいたけれど、急ぐ旅でもないので普通列車に乗って 待つ。座っていられるし、扉は手動で閉めることができるので寒くなくて助かる。 それでも10分くらいで運転再開となり助かる。途中駅では信号待ちなどで数分間 停車した。それはかまわないのだが手動開閉装置があるのに、風がめちゃ強いな か扉が開きっぱなしなのは勘弁してほしいと思った。

今回はまじめに、ばら輝石をカボション・カットしてみた。現場では、華やかな ピンク色という印象が強かったがカットしてみると、なんだか暗い赤紫色って感 じでさえない。磨いて見栄えがするためにはよっぽど玉がよくなくちゃだめなの か。