27日(23:00)新宿→28日(5:00)町田市国民休暇村→(6:10)鉱山入り口→(11:30) 水晶のズリ→(12:10)鉱山入り口→(13:00)町田国民休暇村→(17:05)新宿
ベスブ石露頭直下での採集 |
鉱物同志会の甲武信鉱山採集会に参加。小川山の目と鼻の先にある甲武信鉱山は 一度は足を運びたいと思っていた所。48人もの採集会で満足な標本を手にするこ とができるか不安もあったが、心配は無用だった。広大な産地と豊富なスカルン 鉱物には驚きの連続だった。
ここは乱獲を防ぐために入山料を取って湯沼鉱泉が管理している。注意を呼び掛 ける看板の脇から踏み跡をたどって20分ほど急登。ベスブ石のズリが現れるが石 が落ちやすく左の小尾根から取り付く。登り切るとベスブ石の露頭直下に出る。 足元に転がる石には、細かい結晶がびっしりと付いている。これがベスブ石か。 長さ1cmほどの濃い茶褐色の柱状結晶が美しい。一獲千金を夢見て露頭に取り付 くが、めぼしい結晶はもうない。「露頭狙いはテント持参で一日仕事」といわれ た意味がよくわかった。
斜面を右にトラバースして回り込むと柱石の露頭に出る。柱石ってなんだ? 先 輩から「白い唐傘のような鉱物」とアドバイスを受ける。「なるほど、唐傘ね」 と妙に納得して石を割るが、それらしきものは出ない。でも、方解石はたくさん ある。結晶を拾っていると、近くにいた人が「いくらでも採れますから」と大き なかたまりをくれた。方解石コレクターは「少数派」らしい。いやあ、方解石で なくとも透き通っていてキラキラと光るのが好きなだけです。柱石もちゃんと採 れた。
次は緑水晶のズリだ。さらに右にトラバースするとコケに覆われた原生林の斜面 に出る。ここのどこに鉱物があるんだ。ところがすぐにトッコ(群晶)が見つか る。コケ穴の底に数cmの結晶が数本立っている。これはすごいと居合わせた人た ちは一気にやる気が出る。イノシシのように地面を掘りまくって、石を物色。ハ ンマー勢いが止まらずに結晶をバラバラにするなどの失敗もあったが、ザクロ石 をゲットする。水晶もあるが頭付きは難しい。
柱石の露頭で転石を探す |
斜面の上部では土をかき分けて水晶の分離結晶を探していた。あまり気の乗らな い採集方法だが、とりあえず緑水晶を1個確保する。下に降りてふたたび石を割 る。晶洞の中から真っ黒な柱状のものと同色のひしもち型の結晶を採集できた。 わくわくしながら洗ったら灰鉄輝石と氷長石だった。ザクロ石はいくらでもある が、それなりの大きさできれいな結晶を取り出すのは難しい。先輩方にコツを聞 いたが、「いくつも割るしかない」という答えだった。やっぱりそういうものな のかと納得はしたが、標本の形を整えようとした、まさに「最後の詰め」で良形 の結晶がはがれ落ちてしまった悔しさはぬぐえない。
急斜面に張り付いての採集は厳しいものがある。安易に石を放ると落石になって しまう。不安定な斜面だけは歩くだけでも落石を誘発する。45度はありそうな斜 面なので、油断をすれば石ではなく自分が落ちてしまう危険もある。あちこちで 「落石」「ラクッ!」と声が上がる。これだけ落石を出せば、岩登りだったらど やされるところだろうなあ。自分も割った石の片割れを落っことすなどクライマー にあるまじき行為を頻発させてしまった。大勢での採集には危険が伴う産地だ。 それでも事故やけががなかったのは幸いだった。
早朝から山に入ってたのでまだ十分時間があると思っていたら、もう昼前。まだ まだ未練は残るが引き揚げる時間になってしまった。振り返ると斜面が結構荒れ てしまった。掘り出した穴を埋め戻し、ごみを拾って産地を後にする。登ってき たときは先頭だったのに、降りるときは最後尾だった。成果はベスブ石、方解石、 灰鉄ザクロ石、灰鉄輝石。それ以上にハンマーとタガネの使い方や採集方法を学 べたこともよかった。なによりも素晴らしい産地の存在と多くの鉱物の産状を観 察できたことが大きな成果だった。
終始、素手で行動していたが、岩を掘り起こすのでドロドロになり、ハンマーを 握るたびにコケでぬぐっていた。手袋をした方が合理的だろう。採集した標本に ミネラライトを当てて観察したら、方解石が短波長に赤く蛍光した。柱石も同様 の反応を示したので方解石だったかと心配したが、塩酸に反応しなかったのでホッ とした。 採集会の成果はこんなです。