13日目(5月7日月曜)サンクトペテルブルグ→プラハ

6時に目が覚めた。荷物の整理をして7時40分に朝食をとりに2階に降りた。あまり食い過ぎると動きづらいから今日は軽く済ませた。9時30分にCHECK OUTして荷物を預けてホテルを出た。地下鉄を降りると時刻はまだ10時前だった。何か土産を買っておこうと、ガイドブックに出ていた土産屋に行くと、ちょうど店開きの準備中だった。ペンはないかと探したが、ここはマトリョーシカがメインのようだ。まだ客は誰もいない。ウロウロしていたら、店員が声を掛けて来た。マトリョーシカは別にいいかと思っていたが盛んに奨めてくる。結局プーチンのを買ってしまった。

ペンの方は少し離れたところの店で発見した。ちょっといまいちだったが他でも見当たらなかったのでここで購入。時計を見ると既に10時半を過ぎている。慌ててそこを離れた。エルミタージュに着いたのは10時40分だった。入口からチケット売り場付近は団体客で混み合っていてチケットを買うまで手間取ってしまった。料金は入場料が300Pでカメラが100Pだった。高いなあ。ここも値上げしていやがる。

ガイドブックの間取り図を頼りに目的の西ヨーロッパ芸術部門方向に進むが、豪華絢爛な内部の装飾が足の進むのを拒んでついつい立ち止まって見入ってしまう。それにしても凄いもんだ。結局予定通りには回り切れず、イタリア関係を見終わったところで時間切れ。時刻は既に12時。やむなくホテルに戻ることにした。とりあえずダヴィンチとミケランジェロは見れたが、せっかく来たのにこれだけとは、あーもったいない。

ホテルに着いたのは12時40分。預けた荷物を出してもらい、駅に向かった。窓口で6P出してジェトンを買い、慣れた手つきで改札の投入口に入れてゲートの遮断機を押し通過した。流れるような動作に一瞬自分でも感心していたら、「あれ?」何とスーツケースが遮断機に引っ掛かってしまった。「マズイ!」無理やり引っ張ると、警報が「ピー!」っとけたたましく鳴った。無理に抜こうとするが抜けない。次第に焦りが出て来る。駅員も近づいて来た。ヤバイなあ、こっちからは無理そうだ。仕方なく改札を飛び越えスーツケースを抜いた。駅員は怪訝そうな顔をして去っていった。なにやってんだオレ。

再び窓口で6P払い(一昨日は荷物代込みで12P取られたが、ここでは何も言われなかった)、今度はスーツケースを先に通して何とか無事通過した。ホッとして周りを見ると、若者数人が素早い身のこなしで遮断機を潜って通過している。「なんだ!コイツら」あっけに取られて見ているオレの前を何食わぬ顔して通り過ぎて行った。苦労して通ったことがなんだかバカバカしく思えた。

乗り換えも順調にクリアし1時45分に地下鉄「マスコーフスカヤ駅」に着いた。ここから13番のバスでプルコボU空港まで行けばいい。ちなみにプルコボTは国内線でUが国際線だ、地図を見ると隣り合っているので、ここからは時間も掛からないだろう。出口を出ると一昨日プルコボTからのバスを降りた所だった。しかし、バス停の表示に13番は無かった。「あれ、ここじゃないのか?」おかしいなあ。しばらく辺りを走るバスの番号を確認するが、13番のバスは見当たらない。別のバスが少し離れた所に止まったので、そっちに移動してみると表示に13番があった。しかし、方向が違うかも知れない気がして、バス停で待っていた中年のおばさんに念のため聞いてみると、どうやらここではないようだ。遠くを指差してバス停の場所を丁寧にロシア語で説明してくれるが、それがどこなのかオレにはさっぱり分からない。メトロがどうとか言っていたので、降りる駅が違うのか?。よわった。ここでロスるとヤバイことになる。間に合わなかったらどうしよう。オレが困った顔をしていると、ちょっと待ってなさいって感じで、ここに近づいてくるバスを見ている。バスが停車すると、おばさんそれに乗り込んで、さあ乗りなさいと手招きする。言われるままに乗ってしまったが、どこへ行くんだろう。と思っていたら2分ほどで次のバス停に停車し、おばさんに促され一緒に降りると、何やらロシア語でバス停とか空港がどうだとか言って、ここにいなさいとジェスチャーで説明する。オレが分かったような素振りを見せると、サッと人込みに消えてしまった。お礼を言う間も無かったが、親切な人もいるもんだな。しかし、いったい何者なんだろう。物腰は柔らかく、品がある。そこいらにいるロシア人とは違う雰囲気だった。

降りた所はおばさんがさっき指差して説明してくれた方向だった。なんだ、ここを説明していたのか。こんな簡単なやりとりも理解できないとは・・・。やはり多少はロシア語やっておく方が良かったな。まあ、とりあえず良かった。

しかし、15分待ったがバスは来ない。既に地下鉄を降りてから40分も過ぎてしまっている。次第に焦りが出て来た。間に合わなかったらどうしよう。目の前には小型のバンが止まっている。車のフロントにはK-39の表示。ガイドブックを見ると、39はエクスプレスバスでプルコボT行きと出ていた。念のため運チャンに聞いてみるとUにも行くそうだ。ちょっと高いようだが、時間も無いのでこれに乗り込んだ。料金は15P、高いと言っても65円だ。オレもセコイなあ。5分ほどでバンは出発したが、その直後に13番のバスが来た。なんだ!もうちょっと待っていれば良かった。せっかくおばさんに教えてもらったのに違うバスに乗ってしまった。

10分もしないうちに空港に到着。普通のバスと違い、エクスプレスバスは寄り道しない分早かった。空港建物は国際空港にしてはヤケに小さい。ロシア第二の都市の空港がこんなもんなのか。小さいと思っていた一昨日の国内線用空港の方が倍はある。国際線でこの程度なんだから、よっぽど便数が少ないんだろう。ロシアももっと人の出入りが多くなれば発展するのに、惜しいことだ。ソ連は崩壊したのに、いつまでも旅行者を制限するようなバウチャー制度を廃止しないのは何の意味があるのだろうか。

待合室は両替所しかなく、長椅子が置いてある殺風景の部屋だ。キャビアを買いたかったが、あとは免税店にあることを祈るか。ここで700P両替。ここで税関申告書も書いた。ロビーを抜けてチェックインカウンターまで行こうとしたが、地元の高校生らしき団体が同級生の見送りに来ていて、狭い入り口を塞いで通り抜けできない。皆別れを惜しむかのように旅立つ男子生徒に向かって何やら言っている、男子生徒はそれに手を振って何度も答えていたが、ついには泣き出す女性徒も出て来て、なかなかそこを離れようとしない。男子生徒は体格が結構いいので、スポーツ選手かもしれない。外国のチームにでも行くのだろうか。困ったもんだが、こういうシーンに割り込んでジャマをしてはいけない。時間はまだあるしここは待つとするか。でもいいねえ、こういうのって。ついつい見入ってしまった。がんばってこいよ少年!。

10分程してようやく入口が開いたが、なぜかここでパスポートと航空券を見せて金属チェック。変だなチェックインが先ではないのか。さほど広くない廊下を進んでいくと右手にチェックインカウンターがあった。やはり便が少ないようであまり広くない。モニターを見ると、「PRAGUE OK887 16:45」と出ている。「良かった、これだ」。チェックインを済ませ、向かいにある出国審査へ行った。事前情報だとロシアの出国審査は結構厳しいと聞いていたが、特に何も聞かれず難なく通過。なぜか出国用税関申告書はスタンプも押さずに返してくれた。この後金属チェックを通って待合室へ。待合室横の免税店を見たがチョコレートばかりでキャビアはなかった。残念。よく考えてみると税関申告後に持ち出し制限(2個まで)があるキャビアが置いてあるわけないか。

時刻は3時10分、まだまだ時間はあるので売店でビールを飲んだ。銘柄は西側にものも置いてあったがもう飲む機会も無いだろうと思って、サンクトのブランド「Балтика(バルティカ)」にした。このビール、結構メジャーなのかテレビのCMで良くやっていたな。

待合室のモニターにゲート番号の表示はまだ出ていない。周りに日本人はオレだけだ、東洋系もいない。日本語もしばらく喋っていないなあ。イルクの空港でちょっと話しただけだ。日本人とべったりはイヤだがたまには話してみたい気がする。このまま1ヶ月喋らないとどうなってしまうんだろう。帰国後すぐ社会復帰できるのか不安に駆られる。

4時15分にようやくモニターにゲート番号6が表示された。早速そこに移動。今度は建物から直接入るタイプだ。ロシアに入って初めてだな。と言ってもこの空港にはこれが3つしかないから、有るだけ珍しいのかも知れない。しかし、飛行機はまだ来ていないかった。15分後やっと到着して、中から乗客が降りて来た。なんだ、これは時間が掛かるな。プラハ到着が遅れてしまう。暗くなってからの移動は出来ればしたくないな。

飛行機はこれまでのものよりさらに小さかった。2発ジェットだ。100人乗り位かなあ。これで国際線?。胴体の大きさに比べ主翼がヤケに小さいくないか。ツポレフの方が遥かに主翼は大きかった。こんなんで飛べるのか?ちょっと恐い気がする。せめて天候が良ければ良いが…。不安だ。

しばらくするとアナウンスが有った。回りの乗客の雰囲気からすると遅れるようだ。予定通りだとプラハ着は現地時間で5時10分。日本の感覚で行くと1時間遅れくらいなら、まだ明るい。それを過ぎるとちょっと心配だ。いったいどの位遅れるんだろうか。

16時50分にようやく搭乗が始まった。座席は主翼近くの窓側だった。パンフレットを見るとボーイング737、120人乗りだ。小さいなあ。しかし、中はキレイで座席は何と本皮でビックリ。チェコ航空って凄いなあと感心してしまった。

周りを見ると乗客の入りは4割位だ。横の2列は誰もいない。これで飛行機が大きければ最高なんだけどなあ。エンジンが回り始め、アナウンスが始まったが、ロシア語ではないようだ、チェコ語なんだろうか。アナウンスはロシア語、英語と続き、フライト時間は2時間10分と言っていた。その後、動き出したがなかなか滑走路に着かない。おかしいなと思っていたら、見覚えのある建物が見えて来た。モスクワから着いた時に見た建物だ。これはプルコボT空港ではないか。なんだ、建物は違うが滑走路は共用だったのか。ここでようやく滑走路に入り、5時25分に無事離陸した。定刻より40分の遅れだ。これくらいで良かった。何とか明るいうちに着きそうだ。

ついにロシアを離れてしまったなあ。再びこの地を踏むことはあるのだろうか。色々ヤなこともあったが終わってみればいい思い出だ。どうなることかと思っていたが無事出国できて今はホッとしている。機会があればまた来てみたい国だ。旅行者にはまだ開放されていない部分が多いが、そこがメジャーな観光地とは違う魅力かも知れない。

もしまた来ることが出来たら、その時はもっとロシア語をやって、事前に十分情報を集めてから来るのがいいだろう。それと英語もだ。ホテルや観光地でこんなに英語が使えるとは思わなかった。これは欧米からの来訪者が確実に増えているからだろう。だんだんロシアも変わっていくんだろうな。いつの日か同じ経路をたどって、どう変わったのか見てみたい気がする。

飛行機はサンクトの上空を抜けバルト海へと進んだ。外は快晴で風も無く穏やかだ。眼下に見えるバルト海が太陽に照らされて光っている。

 

サンクトを飛び立って2時間ほどでプラハ空港着。時差が2時間有るので時計を5時半に戻した。予定より15分の遅れだ。外はまだ十分明るい。この程度の遅れで良かった。建物は結構新しくロシアの空港とは違って近代的だ。だだ、ここも日本と比べるとそう大きい空港ではない。とりあえず両替する。19$で550Kc(コルナ)だった。ルーブルとあまり変わらないレートだ。なぜか硬貨は分厚くて結構重量感が有る。

さて、ここからが問題だ。どうやってホテルまで行こうか…。ふと見ると、同じ飛行機で降りた乗客が「TRANSFER INFORMATION」の表示が有るカウンターに向かっていく。「もしかしてここで聞けばいいのか?」さりげなく後に付いて、やり取りを聞いてみると。ラッキーなことに英語で喋っている。どうやら俺と同じに市内までの交通手段を聞いているようだ。しばらくして切符と路線図を貰っていった。ホテルの名前と住所を書いた紙を見せながら同じように聞いてみると、いつまでいるのかと聞かれた。明日発つと言うと、24と書いてある切符を取り出し、路線図に印を付けながら丁寧に説明してくれた。路線図にはバス、地下鉄、市電が出ていた。色分けされていて分かりやすい。切符代は70Kc(315円)。ロシアと比べると結構高いなあ。でも簡単に買えて良かった。これだけが心配だった。

バス停で10分ほど待つと、教えられた119番のバスが来た。ロシアに比べると遥かに新しいバスだ。経済事情がいいってことなんだろうか。早速乗り込んで中に座ったが、切符を差すような機械が置いてある。確かオーストリアは切符を買った後、機械に差して日付と時刻を印字しなければならないとガイドブックには出ていたなあ。もしかしてここもそうなのか?。念のため隣りの席のおばさんに聞いてみるかと、通じるか分からなかったが英語で聞くと、何とペラペラだった。やはりこの機械に差して印字すればいいそうだ、しかし、このおばさん俺の切符を見るなりプラハ市内に行くのにこの切符は高い!と言ってきた。普通の片道切符だと15Kc(68円)とのことだ。何でこんな切符買ったのかと不思議がられてしまったが、今日は市内に1泊して明日発つと説明したら納得していた。

どうやら俺が買った切符は24時間フリーパス切符で、時間内だったらいくらでも乗れる切符だったようだ。確かに24と書いてあるが24時間だとは気付かなかった。どうりで切符を買う時にいつまでいるのか聞いたわけか。それにしてもこんな所でも英語を話す人がいるとは驚いた。やはり英語って国際語なんだなあ。帰国したら勉強しようか…。

バスは田園地帯を抜けて、市街地に入った。街の雰囲気は日本の郊外の住宅地に近い雰囲気で清潔感が有る。車はドイツ車がほとんどだ。汚い車は全然走っていない。周りを見ても警官も軍人もいないし、何だかホッとする。徐々に緊張感が解けていくような感じだ。30分程で地下鉄「DEJVICKA」駅に到着。時刻は6時40分。後はここから8駅目で降りればいい。1回乗り換えは有るが、ロシアの地下鉄で慣れたから気は楽だ。ホームに降りるエスカレータの手前には日付の印字機が有るだけで簡単にキセルが出来る構造だった。海外は改札が無いのが当たり前って聞いたが、どこもこうなのか。

ここもエスカレータは速かった。ロシアより多少遅い位だ。空港のは日本並みの速さだったが、これはいろんな国の人が乗るからだろうか。深さはロシアとは違って日本と同じくらいだった。ホームの形は天井がアーチ型でロシアと似ているが、彫刻や壁画も無く殺風景な感じだ。明かりはごく普通の蛍光燈で、日本並みに明るく、結構新しい駅だ。ホームにはほとんど人がいない。あまり乗降客がいないのだろうか。ホームもそれほど長くないので、車両も多くはないのだろう。

数分して電車が来た。乗り込んでみると吊革はないが、照明は日本並みに明るい。乗客には旅行者が多く3割位を占めていた。こんなに多いとはビックリ。中には自転車を持ち込んでいるヤツもいる。やっぱり居るところには居るんだなあ。これが開放された国とそうでない国の違いなのか。なんだか少しホッとした。やはり仲間が居ると安心する。渡航情報には地下鉄のスリに注意と出ていたが、怪しいヤツはいないし、危険な雰囲気は全然なくのんびりした感じだ。ロシアとは大違いだ。

途中の乗り換えも無事にクリアし7時にホテル近くの「KRIZIKOVA」駅で降りた。街の中心から離れているのか人通りは少ない。駅を出て数分歩くと目的のホテル「IBIS PRAHA KARLIN」に着いた。何とか明るいうちに着いて良かった。あまり大きなホテルではないが、結構新しい。フロントも英語が通じて安心した。しかしCHECK OUTは10時と早い。部屋は2階で眺めは良くないが、ベランダが付いていた。中は広く清潔感がある。冷蔵庫はなく、トイレと風呂は別だ。なぜかドアのロックチェーンが付いていない。これまでモスクワのホテルだけ付いていたが、無いのが当たり前なのだろうか。ホテル案内を見ると結構大きいホテルチェーンのようでヨーロッパ各都市の姉妹ホテルが出ていた。1泊9200円でちょっと高いが、イルクのホテルに比べれば遥かにマシだな。念のためスーツケースを確認したが開けられた形跡は無かった。やはりロシアだけか。

喉が渇いたのでビールでも飲もうかとホテル内を探すと、なんと自販が置いてあった。自販なんてめったに無いと思っていたが、ホテルにも有るんだなあ。しかし高い!。ビール、コーラ、ジュースどれも350mlで60kc(240円)だ。なんでこんなに高いんだ?。信じられない。まあ日本に比べれば安いけどロシアの物価に慣れてしまった後だとものすごく高く感じる。

テレビをつけたらWCの会場紹介をやっていた、今日は新潟だ。ロシアでもこの番組はやっていたが、ヨーロッパではこの手の共通番組が多いのだろうか。こういうのを見るとアジアって遅れているなあ。色々障害は有るだろうが、もっとこういった交流はやった方がいいのではないだろうか。

飲みながら明日の準備をしていたら、急に疲れが出て来た。ロシアでの緊張感から開放されたからだろうか。ちょっと早いが11時半に床についた。

 

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