第一話『子供と竜馬』

GM:じゃ、次のシナリオをはじめよう。
 列車が出発してから3日が経過してる。なかなか他の車両の人々と顔を合わせる機会はないんだけど、さすがに3日も経てば隣の車両の人とは知り合いになれる。
 隣の車両(26両目)のホーグさん一家。五歳くらいの双子の子供と、お腹の大きな奥さんが一緒だね。で、子供たちはだいぶ君たちになついてきてるようだ。
 ゴブリンたちに対する嫌悪感はないみたい。大陸の東の方の出身なんだろうね。どうもそっちの方に帰るところらしい。
 で、ホーグさんはキャラバンを形成してて、23〜26両目は彼らが借りてる。商品は馬と西部諸国の珍しい品物だね。当然、危険な道中だから傭兵を護衛に10人ばかり雇ってる。
 さてガルフ。知力ボーナスとファイターレベルでチェックして。
ガルフ:なんだ? (コロコロ)14だが。
GM:それなら思い出せる。この傭兵たちの中に見知った顔がいる。ジゴルズっていうんだけど、傭兵隊にいたときに君の隊とはいがみあってた『鋼の団』にいたやつだ。盗賊まがいのことを平気でやるような、汚いやつらだったよ。
ガルフ:ということはこいつらは『鋼の団』なわけか。あまりいいイメージはなさそうだな。
GM:そうだね。ホーグさんも「こいつらを雇ったのは失敗だったかな」 と思ってるようだよ。
ガルフ:話しかけられても無視してよう。
GM:どうかな? 「なんだなんだ? この車両緑のチビばっかじゃねえか。」 とか、そういうこと言ってるよ。ちなみに『緑のチビ』っていうのは、ゴブリンに対する差別用語だからね。こっちの世界で黒人に対して『黒いの』とかいうのと同じような意味合いがある。
ユーファ:やなかんじぃ。
GM:さて、護衛をはじめてから3日経ったので、一人あたり30ルクスずつ……

 (皆、一斉にキャラクターシートを訂正し始める)

GM:……護衛料としてもらえる。
ALL:(ピタリと手を止めて)は??
ガルフ:……収入、だったの?(天使の微笑)
GM:ガルフが朗らかに笑うな(笑)


メリッサ:やったあ(感涙)
GM:泣くな(笑) でも、(30ルクス)引かれると思ったの?
リース:『食費で減らしてください』とかじゃないかと思ってました。
メリッサ:そう。泣きそうだったよ。また減るのかあ、って。
GM:この列車の旅がどれだけ危険か、護衛という存在がどれほど大きいかわかるよね。値切って値切って、値切り倒したような人にもこうやって報酬が支払われるんだから。(笑) まぁ、逆に言えばそういった事件が頻繁に起こっているということの裏づけにもなるけどね。
ユーファ:はあ〜〜。
リース:今までのところは大丈夫だったようですけど……。
メリッサ:絶対に何かに襲われる、と言っているようなものねえ。
GM:だけど、30ルクスでそこまで喜ばれるマスタリングをする私って……(笑)
 ちなみに、列車は夜は止まっていて昼に走ってる。列車には調理器具なんかもそろっているし、寝るときは列車に布を張ってテントみたいにして使ったりしてる。キャンピングカーが連なってるようなもんだね。まあ、そんなこんなで……3日目のこの日、ちょっとした事件が起こる。
 朝の食事時、ホーグの双子の息子の弟の方がいなくなってる。4歳の男の子で『リブ』っていうんだけど。
メリッサ:リブ?
GM:そう。ちなみに兄の方は『リグ』。
ユーファ:お兄ちゃんの方は何歳?
ガルフ:あのなあ、双子だって言ってたろ(苦笑)
ユーファ:あ、そっか。
GM:(苦笑)で、そのお兄ちゃんの方が『リブがいない〜』ってホーグに泣きついてる。ホーグも心配してちょっと探して来ようという話をしてる。
リース:何かあったんですか?
GM:「どうやらリグのヤツが迷子になったらしい。ちょっと探して来るよ」
メリッサ:手伝う?
ガルフ:そうだな……それとなく周囲を注意してみるが、自分の車両も守らなければならない。あまり離れるのはどうかな?
GM:そうするとねえ、誰にしようかな……メリッサの服のすそをツンツンと引っ張るものがいる。ゴブリンの子供だね。「メリッサ、僕、みな、見たよ。あっち、人間の子供、見たよ。走ってた、見たよ」
メリッサ:みんなに伝えましょう。
GM:「気を付ける。。グーラウ、子供、走っていたよ」ともゴブリンの子供は言ってる。
ガルフ:グーラウ?
GM:<竜馬>っていう、この『鋼の団』が持っている馬のことだよ。 『馬は自分たちで育てる』というのが一箇所に定住しない人たちの常識なんだよ。キャラバンしかり、傭兵しかり。だから、『鋼の団』の傭兵たちも、馬は自分で管理してる。
 で、この『竜馬』というのは、獰猛な性格なんだけど怯えないから軍馬にうってつけなわけ。そのゴブリンの子供からさらに話を聞くと、竜馬の子供はどうもリグを追いかけていってしまったらしい。子供、とはいっても4歳ぐらいの子供ならあっさりと殺せてしまうくらいな獰猛さはある。
メリッサ:大変! それは急いで行かなくちゃ。
リース:まずいですね。
GM:『鋼の団』のほうでも竜馬の子供が一頭いなくなったといって騒いでいるね。そのゴブリンの子供は自分の育ての親……『育て』というんだけど……にも伝えたようで、ゴブリンが3人、リグと竜馬の子供を追いかけて行ったという話も聞くことができる。
メリッサ:助けに行かなくちゃいけないけど、全員で動いていいのかな?
ガルフ:全員でここを離れるのはどうかな?
スパイク:じゃあ俺か?
ユーファ:足速いもんね。うってつけかも(笑)
スパイク:しかし、急がなきゃなんねえよ。朝のこんな時間だし、こっち(列車)はそこまで警戒しなくてもいいんじゃないか? みんなが寝静まってるってんならともかく。
ガルフ:列車はいつ、出発するんだ?
GM:朝食がみんな済んだくらいかな。あと2時間くらいはあるね。
メリッサ:ちゃっちゃと済ませれば大丈夫でしょう?
スパイク:なら、俺が運転手のほうに断りいれておくよ……ああ……今日の朝食はミソスープだったのにぃ(泣)

一同:(笑)