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領名 = イゼルフェーン(カレイドヒル)
領主名 = シャウロッセ=アマリリス
都市名 = ヴァウハス

【領地概略】

 領土の7割が丘陵地帯によって占められている。そのため水の確保が難しく、昔から飲料水の確保に悩んできた地域である。ウィムダール、ミュニス、シーヴァレスタとの領地境界域が特に顕著で、標高の高い丘陵がそのまま領地の境界となっている。
 アルテンノルトとの領土境界上にはミラーレイクがある。その名の通り、鏡のように美しい湖面を誇っており、夏には海水浴ならぬ湖水浴が楽しめる。また大鍾乳洞が中心都市ヴァウハスの近郊から隣領アルテンノルトの中心都市デルフォルク近くまで伸びており、観光地であると同時に主要な交通路ともなっている。

 全体的に穏やかな気候だが、東西の丘陵により内地への降水量が少ないため森林が少ない。開けた丘には季節ごとに色とりどりの花が咲き乱れるため、古くから『カレイドヒル(変幻の丘)』 と呼ばれている。正式な領地名はイゼルフェーン。
 現在、東西を貫通する鉄道の伸びる領地中央域を境として、北方を北部イゼルフェーン、南方を南部イゼルフェーンというが、比較的丘陵の少ない北部の発展が先に進み、丘陵地帯である南部との格差が生まれていた。しかし東西のウィムダール、シーヴァレスタとの交通を妨げてきた丘陵地帯を鉄道が貫通してからは、南部の発展が飛躍的に進み、現状では交易面で北部に対して大きくリードしている。
 人口は南部よりも平坦で水の入手が比較的容易な北部の方が多く、南部では都市部に人口が集中する傾向がある。

 主幹産業は北部では農業、南部では交易と鉱業。
 北部イゼルフェーンで栽培される花は主力農産品のひとつで、近隣地域へは生花が輸出され、遠隔地へは造花、押花などが輸出されている。他には穀物や果物の生産が多く、イゼルフェーンの料理は名物の一つ。
 南部イゼルフェーンは鉄道と街道を利用した交易と、丘陵地帯に拓かれた鉱山が産業のメイン。鉱山は鉄がメインだが、少量ながら石炭と銀も採掘される。海岸地帯は丘陵の起伏が激しく、港に適していないため、漁業や船舶を用いた交易はほとんど行われていない。

 領民に多く信仰されているのは、北部ではイーヴノレル神。南部ではアグラム神。特に禁じられている信仰などはない。
 種族は人間とドワーフがメイン。ホーミュスー、フェンラン、ラーバードなどはほとんど見かけることがない。種族差別の程度などは他の地方と似たり寄ったりだが、この地ではむしろ平民と貴族の身分意識の方が目に付く。

 表向きは領主のアマリリス家によって統治されているが、実質的には領内を各貴族家が分割統治しているため、地域によって税金や関税、違法とされる事柄などが違うので注意。

【歴史】

 古来この地には花の名を冠したクロッカス家、アゼリア家、アマリリス家、ダンデリオン家、マリーゴールド家、プリムラ家の6貴族家があり、時に争い、時に協調し、栄枯盛衰を繰り広げてきた。
 現在はアマリリス家が筆頭位だが、アゼリア家の勢力はアマリリス家を凌ぐほどになっている。
 もっとも歴史が古いのはクロッカス家だが、クロッカス家の支配していた時期は最も短く、大半をアゼリア家とマリーゴールド家が支配してきた。現在の領主であるアマリリス家は約50年前から領主をつとめているが、イゼルフェーン領主の座についた初期の混乱期に『陸のサラディン』の鉄道敷設時期が重なり、サラディンの強引な手法に反発を示したため、ヴァウハスは駅の建設を見送られたと言われている。当時からアマリリス家に次ぐ勢力だった商都ガレリアのアゼリア家は素早くサラディンの協力を引き込み、現在では勢力をさらに伸張している。

【都市】

・ヴァウハス

 古都ヴァウハスはマレーア湖という小さな湖のほとりに発展してきた街で、長い歴史を持っている。イゼルフェーンでは水を容易に得ることができるヴァウハスは常に貴族たちの勢力争いの焦点となってきた。そのためか、街ののんびりした雰囲気に反して防御の堅い構造をしている。
 街の路地は入り組んでおり、昔農地だったときの用水路もそのまま残っているため、思わぬところで道が断たれていたりと、始めてきた人が目的地に迷わずにたどり着くのは難しい。
 「カレイドヒル」の中心都市なだけに、街は常に四季折々の花で飾られ、花の香りで満たされている。秋の収穫の時期には「無い色は無い」と称されるほど様々な色合いの花に満ち溢れた収穫祭が三日三晩行われる。普段から観光に訪れる人々は多いが、収穫祭の時期は街が人で溢れかえるほどになる。
 また、街を縦横に走る水路には4人乗りのゴンドラが行き来しており、街の重要な交通手段となっている。このゴンドラ目当ての観光客も多い。
 ヴァウハスは鉄道沿いには無く、イゼルフェーンの西の入口である宿場街、リュッセルにある駅から大きく丘陵を迂回する街道を馬車で2時間も走らなければならない。これが商都ガレリアに交易面で遅れをとる主因となっている。

 ヴァウハスは非常に規模の大きな街で、大まかに北の公共地区、西の居住地区、南の商業地区、東の工業地区、中央の領主直轄区に分割されている。ただしあくまでもヴァウハスっ子の目から見て分割されているだけで、他の土地の人間からみれば全体的にごちゃついた印象を与える街である。
 街の中央にある領主の館はちょっとした城ほどの規模があり、全体に花の彫刻が施された白く美しい外観は街のどこからでも見ることができるため、この館がどちらに見えるかで街の中での現在地を知ることができる。

 花と湖の街、ヴァウハスは新しい友人を自宅に招いたときに、季節の花を季節の料理に散らしてもてなす風習がある。しかし同時に悪戯っ子の街でもあるので、変なものを食べさせられないよう注意。ちなみに食事を勧められたほうは『食べるフリ』 だけでよい(いつも食べられる食用花があるとは限らないので)。

・ガレリア

 商都ガレリアはシーヴァレスタとの境界付近に位置するイゼルフェーンの東の入口である。伝統的にヴァウハスとはライバル関係にある貴族が拠点を置いてきた街で、現在はアゼリア家が掌握している。丘陵地帯のふもとにある街であるため、耕地には恵まれていないが、街道沿いである立地を活かして他領地との交易で発展してきた。現在は鉄道の駅も置かれ、大いに栄えている。また街の近郊に良質な鉄の鉱山を持っているため、金属製品の生産でも有名。高品質の武具を求める冒険者達も多く訪れている。
 交易と鉱業で利益を得ている反面、その他にはろくな産業がないため、貧富の格差は激しい。下町の外側にはスラム地区が広がっており、税金を払いきれない者は街の城壁の外に追いやられている。冬には多くの餓死者が出ているが、実態は把握されていない。

 ガレリアには上流階級を相手にする大規模な賭場があり、身分と顔を隠した客が近隣の地域からひっきりなしに鉄道でやってきては夜のガレリアに消えていく。そうした階層からは「夢と混沌の街」 と呼ばれることもある。
 あまり知られていないが、街を掌握するアゼリア家と盗賊協会は密接な協力関係にある。他領域からガレリアを訪れる上流階級に対して盗賊協会が諜報活動を行い、その結果をアゼリア家に提供する見返りに、盗賊協会はアゼリア家の庇護を得ている。

・リュッセル

 西のウィムダールから街道を使ってイゼルフェーンに入ってすぐの所に発展した小さな宿場町。現在は鉄道の駅も置かれ、ヴァウハスへの経済路ともなっているため、急速に町が大きくなってきている。
 花の咲き乱れる丘の上にあるため、景色は明媚だが水の確保は苦しく、数少ない井戸に頼っている。

・ライレン

 古都ヴァウハスから徒歩で1日の距離にある村。現在では勢力を大きく減じたクロッカス家の領地である。花と農業の村だが、ミラーレイクにも比較的近いため、湖を訪れる人々のための大きな宿屋がある。また村の近くにはカルスト台地があり、幾多の鍾乳洞が口を開けている。これらの鍾乳洞は観光地化されているものもあり、中には隣領アルテンノルトまで通じているものもある(通行料は2rk)。

【施設】

・冒険者の宿『黄金の木漏れ日亭』
 古都ヴァウハスにある冒険者の宿。冒険者を引退したサヤ、ロゼルト、ハリシュの3人の共同経営者が運営する。まだ開業したばかりで、さほどの規模はなく、冒険者の質・量ともにこれからといったところ。
 ヴァウハス商業地区のかなり奥まったところにあり、部外者が案内人無しにたどり着くのは難しい。

・案内所『ヴァウハスの泊まり木』
 古都ヴァウハスにはリュッセルとの行き来に使われる乗合馬車の広場があるが、その外れに建っている小さな小屋。窓口ではコーネンという男が狸寝入りをしているが、無理に起こさずにそっと5rk渡せば速やかに案内人を手配してくれる。案内人の料金はヴァウハス中どこへ行くにも一律で10rkだが、コーネンに 5rk払って起きてもらった場合はそれ以上の請求はない。
 案内人にはベテランのダム爺とエルフ娘のピュティがおり、どちらもヴァウハスの入り組んだ街路を全て把握しているという。

・魔法士協会『メイプルヒル』
 古都ヴァウハスの公共地区と領主直轄区の間にある魔法士協会。規模の大きさでも有名だが、奇人変人が集まるところとしても有名。妙な薬品を用水路に垂れ流して事故を起こしたことも一度や二度ではない。いつでも事件のタネが転がっているため、ヴァウハスの冒険者たち御用達の依頼主。

・イーヴノレル神殿
 北部イゼルフェーンで盛んなイーヴノレル信仰の拠点。ヴァウハス公共地区に建てられた白亜の立派な神殿で、多くの神官たちが行き来している。特にイーヴノレルの神像の美しさは有名で、ヴァウハスの観光名所のひとつとなっている。

・カジノ『スターライトロゼッタ』
 案内状が無ければ入場できない、商都ガレリア一等地の巨大なカジノ。上流階級のための宿泊施設も完備。アゼリア家の所有だが、表向きは異なる名義で運営されている。
 ハイローラー(高レート) の卓では一晩で小さな町が一つ買えるほどの額が動くとか。

・盗賊協会拠点『デイジーリーフ亭』
 商都ガレリアの下町にある、デイジーの花の看板を下げた一見普通の酒場。付近の住民はこの店が盗賊協会の拠点とは知らず、普通の酒場として利用している。一番奥のカウンター(予約席になっている)でバーテンにミルクを注文する(一度目は断られるが、諦めずに注文すること!)と、盗賊協会の世話役が隣に腰掛け、協会と接触を取ることができる。
 酒場の2階は盗賊協会の幹部達が寝泊りしているので、開いてる部屋があるように見えても宿泊することはできない。また、2階から秘密の階段を使って地階に降りることができ、そこでは盗賊協会の構成員たちが様々な活動をしている。この地階はかなり広大な空間になっており、また街の下水網にも直結しているため、構成員たちはここを使って協会に出入りしている。

・廃屋街
 商都ガレリアのスラム地区の、さらに外に広がる区域。ガレリアの街を囲む城壁の外で、街からは30分ほど歩く必要がある。
 人頭税すら払えない貧乏人を街の外に締め出したもので、生活環境はきわめて苛酷。毎年冬には多くの餓死者、凍死者を出している。
 アルカーナ神殿とは名ばかりのボロ家屋に司祭が一人おり、廃屋街の人々の心を支えている。
 この廃屋街には街の法が及ばないため、非合法の取引などに使われることも多く、見た目に寂れてはいるが、盗賊協会や交易を行っている商家や貴族の目は行き届いている。

・ギガントロック
 商都ガレリアから2日ほど離れた鉄鉱山。丘の片面が巨大な剥き出しの岩になっており、その中を坑道が縦横に走っている。良質の鉄鉱が採掘されるため、多くの工夫が採掘に携わっているが、モンスターも多い。そのモンスターを退治するため、冒険者も多く集まるところである。

・鉄道駅『ガレリア駅』
 商都ガレリア発展の原動力となった鉄道駅。周囲には倉庫街が並び、汽車が入ってくるたびに物資の積み下ろしが行われている。様々な商会の倉庫が置かれており、互いにライバルを出し抜こうと凌ぎを削っている。事件も多発するため、駅周辺の治安は極めて悪い。

・鉄道駅『リュッセル駅』
 宿場町リュッセルの鉄道駅。ヴァウハスへの客と荷物がほとんどであるため、馬車や荷馬車が行き来する広いターミナルとロータリーがある。駅は常に清掃が行き届き、清潔感あふれている。光を多く取り入れる設計になっているため、構内はとても明るい。

・クロッカスの塔
 ライレンの村の外れに建つねじくれた塔。領主であるリーサが住んでいる。先代か先々代のクロッカス家当主が腕の立つマッドな魔法士だったらしく、1階と地階は様々な魔法実験器具で溢れている。落ちぶれたとはいえ、かなりの資産家なので、リーサからの依頼は高報酬が期待できるかも?

【人物】

・シャウロッセ=アマリリス
 人間の女性。20歳。5人兄弟姉妹の次女。珍しく女性上位の家格で、長姉シャーロットがアルテンノルト領フォミュラント家に嫁に行ったため、若くしてアマリリス家の家督を継いだ。若く美しい彼女は社交界の花でもあるが、最近は領主としての勤めが忙しく、あまり表に出てこない。
 責任感が強いというよりも姉に託されたヴァウハスを守りたい一心で領主を勤めているため、領主としては融通が利かなすぎると揶揄されている。
 今でも嫁に行った姉と手紙でのやり取りを欠かさず、アルテンノルト領との絆は固い。

・『双剣』サヤ
 人間の女性。31歳。冒険者の宿『黄金の木漏れ日亭』 の共同経営者の1人。冒険者時代は『双剣』 の異名を取った両手利きの戦士だったが、病気を患って引退した。冷静な観察眼で冒険者達の力量に見合った依頼を回す姐御肌。
 典型的なヴァウハス美人だが、浮いた話は一つも無い。ちゃきちゃきのヴァウハスっ子であるサヤの仕掛ける悪戯に誰もついてこられないとかなんとか。

・『音無し』ロゼルト
 人間の男性。35歳。冒険者の宿『黄金の木漏れ日亭』 の共同経営者の1人。冒険者時代は『音無し』の異名を取った凄腕の手練士。冒険中に片目を失い、引退した。サヤの突飛な悪戯の尻拭いと、木漏れ日亭の経営が主な仕事。彼の金銭感覚が無くては木漏れ日亭は立ち行かないとか。
 髭面の強面なうえに片目が潰れているため、子供達に恐れられているのが日々の悩みだとかなんとか。
 新米の冒険者たちには盗賊協会の場所を教えてくれる重要な人。

・『飛剣』ハリシュ
 人間の男性。年齢不詳。冒険者の宿『黄金の木漏れ日亭』 の共同経営者の1人。冒険者時代は片刃の片手剣を愛用し、『飛剣』と称された抜刀術で名を馳せた白皙の剣士。ロゼルトと組んでいたが、彼に付き合って引退した。現在は凄腕コックとして木漏れ日亭の厨房を管理している。ほとんど店内に出てこないので、木漏れ日亭はサヤとロゼルトの2人が経営していると思い込んでいる人は多い。たまに店内で新米冒険者に見事な抜刀術を見せてくれるが、二度見たものはいないとかなんとか。

・マリエラ=アゼリア
 人間の女性。57歳。アゼリア家の現当主。欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れてきたやり手だが、ヴァウハスだけは未だアゼリア家のものにならず、そのためにあれこれと陰謀を画策している。実利主義の合理主義。立っているものは親でも使え、が信条の謀略家。冒険者も盗賊協会も頻繁にコキ使っているが、金払いは良い。

・アルセラ=アゼリア
 人間の女性。24歳。アゼリア家の次期当主。親とは違ってヴァウハスなどどうでもいいと考えている節があるが、同世代のシャウロッセに対するライバル意識から社交界では張り合いがち。親と同じように実利主義の合理主義だが、まだ目指す目的を見定めていないせいか、地に足がついていないところがある。

・リーサ=クロッカス
 人間の女性。21歳。クロッカス家当主。腕のいい魔法士でもある。ライレン村に引き篭もって研究三昧の日々を送っている。若くして両親を亡くし、遺産と領地を相続したが、遺産のほとんどを封印したままである。その中には相当に危険な代物もあるという。

・ガイアス
 ドワーフの男性。67歳。ギガントロックの鉱山長。腕っ節の強い親方肌だが、数字にも強く、ギガントロックの月産の採掘量と収支が完全に頭に入っていると言われている。新しい冒険者がやってきたときは彼自ら杯を渡し、歓迎する。

・『鷹の目』シュラス
 ハーフエルフの男性。49歳。デイジーリーフ亭で常に待機しているガレリア盗賊協会の世話役。予約カウンターでミルクを注文した者に接触を取るほか、盗賊協会全般の活動内容に目を光らせている。二つ名は、視力を倍増する特殊なメガネをかけているため。

・リエンヌ=ブランシェール
 人間の女性。40代。廃屋街のアルカーナ神殿とは名ばかりのボロ家に一人で暮らしている司祭。廃屋街の人々を励まし、勇気付ける廃屋街の母とも呼べる存在。  耳が不自由なため、普段は手話を用いている。

担当者:白銀の狼


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