21日(7:00)新宿=(10:40)赤岩橋→(11:00-14:00)赤岩坑→(14:20)赤岩橋=(19:20)新宿
堀先生の説明を聞く |
鉱物同志会の採集会で新緑の秩父鉱山を訪れる。今回は会の採集会でも初めてだ という赤岩坑。この産地はミメット鉱や白鉛鉱、異極鉱などの二次鉱物と斧石が 特徴だ。バスの席が後ろだったためサンプルを見る時間がほとんどなく、少し不 安を覚える。鉱山住宅が並ぶ集落前を通ると、宅配便の車がきていた。住んでい る人がいるのだ。住民はいないと聞いていたが、まだ現役だった。赤岩峠への登 山道に入るとすぐ、奥の沢に沿った道を登る。
ヤブっぽい道を沢に降りると左岸の急斜面に取り付いてえん堤を越える。てこず る人もいたが、難しくも危険でもない。足取りが怪しそうな人のために踏み固め て道を作る。産地はこのえん堤の上から始まる。「赤岩はあまり人が行かない産 地。新しいものが見つかる可能性もあります」。バスタム石を手にした堀先生の 話にみな気合が入る。
両岸にズリが広がる赤岩坑 |
先頭集団を追って枯れ沢を詰める。傾斜が急な上にヤブっぽくて歩きにくい。テ ストを兼ねてAIGLEの長靴を履いてきた。ガレはグニャグニャしてよくないけれ ど、土の斜面は食いつきが良い。脱げばすぐ乾くし蒸れもさほど気にならないレ ベル。とりあえず合格点を出そう。天気がいいのはありがたいが、暑い。一歩登 るごとに額から汗が流れる。
二次鉱物は褐鉄鉱に覆われた水晶にきているという。しかし、それらしいものは、 なかなかない。たまに掘り出しても土とコケにまみれてよく分からない。ガサガ サで茶色の汚い石の晶洞をルーペでじっくり観察すると、形ははっきりしないが 緑鉛鉱のような若草色の塊が張り付いていた。二次鉱物を堀先生は「色のついた コケのようなもの」という。たしかに本物のコケとの区別は微妙だ。ただ、二次 鉱物に限らなければ水晶や硫化、大理石はいくらでもある。人が入った形跡も極 めて少ないので何かありそうな希望は持てる。
大した収穫がないので、先頭集団が集まっている場所に行ってみる。そのあたり は沢の両岸がズリになり、鉱石が埋まっているのが分かる。ちょうど誰かがマン ガン斧石を採集したところで。おすそ分けをいただく。するとすぐ近くで斧石が 見つかった。ありがたいこってす。褐鉄鉱上に白い半透明の皮膜のような鉱物を 見つける。二次鉱物らしいが、同定は難しい。
住宅も自販機も現役 |
がけになっている沢の両側上部には道がつけられていた。沢筋だけでなく、上で も採集はできる。道を下っていく途中で晶洞がたくさんある硫化の塊を拾う。黄 鉄鉱の結晶のほか閃亜鉛鉱の結晶もある。本体は磁硫鉄鉱らしい。白い半透明の 結晶も付いている。解体していくつか採集する。白い結晶を堀先生に見てもらう。 方解石ではないかというが、条線が見えないのが怪しい。先生はその場でナイフ を取り出して、「傷がつかないから二次鉱物ではありませんね」とのこと。なる ほどそうやって調べるのか。ナイフをザックにしまいこんでいたことを反省する。
えん堤近くで新人の女性から「これ何ですか」と水晶を見せられる。黄色いさび に覆われていたから分からなかったようだ。母岩にあった黄鉄鉱と閃亜鉛鉱も教 えてあげる。とりわけ珍しい鉱物ではなくても「すごくきれい」と喜ぶ初々しさ が新鮮だった。聞けばおじいさんのハンマーを持ってきたら柄が折れてしまった という。でも、大丈夫。みんなからたくさんおすそ分けをもらったから。もちろ ん、ぼくもあげた。
今回は緑簾石、バスタム石、ばら輝石、ヨハンセン輝石、黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、マ ンガン斧石、水晶などを採集できた。自分も含めて二次鉱物を採集できた人は少 なかったようだ。しかし、まだ十分いろんな鉱物を採集できる産地が分かったこ とは、それ以上に大きな収穫だった。満足して山を降りる。暑かったので、鉱山 住宅前の自動販売機前には列ができた。ちょっと不安があったが、出てきた冷た い飲み物は、ちゃんと賞味期限内のものだった。