妄想展示室:「矛と盾」

道具編
Tutorlal: Tools for doll customize

まえおき
Introduction

 ドールカスタマイズの作業、特にボディカスタムでは切った貼った盛った削ったというプラモデル、あるいはガレージキットの製作過程と基本的には同じことをするので必要な道工具も大体同じ物になります。以下に私見を交えつつ列記してみましょう。
 下記リストで先頭に○の付くものは百円ショップ等で安く入手出来るもの、△はDIY店で入手可能なもの、他は模型店で入手可能なものです。(2011年8月現在)
 なお、個々の改造で特別に必要な特殊なものは省いてあります。改造項目にも道工具の記載がありますのでそちらも参照して下さい。
Some processes in remodeling doll is same as assembling a plastic model, or a garage kit: Cutting, gluing, molding, carving, ..and etc. The tools and materials to using for those work are same thing, too.
I list it to below with my personal opinion.
By the way, The required special thing for each remodeling is excluded from list. Since explanation of remodeling also has list of tools, please refer to also there.

Additional notice: I get tools in D.I.Y. shop or hobby shop, but it is situation in Japan. I do not know whether you can obtain the same thing.


ごく普通の工具
Usual tools

○やすり
File
  •  削りこみ、パーティングラインや接合線といった段差のならしなど、とにかく使うことが多い道具です。
  •  目の粗さや断面形状で様々な種類がありますが、俗に「精密やすり」と言われる細目のものから平と甲丸(もしくは半丸)の2本があれば大体の作業はこなせます。使用中は削りカスが詰まるので、時折歯ブラシなどで払いながら使うとやすりも長持ちします。
  •  指の間など狭い場所には目立てやすりのような薄型断面の物が便利ですが、耐水ペーパーを重ね折りすれば代替できます。
  •  余談ですが、やすりは押したときに削れるようになっているので、削るものに押し当てたままゴシゴシ往復させてもあまり効果はないばかりか削りかすが固着したり摩擦熱で素材表面が柔らかくなって不要な傷の原因になります。
○耐水ペーパー
Sandpaper (waterproof)
  •  普通のサンドペーパー同様に砥石の粉を紙(or布)に接着したものですが、接着剤が非水溶性のため水に濡らしながら磨くこと(水研ぎ)の出来るものです。水研ぎすることで削りかすの詰まりや摩擦熱の問題を低減させることができます。
  •  ペーパー類には荒さの目安として番号が付されていて、数が多いほど細かい目となります。ABS製の人形なら200、400、600〜800の3種を順番に使えば十分でしょう。PVC製の場合は最初の200を省いて代わりに1000で仕上げた方が奇麗になります。
  •  ペーパー研きのこつとしては、目が細かくなるほどのんびり研ぐこと。細かい=切削能力小ですので結果を急いでついゴシゴシやりがちですが、やすりの場合と同じく不要な傷の原因となります。できれば1種類の目が終わるごとに削ったものを洗って傷の残りをチェックすると後でびっくり、とならずに済みます。(荒いうちに出来たor残った傷を細かいもので直すのは非常に苦労します)
△スポンジペーパー(研磨用スポンジ)
Sanding sponge
  •  耐水ペーパーの母材が紙でなくスポンジになっているものです。削りかすがスポンジの穴から抜けて行くのでペーパーより切削能力や耐久性に優れているとされています。母材が柔らかいので曲面向きともいわれますが、あまり差異は感じません。
  •  選択や使い方は耐水ペーパーに準じます。
○カッターナイフ
Utility knife
  •  どこにでもあるごく普通のカッターです。広刃と細刃の2種がありますが、当サイトは広刃を勧めます。
  •  特に、分解作業で大きな力を掛けると細刃は不意に折れて飛んでくる可能性があります。
○デザインナイフ
Art knife (like X-acto)
  •  ペン型の柄を持つ細部工作用のカッターです。入手の際は予備刃も1セット購入しましょう。思っているより簡単に刃先が欠けるのですぐ足りなくなります。
  •  切れ味の鋭さが重要ですので、たとえ欠けなくても切れにくくなったら刃は交換です。
○鋏
Scissor
  •  どこにでもあるごく普通の鋏です。
○彫刻刀
Carving chisel
  •  これもごく普通の彫刻刀です。丸と平の2種類で十分ですが、小さい場所を掘る事になるので刃幅の狭い物(3mm以下)を勧めます。
○ドライバー(プラス・マイナス各1本以上)
Screwdriver (cross-head and slotted)
  •  これまたごく普通のドライバーです。セット物で構いませんが、軸の太さには注意して下さい。ねじ穴に入らないほど太いもの、逆に細過ぎてねじの頭に噛まないものがあります。


ちょっと変った工具
Unusual tools

○ダイヤモンドやすり
Diamond file
  •  普通のやすりが鋼材の削り出しで出来ているのに対し、人工ダイヤの粒子を土台に接着して出来ているやすりです。特徴や選択基準は普通のやすりに準じます。
  •  その製法上押しても引いても削れるので、形状的にやすりがけしずらい所に向いているほか、ソフビ製の部品にパーティングライン消しをする際の予備段階にも使用できます。この場合はなるべく力を乗せずにやすること。
△(類似○)ピンバイス
Pin vise and small drill
  •  ドライバーのように手に持って回すことで穴を開ける小型手動ドリルです。模型店等ではドリル交換式のものが普通ですが、百円ショップで径が固定の精密ドリルも売られています。
  •  ・・と書くと突っ込んでくる方もいますので一応書きますが(汗)、ピンバイスの正式な定義は「ピンのような細いものを挟んで固定する工具」です。
  •  コストを考えるなら百円ドリルを使用する径だけ購入して使い捨てるほうが安く済みますが、刃先の取付精度が低い(曲がってる、あるいは中心がずれている)ものもあるので要注意です。
  •  穴を開ける場合、いきなり大径のドリルを当てても滑って中心がずれたり切削量が大きすぎて回せなかったりするので、必ずピンや画鋲で目的の位置に目安を打ってから、小さい径から3段階くらいに広げて行くようにして下さい。
○(6mm径以上は△)ラチェットドライバー+6角軸タイプドリルピット
Combination of ratchet driver and drill (six angled axis type)
  •  ピンバイスではほとんどの場合3mmを越える穴を開けることが出来ませんが、市販ボディの関節部には軸径が4mm以上有るものがあります。
  •  モーター動力のドリルを使ってもいいのですが、安く済ませる&取り回しが楽な点で私はドリル刃を取り付けることの出来る6角ジョイントタイプのラチェットドライバーを使っています。これなら最大13mm径くらいまで開けることが出来ます。
  •  使い方はピンバイスに準じます。ピンバイスで小穴を開けてからこちらで大径に広げるのが普通のパターン。
△(一部○)電動リューター
Leutor (power tool like Dremel) and whetstone
  •  モーター動力で小型の砥石を回すハンディサイズの研削機です。砥石を替えることで様々な材質形状に対応させることが出来ます。
  •  最近では一部百円ショップでも見掛けますが、少々投資して回転数が可変&交流電源のタイプにする方がおすすめです。
  •  小さくても高速回転(数千〜1万回転以上)の電動工具ですので、勢い余って自分まで削らないよう十分な注意が必要です。また、削りかすは周囲360度に飛んで行くので衝立を設ける、ゴーグルなど目を守る装備を付けるなど作業環境にも配慮して下さい。
  •  一気に削ろうとすると砥石が食い込んで悲惨な結果になる(怪我のリスクも)ので、ペーパー研きと同じく少しずつ削るようにして下さい。
・(一部△)プラ鋸
Saw for plastic
  •  プラスチック用の鋸です。切断することでどうしても刃厚分は部品が小さくなるので、なるべく薄刃の品物を勧めます。
  •  ちなみに、私自身は大型模型店等にあるハセガワ製「スグレモノ」シリーズのエッチングソーを使用しています。エッチングソーは薄いため力加減によってはすぐ曲がり、刃の寿命も短い(使い捨て)ですが、これはカテゴリー中最安価(千円しない)ですので気楽に使えます。
  •  鋸によって、押すと切れるもの、引くと切れるもの、両方とありますので購入時に確認して下さい。
△(一部○)グルーガン(ホットメルト)
Hot glue gun
  •  ガン型のヒーターで加熱溶解した専用の樹脂棒を使って、金属から紙、樹脂まで多様な素材を固定する事のできる接着剤の1種です。
  •  ガンから押し出した樹脂が溶けているうちでないと接着できないので、できればノズルが長いものを勧めます。(写真のものは標準的な長さ)


素材類
Materials

○(一部△)接着剤
Glue and adhesive
 私の場合、素材に合わせて複数種の接着剤を併用します。
 ガレージキットフィギュアに比べて着せ替えだなんだと手に持って動かすことの多い人形の場合、全てを瞬間接着剤で賄うと衝撃に弱い弱点が思わぬ所で出て来ます。また、最近では関節部に接着剤の効かない素材(PE−ポリエチレンやPOM−ポリアセタール樹脂)が使われることも増えて来ています。
 シームレス型を除く現行人形ボディの大半はABS樹脂製ですので、まずABS接着剤は用意すべきでしょう。ヘッド改造や最近のソフビ手首などには瞬間接着剤、先に書いた関節部の特殊樹脂にはセメダインPPXなど対応した物を、出来れば穴を開けて針金で繋ぐなど物理的固定手段を併用します。
 一部ボークス製品やサークルオリジナル品などウレタンキャストの場合、物理固定併用で瞬間接着剤が普通ですが、転倒した拍子に分解した経験があるので私は更にGクリアなど多用途接着剤を併用しています。この場合表面近くは瞬着、内部に多用途接着剤という形で塗布して張り合わせます。
 接着剤ではありますが、常温では大した接着力のないホットメルトの性質を利用してパテ的な使い方をすることもあります。例えば、中空なミリタリー系のヘッド内部に溶けた状態で流し込んで、冷めはじめた時にジョイントを押し込むと簡単に現物合わせの接続部を作る事ができます。
・(一部○)パテ類
Patty
 表面の隙間うめだけでなくプロポーション変更、後づけ関節の保持など様々な用途に使用します。これも用途に応じて複数種有ると便利。
 隙間うめならプラモデル用のプラパテやアルテコSSPのような瞬着パテが一般的ですが、最近私は余りパーツをプラモデル用の流し込み接着剤で溶解させた自製ABSパテを使用しています。ボディ素材と同一成分・ほぼ同色ですので塗装不要なうえペーパー掛けの際パテだけ先に減るといった事が起きにくく便利ですが、溶剤の揮発性が高いため厚盛りでヒケや気泡が生じやすいなど扱いに注意が必要です。
 プロポーション変更など大きな体積にはエポキシパテを。加工時の作業性や硬化待ち時間、硬化後の加工性など製品ごとに違うので色々試して下さい。個人的にはコストパフォーマンスも含めウェーブ製品が万能的に使えて便利ですが、少量しか使わないのなら田宮製品が作業性において若干勝ります。
 関節部など絶対的強度の要求される所にはエポキシパテで周辺を充填してしまうほか、瞬着パテの1種プラリペアが向いています。
・ポリキャップ
Poly cap (polyethylene sleeve)
 ポリエチレン製の関節補助部品(というか最近では関節そのもの)です。模型、特にガンプラの関節部用に販売されているものを転用します。
 もともとメカ物用ですから黒やグレーで成型されている(通販限定など、限られたルートですが肌色成型の物も入手できます)ので、出来るだけ内装するよう工夫が必要になります。
 塗料が乗りにくい素材の性質に加え、可動で表面をこすり合うため塗装で肌色にするのはお勧めしません。
○ゴムシート
Rubber sheet
 ポリキャップ化の難しい、あるいは面倒な関節部で隙間に詰め込んで強度を上げるために使用します。私は仕事の都合上工業用のゴム材を使用していますが、市販の物でも非移行性などプラスチックを溶かす恐れの少ないものなら使用できるはずです。
・塗料
Paint
 パテ盛り箇所の仕上げに、あるいは素材の違いでまだらな色になっている場所の補正に、あるいは魔改造(笑)などに。発色と塗膜強度の関係からプラモデル用ラッカー系塗料がお勧めです。
 エアブラシが既にあるならともかく、イベントやオークションで大量売りするのでない限り1/6クラスのボディなら新規購入しなくても筆塗りで十分カバーできるサイズでしょう。
 塗装の注意として、まず一発塗りはやめた方がいいでしょう。フェイスペイント同様薄めに希釈して2〜3回に分けて塗装した方がキレイに仕上がります。
・(一部△)金属線(針金)
Wire (brass or aluminume)
 接着困難なパーツの接合や、首ジョイント軸の置き換えなど強度と細さを要求される個所で使用します。加工性とコストも考えると真鍮線がお勧めです。