28日(9:30)荻窪→(13:00-14:30)清里→(15:30-16:10)湯沼鉱泉→(17:00)廻り目 平 29日(7:10)廻り目平→(7:30)梓鉱山入り口→(10:30)ベスブの露頭→ (11:15-14:10)緑水晶の露頭→(15:10)鉱山入り口→(15:30-16:10)湯沼鉱泉→ (16:40)廻り目平 30日(8:10)廻り目平→(10:05)中津川→(12:00)落合→ (13:20-14:00)秩父市内のバイク屋→(14:20-15:00)道の駅芦ヶ久保→(18:15)大泉
ゆとりをもって梓鉱山をみたいと2泊3日の日程を組む。前回の教訓からテントも 持っていく。キノコ狩りとあわせると荷物がかさばるし、機動力も落ちるので、 久しぶりにバイクで移動することにする。だんだん登山とかけ離れていくような 気がする。
雨宮さんところでバイクを借り、中央道を走って昨年キノコ観察会を行った清里 の自然観察センターへいく。周辺の森でキノコを探すが、なかなかない。木のウ ロに生えていたヌメリスギタケモドキの幼菌を2本採集。しかし、これではきょ うの夕食には足りない。よーく探してやっとササの下からジコボウを1本見つけ た。ベニタケ類はたくさんあるが、それ以外は芳しくない成果だった。
ふたたびバイクに乗ると異変が。前輪がいつの間にかパンクしている。こんなと ころでは修理もままならない。スピードを落として走り野辺山のガソリンスタン ドで空気を入れて川上村までぶっ飛んだが、村の入り口でふたたび空気が抜けて しまう。とりあえず鉱山の入山両を払うため、湯沼鉱泉に寄ると社長が「おれっ ちの天然水晶洞見たか見ていけ」という。小銭がないといっても「明日でいい」。 時間を気にしながらのぞいてみるとこれがすごい。本物だ。玉石混合ではあるが、 見るべきものは多い。とくに地元川上村の鉱物は小川山の水晶、梓山の鉱物、湯 沼のザクロ石などけた違いに大きなものがゴロゴロしている。水晶洞の出口には ズリが広がり、ザクロ石などの鉱物採集もできる。半日は遊べる。次回はもう ちょっと時間を掛けて寄ろう。
パンク修理の件を社長に聞いたが、川上村に修理できるところはないということ だった。まあ、ゆっくり走ってごまかすしかないな。今晩の幕営地・廻り目平は 車が10台くらいしかない。幕営場所もより取り見取りだ。水場に近いベニヤの台 座がある特等地にテントを張る。暗くなりかけるなか、急いでキノコを探しにシャ クナゲ遊歩道をいく。暗くて見にくい上にキノコは少ない。それでもチチタケと ジコボウ、ヌメリイグチなどが手に入る。おかずとしては十分だろう。夕食中の 19時ごろ雨が降り出し、テントの中に避難する。防寒対策をしてきたけれど、意 外に暖かかった。
水晶 |
5時40分起床。夜は土砂降りだったが朝は小雨ですぐ上がった。町田の自然休暇 村を過ぎてからの未舗装道路は辛いけどバイクは早い。急登をはいつくばるよう に登るとキノコが目にはいるが、写真を撮ったりしていては前に進まない。磁鉄 鉱のズリやベスブのズリもやり過ごし、ベスブの露頭へ。露頭直下は結構いい標 本が拾えた。拾った熊手がずいぶん活躍した。露頭のすぐ左奥にあった抗口は入 り口も奥行も広く、床は平。ビバークするならこういう場所がいい。朝が早かっ たためかまだ十分余裕がある。
緑水晶のズリでは以前、灰鉄輝石の露頭があった場所を探して尾根をよじ登るが、 それらしきものは見つからず、がっくり。午前中は時々日も差したが、午後から は本降りとなる。ズリらしい場所も見つからず、とぼとぼと降りていると巨大な 晶洞前に出た。入り口には灰鉄輝石や水晶、方解石の結晶が付いたかけらが落ち ている。晶洞の周りを良くみると水晶が脈になって入っている。しかし、内側は もっとすごかった。ずいぶん削られてはいるが灰鉄輝石と水晶の結晶があちこち に突き出ている。これも「天然水晶洞」だ。こんな見事な晶洞はめったに見られ るものではない。ヘッ電で照らしてよく観察する。
一部を削り取ろうとタガネを当てたが、簡単に割れるような個所はない。これほ ど見事な結晶を、採集のために壊すのもしのびないと、入り口に落ちていたかけ らだけでがまんする。その後も水晶を求めて右側のズリを少しほじくるが、雨が うっとおしく集中力も続かない。もう少しだけと稜線に向かって踏み後をたどっ てみるものの、午後2時をまわり、寒さも増してきたので引き返す。しかし、ま た、緑水晶のズリ付近で道を失ってしまい、焦る。思ったより踏み後が下に付い ていたからだ。いったん降りてしまうとふたたび登り返すのは辛いため、下るの は怖い。なんとか赤テープを発見し、ホッとする。
「天然水晶洞」の前に転がっていた灰鉄輝石 |
この後、下りで2度ほど道を失う。疲れていた上に雨で踏み後が見えにくくなっ ていた。ベスブのズリから下は地形が分かるので道を間違えても下れる自信はあっ たが、不安を抱えたままの行動は消耗する。まだ土地勘がある場所とはいえない から、赤布などを活用したほうが安全だろう。バイクの前にたどり着いたときは グッタリしてしまい、廻り目平まで走ると思うと気が重かった。ところが、シー トにまたがるのは歩くよりずっと楽で、雨も気にならなかった。
湯沼鉱泉を訪ねると、温かいハチミツを出してくれ、冷えた体にとてもありがた かった。社長がきょうの成果を見せろというので採集物を広げる。頭付きのベス ブ石だけはほめられたが、「ホントにこれだけか? ほかに隠してないのか」と いわれてしまった。哀れに思ったのか裏山で採れたザクロ石をくれた。これが緑 色透明でなかなかのもの。1.5センチを超える透明な結晶が数個連なったコレク ションを見せてもらったが、本当にここで採れたのか信じられないようなものだっ た。地元の人が採ってきた傘の径が30センチもあるマツタケも見せてもらった。 社長は「おれはリコボウなんか採ったことはない」といっていた。
思わぬ長居をしてしまい、急いで廻り目平に戻るとすでに台風を警戒して車1台 を残してキャンパーはほとんどいなかった。暗い雨の中、夕食用のキノコ狩り。 昨日よりずっと条件は悪い。それでも背に腹は代えられない。情けなくて悲しく なる。こんな日でもキノコは生えている。やっと小さなジコボウ2つを採る。川 上村の偉大な自然の恵みに感謝。戻る途中に花壇のわきに白いイグチが群生して いた。シロヤマイグチかとカゴにいれたが、管孔の様子も違えば柄に網目模様も ない。図鑑もないから、自信が持てず捨てる。貧しい具のみそ汁でがまんする。 小雨になったのを見計らって風呂に入る。ホッと一息つけた。
廻り目平の地形から風当たりはそれほど強くはない。それでも、台風21号はすさ まじかった。雨は音がうるさいだけだったが、テントはしょっちゅう押しつぶさ れそうになった。それでも人が入っていれば飛ぶことはないだろうと安心してい た。しかし、台風が最も接近した夜半に北側からの突風に押し倒されてしまった。 慌てて元に戻したが、まくら元に置いてあった眼鏡のレンズが割れた。勢い身構 えてはみたけれど、それ以降はたいした風も吹かず、いつの間にか寝てしまった。
翌朝はすっかり明るくなった6時に目が覚めた。風の音はするが青空も出ている。 夜中に撤収していたパーティーは車の中でまだ寝ていた。風で飛ばされたものも なく、雨がやんだので撤収ははかどる。心配なのはワッパのご機嫌だけだ。とこ ろが、これが最悪。ガソリンスタンドで空気を入れる先から抜けていく。秩父ま で持てばよしと予定通り三国峠を越える。川上村側の道はいい。本来は景色やキ ノコを探して楽しいツーリングとなるところだが、前輪のキューキューいう悲鳴 が腹に響き、気が休まらない。
下りは聞きしに勝る悪路だった。よくこんなところに道路を造ったなと感心する ほどの急傾斜が延々と続く。とにかく前輪に荷重がかからないようにと腰を引い てゆっくりと下るしかない。中津川の集落に着いたときは涙が出るほどうれしかっ た。新築されたばかりの滝沢ダムの代替道路がありがたかった。大滝村の端で偶 然バイク屋を発見。飛び込んだがあいにく店主が葬儀に出かけたところだった。 なんてついてないんだ! 腐らず秩父市内までのろのろと走る。ところが、市内 に入ってもなかなかバイク屋がない。旧街道を少し戻ったところでやっと見つかっ た。つなぎを着たおやじが出てきたのを見てやっとひと安心だ。
オヤジの話では市内のバイク屋は高齢でどんどん廃業して、もう数件しかないと のこと。オシャカになったチューブを交換する。タイヤはサイズの合うものがな かったのでひび割れたままだましだまし帰ることにする。高速には乗らず正丸峠 を越え、川越街道・所沢街道経由で大泉をめざすが、裏目に出た。街中の渋滞は 半端ではなく、久しぶりの遠乗りは疲れ果ててしまった。加えて長時間にわたる ライディングは思いっきり腰にきた。一週間たっても痛みが取れず、医者に「ヘ ルニアになったかも」と脅された。トホホなおまけが付いてきたもんだ。それで、 採集物はこんなもんです。