6日(7:30)大泉学園→(10:03)三峰口駅→(11:00)出合バス停→(12:30-14:50)山 鳥ずい道下の川原→(15:00-15:30)山鳥ずい道上の川原→(16:00)六助沢出合→ (18:00)ビバーク地、7日(9:20)六助沢出合→(10:50)出合バス停→ (12:03-12:50)大滝温泉→(13:20)三峰口駅→(15:50)大泉学園
ここのところ鉱物採集やキノコ狩りなど野外活動はかなり熱心に取り組んできた が、山登りはさっぱりごぶさたしてしまった。お気楽アウトドアもいいけれど少 しくらいは冒険をしないと気持ちがなまってしまう。ちょっと前まで山ヤだった 友人がいまはどっぷりとフリークライミングにつかり、「もうテントじゃ寝られ ない。風呂もないとだめ」と変わり果ててしまった。ここいらで気合を入れない とやばいかもしれない。
ウルイがいっぱい |
山ヤとしての資質を磨くなら、やっぱり質素な装備で山を楽しむ野宿でしょう。 山登りといってもピークを目指すだけではつまらない。秩父鉱山辺りで鉱物採集 をしながら山中をうろうろすることに。場所は昨年敗退した六助沢に狙いを絞る。 なんだか行動パターンが1年前とほとんど変わってないような気もするが、まあ いいか。
当初は「訓練だから雨でも決行」と息巻いていたが、朝になって雨が降っている と意気消沈。日和見を決め込んで翌日に延期。われながら情けない。連休明けの ガラガラ電車とバスを乗り継いで大滝村に。出合で降りるとバスの運転手から 「こんなところで降りてどこへ行くのか」とけげんな顔をされてしまった。
神流川沿いの道を進むとガードレール脇にオオバギボウシがいっぱい出ていた。 水際に生える「ウルイ」と呼ばれる山菜だ。ちょっと時期が遅いが十分に採集に 耐える量がある。山ブキもあるが型が小さく、量も少ない。秩父鉄道沿線の道端 に生えていたものの方がずっと立派だ。ここでは道路に転がっているただの石に も鉱物が入っていたりするので、なかなか前へ進まない。
山鳥ずい道下の川原 |
山鳥ずい道手前で川原に降りて採集。ハンマーで石を割り、ルーペで観察する。 キラキラとまぶしく光る閃亜鉛鉱。赤銅色をした黄銅鉱などはすぐに見つかった。 結晶の形が残っているものはほとんどないのが残念。緑れん石ねらいで黄緑色の 脈を探してハンマーを振るうが、結晶はいずれも顕微鏡サイズ。石が大きいわり にしみったれている。
石を割っているとバイクツーリングの青年が川原まで降りてきて、「化石ですか」 と声を掛けてきた。鉱物採集だといっても理解してもらえなかったのは寂しかっ た。それなりのものが拾えるが多くは期待できない場所だ。水際よりも、道路に 近いヤブのなかに掘り出しものがあった。
ずい道を抜けるとまた、川原に降りる道がある。水場が近く、ビバークサイトに 最適だったが、まだ時間が早すぎる。ここはえん堤の上で、鉱物は乏しいがザク ロ石の露頭は見事だった。
ザクロ石の露頭 |
雁掛トンネルて前から工事中の広河原林道に入る。ザックをデポして六助沢を少 しさかのぼる。最初のえん堤を左側から越そうと取り付く。上部で行き詰まった が、対岸に道を確認。少し戻ってガレを登るとちゃんとした道があった。しかし、 えん堤はもうひとつあった。少し悪いがこれも右側から越えた。
この先は巨岩が重なる急流が始まる。時刻が遅いので今回はここまでとする。こ の沢で採れるのは硫化鉱物、マンガン鉱物など。割られた転石の断面には黄鉄鉱が キラキラしている。黒っぽい、コロンとした石が狙い目だが、適度な大きさのも のはほとんど割れているし、小さな石を割っても結晶の大きさは知れている。し かたないので大きなな転石を割った跡を探す。この方法が結構いける。
黄鉄鉱のかたまりを割る。おお、このまぶしいほどの輝きは閃亜鉛鉱ではないか (実は方鉛鉱だったりする...)。喜び勇んで小割りにする。たくさん採集した のはいいが、もろく崩れやすいのでバッグに入れるわけにはいかない。両手に載 せて戻ったが、はしごを下るときはすっごく怖かった。
ひとつ目のえん堤の手前によさそうなビバーク地を見つける。平らで水場も近い。 岩壁の上ではあるが、寝ている間に落ちるような距離ではない。シートを敷けば ビバーク態勢が整う。テントを張らない分、時間はかからない。ろくに食事をし ていなかったので、そば、もち、スープなど家に残っていた食料を2時間かけて たっぷりといただいた。マットを敷いてシュラフカバーに入り、足をザックに突っ 込んでツェルトを被った。夜半に一時寒く感じたが、気がついたらもう5時。とっ くに明るくなっていた。
寝ぼけまなこでお茶を入れようと、お湯をわかし始めたとたんに不注意でひっく り返す。すぐに火は消したが、焼けたコンロで指先を火傷する。情けない。もち と雑穀の朝食をとって、行動開始。もう一度沢を登る。昨日は暗くてよく分から なかった繊維状鉱物を採集する。なかなか堅くて小割にするに苦労した。透明な ピンク色のかたまりなど正体が分からないが、見栄えのする鉱物もキープ。土砂 のたい積した斜面を掘り崩して探す。大きさは知れているが、結晶が残っている ものもある。この方法でミリサイズの晶洞に方解石の結晶があるものも採集でき た。
お世話になったビバーク地 |
1年前とほとんど同じコースをたどったが、採集した鉱物の種類はがらっと変わっ た。多少の勘違いはあったものの、はるかに多くの鉱物が同定できるようになっ ていたからだ。昨年はザクロ石と黄鉄鉱しか知らず、それらを山のように拾って きた。今回は閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱など金属鉱物や輝石、角閃石類、緑れん 石など造岩鉱物についても知識が広がった。この面では成長したなと思う。
もう少し頑張って奥まで突っ込めばという気もする。しかし、ぼくの山登りの原 点は山岳自然についての知見を深めることにある。鉱物採集はあくまでも副産物 という立場は譲れない、自分のスタイルを外れてまで採集にこだわることはでき ない。石屋としても山ヤとしても中途半端だけど、いまはこれで納得している。 今回は鉱物だけでなく、ウルイやミズなど山菜も分かるようになって文化的にか なりグレードアップできた。
ただ、石を詰め込みすぎて山菜が入る余地がなくなったり、シンプルに登ろうと 思っていたのにあれこれとザックに詰め込みすぎてしまったりと、まだ、修行が 足りないと感じたことは多い。
滝沢ダムの付け替え道路が4月に完成し、中津川はぐっと近くなった。運転手によ ると10分は短縮されたが、運転はつまらなくなったという。「正直いって、前の 道の方が『中津川へ行くんだ』って気合が入りましたよ。いまは普通の道になっ ちゃった」と残念そうだった。ぼくがバイクの青年にもらした感想と図らずも同 じだった。交通が便利になることは、ダムの底に沈んだり、道路建設のために削 り取られたりした自然より重要なことなのだろうか。さっぱり理解できない。
途中で大滝温泉「遊湯館」に寄る。次のバスまで50分しかなく、あわただしかっ たのが残念。西武秩父駅前で地元産の山ブキを買う。大きさは先日採ったものと 同じ位だった。後先考えずにフキ味噌を大量に作った。食い物は減っていくが、 食えない石はいくつもゴロゴロたまっていく。数日間は顕微鏡をのぞいて楽しめ るが、その後の整理どうするか。考えると頭が痛い。拾う前によく考えようって いつも思うんだけどね。
振り返ってみると、なんだかやっぱりお気楽アウトドア。冒険はどこへいったの。 あえていえば、賞味期限を5年前過ぎたスープを飲んだことが、そうだといえな いこともない。それじゃ、あまりにもレベルが低くくてなさけない。もう少し、 考えて努力しないと、シンプルな山登りができなくなっちゃうどころか、テント で寝られないアウトドアマンになってしまいそうだ。もうちょっと訓練をつまな ければいけないと反省してみる。 本日の成果は...。