金は雨にくる


13日(5:15)大泉学園=(9:35)河津駅=(9:50-11:25)菖蒲沢海岸→(12:00)河津駅 =(12:25-13:40)伊豆急下田駅=(17:05)池袋

「雨の方が分かりやすいんですよ」。堀先生の言葉は本当だった。冷たい雨の降 る菖蒲沢で、自然金は輝いて見えた。

4月下旬に開かれた鉱物同志会の20周年記念パーティーで「雨でも鉱物採集はや るんだ」というあいさつがあった。「さすが同志会。20年の重みは違う」と妙に 感心した。で、雨をチャンスだと飛び出した。

早く現場に着きたかったので今回は新幹線を利用。久しぶりにこだまに乗る。こ れまで見向きもしなかった列車だったが、熱海までこんなに速くていいの? と 驚いた。車内はガラガラだし、こりゃブルジョアの乗り物だよ。

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金が採れる菖蒲沢海岸

伊豆急の車窓から海を見ていると意外と風が強いことが分かった。雨具は傘しか 持っていない。手袋もカッパも忘れた。ぬかったと後悔。河津の駅でコンビニを 探すが近くにはなく、あきらめてタクシーに乗る。運転手から「この雨のなか釣 りですか」と聞かれたが、石探しとは答えられなかった。

まずは沸石狙いで左側のがけを見にいく。大岩がゴロゴロしている先に露頭があ る。中段が大きくえぐられて、その部分が平らになっている。テラスに上がると 雨をしのげる。傘を置いて露頭を観察する。ところどころ、海側からのワイドク ラックがあり、割れ目に沿って波が打ち寄せる。風が強くて、かなり波は高いの で緊張する。こんな状態でも防波堤で釣りをしている人がいるのには驚いた。

沸石の脈はあちこちにきているがいずれも細い。足元にはほとんど石が落ちてい ないのは、やんだに比べて岩がかなり堅いからだった。ちらほらと晶洞はあるが、 大きくは崩せないので採集は無理。モルデン沸石、輝沸石、菱沸石、魚眼石、方 解石などを観察する。こちら側の海岸には石英はほとんどない。不思議だ。

磯から浜辺に移って自然金を探す。まずは銀黒のある石英れきを物色する。大き な石は始末が悪いのでこぶしより小さいサイズに狙いを絞る。ところが、肝心の 銀黒がない。というよりよく分かってないので見つけられないのだ。黒っぽい部 分がある石はたくさんあるけれど、緑っぽかったり、赤っぽかったり、どうも銀 の黒とは違うんだな。

銀黒は「墨流し」といわれるとおり、薄くても無彩色のはずだ。その色の感覚を 目安に小石をながめると、それらしい物はある。最初の銀黒に金はなかった。し かし、二つ目に拾った物にはごく小さな輝きがあった。ルーペで確かめるた、や や赤みがかった黄色い金属光沢は、堀先生に見せてもらったサンプルと同じだっ た。その後、薄い銀黒に1ミリほどの肉眼でも分かる大きさの自然金を見つけ、 同定に自信が持てた。ひとつ見つかると、後は簡単だった。ついでに、赤玉とメ ノウも拾った。

水晶や黄鉄鉱のキラキラは、暗い雨のなかでは抑えられる。しかし、金だけは輝 きを失わない。確かに、天気のいい日は光る物がたくさんあって金までたどり着 かなかった。金の輝きを知っていれば、それらに惑わされずに見つけることがき るだろうが、初めての採集ではそこまでは見抜けない。「雨の方が分かりやすい」 とはこういうことだったのか。金の特質がよく分かる鑑定方法だ。

それにしても、やはり「ある」と確信を持つ事が一番だろう。今回の収穫は、堀 先生のところで実物に触れたことが大きい。そうでなければ、とても冷たい雨の 中、傘からはみ出す左腕と靴をぐしょぐしょにぬらしながらがんばることはでき なかっただろう。もっと粘れば数も拾えただろうが、さすがにこんな天気では欲 に目がくらむようなことはなかった。公衆トイレで雨宿りしながら標本をこん包 して引き返す。

ところが、バスは15分前に出たところだった。しかたなく、駅まで歩く。途中、 吹きさらしになる場所があり、猛烈な向かい風に傘が壊れそうだった。だましだ まし進んで強風帯を突破する。平場に下りてホッとすると今度は後ろからの突風 で傘がおちょこになり、泣いた。勘弁してほしいよ。

いったん下田に出て、冷えた体を温めるために、駅の食堂で「十割浜ソバ」を食 う。刻み海苔の代わりに生海苔がのっている。磯の香りがしてうまかった。でも、 ざるソバで温まろうというのは無理があった。塩辛や駅弁などを物色していたら 1時間はあっという間。慌てて改札口に向かう。帰りの特急はヒーターが利いて いなくて、ぬれた足は新聞紙を敷いても冷たかった。

たしかに雨の日でも採集はできるが、寒いから良い子はまねしないでほしい。カッ パと手袋と長靴で完全装備していこう。