10日目(5月4日土曜)モスクワ滞在

7時半に目が覚めた。足の痛みは少し和らいだが、念のため風呂で足をマッサージする。昨日の洗濯物はどうなっているかと見てみたが完全に渇いていた。

9時半に朝食。そう言えばモスクワに来てから朝食以外はまともな料理を食っていないな。レストランとかへはどうも1人だと入りづらいしボラれるような気もしていた。しかしロシアの食べ物といってもピロシキしか食って来なかったって言うのももったいない。ロシア名物のボルシチやビーフストロガノフくらいは食べておきたい。それにキャビアもだ。キャビアはおみやげにも買っておかないと。

今日はモスクワ最終日。色々行きたいところはあったが、足の痛みがまだ有るので、部屋でしばらく休んで明日の移動の準備をした。飛行機の出発は午後1時半。来た時は空港から2時間でここに着いたが、迷う場合も考えると余裕は持った方が安心だ。4時間前には出ようか…。手帳に空港までの駅名や金額等をメモした。空港以外はどこもロシア語表示しかないので、少しは書いて覚えておかないと。12時に両替をしてホテルを出た。今日も天気がよく暖かい。明日も晴れればいいが。

赤の広場に着いた。今日は何か有るのか広場の中央は柵で閉鎖されている(後で知ったがことだが、レーニン廟の閉館時間までのようだ)。まずは広場の中ほどにあるレーニン廟からだ。ここにはレーニンの遺体が1924年の死後そのままの状態で永久保存されているそうだ。ここに入るにはカメラを預けなけばならず、ちょっと遠いがクレムリン入り口まで預けに行く。ガイドブックには預かり料3Pと出ていたが、値上げしたのか60P(260円)も取られてしまった。高い!。20倍もの値上げだ。信じられない。ちなみにロシア人は30P。広場に戻ると結構行列が長くてビックリ。100m以上は有るだろうか。とりあえず並んでみるが、ここは1時でクローズだ。あと30分もない。見れるだろうか…。前には中国人の団体客。皆漢字が書いてあるお揃いの帽子を被っているが、かっこ悪くないか?。それにしてもあまり日本人を見ないな。GWって言うのに。ロシアってまだマイナーってことなのか。まあ確かにニュースに良く出る成田からのインタビューで、ロシアに行くって聞いたことないよな。確かにビザの取得も面倒だし、事前に決めたルートしか移動できないバウチャー旅行のシステム事体が無くなって、自由にどこでも移動出来るようにならない限り簡単に旅行者は増えないだろうな。

しばらく進むと警備員が荷物とボディーチェックをしていた。手ぶらだったので難なく通過。何とか1時ちょっと前に入口に着いた。人数制限をしているらしく少し止められてから中に入る。薄暗い階段を降りていくと警備員が何人か立っていた。警備は厳しそうだ。中はシーンと静まり返り、張り詰めた空気を感じる。ここでは私語は厳禁とのこと。少し進むと広い部屋に出た、部屋の中心にはガラスの棺が置いてあり、その中にレーニンは横たわっていた。その周囲が見学通路になっているが、棺までの距離は1mくらいしかない。部屋は暗く、棺だけが照明で照らされている。棺の中のレーニンはとても80年近くも前に死んだとは思えない程に保存状態が良く、今にも起き出してきそうな感じだ。誰かの旅行記にも出ていた通り、右手は軽く握られ、左手は開かれていた。皆息を殺すように見入っている。いったいどれ位の人々がこの遺体を見たのだろうか。おそらく何千万いや何億にも及ぶ人数だろうか。レーニン自身もこんなに沢山もの人々に自分の遺体が見られるとは思っていなかっただろう。それも沢山の西側の観光客に見られることなど想像出来なかったに違いない。ここは80年前と変わらなくても、外の状況は大きく変わってしまった。共産主義時代はここに遺体を置く価値があっただろうが、観光地化してしまった今はどうなのだろう。死んだ人間が観光ルートの一つになってしまうとは…。少し違和感を覚えた。ロシア人自身はどう思っているのだろうか。横たわるレーニンを目に焼き付けて外に出た。

通路を進んでいくと、ソ連歴代VIPの墓が並んでいた。スターリン、フルシチョフ、ブレジネフ等ビッグネームが並ぶ。日本人共産主義者の墓もあるそうだが、どこだか分からなかった。

次は昨日見られなかったクレムリン内の武器庫とダイヤモンド庫を見ることにした。公園の出店で腹ごしらえして、チケット売り場に行った。2回目ともなると簡単なもんで難なく買えた(武器庫は英語でARMORY CHAMBER)。入場料は350Pでカメラは50P(合計1730円)だった。高いなあ。ガイドブックに出ていた料金より高くなってる。入場時間が決まっているようでチケットには14-30と出ている。時間まで待ってから武器庫に近いボロヴィツカヤ塔から入る。武器庫といっても武器はほとんどなく、博物館という感じで、帝政ロシア時代の金銀細工や衣装、馬車などが多く展示されていた。武器庫の出口を出ると、小さな入口があり、見るとテーブルに小さく「DIAMOND」と書いてある。料金を見ると350P(1517円)。ここも高くなっているが、ガイドブックにここは必見と出ていたので、入ることにする。カメラは駄目だそうで、入口で預けた。中は暗く壁も天井も真っ黒で宝石が入ったガラスケースだけが蛍光燈で照らされ、並べられた宝石がキラキラ輝いていた。通路の各部には警備員が目を光らせて。物々しい雰囲気だ。皆黙って食い入るように見つめていた。オレは宝石のことは分からないが、ものすごい金額なんだろう。

足の痛みも余りないので、ちょっと遠出してオスタンキノテレビ塔(高さ540m)に行こうかと思っていた。誰かの旅行記にここからの眺めは最高だと出ていたので、前から気になっていた所だ。この塔は2年前の火災後観光不可になっていたが、その後観光できるようになったか未確認だった。しかし時刻はもう4時を過ぎているし、見られない可能性も考えて仕方なく諦め、昨日見たモスクワ川の遊覧船に乗ることにした。

クレムリン近くの地下鉄「Арбатская(アルバーツカヤ)駅」に行く。ちなみにモスクワの地下鉄は10路線有り、日本の地下鉄と同じに色で分けられているので、ロシア語の駅名さえ読めればなんとかなる。東京の地下鉄に慣れてる人ならどうってことはないだろう。この駅は3路線が乗り入れているが路線の色表示をたどっていけば田舎者のオレでも簡単に入れた。しかも、入口と出口は完全に分けられているので人の流れに付いていけば間違えることはないだろう。ただ、乗り換えの場合は間違って出口に進むと、戻れなくなるので注意が必要だ。「Выход(ヴィーハト)」(出口)の表示は覚えておく必要がある。ちなみに入口は「Вход(フホート)」。ホームには進行方向の駅名を書いた表示がある。ロシア語表示の駅名が読めれば、あとは楽勝だ。ここも一昨日乗った駅と同じに芸術的な造りだ。ホームにあまり人はいなかった。警官もいない。これはチャンスと思い、周りを伺いながら隙を見て写真を1枚だけ撮ったが、緊張した。電車はすぐ来たが今日は2回目だし、スーツケースも無いので気楽に乗れた。ここから2駅先が遊覧船乗り場だ。5分程で「Киевская(キエフスカヤ)駅」到着。ここの駅も芸術的造りだが、他と違って壁には大きな壁画が幾つか有ってビックリ。美術館みたいだ。それにしてもすごい。途中の通路ではバイオリンを弾いているヤツもいたが、日本じゃ聞いたこと無いな。

適当に目に付いた出口を出てしばらく歩くと川に出た。周囲を見渡すと、100m位先に船着き場が有り、遊覧船が止まっていた。確か運行は42分間隔だったのを思い出し、慌ててそこに向かった。切符売場で140P(606円)払い、何とか乗船。船はすぐ出発。乗客に東洋系はオレだけだ。中の売店でビールを買ったが、店員の兄ちゃん性格悪く、他の客には愛想よく対応しているが、オレはしばらく無視された。ようやく出されたビールも栓が抜いていない。「おい!抜いてねえぞ」とアピールすると、「なんだ、気が付いたか」てな態度でわざとらしく栓抜きを出した。ムカつく店員だ。殴ってやりたい気分になった。

出発してしばらくすると、大きな公園が見えてきた。川辺ではのんびり日光浴をしている人も多い。時間があったらこういう所で時間を過ごすのもいいかも知れない。その先は、遊園地。ロシア版スペースシャトルが置いてあったが、どう見てもアメリカ版のパクリだな。この後大きな聖堂の前を過ぎると、遠くに茶色い塔が見えて来た。クレムリンだ。付近に似た色の建物はないので、一際目立っていた。その先のホテルロシア前で船を降りた。約45分のクルージングだった。これまで歩いてばかりだったので、たまにはこういうのも新鮮でいい。機会が有ったらもっと先まで行ってみたい気がした。

一旦ホテルに戻り、土産を買いにグム百貨店に行った。とりあえずマトリョーシカを買ったが、キャビアはどこで売っているか分からず断念。他に何か無いかと探したが、この先まだ長いし荷物がバッグに入らなくなっても困る。サンクトでも買えるから、今日はこれだけにしておこうと、ここを出た。近くの出店でパンを買ってホテルに戻る途中、ある建物の入り口に立っていた軍人にタバコをたかられた。仮にも軍人とも有ろう者がタバコをたかるとは、それも2本もだ。まったく堕落したもんだ。

ホテルに入ると警備員に止められた。仕方なくパスポートを見せて通してもらったが、不審者に見えたってことなのか…。これも日本人に対する嫌がらせなのか。気分悪いな。

部屋で買って来たパンとビールで夕飯にした。結局モスクワではまともな食事は朝食だけだった。やはり1人だと外の店には入りにくい。これからまだ一ヶ月近くも旅をするのに、こんなこと言っていてはダメだな。もっと積極的に行って慣れておかないと…。モスクワの3日間もあっという間だった。明日もう移動しなければならないとは面倒だ。やはりもう少しゆったりした日程の方が良かったかも知れない。今回ちょっと欲張りすぎたな。10時半に眠くなって来たので、床に就いた。

 

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