3日(7:00)新宿→(11:00-13:00)浜横川鉱山→(13:15-13:30)蛇石見学→ (14:30-16:00)「地球の宝石箱」見学→(19:15)新宿
鉱物同志会の採集会は3度目。いつもは満員になるバスだが今回は空きがある。 地味で分かりにくいマンガン鉱物は人気薄いのか。バスの中で回ってくるサンプ ルもピンクのバラ輝石と菱マンガン鉱以外は地味。雨だし、採集時間も2時間し かないし、なかなか採集意欲が盛り上がらない。しかし、幹事さんが作ってくれ た案内文書が優れていて、鉱物の成分や分布のし方などがよく分かり、マンガン 鉱物の特徴がよく分かった。これだけでもきた価値があるというものだ。
カッパを着てヤブっぽい山道を5分ほど登ると選鉱所跡地に到着。少し狭いがこ こで採集する。薄暗くてずり石の質感が分かりにくい。手当たり次第割っていけ ばいいのだが、マンガン鉱石は堅くて大きなものはなかなか割れない。苦労して 割っても、外れの方が多い。なかなか報われない作業だが、たまにピンクの部分 が現れるとパッと明るい気分になるのがうれしい。鉱石も小さいものを選べば比 較的割りやすいし、鉱石の見分けもつくようになる。だんだん学習していくもの だ。
横川の蛇石 |
一方で忘れていくものもある。テフロ石、アレガニー石、ハウスマン鉱など地味 で特徴のつかみにくいものはリストからもれていく。かろうじて磁性のあるヤコ ブス鉱だけは確保したが、後はもう、何が何だかわからなくなってしまった。近 くで「緑マンが出た」という声があがるともうだめ。ターゲットは緑マンガン鉱 のみに向けられてしまった。緑マン求めてズリを上がったり下がったりしたが、 ずっしりと重い高品位鉱はなかなか見つからず、タイムリミットになってしまっ た。
展示されている北海道産の菱マンガン鉱 |
後ろ髪を引かれながら、バスで横川の蛇石(じゃいし)見学に移動。川の中に横 たわる大蛇のような石は粘板岩に閃緑岩が貫入し、冷えるときにできたさけ目に 石英がシマシマに入ったものだという。だけど、どう見ても石というよりは蛇そ のものって感じだ。自然の造詣(ぞうけい)の見事さにみな、雨の中でも感心し て見入る。天気がよければ川の中に入って触ってみたかった。
お次は塩尻市にある博物館「地球の宝石箱」を見学する。「鉱研」というボーリ ング会社が50周年を記念してつくった博物館で国内各地の有名鉱山の大型鉱物標 本などが展示されている。館長の宮本さんも鉱物同志会の会員で昨年の甲武信 (梓)鉱山の採集会にも参加したそうだ。海外の大型標本もあるが、国内の標本 が充実していて驚いた。とくに長野県内の鉱物は梓のザクロ石などよくこれだけ のものをそろえたなと感心した。
こちらはブラジル産の大型水晶 |
しかし、一行が一番驚いたのは今回の幹事で同志会の会員のHさんが寄贈した全 国各地の鉱物標本だ。いまは絶産となってしまった埼玉県越生西和田の灰クロム ザクロ石など、写真でしか見ることのできないような貴重な標本がそろっている。 採集会参加者も「こんなすごい標本があったの」としきりに感心しながら見入っ ていた。紫外線で蛍光する鉱物を見られたり、ガイガーカウンターで放射線を計 れたり、鉱物を勉強するための展示内容もかなり盛りだくさんだった。建物の外 にも大型の鉱石が展示されていた。時間が足りなかったのが残念だった。
採集会のお土産として岡谷市横川谷の「きなこ石」(蛇紋石)、和田峠の 満ばんザクロ石、福島県羽山鉱山のルドイヒ石をもらった。和田峠のザクロ石は 貴重だけれど、きなこ石が一番魅力があった。今回は石を採るだけでなく、博物 館や蛇石など多くの石を見られたことがとても勉強になったと思う。マンガン鉱 物については、かなり自信を持てた。
展示予定の標本も見せてもらう |
ところが、話はそう簡単ではない。持ち帰った石の同定は難航した。現場で菱マ ンガン鉱とバラ輝石の識別の仕方を教えてもらったが、石を目の前にすると迷い が生まれる。硬度だけでは自信が持てないので細かく砕いて塩酸の反応を調べる。 すると差はあるもののすべての標本が、加熱すると泡を出すではないか。全部が 菱マンか? そんなはずはない。今度はピンクの部分だけを厳選してすりつぶし て反応をみる。すると色の濃いところは反応しないことがわかった。鮮やかなピ ンクはバラ輝石だった。ここまでたどり着くのに1週間以上かかった。
その他の鉱物もヤコブス鉱以外は鑑定に苦労した。とりあえず、テフロ石、アレ ガニー石はあるようだ。黄色から薄いピンクの石は菱マンらしい。ハウスマン鉱 らしきものも採集はしたけれど、同定する自信はまだない。苦労はしたけれど、 マンガン鉱物への知見はかなり高めることができたことは収穫だった。鉱物採集 も山登りと同じで、登って終わり集めて終わりではない。現場で解決できなかっ た課題を時間をかけて解きほぐすところにおもしろさや進歩があると思った。そ んなわけで、成果の一部を紹介します。