清掃集会で示すクライマーの心意気


2日(5:50)大泉学園→(8:40)広沢寺温泉→(9:00-11:30)清掃集会→(14:00)新宿

広沢寺の清掃集会に参加した。引っ越しのゴタゴタはまだ残っているけれど、 「広沢寺の岩場を守る会」の代表だった相川さんの志は、受け継がないといけな い。山ヤの信義にかかわるから、最優先事項だ。

2001年、初めての清掃集会から、もう7年もたつのか。当時植えたモミジの幹は 太さが倍以上になっていた。毎年参加しているわけではないが、感慨深い。集会 の冒頭で、昨年7月にがんで亡くなった相川さんに黙とうした。昨年の集会では 体調が悪そうだった相川さん。休んでいてくださいと声を掛けたところ「ライフ ワークですから」と最後まで参加したという話を安村さんから聞いた。会場は駐 車場から車があふれるほどの盛況だ。参加者は110人と発表された。

今回の作業は岩場周辺と不動沢方面の清掃、それに植樹だ。不動沢方面は、これ まであまり掃除をしてないコースでゴミは豊富だった。道路わきにはビン、缶、 ペットボトルがたくさん落ちていた。ミニバイクやビデオデッキ、ポリタン、車 のヘッドライトなど不法投棄も目立った。参加者は沢筋まで降りて、丹念にゴミ を回収した。さすがクライマーのなせる技だと感心する。おかげで手持ちのちゃ ちなゴミ袋はすぐに満タンになった。大物は道路わきにまとめて車で回収した。 橋の下にはバイクも埋まっていたが、これはあきらめた。空き缶、空きビンもた くさんあって大漁だった。11時にはすべての作業が終了し、広場に集合。今後の 活動予定や岩場使用のルールを確認して解散した。

地元観光協会の「ますや」さんから豚汁の差し入れをいただいだ。ますやの井一 さんは集会で、以前は車で林道に入ることへの苦情が多かったが、守る会ができ てすっかり変わったことを紹介し、「地元としても岩場を大切にしたい」とあい さつした。念願のトイレにつても岩場に近い場所への設置に向けて行政と交渉中 といううれしい報告もあった。

岩場の使用をめぐる地元とのトラブルは全国各地で起きている。当地も2000年末 に岩場が使用禁止になりかけた。林道への車の乗り入れやゴミ、トイレなどクラ イマーのマナーの悪さが原因だった。これまでもトラブルはあったが、その都度、 有志が話し合ってその場を収めてきた。しかし、今度はそうはいかない。相川さ んや安村さん、山岳団体の代表が守る会をつくり、清掃など継続した取り組みを することを決めた。「掃除をするなんていってきたのは、あんたたちが初めてだ」 と、これには地元も驚いた。

そして2001年3月、クライマー約140人が参加する清掃集会が行われた。投棄ゴミ の回収とともに、地元が進める里山づくりの活動にも協力してきた。枯れた竹や ぶの撤去、モミジやハゼの植林など、足場の悪い斜面でガンガン作業を進めるク ライマーの姿を目の当たりにした地元の人たちは「すごい」と目を丸くした。夏 には地元公民館が主催する子ども向け岩登り教室にも協力し、クライマーは地域 の人たちから期待される存在になっている。

広沢寺の取り組みは岳人にも紹介されたが、「こんなにうまくいっているのは全 国的にも稀有な例」だと安川さんはいう。参加人数に変動はあるものの毎年数10 人は集まる。そこには相川さんや安村さんの人望とともに、山岳団体の組織力が ある。守る会には都岳連、神奈川岳連、神奈川労山が加わっている。広沢寺の岩 場は山岳会の新人研修としてもよく利用されてきたから、山岳会で集会に参加す るグループが多い。山岳団体が地元の観光開発にも貢献し、社会的役割を大いに 発揮している良い事例なのだが、そのあたりが十分に評価されていないような気 がして残念だ。

植林もいいアイディアだと思った。ここを訪れるたびに、「これは私たちが植え たモミジだ」と自覚できる。だんだん大きくなる木は、自分たちの活動の歴史と 成果が目に見えて分かる。実は、植えた苗木の半分以上は鹿に食われてダメにな るらしい。でも、それはそれでいい。「じゃあ、また植えてやろうか」と思える から。ただ、今回は少し心残りがある。一人できたので集会が終わったら岩場を 見ることもなく帰ったからだ。次はちゃんと登りにこよう。