領名 = ノーザラン
領主名 = トラピスタ・ルゾフィル、イヴァディ・ルモルフェル、アクリフェル・シャルディア、ミリアム・グレイデン・サロマ
都市名 = トラピス、ルモール、アッカム

・地理地勢:
 ノーザランは東西300テル、南北300テルほどの、領民一人あたりが保有する領土はトロウ国中最高を誇る巨大な州です。逆に言えば人口密度は高くなく、領土の大半には広大な畑と自然が広がっています。
 州のやや南東には巨大なオプタシュッペ山があり、そこから発する高い山地はタラット州との州境に沿うように北に流れ、カッゼ・リシナ州の大山脈へとつながっています。そして、このような地勢であるため、山々の豊富な水がノーザラン全土を潤し、川や湿地、巨大な沼や湖が豊富に存在しています。

・統治体制:
 この州の統治体制は、その広さからか、州領の主要部分を“郡”として分割し、それぞれを同格の侯爵が治める形態です。州全体を統括する領主はおらず、いわば「州の中に小さい州がある」状態となっています。
 ノーザランには“郡”が4つあり、4人の侯爵がいます。ですが、彼ら以外にも町一つや村一つ程度を独立して治める男爵級の貴族も多くおり、また、郡の領内にも街などの統治を各侯爵から委任された貴族などがいます。

・移動手段:
 州内の交通は街道が基本で、川などの水上移動も補助的に使用されています。
 主な街道はトロウからトラピス、アッカムを経てリュアルール州の州都リュードルへと向かう幹線街道『王の道』と、同じくトラピスからルモール経由でトロワデュノール(デュノール州都)へと向かう街道の二本で。また、各地に点在する村や町を結ぶ小街道も張り巡らされています。

・主要産業:
 主要な産業は農業及び牧畜で、ジャガイモ、小麦、砂糖大根、ミルクと乳製品、肉などが特産です。また、それらから作られるクッキーなどのお菓子も名物で、これらの食料品の大半は、トロウやイルトロウ、リュードルなどの大都市へと輸出されています。

・その他:
 このような土地柄ゆえ、イーヴノレル信仰がもっとも盛んです。それぞれの町や村にはほぼ確実にイーヴノレル神殿があり、地元住民の交流の場として使われています。
 トラピス、アッカム、ルモールの各都市には特に大きなイーヴノレル神殿があり、参拝客で賑わっています。
 また、この三都市には盗賊ギルドもありますが、“州の中に州がある”ノーザランの状況を反映してか、それぞれが独立しています。
 この三都市には冒険者の宿のようなものはなく、領主などが冒険者に依頼を持ち込む際にはトロウやリュードルなど、州外の大都市を利用します。

【ノーザランの名物】

・スワンプドラゴンの鋤引き:
 スワンプドラゴンは全長20〜40テーセルほどの巨大爬虫類で、ノーザランの農民はこの生き物を沼からひっぱりだして、鋤を引かせます。鋤といっても、バスケットコートくらいはある巨大なもので、その大きさから、この行事は観光名物にもなってます。

 スワンプドラゴンは広くて深い沼を住みかにしており、また同じくその沼の周囲に住む原住民もいて、その案内でスワンプドラゴンを捕まえに行きます。
 この生き物を引き上げて働かせる手段は実力行使です。スワンプドラゴンは大人しくて頭の良い種ですが、プライドが高く、だからある程度の実力を見せないといけません。もっとも、あまりにも巨大な生物であるため、剣程度では倒せません。

・砂糖大根:
 ノーザラン州で盛んに生産されている農作物品目の一つで、甘味を大量に含むこの大根は砂糖の原料となります。この砂糖は品質がよく、州外へ多く輸出されています。
 また、この砂糖と、ノーザランで盛んに生産されている小麦や乳製品を使ったお菓子も州の名物で、その美味しさから、わざわざ買い求めに来る客も多くいます。



【トラピスタ郡】

 領主:トラピスタ・ルゾフィル
 都市:トラピス

 ノーザラン州の南西部を領し、トロウ州とトーブ州に接する郡。四つの群の中では一番面積が狭いものの、王都トロウへ最も近く、人口密度もこの州では最も高いです。
 この郡のちょうど真ん中付近に位置する都市トラピスは、ノーザラン全土で生産される大量の農作物及び畜産物が集められ、それを最大の消費地である王都トロウへと送り出しています。

 この郡を治めるルゾフィル侯爵は20代の人間種男性で、1年前に両親と兄の死に伴って地位を継承しました。次男坊であったため、現在は領地経営を学びながら、ふさわしい花嫁探しに精を出す日々を送っています。



【アクティッカ郡】

 領主:アクリフェル・シャルディア
 都市:アッカム

 ノーザラン州の南東部を領し、トーブ州、ベルチーノ州、ウィムダール州およびリュアルール州に接する横長の郡です。
 郡の北の境はオプタシュッペ山の南の裾に面しており、自然を堪能する客や、秘湯を目当てに来る湯治客、また冬場はスキー観光客などが多く訪れます。

 この郡の西側にある都市アッカムは、トラピスと同じく、トロウ=リュードル(リュアルール州都)の間をつなぐ幹線街道『王の道』が通っています。また、ザーザム(トーブ州都)、イルトロウ(ベルチーノ州都)、ウィード(ウィムダール州都)への街道もあり、物流の分岐点として利用されている都市です。

 この郡を治めるシャルディア侯爵は80代のハーフエルフ種女性で、子供好きな人物として知られています。自分の子も5人いますが、そのほかにも何人もの養子を育てており、その子供たちが引き起こす様々な“冒険”を微笑ましく見守っています。



【ルモルフェン郡】

 領主:イヴァディ・ルモルフェル
 都市:ルモール

 ノーザラン州の北西部を領し、デュノール州およびカッゼ・リシナ州南西部の端に接する縦長の郡です。
 この郡の北部にある都市ルモールは、トラピスおよびトロウデュノール(デュノール州都)へと通じており、木霊の森を避けてトロウ王国北西部へ行く人々の休憩地点となっています。

 この州のルモルフェル侯爵は50代の人間種男性。さほど目立った特色のない自らの領地を発展振興するために、様々な計画をたてています。ただ、あまりにも突飛な計画が多く、家臣たちはそれを止めるのに日々振り回されています。

【経済・産業】
 ルモルフェン郡では特筆するほどの資源が産出されないため、財政のほとんどは首都ルモールで盛んなレンガ造りと、ファイア・ファイアへの観光客による収益に頼っています。とは言っても観光による収益のほうは莫大で、全領を挙げて観光の充実に尋常ではない力を注いでいます。その中でも特徴的なのが、様々な形の『お祭り』の存在です。ルモルフェン郡ではだいたい10日に一度の割合で、郡のどこかで何かしらのお祭りが開催されています。特に1年に2度ファイア・ファイアで開催される『星祭』と『月祭』は、実に郡予算の3割強をつぎ込んで行われる、派手で豪華で賑やかな祭りです。
 ですがこうした郡の政策自体が危険な政策であり、祭りや都市は豪華で裕福に見えても、財政はお世辞にも潤っているとは言いがたいでしょう。

【郡都:ルモール】

 郡の北部に位置する人口約4万人の都市です。トラピスおよびトロウデュノールへと通じており、木霊の森を避けてトロウ王国北西部へ行く人々の休憩地点となっています。州中央部の大湿地帯から取れる良質な泥を利用したレンガの生産が盛んで、街中の家の壁や道路などいたるところに職人達が工夫を凝らした一風変わったレンガを使用して、美しく飾り立てられています。中でも深緑色のレンガと金色のレンガを使用して、外壁一面に森を走り抜ける金色狼の絵を描いてある高級宿【金狼亭】は、その見事な建築様式で有名になっています。都市中央の馬車ターミナルからは南部近郊にある娯楽都市ファイア・ファイアへの定期便が出ています。

【炎と食の街:ファイア・ファイア】
 郡都ルモールの郊外南に位置する小さな遺跡跡を利用して作られた、人口約1500人程度の娯楽・観光都市です。
 この街の特徴は、遺跡跡をそのまま利用した入り組んだ路地や階段に、所狭しと建てられている飲食店と屋台の数々です。他には銭湯やカジノなどの娯楽施設が立ち並んでいます。飲食店の種類は多岐にわたり、ローファ料理やフソウ料理、国内のありとあらゆる酒が揃っている酒場、果ては一般人は名前も知らないような他国の郷土料理店までが並び、旅人達の舌と喉を満足させています。そしてこれらの飲食店には、例外なく入り口に武器の預かり所が設置されています。これは市の条例で飲食店への武器の持込が禁じられているからです。
 またこの街では夜になると、街中に街灯代わりに篝火が焚かれ、特に繁華街では昼のような明るさで街の喧騒を照らし出します。特にペヴィトーレ中央公園にある、幅15テーセル(約30m)高さ40テーセル(約80m)の塔から吹き上がる大篝火は圧巻で、観光の名所にもなっています。

【人物】

領主:イヴァディ・ルモルフェル
 現領主。50代の人間男性。年の割りに白髪一つない見事な黒髪と、引き締まった体をしています。
 外見の通り性格も、年齢を感じさせない行動力と新しいものを取り入れる柔軟な考え方を持っています。娯楽都市ファイア・ファイアの建設、有能であれば人種・年齢・経験を問わない人事登用、5日に一度の変装してお忍びでの街中視察(とは名ばかりの息抜き)など、彼のその性格を現すエピソードには事欠きません。若い頃に冒険者をやっていましたが、本人はその頃のことは黙して語ろうとしませんし周りにも出来るだけ秘密にしています。ですが冒険者たちには理解があり、しばしば流れの冒険者を領主邸に招きいれ、冒険譚を聞いたり相談に乗ってあげたりしています。唯一の悩みの種は領の財政であり、そのことでしばしば息子であるディヴィットと衝突をしています。

ファイア・ファイア市長:ディヴィット・ルモルフェル
 20代後半の人間男性。現領主イヴァディ・ルモルフェルの息子であり、娯楽都市ファイア・ファイアの市長です。長身細身で父親譲りの見事な黒髪を腰まで伸ばしています。
 性格は『粋』の一言に尽き、それが行動理念の全てを占めています。 粋を好み野暮なことを嫌う、そんな彼の性格がファイア・ファイアの政策や市民の性質に多大な影響を与えていることは明らかです。彼の制定した条例の数々からもそれらがうかがい知れます。飲食店への武器持ち込み禁止を制定したのも彼ですが、それも「ケンカは素手でやるもんだ」といった理由からであり、また『星祭』『月祭』の異常なまでの金の使いっぷりも、彼の「ケチくせえことはしたくねえ」との鶴の一声で決まりました。毎年『星祭』『月祭』の前の予算会議では、要求予算のあまりの多さに領主である父親と言い合いになり、最後には殴り合いが始まるのが祭りの前の風物詩になっています。

筆頭補佐官:アンリエッタ・ディアノ
 10代人間女性。小柄でいつも眠そうな顔をしています。
 元はファイア・ファイアの屋台で働いていた娘でしたが、ある出来事から領主がその頭脳に目をつけ補佐官に抜擢しました。当然家臣たちから色んな批判や不満が出ましたがそれを黙らせるほどの才覚を発揮し、今では家臣や領民にも愛されています。声が小さくて物腰の柔らかい人物ですが性格は過激で、たまにとんでもない政策を通したりしています。



【サロマ郡】

 領主:ミリアム・グレイデン・サロマ

 ノーザラン州の北東部を領す広大な郡。主要な都市はなく、各地に町が点在しています。
 この郡は南をオプタシュッペ山、東はタラット州との州境に連なる高い山地、北はカッゼ・リシナ州の大山脈に囲まれています。そのため、ノーザラン州の中でも一番自然が保全されている地域で、スワンプドラゴンが生息する大きな沼地が数多く存在しています。
 自然だけでなく、山々を利用した牧畜やスワンプドラゴンの力を借りた畑作も特に盛んで、それを目当てに来る観光客や、大自然を堪能したい観光客なども毎年多く来ます。
 
 サロマ侯爵は300年以上この地を統治するエルフ種男性で、特に定まった郡都を持たず、所領の各地にある自らの城や町を移動して統治しています。農業、牧畜、観光の新興と自然の調和を旨としており、この地がその哲学が見事に成功しています。

担当者:TEK