奥多摩で石を割り、御岳で石を登る


23日(7:25)大泉学園→(9:15)奥多摩駅→(10:00-11:30)奥多摩鉱山→ (11:40-13:50)奥多摩駅前→(14:00-15:40)御岳渓谷→(17:30)大泉学園

恒例になった?? 秋の採集会はN尾くんといきたいとK阪さんからの要望を受け て場所を検討した。KenくんとN尾くんだけならば1日中石を拾っていても文句は 出ないが、家族連れだとそうもいかない。ちょっとマニアックになるけれど、近 場のマンガン鉱山の中から歩く距離が短く、観光地に近い奥多摩(氷川)鉱山を 選ぶ。しかし、マンガン鉱物は鑑定が難しい。鉱物に興味を持ち始めた3年前に きたときは鉱物の種類がさっぱり分からず、ただただ石を割った場所だ。今回は 鉱物同志会の採集会で覚えたばかりだから何とかなるでしょう。

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鉱石を割るN尾父さん

問題はハンマー。マンガン鉱物は非常に堅い。KenくんやN尾君の持っているも のでは全く歯が立たない。何とか2人が自力で石を割れる道具を持たせて、ぼく が全部割らなきゃいけないような事態だけは絶対に避けたい。ホームセンターな どを探し回ったが、500グラムぐらいの手ごろな重さのものは全然置いてない。 やっとインターネットの通販で子どもでも使いやすそうなレンガ用ハンマーを見 つけて取り寄せた。1本1280円と鉱物・化石採集用のものと比べてずっと安く買 えた。これで懸案事項が解決して一安心だ。

さて、当日はNahoちゃんに逃げられたもののK阪さんとK田さん、N尾父さん、 N尾母さん、妹のさおちゃんにKenくん、N尾くんの総勢8人になった。ちょっと 緊張する。準備してきたサンプルを回覧して、マンガン鉱物の簡単な説明メモを 配る。実物を見た2人は「よっし、おれはバラ輝石狙いだ」てな調子で気合十分。 頼もしい限りだ。それに比べて分かったような顔をしているが、興味関心がある かは定かでないK阪・K田、N尾父・母をどこまで引っ張れるか。いつものこと だけれど多少の不安も頭をよぎる。

奥多摩駅に着くとどっと人が降りる。10日前より一段と人が増えた気がする。に ぎわう駅前を後に浄水場への坂を上がる。急傾斜にやっぱりK阪さんが悲鳴をあ げるがみなで無視する。振り返ると氷川の町が眼下に広がる。駅に入ってくる電 車が鉄道模型のようだ。小ぢんまりした美しい山あいの町はちょうど紅葉の盛り を迎えていた。

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選鉱作業中。どれがいいかな

程なく産地の沢に到着。えん堤の上で荷物を降ろし、採集方法やハンマーを扱う ときの注意など説明する。N尾くんはまじめに話を聞いているが、Kenくんはい つものとおり聞くまえから探し始めている。効率よく探すとか順序だてて作業を するとかには無縁のKenくんになんだか自分の姿を見ているようでちょっと恥ず かしい。まあ、ケガさえしなければいいか。

みんなが上流へ石を拾いにいってもK田さん1人残っている。手近な黒いかたま りを拾って「これどうですか」と持ってくる。足元の石しか手を出さず、半径10 メートル以内でお宝を掘り当てようとする安易な姿勢がありありと分かる。でも、 あの靴で沢を登ったら壊れるかもしれないから、身分相応の行動かもしれない。 ほんのちょっとの鉱物でも大げさに騒ぐところはKenくんそっくりだ。でも、Ken くんは言った先から大事な石をえん堤の上にほったらかしにはしない。

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みんなで石を登りました

K阪さんは最初、ボロボロのかけらを大げさに持ってくるなど、鉱物採集をなめ ているとしか思えなかった。でも、バラ輝石のいいやつを見つけて自信満々にな ると、もう何を言っても聞く耳は持たない。マンガン鉱物の採集は割った石の数 に比例する。一攫千金(いっかくせんきん)はないのだけれど、みんな山師になっ てしまう。N尾父さんは鉱石回収に熱が入って1人だけちっとも降りてこなかっ た。気持ちは分かるが子どもと同じレベルで熱くなっても疲れを知らない子ども に太刀打ちはできない。理性と頭脳で勝負しないとむなしくなると思う。今回は 15個くらい割って標本らしき鉱物は2種類という成果だった。見本を得るために、下見のとき は40―50くらい割ったと思う。

それにしてもマンガン鉱石の強靭さは半端ではない。1.5キロのクラックハンマー で10回たたいても割れない場合もよくある。それでも、1時間もたつとだいぶ要 領もよくなる。K田さんもN尾父さんも結構うまく石を割っている。とはいって も鉱物採集というよりは石を割ることに興味が移っているような気もする。その 証拠に降りる時間が近づくとKenくんとN尾君が一生懸命に採集物を選別してい るのに「早くしろよ」とせかすだけだ。手伝ってあげればいいのにとも思うが、 残念ながら手伝えるだけの能力がないんだな、悲しいかな。ぼくが手伝ってあげ るべきだったな。腹が減ってせいていたので気がつきませんでした。すみません。

早めに下山したら、目的の丸花食堂はまだやっていなかった。しょうがないから 日原川であそんで12時15分ごろ食堂に入る。あわび茸丼やざるそばを注文するが、 ばあさんひとりでのんびりと作っているので、なかなかできない。しびれを切ら して出て行く客もずいぶんいたが、忍耐強いわれわれは1時間待って食事にあり つけた。念願だったあわび茸丼はキノコの煮付けに卵とじが乗っているだけだっ たが、キノコにボリューム感があり満足できた。あわび茸はキノコ嫌いを自称す るN尾くんが「これなら大丈夫」とお墨付きを与えたほどだった。散々待たされ てご機嫌斜めだった子どもたちには申し訳なかったけれど、次にきたときに店が あるかどうかは微妙なのでどうしてもここであわび茸丼を食いたかったのだ。勘 弁してください。

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なんとか全員集合ですな

予定時間をずいぶん回ってしまったけれど、とりあえず御岳に行く。駅前で売っ ていたキノコは奥多摩より種類が豊富だった。河原ではボルダラーがいっぱいい てがく然とした。昔は見向きもされなかった「とけたソフトクリーム岩」を取り 巻くように10人くらい群がっていた。3年前とは時代が変わった。「滑り台岩」 の隣りに陣取り、ちょっと登ってみるが、子どもたちにはやや難しかった。いな くなったのであきらめたかなと思ったら、お茶を沸かしている間に3人であちこ ちの石ころを登りまくり、Kenくんはソフトクリーム岩にもちん入していた。

初めは引き気味だったN尾くんも釣られて登っていた。さおちゃんまで真似して 登りたがるので慌ててフォローに行った。多少難しそうでもお尻を一押ししてや れば大丈夫のようだ。ボルダリングではスポットで手痛い失敗をしているので、 登らせるかやめさせるかの判断は慎重にならざるを得ない。それでも、目の色を 変えて登る子どもたちを見ると多少の犠牲は覚悟しなくちゃとも思う。絶対に登 り切らせるという見通しは必要だが。K阪さんが落ちるのは計算のうち。多少手 荒に扱っても大丈夫そうだと思えば余裕を持ってフォローできるものだ。

岩登りは、見た目ほど簡単ではないが、考えるほど難しくもない。子どもは遊ん でいるうちに自然とうまくなる。一方、おとなは遊びがなくいきなり登ろうとす るから下手なままで終わり自信を失う。変なプライドも上達の妨げになる。猿の ように無心で石の上を走りまわれるかどうかが上達の分かれ目だ。私は「ウッ キー!おサルさんだよ」といって登るようになってから各段に腕を上げました。 この極意を獲得すればあなたもクライマーの仲間入りだ。

鉱物採集も石登りも子どもたちには、それなりに満足してもらえたかなと思う。 かなり濃い内容の1日だった。もちろん、KenくんとN尾くんでないととても無理。 2人はそれだけ鍛えられているので楽をさせてもらえる。子どもは何もなくても ちゃんと遊べるものだ。いまは遊べない子どももずいぶん増えているっている話 も聞いたからKenくんとN尾くんは特別に優れているといっておこう。だってこ れからもいっしょに遊ぶ仲間でいてほしいもん。頼りにしてるよ同志。

キノコを買わなかったことが唯一の心残り。あわび茸は素揚げ、煮物ともに大変 おいしかったと買ったK阪さんから報告を受けた。どう調理しても歯ごたえのあ る食感が失われないところが「あわび」茸と呼ばれる理由ではないかとのことだっ た。今度奥多摩方面に行ったらどっさりとキノコを買い込んでこようと固く決意 をするのだった。