2日(11:15)ほっとゆだ駅=(12:45)町営スキー場前→(13:30)赤石鉱山→ (14:00-15:30)鉱山で採集、3日(6:45)赤石鉱山→(7:35)町営スキー場前= (8:00-10:42)ほっとゆだ駅=(11:35-12:20)北上駅=(16:00)大泉学園
一つ先のほっとゆだ駅は西和賀町の中心地だけあってにぎやかだ。バスを1本見 送って観光をする。まず、観光協会の食堂で天せいろソバを食う。山菜の天ぷら がうまい。次はお目当の民俗資料館を見学。土畑鉱山の鉱石がたくさん展示して あった。しかし、本命はマグマ展の方だった。管理人がいる部屋なので躊躇して いたら「どうぞ」と勧められた。鷲合森の黄銅鉱や黄鉄鉱、方解石、水晶、霰石、 重晶石、仙人鉱山遠平鉱床の赤鉄鉱、紫水晶、鷲ノ巣金山の自然金...と旧湯田 町を代表する鉱物―それもすべて1級品―が所狭しと並んでいた。目が点になっ た。鷲合森に霰石が出るとは知らなかった。水晶が埋まっていたのは霰石だった のか。ああ...。それでも新たな鉱物産地が分かったし、実りある訪問だった。
町営スキー場でバスを降り、田んぼ沿いの道を進む。鉱山入り口の林道には水場 があり、コップまで置いてあった。道のわきには赤いムカゴ(実)を付けたミズ がたくさん生えていた。道が開けたところが事務所跡。大量のカラスが飛び立つ。 ここはカラスの森か。荷物を置き、山に登る。
左手の山が鉱山だ。はげ山にススキが生い茂っている。道をたどってジグザグに 登る。ここは銅の二次鉱物を露天掘りしていた鉱山で黄銅鉱も産した。しかし、 足元に鉱石らしき石は見当たらない。道を外れれば草ぼうぼうで石を探すどころ ではない。登るにつれて道もススキ野原に埋没していった。結局最後はヤブ漕ぎ。 頂上直下でわずかに地面が露出しているところで鉱物を探す。
最初に見つけたのは玉髄だった。瑪瑙や蛋白石もある。淡い青紫の瑪瑙は標本ク ラスだ。焼けた石からは重晶石も見つかった。ぐちゃっとして結晶は美しくない。 二次鉱物らしい黒い塊もあったが、同定できない。平らな頂上は草っぱらになっ ている。埋め戻されたようで石は見当たらない。ごく狭い範囲を漁るように探し たけれど成果は知れたものだ。雪解け直後なら採集できるのだろうか。
少し戻って林道の脇にツェルトを張る。沢は近いが鉱山の廃液が流れ込んでいる ので、林道入り口の水場まで足を延ばす。ついでにミズも少し採集。根元部分は おひたしにし、実はみそ汁に入れた。味は淡白。トロッとした食感がおいしかっ た。ご飯も五穀飯に汐吹きアサリをたっぷり入れたし、だんだん豪華なディナー になってきた。
午後7時にはシュラフにもぐり込む。標高が低いから暖かい。虫に刺された覚え もないのに足が無性にかゆい。実はブヨに派手にやられていたのだが、まったく 気付いていなかった。ツェルトの張り方を工夫して室内を広げてみた。ちょっと ゆとりができ、わりとぐっすり寝られた。
3日。パスタの朝食を取り急いで撤収。曇りで暖かかったのでツェルト内はぬれ なかった。その代わり外側はしっかり夜露が付いた。結局、どちらかはぬれるの か。スキー場前で8時前のバスに乗る。ここにもゆっこがあり、休日は8時から入 れる。この町はどこでも温泉があるのか。併設のレストランはすでに営業してい る。田舎の朝は早いなあと感心する。
駅に着いたらまっ先に温泉に向かう。とはいっても駅に併設されているからバス を降りて数秒で着く。ここも250円。朝っぱなから地元のおっちゃんで繁盛して いる。うわさどおりお風呂に信号機がある。電車の時刻が近づくと黄色から赤に 変わるらしい。でも、この日は無灯からいきなり赤になった。黄色の電気が切れ ていたようだ。今度はじっくりと浸かってやろうと湯船に入る。ところが、めちゃ くちゃ熱い。ボヤボヤしてたらゆでだこになっちまう。源泉は60℃以上あるそう だ。熱い訳だ。たんまりと扇風機に当たり、冷たい麦茶を飲む。
駅にザックを置き、手ぶらで山本鉱山を見に行く。とはいっても鉱山はダムに沈 んでしまったらしく採集できる見込みはない。近くに道路は通っているものの、 急斜面とヤブに阻まれて水面近くまで降りるのは難しい。こんなところで冒険す る気も起きない。斜面を観察しながらぐるっとまわる。結局降りることはできず、 元きた道を引き返す。が、法面から落ちた石を観察していると石英塊が出てきた。
じっくりと探すと水晶も見つかった。斜面に張り付いて物色する。小さいけれど 形のしっかりした水晶、それに黄銅鉱の結晶も拾えた。泥を落としたらわずかに 紫がかったものもあった。これは掘り出し物だ。後で調べたら山本鉱山にもっと も近い場所だった。もっと広範囲に探せば新たな発見があるかもしれないけれど、 それは次回のお楽しみとっておこう。
観光協会の店でコーヒーを飲もうと思ったら、まだレストランは営業してなかっ た。土産物をつらつら見て、ミズの実と乾燥ゼンマイ、それに湯沢市産の「ずん だ蒸し羊羹」を買う。ゼンマイは秋田産と地元産、さらに今季ものなど種類が多 いのは驚いた。もちろん地元産の今季ものを買った。ミズの実はどうやって食う のか訪ねる。「キャベツとお漬物にする」のが一般的らしい。地元の商店をのぞ くと馬鹿でかいトンビマイタケを売っていた。さすがにそれは遠慮する。魚の乾 物がいくつか置いてあったので、切りタラを買う。初めてお目にかかる食材なの で、食い方を聞く。「一晩水で戻して甘辛く煮る」んだそうだ。時間はかかるが 難しくはなさそうだ。
ほっとゆだ駅周辺では観光客をよく目にした。温泉目当ての人が多いようだが、 元気のいい自転車やろう(女性も含む)も目立った。温泉がそこら中にあるのが 魅力なのかな。水晶もそこら中から出そうだ。探索しきれなかった鉱山や新たな 産地もいっぱいある。自分にはそっちの方が魅力がある。宿泊地も色々ありそう なので、もう少し通いたいと思った。
家に帰ってきてからも新たな発見があった。すねから足にかけて100カ所以上、 ブヨにボッコボッコにやられていた。1日たつと足がはれ上がった。痛かゆさで1 週間泣いた。敗因ははっきりしている。夕方になっても短パン、サンダルでいた からだ。東北の山をなめてはいけない。
おわり