25日(8:45)大泉→(10:30)猿橋→(10:50-12:30)大島の小沢→(12:30-13:30)同 林道沿いの空き地→(13:40-15:00)葛野川→(17:30)大泉
山梨の大月市には「大島の灰長石」という自然記念物がある。その近くの沢へ石 友のKenくん、K田さんと鉱物採集にいった。K田さんの愛車・三菱パジェロ はリコール対象車だ。白煙をはかないかドキドキしたが、無事産地に到着。きょ うも暑く、すでに積乱雲があちこちにわいている。こりゃ早い時間から夕立遭う かもしれない。
産地の沢は木陰で風通しもよい。雷もやり過ごせるから腰をすえて採集する。灰 長石は玄武岩に取り込まれている。質を選ばなければいくらでもある。現物で ちょっと説明すればKenくんはすぐに理解してどんどん拾ってくる。一方、K田 さんからは「長石って何ですか」と本質的な質問が出る。メールで送った案内書 に記しておいたんだけれど、本人まで届いてなかったのね。こういうこともある から、当日はちゃんと文書を用意してこないといけない。
しばらくするとKenくんが白い結晶をもってくる。もう沸石を見つけたのか。答 を出す前にまずルーペで観察がお約束。水晶とは様子が違うってことは分かった。 「じゃ、方解石かな」と塩酸を出そうと鞄を開く。が、「ぼく持ってます」と Kenくん。おお、これは想定外だ。塩酸にも解けないことを確かめて、「これは 沸石という鉱物です」と講釈をたれる。教育実習みたいになっちゃったけれど、 余裕のあるときはこれもいいかな。Kenくん大変喜んで「おとーさーん。沸石だ よ」とさっそく自慢しにいった。今回はルーペを首から下げているし、塩酸も持っ てきたし、Kenくんが石屋としてかなり本格的になっていたのには驚いた。
灰長石はたくさんあるが、たいていはボロボロと崩れてしまう。母岩がもろいと 中に入っている灰長石ももろいようだ。透明度の高いものはしっかりしているけ れど、結晶は小さい。玄武岩に取り込まれているのは灰長石や沸石だけではない。 ごく小さいけれど、半透明な黄緑から緑色の鉱物が見つかる。たぶん、かんらん 石だと思う。玄武岩はいろんな鉱物を運んでくれるのでK阪さんがいうように 「雑魚」あつかいしてはいけない。
11時を少し回ったころにやっぱり夕立がきた。一時は雨も雷も激しかったが、沢 の中は雷はもちろん雨にもぬれず安心できる。蚊が多いのを気にしなければ快適 に過ごせる。次の採集場所は雷を遮るものが何もないところなので、完全に通り 過ぎるまで移動はできない。なかなか雷が去らないので、ちょっと早めの昼食を 取ってもらう。後で知ったことだが、この日は北アルプスでは2カ所で12人が落 雷の被害に遭い、1人が死亡する事故があった。K田さんは早く移動したがって いたが、何とか言いくるめて時間稼ぎしたのは正解だった。ホッ。
正午をやや過ぎたころにやっと雷も去った。林道を少し登った空き地に移動する。 露頭採集を試みたが、岩がボロボロでよろしくない。上部に回って下見のときに めぼしをつけておいたポイントに。束沸石の密生した玄武岩をKenくんに見せる と「オー、すげぇー」と大喜びだ。他にも押し花のように母岩に放射状に張り付 いた沸石も採集していた。しかし、さすがに炎天下の採集は集中力が途切れる。 その場でじっくり観察して標本を選んでなんかいられない。さっさとザックに石 を放り込んで退散する。
帰り道は山梨県の自然記念物になっている「大島の灰長石」産地前を通った。小 さな看板はあったが、露頭は大半がコケに覆われていていたり、風化していたり でどこに灰長石があるのかさっぱり分からない状態だった。これでは記念物にす る意味はないだろう。保護と併せて活用の方法も考えなければ、後世に残せはし ない。行政は本当に灰長石の意味を理解しているとはとても思えない状態だ。 Kenくんの方がよっぽどよく分かっている。こんなところにも文化行政の貧困さ を感じる。
近くの葛野川で水遊びをして帰る。Kenくんがアメンボを追っかけている間に川 の水で石を洗う。すぐに乾いていくところを見ると余計暑くなる。もう一度よく 観察すると灰長石だと思っていた石が沸石だったりした。Kenくんに見せたら、 即答で「沸石ですか」。こともなげに答えた。ちょっと自信をなくす。上野原か ら高速に乗ったら、小仏トンネルを出るまで渋滞でノロノロ運転だった。大月か ら乗らなくてよかった。途中、石川SAで食べたアイスクリームがうまかった。 本日の成果です。