妄想展示室:「矛と盾」

関節強化について(一般論)
Tutorlal: How to fix loose / floppy joint

まえおき
Introduction

 最近の製品ではほとんどありませんが、過去に生産されたドールボディでは生産ロットやひどい時は買った個体ごとに関節強度のバランスが取れておらず一部の関節が非常に緩い・堅いと言うことがありました。また、現行製品でも遊び倒せば関節が磨耗して緩くなる事は避けられません。
 緩くなったらホディ乗り換え、というのも解決策の1つですが、製品サイクルの早くなった昨今代替品の在庫がいつまでもある、なんていう事はありませんし費用も馬鹿になりませんので、再調整の方法について考えてみたいと思います。

※ この項目の記述中(2011年8〜9月)、ピュアニーモ素体及び1/6系オビツボディ女性体の成型色が以前より赤みを帯びた物に変更されたという話を確認しました。

※2 私見ですが、人形に限らず可動フィギュアの関節は固ければよいというものではありません。あまりに固いと不意の破損につながりますし、必要トルクが大きくなる分動き出しの瞬間に大きく動くのでポーズの微調整が効かないなんて事もあります。

 緩い関節に対する対策には、大別して以下の3通りがあります。

 「ばらして組み直す」のがもっとも抜本的で効果も期待できますが、関節周辺が塗装されていれば作業の過程で消えてしまいますし、今回は調整がテーマですので省略します。
 「何かを挟み込む」もばらす系統ですが、代替部品が用意できない場合に磨耗して広がったすき間にラップなどを挟むことで関節強度を調整する方法です。受け側が広がったボールジョイントなどに有効です。
 「何かを注入・充填する」のは、上2者に対し関節はそのまますき間に樹脂など(コストや利便性から各種接着剤が使われることが多い)を流し込んで関節強度を調整する方法で、一番手軽な方法といえます。

注入による関節調整
Fix loose joint with adhesive

 以下の記述では、組写真風の写真を使って説明していきます。なお、外人さん向けに撮ったものを再利用していますので写真中に英語キャプションが入っていますが、文法面は余り気にしないで下さい。

1
  •  写真にある各種の接着剤が、関節強化目的で使われている主な物になります。
  •  後述しますが、どの接着剤を使うのがよいかという選択は注入時の流動性と乾燥後の強化度合いで決まります。必要な強度と耐久性、それぞれのデメリットも合わせて考えて下さい。
2
  •  瞬間接着剤は玩具系の関節強化で頻繁に使われる方法の1つです。
  •  写真中では普通の液状(左)とゲル状(右)の2タイプが写っていますが、タイプ別に使い方が違います。
  •  液状の場合、細ノズル(別売りだったり同梱だったりします)を使って直接関節内に微量注入します。そのまま放っておくと当然固着してしまいますので、すかさず注入した関節をクニクニ動かしながら固着せず関節内で硬化するのを待ちます。関節の大きさや注入量によって硬化までの時間が違いますが、クニクニやっている手ごたえが変化しますので、それ以上堅くならない所までは動かし続けて下さい。
  •  この判断を誤って関節を固着させてしまう失敗が多いので注意して下さい。
  •  ゼリー状瞬着は「はさむ系」に近い分解可能な関節への対処法です。
  •  関節を分解した後で軸に薄く塗って、乾燥後組み立て直します。固着のリスクがないので安心なように見えますが、塗り過ぎれば関節を組めなくなるので作業のリスクはほぼ同程度です。

中休み1

3
  •  裁縫用ほつれ止め(ピケ)は過去に当サイトで検証した方法の1つです。
  •  使い方は普通の瞬間接着剤と一緒で、直接関節内に注入します。細ノズルを付けたスポイトでも、直接1滴落としてはみ出しをふき取る方法でも構いません。樹脂に対する接着力はわずかですので乾燥するまで約半日放っておきます。乾燥後に関節を動かしてみて、緩いと感じた場合は繰り返して下さい。
  •  上記の通り、接着力が低いので失敗のリスクは少ないですが、その分効果もそれなりです。

中休み2

4
  •  木工用ボンド(左)と洗えるタイプの手芸用ボンド(右)は瞬間接着剤と並んで玩具系の関節強化のポピュラーな方法です。
  •  手法としてはピケに近いのですが、もう少し詳しく説明します。


 この2種は成分が違います。コストが3倍程度違うのですが、個人的にはなにかの拍子で濡らしてしまうと木工用は強度ががた落ちになるので手芸用をお勧めします。


 適当な浅底の容器に中身を1、2滴落とします。成分の違いが色に出ています。


 ここへ、ボンドの半分から同量程度の水を加えてとろとろ程度に(さらさらは薄め過ぎ)薄めます。


 後は、これをピケの場合と同様に関節へ直接注入します。


 ピケよりは接着力がありますが、乾燥まで放置しておいて構いません。


 ついでですので、「組み直し」系に含まれますが、グルーガンによる関節強化にも触れてみます。
 グルーガンの接着棒(市販品は大抵ビニール系の素材です)で関節の強化をする場合、少量では作業中にすぐ冷えて固まるため扱いづらいのとトルク負けしてはがれる事があるため、予防策的な使い方がメインになります。
 関節にもともとある肉抜き穴や、ない場合はドリルで3mm径の浅い穴を開けて、中にグルーを詰め込み冷えきる前に関節を仮組み立てするのがよく使われる手法です。(張り付いた関節は後で丁寧に剥がして本組み立て)