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領名 = リュアルール
領主名 = リルハム・ド・ベール
都市名 = リュードル

 北のパウル湖、南の常闇の森、東の静けさの心、西の山脈に挟まれたこの地は、領土の八割以上が山々とそれを覆う森で占められており、その間を縫うようにパウル湖から“静けさの心”へと抜けるミスティリ川が流れています。その森の中でも、タラット西境の山脈へ繋がる、北西部全域の山々を覆う広大な森は“高き森”と地元では呼ばれており、主にライグルなどが平和的に住んでいます。
 気候はミストラルと同じく穏やかで、水量も十分にあり、住人たちにとってはすごしやすい。だが、このような地勢のため、州都リュードルと街道の周辺以外は大自然が手付かずのまま残されています。

 この州は約200年前にトロウが併合するまで人間がほとんど住んでいませんでした。
 そして、この州がミストラル、ヴィルザラク、タラットの北東三州とトロウ方面や南方方面をつなぐ交通の要衝となり、各州へ至る幹線網が整備された現在でも、領民のほとんどは州都リュードルか街道沿いの集落にしか住んでいません。また、リュードルにはハーフエルフやドワーフも多くいます。
 領民に多く信仰されているのは商売の幸運を司るト・テルタで、契約を司るアグラムがそれに続きます。リュードルの人口増加に伴って他の神の信者も増えてきたが、その数はさほどではなく、農業が振興していないためイーヴノレル信仰は特に影が薄いです。

 この州の領主リルハム・ド・ベールは50代になる白髪の人間で、自身もベール商会の十代目当主として、州内での仲介および問屋事業を精力的に経営しています。その補佐役としてアーゼル・ド・ラルスがおり。彼も同じくラルス商会の当主として、陸上・水上の物品輸送業務および幹線網の治安維持を担当しています。


【リュアルール誕生の歴史的経緯】

 かつてのリュアルールは、山々とそれを覆う森ばかりの、特に目立った資源もない辺鄙な土地でした。あまりにも辺鄙なため人が住み着かず、ために周辺諸国が領土的野心を向けることもなく、森に住む種族だけが自然と共に素朴な生活をしていました。しかし、北東地域への領土拡張を目論むトロウが地政学的重要性に気がついたその時から一気に脚光を浴びるようになります。
 この地の領有を宣言したトロウは即座に軍団を派遣し、王都と軍団駐屯地を結ぶ街道建設に着手します。この地を前線基地とすることで北東諸国への軍事的政治的圧力を強める狙いでした。その計画は功を奏し、周辺国は全てトロウ王国の傘下へ。そこでトロウはこの地をリュアルール公国としたが、それまで支配者のいない土地であったため、この地に移住して交易を始めていた商人たちに統治権を授け、今に至ります。


【リュアルールの経済】

 リュアルールの山々を覆う森は、森の住人たちに豊富な資源を与えてくれます。それらの恵みのうち、毛皮や山の幸などは森の外に住む者たちにも流れてきますが、経済基盤に出来る程の量ではありません。また、北のタラットでは林業が盛んなためその方面でも将来性はなく、地味は豊かだが平地が少ないため、農業もリュードルの人口分すら賄えないのが現状です。

 このような土地であるため、軍団と共に移住してきた人々は近隣諸州との交易に精力を注ぎ込み、整備された安全な街道網を作り上げてきました(【リュアルールの街道】参照)。これらの街道とパウル湖へ繋がるミスティリ川のおかげで、リュードルには各州の特産品が運び込まれ、巨大な交易市場が形成されています。
 主な取扱品目はヴィルザラクの木工品に金工品、ウィムダールのエールや海産物、ミストラルの農産物と畜産物、タラットの材木と繊維、トロウの高級品や嗜好品などで、わざわざ現地まで行かなくてもここに来れば欲しいものは手に入ります。そのため多くの交易商人でにぎわっています。
 また、リュードルの発展に伴って、各州の特産品だけでなく加工前の資源なども流通量が増えたことから、それらを加工細工する産業の育成にも力を入れていて、順調に規模を拡大しています。

 近年になって北のタラット州が『空の』カルティルトと縁を深めていることから、リルハム・ド・ベールは、タラット州がリュアルールを使わない新規通商ルートを開拓するのではないかと警戒しています。そこで、その動きに対抗するために『陸の』サラディンと組んで、トロウからリュードルまでの鉄道敷設を検討する動きがあります。
 しかし、トロウへの物品輸送で儲けているアーゼル・ド・ラルスはその計画に反対しており、また、鉄道がリュアルールを超えてヴィーザル(ヴィルザラク州の州都)まで敷設される危険性もあることから、計画は今のところ棚上げとなっています。また、街道を維持しているドルディン・ハルマンも、街道網の重要性が低下する恐れから、この鉄道誘致には反対しています。

 この件については、五柱が賛成派(リルハム、ムティリア)と反対派(アーゼル、ドルディン)に割れており、議論を繰り広げています。州としての最終決断へと向かう動きもありましたが、反対派のアーゼル・ド・ラルスが三度も暗殺未遂に遭う事件が発生したことで、また、その事件の首謀者として賛成派のムティリア・マ・ラスタトールに疑惑が浮かんだことで、棚上げになっています。


【リュアルールの政治】

 リュアルールは、この地を本拠地とし、かつ成功した商人たちのみが参加できる商工会議によって支配されています。この商工会議の長は任期4年で、その任期中のみリュアルール公爵として領地経営の最高責任者となる仕組みです。現在の長であるリルハム・ド・ベールは、その経営センスと実績、そして篤い人望から、5期連続でこの地位についています。
 彼以外にも商工会議には4人の有力者がおり、彼ら5人は人々から敬意を込めて『リュアルールの五柱』と呼ばれることもある(【リュアルールの人物】を参照)。


【リュアルールの街道】

◆王の道:リュードルから西の山々を抜け、トロウへと至る道。かつてトロウ軍団が作り上げた道路。
◆塩の道:“常闇の森”の西の端に沿ってウィード(ウィムダール州都)へ至る道。保存処理された海産物や塩が運び込まれることからこの名がつきました。
◆湖の道:パウル湖南岸に接してサテンカラット(タラット州都)へ至る道。
◆天の道:ヴィルザラクとタラットの州境を走り、ミストラル東部および西部の州都オートリッシュへ向かう道。
◆鉄の道:“静けさの心”の北側を弧のように迂回し、ウィーザル(ヴィルザラク州都)およびニヨルトールへ至る道。

 幅4テーセル(8m)で総石畳のその道は、すべて州都リュードルから発しています。ドワーフの高い技術力で作られたこの街道は水はけが良く、必要ならば山を切り崩しても傾斜が出来るだけ緩やかになるように敷設されているのが特徴です。
 街道の周囲は木を伐採して見晴らしを良くしてあり、山賊などの襲撃があった場合でもすぐに発見できるようにされています。また、集落がないところでも適切な距離を置いて街道警備隊の宿舎が置かれており、旅行者たちが宿泊できるようになってもいます。
 この街道の治安を保つために常時パトロールが巡回していますが、さらに安全性を高めるためにリュアルール商工会議は森の住人たちと取り決めを交わしています。林業や開墾などで森を不必要に切り拓かない代わりに、山賊や森に潜むモンスターなどの退治に協力してもらうという約束です。この取り決めはうまく機能しており、街道旅行者が被害にあうことは滅多にありません。

 六本目の街道ともいえる“川の道”も上記の幹線網と同じく手が入れられており、長年の治水工事のおかげで川幅も広く深く、流れも緩やかで、リュードル=パウル湖間の航行も安全で快適なものとなっています。
 近年、ミスティリ川を下ってアルテンノルト、そしてニギリキス湾に至る“川の道”を作る案も検討されています。ですが、危険を恐れぬ冒険者たちならともかく、“静けさの心”の広大で深い森の中を何百テルも通らねばならないことから、この計画は検討段階で打ち切られるだろうというのが大方の予測です。


【リュードルとその施設】

 広い盆地の中にある州都リュードルは、ミスティリ川の両岸に都市が広がっています。都市中心の川を挟んだ大広場から街道が放射状に伸びており、街の中と郊外にはそれら街道をつなぐ環状道路が二重に走っています。
 街の北側は船着場と倉庫街になっており、パウル湖=リュードル間を行き来する船と船客で賑わっています。街の南側では資源加工産業が育ちつつあり、環状道路では倉庫街から荷物を運ぶ馬車がよく見かけられます。
 この都市は、限られた空間を有効利用するため、どの建物も何階もあり背が高いです。街道沿いや都市の主要部分は広々とした美しい空間で、ドワーフの技術力を駆使した建物が立ち並んでいますが、裏通りは雑然としています。

 都市の中心は両岸の石造りの立派な橋で繋がった二つの巨大な広場で、『中央広場』と呼ばれています。ここには、政庁(商工会議ホール)、ト・テルタ神殿、メッセンジャー協会などの重要施設が立ち並び、その中央広場からは船着場と五本の街道に向かう広い道路が伸びており、有力商人の店が軒先を構えています。また、その道路沿いには各地の物産を扱う商店街や露天も立ち並び、それを買い求める交易商人たちの姿で常ににぎわっている。夜は買い物客たちの代わりに物資を輸送する馬車などが頻繁に動くため、喧騒が途切れることのない街です。

◆『ヴェルニルケ』
 中央広場北東と“天の道”に接した一角にある巨大な複合施設。メッセンジャー協会、図書館、魔法士協会を収容するリュアルールの情報中枢。メッセンジャー協会は手紙の配送依頼や引取りに来た客で賑わい、特に重要な文書に関しては、図書館を挟んで向かいにある魔法士協会で《エニグマ》や《ロック》を施してもらうことも出来ます。
 メッセンジャーの雇い料は任務によって異なりますが、安ければ数十ルクス程度で済みます(ただし、まとまった量を一度に運ぶため、時間はかかる)。

◆『リューアルド』
 中央広場北西と“王の道”に接した一角にある巨大な複合施設。ここはリュアルールの交易中枢で、様々な交易品目のその日の相場を知ることが出来ます。また、荷待ちの商隊はここで仕事の受注をしたり、人員や護衛を応募したりもする。そのため、情報交換などで訪れる商人や仕事を求める人で常に賑わっています。

◆『マルトラルム』
 中央広場南東の川に面した一角にある巨大な複合施設。政庁、商工会議ホール、裁判所などを擁するリュアルールの政治の中心。

◆ト・テルタ神殿
 中央広場の南西の一角にある。商人などが商売繁盛を願ってよくお参りするため、きわめて豪華で美しい建物に成長した。あまりにも豪華なので、御利益も高いだろうと遠くから詣でに来る人もいます。

◆宿屋兼酒場『剣と盾』
 中央広場から川の西岸沿いに南に歩くと見つかる、ト・テルタ神殿のすぐ裏手にある酒場。いわゆる冒険者の宿で、リュアルール内だけではなく周辺諸州から発注された仕事の依頼も舞い込んできます。そのため、ここを本拠地にする冒険者も多いです。


【リュアルールの人物】

◆リルハム・ド・ベール(人間、55歳、男性)
 商工会議の長で、ベール商会の十代目当主。『リュアルールの五柱』の筆頭。常に質の良いスーツを着た姿で人前に現れる白髪の男性で、人に信頼される温和な笑みと知恵のあふれる瞳をもちます。ベール商会は物産の仲介および問屋事業を手がけており、その経験からか、対外折衝や将来予測、そして人の使い方が巧みな人物として知られています。

◆アーゼル・ド・ラルス(人間、42歳、男性)
 商工会議の大立者で『リュアルールの五柱』の一人。リルハムの補佐官。赤い髪の大柄な男で、やや野趣を感じさせます。商品運送業を手がけるラルス商会の当主でもあり、商隊護衛などと付き合ってきた経験が豊富なせいか軍事にも造詣が深く、街道網の治安維持を担当しています。

◆ドルディン・ハルマン(ドワーフ、113歳、男性)
 商工会議の重鎮で『リュアルールの五柱』の一人。ハルマン家の当主。王の道の改造および残り4本の街道を設計敷設した一族で、現在も街道のメンテナンスや改造、リュードルでの建築設計および施工を手がけています。

◆ラルテリア・フォルストール(ハーフエルフ、?歳、女性)
 見た目は30代の優雅な彼女は、メッセンジャー協会の長で商工会議の有力者です。『リュアルールの五柱』の一人。彼女が指揮するメッセンジャーは手紙や情報を迅速確実に目的地に届けることで知られており、その信頼性は高く評価されています。一部では彼女は盗賊協会の有力者ではないかとも噂されている人物です。

◆ムティリア・マ・ラスタトール(人間、40代、女性)
 趣味は良いが、服や装飾に惜しみなく金を使ういわゆる“ゴージャス”な女性。彼女はラスタトール商会の当主で、金融業で巨額の財を成しています。商工会議の女傑で、『リュアルールの五柱』の一人。

◆マルティーヌ・ジルベルン(人間、40代、女性)
 リュードルのト・テルタ神殿を預かる司祭。愛嬌のある笑みが魅力的な小柄な女性で、リュードルとリュアルールすべてにト・テルタ神が微笑んでくれるよう毎日祈りをささげています。彼女の代になってからト・テルタ神殿は孤児院などの慈善事業も積極的に展開するようになり、多忙な日々を送っているようです。

◆アル・ハルト(人間、30代、男性)
 リュードルの冒険者の宿『剣と盾亭』のマスター。強面のモヒカンバーテンですが、客には細かく気を配っています。元は隊商警備を主に受けていた傭兵で、引退してこの宿を買い取ってからは、それまでに築き上げた周辺諸州やリュードルの商人たちとのコネを生かして、仕事の依頼を確保、冒険者たちに回しています。


担当者:TEK / 第三版(2006年2月22日更新)


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