8時半に朝食。次のホテルの朝食は期待できないかもと思い、欲をかいて腹一杯食ってしまった。荷物をまとめて9時半にチェックアウト。来た時に降りた「Китай Город(キタイ ゴーラト)」駅から乗り、2駅先で乗り換えた。空港へはこのルートの方が近いそうだ。あとは終点で降りてバスに乗るだけだ。
10時半に地下鉄の終点駅「Речной Вокзал(レチノイ ヴァグザール)」に着いた。出口を出ると、駅前のバスターミナルはバスで一杯だった。結構乗降客の多い駅だ。写真を撮っておこうと思っていたが、ここも警官が頻繁に通り、うかつにカメラは出せない。やはり気兼ねなく撮れるのは観光地だけだな。
スーツケースを引きながら駅前をウロウロして空港行きの851番のバスを探したが、全然見つからない。しばらく行ったり来たりしていたら、タクシーのオッサンに呼び止められた。「タクシー乗るかい?」「いいよ」「空港いくのか?」「ああ」「じゃあ乗ってけよ」「いいって、バス停探しているんだ」「それなら、あっちだ」「ありがとう」言われた方向に5分程歩いていくと、高速道路にぶつかった。すぐ近くにはバス停が有る。待っている人は誰もいないが、どうやらここのようだ。しかし、なかなかバスが来ない。20分程待ったが結局来なかった。次第に焦りが出て来た。どうしようか…。ふと回りを見ると掃除のオバさんがいた。一応聞いてみるかと、会話集を取り出し、そのオバさんに聞くと、駅の方を指差した。「しまった!だまされた」タクシーのオッサンの話をまともに信用したオレがバカだった。まあ考えてみれば当たり前のことだな、商売敵に協力する訳ねえか。
駅前まで戻り、もう一度一通り回って探して見ることにする。今度はバス停の時刻表も念入りに見たら、駅を出てすぐのバス停に851と出ていた。「なんだ、ここだったのか」よく見りゃあ良かったな。まあ、これであとは乗るだけだ。しかし、15分待っても851のバスは来なかった。他の番号のバスは次々に来るのに、何でだろう。空港を使う人はまだ少ないってことなのか。そう言えばスーツケース持って歩いている人は見かけない。念のため隣りに座っているじいさんに聞いて見ると、俺もそれに乗るんだというジェスチャー。このじいさんビニール袋1個しか持っていないので、おそらく誰かの迎えかも知れない。しばらく一緒に待っていたが、そのじいさん、痺れを切らしたようで、立ち上がって近くの人に聞いていた。話が終わると、オレの方を向き手招きする。どうやらここではないようだ、一緒に着いていくと、通りを渡った向かいにバス停はあった。既にバスが止まっている。急いで乗り込むと、バスはすぐ発車。何とか間に合った。時刻は11時半。ここで1時間もロスしてしまったが、早めに出てきて良かった。親切な人もいるもんだ。
30分程で空港に到着。建物のモニターでチェックインカウンターの番号を確認する。英語表示も出るので、助かる。22-23のカウンターだった。表示を頼りにカウンターに向かう。カウンターに着くと既に10人程が並んでいた。スーツケースをラップでグルグル巻きしている人が多い。巻いていない方が少ないくらいだ。一応貴重品は出しておいたからいいが、やっぱり荷抜きは結構深刻な問題なんだなあ。
列には割り込みをする人が多くなかなか進まない。割り込みするのは女だけだ。まったくロシアの女って日本のオバサンよりたちが悪いな。
チェックインが終わり、搭乗口へ向かう。パスポートチェックは難なく通過。次の金属探知は今回もベルトを外して通過した。4回目ともなると慣れたもんだ。でもこれからまだ5回もやらなければならないとは面倒だな。
12時半頃ようやく待合室へ到着。日本人は俺だけだ。バスで一緒だったじいさんもいた。ビニール袋1個で飛行機に乗るのか…。いったいこのじいさん何者なんだ。
12時45分に搭乗アナウンスが有り、バスに乗って飛行機まで移動。またも同じツポレフだった。ロシアにはこれしかないのか?。乗客の入りは6割位だ。日本だったら東京→大阪便に相当するのに、こんなもんなのか。やはりまだロシアでは飛行機が一般的ではないのかも知れない。
前の席ではチェックインカウンターで割り込んだ母親と娘が座っている、態度悪そうだ。空いている席に自分のバッグを置いてそのままにしている。その後青年が来て、そのバッグの席に座ろうとしたら、「後ろが空いてるんだから、そっちに座りなさいよ!」って感じで追い出されてしまった。まったく何て女だ。親子揃って性格最悪だ。おまけに顔はガン黒風。まさに日本のコギャルをイメージさせる。それにしてもこんな所にもガン黒女が生息していたとは…、恐ろしいことだ。その後スッチーにバッグを注意されシブシブしまっていたが、ザマアミロだな。
飛行機は滑走路に向かって動き出したが、路面がデコボコで揺れが大きい。定刻通り1時半に離陸。今日は快晴だが風が強く翼が良く揺れた。ちょっと恐かったが、1時間でサンクト郊外のプルコボT空港に到着。荷物が出るまで時間が掛かり、待たされる。周りを見ると搭乗のエリアには日本人団体客が大勢集まっていた。ロシアに来てから、こんなに日本人を見たのは初めてだ。おそらく今日帰国なんだろうな。皆GW明けから仕事か…。オレはまだ3週間以上も休みだ。まったくいい身分だな。出発直後は会社のことが気になっていたが、もうどうでもいいって感じだ。30分程してようやく荷物が出て来た。外に出るとモスクワより北にあるせいか肌寒い。市内行きの39番のバス停は、敷地の一番隅に有った。時刻表を見ると1時間3本位だった。待っている人は数人しかいない。15分程でバスが来た。ここから15分で地下鉄駅だ。料金は途中集金で、5Pだった。荷物代込みなんだろうか。3時半に地下鉄駅「Московская(マスコーフスカヤ)」に到着。バスを降りたところが地下鉄の入口になっていた。重いスーツケースを持って階段を降りるのは結構辛い。この辺りにも観光客はいないようで、誰もスーツケースを持っているヤツは見ない。やはり、ロシアでは個人旅行者がほとんどいないということなのか。皆団体客で空港から専用バスでホテル直行なんだろうな。旅行者以外で飛行機使うヤツも、おそらく皆金持ちでバスや地下鉄なんかは使わないってことだろう。下手に使ったら格好の標的にされてしまうから。実際最近では金持ちが誘拐されたり殺される事件が頻繁に起きているそうだ。恐いところだ。
切符はモスクワと同じで、窓口で購入。ガイドブックには一律5Pと出ていたが、荷物代込みなのか12Pも取られてしまった。切符はモスクワとは違いジェトンと呼ばれる専用コインだ。これを改札ゲートの機械に入れるとランプが赤から青に変わるので、ゲート内にある回転型の遮断機(結構重い)を手で押して通り抜ける。他の乗客のやり方を見て通過したが、スーツケース持ちだと通りにくかった。
路線図によるとホテルまでは1回乗り換えがある。モスクワの時は1本で行けたが、荷物を持っての乗り換えはちょっと不安だ。外務省の渡航情報では地下鉄のスリ被害が多いと出ていた。とにかく気を付けていかないと…。
ここは始発駅ではないので、方向を間違えないようにとホームの表示をじっくり見てから乗り込んだ。ここもモスクワ同様車両に吊革はなく、照明も薄暗い。
途中停車した駅の中には、ホームと電車との仕切りがある駅が幾つか有った。東京の地下鉄白金台駅で見た、ガラス張りタイプではなく、真っ黒の金属製ドアで、ホームからは電車が来るのがまったく見えず、いきなりドアが開いて人が降りてくる。エレベータがたくさん並んでいるような感じだ。安全対策としてはいいかも知れないが、ちょっと恐い気がする。核シェルターを兼ねているからということなのだろうか。
途中迷うことも無く30分でホテルの最寄り駅に到着した。サンクトの地下鉄もモスクワと同様に芸術的な造りだった。ロシアの地下鉄はこれが当たり前なのだろうか。写真を撮っておきたかったが、人も多いし荷物があると出しにくい、警官も何人か見かけたので仕方なく諦めた。
出口を出てホテルを探そうと、人込みから離れ見通しのいい場所まで移動して地図を開いた。周りの景色と地図を見比べると、ホテルはすぐ近くにあるはずだが、地図でホテルのある場所は今出てきた建物だ。おかしいなと思い上を見上げると「ГОСТИНИЦА МОСКВА(ガスチーニッツァ モスクヴァ)」の看板。「なんだ、ここか」ホテルの一階が地下鉄の出入口になっていたとは。灯台下暗しだった。
4時20分にチェックイン。なんとか着いたが、荷物を持っての移動は結構疲れる。この先まだ何回もあるから体が持つか心配だ。ホテルはこれまで泊まった中では一番新しくカギはカード式だった。ここでもバウチャーは返却してきたが問題ないのだろうか。
これまでのホテルのように各階の係はいなかった。新しいからのだろうか。部屋は6階の裏側向きで眺めは良くないが、中はキレイでカーテンは全部閉る。このホテルがロシアじゃあ一番マシだな。これなら一泊8000円は納得できる。ただ、国際電話はやってみたが掛からなかった。テレビを付けるとロシア語、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語があったが、日本語放送はなかった。
ふと、スーツケースが心配になり確認すると。「ゲッ!」開けられている。何と3ヶ所のロックの内、2ヶ所に何か差し込んで無理やりこじ開けた形跡があった。ロックは壊れていなかったが深いキズが付いていた。幸いにも中身は無事で、金目のものを入れておかなくて良かった。被害が多いのは知っていたが、まさかオレが被害に遭うとは思っても見なかった。空港で荷物が出てくるのがヤケに遅かったのは、これが原因だったのか。マフィアと繋がっている空港職員が飛行機から降ろされた荷物をこじ開け、金目のものを抜き取り元に戻してからコンベアに乗せる。時間が掛かるわけだ。抜き取った物はマフィアがヤミルートに流し、空港職員はマージンを受け取るってことか。こういうしくみが出来上がっている以上、そう簡単には無くならないだろう。やはりロシアは恐いところだ。
それにしても初めてロシアに来たのに、警官のカツアゲや荷抜きに遭うとは、どういうことだ?。ついてないのか、それほど被害が多いということなのか、どっちなんだ。
6時にフロントまでパスポートを貰いに行くが、返却場所はなぜかフロントではなく裏にある事務所らしき場所だった。このホテルも英語が通じるのであまり話せないオレでも結構助かる。やはり英語は世界共通語、やっておくべきだと実感。まだ日は高いが、疲れたから今日はホテルでゆっくり休むことにした。
腹が減ったので5階のファーストフード店に入った。何の店だか分からなかったが、適当に頼んだらクレープだった。ビールと合わせて120P(520円)。高いなあ。あまり腹にたまらなかったので、6階のコンビニに行くと、何とアサヒスーパードライが置いてあった。500ml瓶で値段は100P(430円)。ちょっと高いがロシアンビールも飽きて来たので思わず買ってしまった。ハンバーガーも買ったが50Pと結構高かった。
テレビの天気予報を見るとサンクトの最高気温は14℃だった。ちなみにモスクワは24℃。さすがに北緯60度の街。寒いわけだ。といっても冬はモスクワの方が寒いようだが。海が近いので気温変化が少ないということか。それにしても東京が北緯35度だからずいぶん北に来てしまった。暗くなるのは夜の10時頃だった。夏至の頃はどんな感じなんだろうか。少し早いが11時半に床に就いた。