17日(6:50)大泉学園=(8:45)三峰口=(9:40)赤岩橋→(11:25)赤岩峠→(12:45)雁 掛峠→(15:10)幕営地、18日(5:50)幕営地出発→(6:30)六助のコル→(8:30)馬 道のコル→(10:20)帳付山→(14:30)滝谷山→(16:10)幕営地、19日(6:50)幕営 地出発→(7:30)ふたたび幕営地→(8:30)ムジナ沢→(11:05)中津川林道→ (12:05-14:05)中津川=(15:05)三峰口=(17:40)大泉学園
奥秩父・上武国境沿いの稜線を赤岩峠から三国峠まで縦走する計画を立てた。縦 走したという話を聞いたことがあるが、大部分は一般ルートではない。3日もあ れば突破できるだろうと読み、念のために4泊5日+予備日という予定にした。コー ス上に水場はない。どこで補給するかの見通しが持てないけれど、なんとかなる だろうと出発した。
行く手に延々と続く稜線。長いなあ... |
宗四郎山から振り返った稜線。とがっているのは赤岩尾根。 |
17日。三峰口で5リットル分の水をザックに詰め込み、タクシーで赤岩橋まで入 る。出合近くの道は先週の台風で2個所、濁流にえぐられていた。無人になった 鉱山住宅前から荷物を背負って歩き始める。ざくろ石などが落ちている杉林のジ グザグ道を過ぎ、尾根道をしばらく進むとズリのようなルンゼの登高となる。真 夏のような異様な暑さに汗が滴る。登り切ると赤岩峠。風が通って涼しい。縦走 はここが出発点だが、すでにエネルギーの半分は使ってしまったような気分にな る。水を目いっぱい飲む。
稜線ではいきなり、急斜面を登らされる。ザックの荷物が頭を抑え、上が見えな い。いつもとは勝手の違いに戸惑う。ヤセ尾根はルートがはっきりしているから 安心感がある。巻き道だと思って、目印がはっきりしていた大ナゲシ方面へのルー トに入る。稜線に戻ってピークを越えた。しかしふたたび別の尾根に迷い込む。 主稜線はいったん急斜面を5メートルほど下っていたため緩やかな枝尾根に引き 込まれた。進行方向が違うし、隣りに主稜線があり変だと気付いた。それでも重 荷がプレッシャーになり間違いをすぐに修正できなかった。
岩山の宗四郎山は稜線を忠実にたどる。頂上からはこれまできた道とこの先進む 道が見渡せる。六助のコルが眼下にある。下りはかなり急だ。トラロープにすがっ て落ちるように進む。この辺りは目印が多い。道とは思えない傾斜だからか。一 気に下るとやっと平坦に近い道を歩くことができホッとする。
六助のコルの下には、埼玉側から群馬側に抜ける広河原林道のトンネルが通って いる。その林道へ下る道との分岐点はテントを張れるほどの広さがあった。時刻 は午後3時。計画どおり馬道のコルまで進むか、それともここで幕営するか悩む。 しかし、いったんザックを置いてしまうと、もう先に進む気力がなくなってしま い、テントを設営する。水を補給するため林道まで降りようとしたら、台風によ る崩落で道は消えていた。水はあきらめざるをえず、大きな誤算にショックを受 けた。なるべく水を節約して夕食を取る。まだ明るいうちからテントに入るのは 気が引けた。疲れているはずなのに熟睡できない。ウトウトしながら獣の足音に 耳をそばだてる。明け方にピィと鳴く鹿の声が物悲しい。
やせた岩尾根が続く |
18日。気が付くと外が明るかった。もう5時だ。きょう中に、どこまで進めるか がカギになる。飯もそこそこに急いで出発。六助のコルにはすぐ着いた。両側に 明瞭な踏み跡があるが、まだ水は3リットルあるので先に進む。急登がすむと岩 尾根が続く。荷物が重くバランスがとりづらい。大した登り下りでないのに体力 を消耗する。巻き道が分かりにくい。稜線を外れないように慎重に見極めながら 進む。アップダウンを繰り返して馬道のコルに着く。
ここも両側に踏み跡がある。下れば水が取れそうだとは思ったけれど、なかなか 進まない行程に焦りを感じていた。水を補給すれば重くなり、さらに遅れを生む だろう。それよりも、身軽なまま一気に突破した方がいいのではないかと思えて きた。水をくみに行くだけの気力がなく、安直な判断を下したと思う。
天丸山が近づくと急に目印が多くなる。この山は群馬県側からの一般登山道があ るからだろう。きょうは曇りで昨日のような暑さはない。それでも水はたくさん 飲んだ。主稜線が西から南へと方向を変える帳付山に着くころは高い山にガスが かかり始めていた。ガスが降りてくると主稜線がみえにくくなる。見通しが利く うちになるべく距離を稼ぎたい。
帳付山からの下りは尾根が広がり、踏み跡を探すのに少し時間がかかった。次の ピークはやせた岩尾根。直登はかなりやばそうだったので、ザックを置いて左側 の斜面を横切って迂回路を探した。かなり進んだところで岩場に行く手を阻まれ てアウト。最初の岩場を直登したら、あっけなく越えられた。
稜線を間違えた二重山稜地形 |
これで安心したからか、次の1609メートルピークで尾根を間違える。赤テープに 惑わされてヤブをくぐり、東南東方向の尾根を下ってしまった。いつまでも下り つづけていることにおかしいと感じ、方向が違うのと右手に顕著な尾根があるこ とで誤りに気付いた。約30分のロス。かなりまいった。気合を入れるためにここ でゼリー状のエネルギー補給剤カーボショットを食い、ラッシュをかける。ブドー 沢の頭に着くころはガスがかなりかかってきた。それでも、滝沢山までは問題な く到着した。水はかなり減った。心許ないが、それでも飲まずにはいられなかっ た。
すぐに二重山稜になる。不思議な地形を右に見ながら、左側の稜線をたどり、真 南に下る尾根に踏み込んだ。これがまたまた間違い。コンパスを見て正しいと判 断したのだが、実は現在地を読み違えていたのだった。それに気付いて慌てて戻 る。今度はヤブの薄い二重山稜の真ん中のくぼみを進み、右側の広い緩やかなサ サヤブの尾根を下った。踏み跡は不明瞭だけれど、ルートにはなぜか営林署ので かい看板があって安心できた。
明日のことを考えると少しでも先に進みたい。しかし、何度も道を間違えると進 むことに不安も感じる。とにかく次の1546メートルピークまではがんばろうと自 分に言い聞かせて歩く。待望のピークは、ただの稜線のように細長かった。ここ で道は南から西へと、ほぼ直角に曲がっている。南東方向には顕著な枝尾根が派 生していることが地形図から読み取れた。それなのに、コンパスで確認せず勘で 右方向へ直角に伸びているようにみえた尾根に踏み込んだ。これが間違いの始ま りだった。だが、そのときは尾根上の踏み跡もはっきりしていて、正しいルート だと信じて疑わなかった。目標までなんとかたどり着き、安心感に浸っていた。 方角を確認するよりも、幕営地を探すことに関心が移っていた。
アセビの木が疎らに生える尾根には、ちょうど幕営地にふさわしい平坦地があっ た。ガスに包まれ、今にも雨が降りそうな天気だったので、急いでテントを張っ た。水が惜しかったのでアルファ米ではなくパンを夕食にした。水は残り1リッ トルとなった。間もなく雨が降り出した。少しでもたまることを期待して食器や コッヘルを外に出した。天気予報では明日の関東地方は曇りだという。少なくと も雨はやんでほしいと願いながら、長い夜が終わるのを待った。