なめていた東北の春


3日(15:30)池袋駅=(18:33)北上駅、4日(5:15)北上駅=(5:40)和賀仙人駅→(6:40-9:40)和賀仙人鉱山→(10:40)和賀仙人駅=(12:53)羽後境駅=(13:35)協和ダム→(14:40)亀山盛鉱山、5日(6:30)亀山盛鉱山→(8:40)協和ダム=(10:05)羽後境=(17:10)大泉学園

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カタクリの花が咲く和賀仙人鉱山

連休は東北へいくと決めていた。一番のお目当は日三市鉱山。それに加えて、赤 鉄鉱の和賀仙人鉱山やマンガンの田野畑鉱山も候補に入れる。しかし、列車の本 数が極めて少ない東北を二泊三日の日程で効率よく周るのはとても無理と分かっ た。休みの初日が下り列車がもっとも込み合う3日になったこともあり、計画を 練り直して、(1)和賀仙人(2)亀山盛(3)日三市の順に3カ所を周ることにした。初 日は夕方に北上に入り、翌日は和賀仙人経由で亀山盛にいってビバーク。3日目 は日三市でビバークし、4日目に帰る強行日程を組んでみた。

3日は午後2時ごろゆっくりと出発。北上駅前でホヤ刺しと焼き魚定食を食う。予 約が遅くなったためホテルがちょっと遠い。それより、駅弁がないのが痛い。明 日の朝食はサンドイッチで我慢だ。地元の人によると今年は例年より桜が一周間 も遅れ、いまがちょうど満開だという。

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ピカピカ赤鉄鉱の露頭

4日は北上線の一番列車に乗る。和賀仙人駅からは仙人峠方面の登山道を行く。 ガイドブックなどには湯田ダムの下流・左岸のズリか、川を渡った反対側のズリ が紹介されている。今回は初めから対岸側からアプローチを試みる。登山道を外 れると沢が現れる。頭上に軌道が見えるがこれで渡るのはヤバそう。渡りやすそ うな場所を探して突破する。この季節は雪解け水で沢は増水している。また出く わしたらいやだなと思ったが、いやらしいのはここだけだった。

この辺りは鉱山施設だったらしく、平らな部分が多い。かん木が少しヤブっぽい けれど、イチゲやカタクリ、スミレなどの花がそこら中に群れて咲き、ホッとで きる場所だ。貯水池を過ぎると、草がなく不毛でじめじめした場所に出る。足元 にキラっと光る物がある。拾ってみると黒光りした赤鉄鉱だった。晶洞内には水 晶とともに自形結晶もある。周囲を見渡すと鈍い黒色の鉱石が散らばっている。 斜面を見上げると黄色の地面がむき出しになっていた。

その右側に石が積み重なった場所があった。小規模なズリだった。割られた痕跡 がない。しかし、赤鉄鉱や水晶はたくさんある。ザックを降ろした場所に目印を 付け、腰を据えて採集する。水晶を伴う赤鉄鉱は晶洞部分に六角板状の結晶が見 られる。雲母鉄鉱といわれるわけがよく分かる。水晶はいくらでもあるが、一抱 えもある母岩を解体する苦労を考えると手が出ない。あとは黄鉄鉱。グズグズの 赤鉄鉱に大きめの結晶が埋まっている。しかし、形がいびつで美しくない。5ミ リ程度のものの方が結晶形がしっかりしている。

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黄鉄鉱の露頭

鉱物の種類は多くないので採集は適当に切り上げて周囲を散策する。花とともに 山菜もたくさんでているが、分からないのが悲しい。春の日差しが暖かい。平ら な広場もあるし、こんなところでビバークしたい。上流に向かって川沿いを進む。 すぐに断がい絶壁に阻まれる。500メートルほど先に大きな坑口が開いた赤茶け た斜面が見える。和賀仙人鉱山だ。しかし、和賀川は増水してこれ以上は進めな い。渇水期に再訪しよう。河原で灰鉄輝石と灰ばんざくろ石を拾う。

時間は十分あると思っていたが、あっという間に過ぎる。写真を撮りながら、の んびりときた道を引き返す。和賀仙人駅で、置かれていたノートを見る。鉄道マ ニアや昔の住民などの書き込みがあった。ここで、「駅寝」という言葉を知った。 ステーションビバークというよりは分かりやすい。和賀仙人のような、こぎれい な無人駅は駅寝に最高なのだろう。でも、自分は野宿派だな。

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遠くに望む坑口とズリ

駅から列車に乗ったのは自分1人だったが、満席でびっくり。でも、二つ先の 「ほっとゆだ駅」で大半が降りた。温泉施設を併設した有名な駅だ。朝が早かっ たので、横手までうとうとする。奥羽本線に乗り換えてからも寝る。羽後境から はタクシーで協和ダムまで入る。以前の土砂崩れ個所の工事は終わっていたが、 林道終点から500メートルほど手前で新たな土砂崩れが道をふさいでいた。道の 両脇にはフキノトウがいっぱい顔を出していた。まだ若い、食べごろのものもあっ たが、調理の仕方が分からず手が出ないのは残念。

林道終点で突然雪が出てくる。奥に進むと道全体が雪に覆われる。嫌な予感がす る。残雪を踏んで鉱山跡にたどり付くと、そこは一面の銀世界だった。わずかに 地面が出ている部分にツェルトを設営する。ズリはすっぽりと雪に覆われていた。 その厚さは約1メートル。雪壁と化したズリは掘ることはもちろん、滑落が怖く て取り付くこともできない。はるばる足を運んだのに、なんてこったい! しか し、手ぶらで帰るのもしゃくだ。増水した沢をムリムリ渡って雪壁の下にいき、 ズリのおこぼれを探索して、緑鉛鉱、青鉛鉱などを確保する。

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ズリもやっぱり雪の下

夕食の富山名産イカ墨パスタは、塩味が利いてうまい。汁物は当然、もずくスー プでしょう。夕食が済んだらシュラフにもぐり込む。新調したツェルトは小型軽 量だが、狭い。起き上がると頭がつかえそうだ。透湿性があるらしいが、結露は 結構ある。快適さを求めるか、軽量化を優先するかは悩むところ。まあ、馴れれ ば問題はなかろう。それにしても寒い。シュラフカバーとアルミシートを置いて きたことが悔やまれる。東北の春をなめていた。震えながら一晩を過ごす。天気 予報では明日は昼前に雨が降るという。翌日の行動を考えると気がめいる。夜通 し悩んだ結果、1日早めて帰ることにする。日三市の調査ができないのは残念だ が、産地が雪に埋もれている可能性もあるし、それにもう一晩雪の上で寝るのは 勘弁してほしい。寝られない夜はいつものようにラジオでナツメロを聞く。する といくらかはうとうとできる。

夜半に雲が出て翌朝は曇り。10時に協和ダムまでタクシーを頼んであるから、9 時に出発すれば十分だ。しかし、そんな時間までここにいたくない。5時には起 きて、6時には撤収準備が終わる。河原でだらだらと石を探しながら下る。白鉛 鉱と珪孔雀石を拾う。ちっちゃなブロシャン銅鉱もあった。出合まで戻ると反対 側からヘルメットをかぶった人がやってくる。工事関係者かな、それにしても1 人とは変だなと思いつつあいさつをする。すると「この近くに鉱山はありません か」というではないか。なあんだ、同業者か。

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今夜のお宿は雪の中 トホホ

彼は東京から連休を利用して東北地方の鉱山を回っているという。同志会の会員 であることも分かり、情報交換をする。といっても、お互いに成果はかんばしく ない。昨年の10月も亀山盛にきたが場所が分からずじまいだったという。今回は 運良く現地で同好の士にめぐり合い、無事産地にたどり着けたという訳だ。もっ とも、鉱山は深い雪のなかだけれど。採集はお互い大いに外したけれど、お仲間 と知り合えたことで実りはあった。雪の中、粘ったかいがあった。

8時ごろ、生暖かい風が吹き出したと思ったら、ついに雨になった。ダムサイト の展望台への階段で雨宿りをしながら時間をつぶす。こんな天気でも結構車が通 る。タクシーの運転手から「クマは大丈夫か」と心配される。山に入っていて知 らなかったのだが、地元秋田でさっそく被害者が出たらしい。クマどころか獣の 気配はまったくなかった。羽後境の駅周辺は桜がみごとだった。雨のなか、あち こち見て周る。

大曲の駅で翌日の指定券を払い戻し、本日の切符を買い直すが、指定は盛岡まで しか取れなかった。盛岡で自由席のある列車に乗り換える。全席指定は不便だ。 やまびこは盛岡始発なので余裕で席を確保できた。しかし、北上で満席になり、 仙台からは超満員になった。しかし、昨夜の寝不足を取り戻していたので気がつ くともう大宮。慌てて飛び出した。

春まっ盛りの岩手・湯田周辺に対して、秋田の山間部はまだ冬だった。公共交通 機関を使うため、きっちり立てた計画が裏目に出てしまった。あっちもこっちも と欲を出さず、融通の利く計画の方がいいかもしれない。まあしかし、予定どお りとはいかなくても、念願の赤鉄鉱が採集できたので満足じゃ。それに、鉱山と 温泉が集中する湯田周辺はおもしろそうな地域だと分かったことは収穫だった。 反省点は目の前にたくさんある山菜に手が出なかったこと。もうちょっと勉強し て、そちらの方面も強くなりたい。