16日(7:10)田端駅前→(10:40-15:05)新八茎鉱山→(18:05)田端駅前
堀会長(右端)の説明を聞く参加者 |
鉱物同志会の採集会に参加した。場所は福島県の新八茎鉱山。現在も稼動中の現 役鉱山だが、許可をもらって鉱物の採集をさせてもらうことができた。ここはス カルン(接触交代)鉱床で、かつてはタングステンの原料である灰重石を採掘し ていたそうだ。スカルン特有の灰鉄輝石やザクロ石も採れるが、今回の採集では 磁硫鉄鉱や黄銅鉱などの金属鉱物が中心になりそうだ。
田端駅前からマイクロバス2台に分乗して出発。バスの中では現地で採集できる 鉱物のサンプルを見せてもらう。本物を見ておけば、現場での判断がしやすい。 ありがたい配慮だ。12の標本があったが、全部を覚えるのは無理。灰鉄輝石やザ クロ石、磁鉄鉱はとりあえず分かる。磁硫鉄鉱って黄鉄鉱とどこが違うの? 首 を傾げていたら隣の座席の人が「磁石につくんですよ」と教えてくれた。なるほ ど。よっし今回は磁硫鉄鉱とバビントン石に狙いを絞ろう。
ズリで石を割る |
鉱山事務所を過ぎるとバスは狭い道を進む。山側斜面の窓からはガレた斜面が迫 り、谷側は路肩が見えないほどだ。マイクロバスできた理由がよくわかった。千 軒平の事務所前に着くころは雨も小降りになり、幸先いい。現役の鉱山はどんな すごいところなんだろうと期待していたが、今は使っていない坑道の入り口と小 さな事務所があるだけだ。ちょっと拍子抜けする。堀会長のあいさつと採集時の 注意事項を聞き終わると、われ先と奥のズリに向かう。
最初はどの石を割ったらいいのか見当がつかなかったが、よく観察すると濃緑色 の石が散乱している。手に持つとずっしりと重い。灰鉄輝石だ。地面から掘り出 して割ると黒っぽい脈が見える。これがお目当てのバビントン石か。しかし、ガ ラス光沢ではなさそうだ。雨でぬれ、どろにまみれた中では鉱物の同定は難しい。 はっきりと断定できるのは灰鉄輝石だけだ。隣りでは堀会長がハンマーを振って いる。ちょっと緊張する。「分からないことがあったら堀会長に聞いてください」 といわれたが、おそれ多くてとても質問なんかできない。
金属鉱物を採集した河原 |
いくら割っても灰鉄輝石しか出てこないので河原まで降りてみる。表面に青い孔 雀石が付いた石が目立つ。赤茶色にさびているが黄銅鉱かな。ここは金属鉱物が 多そうなので少し腰を落ち付けて探す。磁硫鉄鉱、磁鉄鉱、黄銅鉱などがひとと おり採集でき、バビントン石もサンプルをいただけた。当初の目的に手が届き、 少し心にゆとりができる。時計を見ると既に13時30分。食事をとるのも忘れて没 頭していた。
当地の特徴をよく表した標本を手にしたいともうひと頑張りする。丹念に探せば、 結晶の残っている物など、それなりの成果は出るものだ。それにしても灰鉄輝石 の堅さは半端ではない。思いっきりハンマーを振るうと巨大な火花が飛び散る。 大型のハンマーを使っている人もいたが、タガネをうまく使わないと歯が立たな い。逆によく石の目を読めば30センチ径くらいの石なら中型ハンマーで十分だっ と感じた。ずっしりと重いザックを担ぐ。多少は選別したつもりだが、舌切りス ズメのよくばりじいさんって感じは否めない。
千軒平事務所の前 |
千軒平事務所前の河原には、すでに多くの参加者が移動していた。狭い場所だっ たが、ズリの末端で大き目の石を掘り出して割る。コバルト鉱物に期待したが、 それらしい色は全く見当たらない。それでも、一抱えもありそうな石を割ったら 小さな晶洞が現れた。キラキラ輝く針のような結晶が林立している。ルーペをの ぞいても小さすぎてよく分からない。どうせ水晶だろうと思って、ちょっと気落 ちする。
小降りになっていた雨は、採集を終えた記念撮影のころにちょうどやんだ。今回 はちゃんと目標を絞ったので成果に一応は満足している。そうはいっても、採集 会は大勢で産地に押しかけるのだから、よい標本をそろえようと思っても限界が ある。それよりも鉱物の特徴や採集方法について現地で直接教えを請うことがで きることの方に魅力があると思う。それが分かっていても、産地を目の前にはや る気持ちを抑えられないのは情けない。帰りのバスでは爆睡してしまい、隣の人 とも十分話ができなかったのは不覚だった。他の参加者ともう少し、コミュニケー ションを取り合うようにしたい。
持ち帰ったサンプルを改めて観察したところ、採集できた鉱物は灰鉄輝石、灰鉄 柘榴石、磁鉄鉱、磁硫鉄鉱、黄銅鉱、斑銅鉱、黄鉄鉱、バビントン石、大理石な ど。水晶と思ったものは黄色透明の針状結晶だった。たぶん緑れん石だろう。 本日の成果です。