24日(5:55)大泉学園=(10:20)大曲=(10:53)羽後境=(11:25)荒木沢橋→ (12:15-16:00)亀山盛鉱山、25日(6:30-8:00)採集→(9:00)鉱山出発→(9:50)荒 木沢橋=(10:20)羽後境=(11:20-13:30)大曲=(17:30)大泉学園
赤いムカゴが「ミズの実」 |
水晶が採りたい! キノコが食いたい! たき火野宿がやりたいよぉ。ということ で秋田に向かう。場所はどこでもいいんだけどね。22000円で秋田まで往復でき るお得な「おはよう秋田往復きっぷ」が9月末でなくなってしまうから、どうせ なら秋田にしましょうとなった訳だ。
大曲でこまち1号から奥羽本線に乗り換え、羽後境で降りる。田んぼは黄金色。 稲刈りの季節になっていた。例によって協和ダムまでタクシーを利用。今回は土 砂崩れもなく荒木沢橋まで入れた。運転手は「マイタケの季節になった」という。 期待が膨らむ。大倉沢沿いの道はヤブっぽくなっていたが、人が歩いた形跡はあ る。道端に生えているミズの実を物色して夕食の算段をしながら進んだら時間を 食ってしまった。
ズリの最上部からのながめは |
大倉沢はどこでも渡れるほど水が少ない。雪解け水がごうごうと流れていた春の 様子がウソのようだ。沢沿いに進んで鉱山下部のズリに至る。小ザックに替えて ズリを登る。この産地は3度目の訪問。しかし、前回は雪でズリが埋まっていた から実質的には2度目だ。初訪問時は沢沿いのズリで採集した。後になって上部 にもズリが続いていることを知った。今回は産地の全体像を調べることが一番の 目的だ。
下部のズリを登り切ると左側に細長いズリが現れる。かなりの急斜面で高さもあ る。こちら側によい鉱物がある訳ではない。リスクに対する見返りを考えるとお 勧めではない。それでも、上には何があるか分からないので登る。所々に岩場が 現れ、足場も悪くなる。採集モードからクライミングモードに切り替え、ハンマー を突き刺して進む。最後の数メートルは傾斜約60度、三級の岩場だ。難しくはな いが、落ちたら100メートル以上は転がっていくだろう。ハンマーをしまって慎 重に越える。
登り切ると視界がパッと広がる。まだズリは続いていた。漏斗のようになってい るので、まだ気は抜けない。傾斜が緩くなったところで採集を再開。さすがにこ の辺りの鉱物はすれが少ない。青鉛鉱、白鉛鉱、硫酸鉛鉱、緑鉛鉱など当産地の 代表的な二次鉱物を採集する。前回はまったく見つけられなかった孔雀石もたく さんあった。見栄えのする鉱物ばかりに目を奪われず、たくさんの種類を観察で きるようになるには時間や経験が必要らしい。ズリの最上部からは周囲の景色が よく分かる。沢は見えないが、150メートルくらいの標高差があるだろう。掘れ ばまだ良い標本が得られそうだが、いまは安全な下山路の確保することが先。あ の岩場を下るのは危険過ぎる。
なかなか湯が沸かないよ |
どこかに迂回路があるはずだ。まず、機械の残がいなどが放置してあるズリの上 部のヤブを探る。尾根は明確だが、踏み跡はない。登ってきた方向から尾根を隔 てて90度右下にもズリは続いているが、傾斜が急で先が見えない。こちら側から 降りるのは無理。時刻は15時を回った。そろそろ下山しないとまずい。困った。 やむを得ない。岩場上、左方の林に付けられたかすかな踏み跡に突っ込む。
踏み跡はすぐに尾根に上がり、はっきりした道になる。多少ヤブっぽい部分もあ るが十分に歩ける。ところが、道は尾根を隔ててズリとは反対方向の斜面を下っ ていく。このままいけば二又で分かれた沢に出てしまいそうだ。不安はあったが、 地形は頭に入っているので降りてみる。沢沿いで一部、崩れている個所もあった が、ばっちり二又に降り立つことができた。下部のズリからザックを回収し、二 又で野宿の準備をする。
今回はたき火で飯を炊く。もちろん、おかずは現地調達。明るいうちに急いで山 菜を摘む。ミズはいくらでもあるが、フキは期待したほどない。それでも夕食分 くらいは採れた。薪集めも楽だった。そこら中に流木が転がっているし、たき付 け用の杉枝だっていっぱい落ちている。点火も一発。ここまでは順調だった。た だ、たき火はガスみたいにパッと湯がわかない。ここが誤算というか勝手が違っ た。安定した火力を得る薪のくべ方や、ふたをしないと灰が入ることなど、やっ てみないと分からないことがたくさんあった。
コッヘルが一気に |
飯が食えるまで3時間以上かかった。フキとミズしか実のないみそ汁はわびしかっ たものの、ガスとは比べものにならないくらいふっくら炊けたご飯は豪勢な夕食 に思えた。考えてみれば、これまで山の食事は手軽さばかりを追求してきた。行 動や採集の時間を稼ぐために炊事などの時間をケチってきたからだ。割高なイン スタント食材と高価な道具を使いながら貧しい食事をしていたなあと、いまさら ながら矛盾を感じる。どうすりゃ豊かな食事なのかはよく分からないが、はっき りしたこともある。たき火は無条件に楽しい。
暗くなると即、夜露が降りた。ツェルトの内側も早々とぬれた。20時にはシュラ フに入る。でも、寝れない。ラジオを聞く。NHKの名作劇場にずっと聞き入る。 前日の睡眠時間は少なめだったから寝れると思ったのに。シュラフカバーとイン ナーシュラフだけではちと寒い季節になった。寒いのは食事の量が少なかったせ いもある。1合の飯とみそ汁だけでは足りなかった。外に出て抜けるような星空 を見るとちょっと気分が楽になる。まあ、眠らなくても差し障りはない。じっと 夜明けを待つ。
日が昇るといっせいにトンボが舞い |
空が白み始めた午前4時40分に起床。これまで1日の始まりはシュラフに包まりな がらツェルトの出口でお茶を沸かして飲むのがお約束だった。しかし、きょうは まず、ツェルトから出てたき火を起こす。うーん、健康的だ。夜露にぬれていて も杉枝は一発で火が着く。まずはお茶...と思ってもすぐには沸かないのがもど かしい。朝食のビスケットをかじりながら待つ。全部食い終わってやっと沸く。
下部のズリで朝の採集。水晶中心に探す。ここはずんぐりした結晶が密集した群 晶が多い。分離結晶も群晶が割れたものが多く、柱面がはっきりしない。よろい 水晶が多く、紫水晶も出る。でも、紫水晶は紫外線で退色するため、ズリの表面 で見つけるのは難しい。大小あわせて15個くらい集まった。これだけまとまった 数の水晶が採れたのは初めてでうれしい。
ぬれた装備の撤収に手間取り、1時間かかってしまった。タクシーを頼んでおい た荒木沢橋までミズの実を摘みながら戻る。天気がよかったので、羽後境の駅前 でぬれた装備を乾かす。大曲で途中下車して本屋を探すも街は駅から少し離れた 場所にあったため見付けられず。事前に調べておかなかったから無駄に時間をつ ぶしてしまった。
目的の水晶採集と、たき火野宿は果たしたが、キノコは不発に終わった。まった くといっていいほどなかった。東奥日報によれば今年は夏の雨不足と高い気温続 きでキノコが例年より2〜3週間ほど遅れているらしい。それでも、代わりにミズ の実がどっさり採れたし、水晶とたき火は十分過ぎるほど満足できた。キノコが 食えなかったくらいで不満はない。特に、たき火で食事を作るのはシローさんと 行った小川山のクライミング・キャンプ以来。新鮮で多くの収穫があった。必ず しも目に見える収穫がなくても、新しい知見や技術が身に付けば充実した野外活 動ができるってことを今回は学んだ。体中が煙くさくなるのも、いいものだ。