ブータン神秘的編


5月11日/5月12日/5月13日




1999年5月12日(水)ジャカール

朝靄たちこめる早朝、そっと起きて外の水道へ顔を洗いにいく。
ブータンの動物はぐうたらしてて、警戒心のカケラも ないと思っていたが、それはブータン人が殺生をしないからだ。 道路の真ん中で寝そべる犬たちは、 すっかり安心しきって車の通行を邪魔しているんだね。 なぜそんなことを思ったのかというと、冷た〜い水を顔を洗っていると、 すぐそばにスズメがとんできた。きあの水の「おこぼれ」をもらい、 すずめもちゃぷちゃぷ水あびをしているではないか。 つかめそうなくらいの距離で、私のほうが驚いた。
用心深いスズメまでも、ブータンでは人懐こいんだな。

朝ご飯ももりもり。おとうさんがたった今しぼってきた 新鮮な牛乳をいただき、ほっこり。 あっという間の滞在だったけど、まだ今日はこの街にいるので 会えるかもしれないね〜。学校のある娘たちに別れを告げる。 ウルルン滞在記の最後に芸能人たちが泣くような、 あんなキモチになるかなあと思ったけど、さすがに1日じゃね。 にこにこ笑顔でのお別れ。


お世話になりました

じいちゃんも元気でね

さて、R氏、クンザンちゃんときあ&けさんも出発。 今夜のお宿はスイスゲストハウスなので、クンザンちゃんと 同伴出勤なわけだ。
その前に、ジャカール・ゾンに立ち寄る。かなり立派なゾンでは あるが、さすがにそろそろ見飽きてきたぞこの建築。 でも、ゾンの中にお役所があるってすごいなあ。 日本でいえば金閣寺の中に京都市役所があるみたいなもんだ(そうなのか?) その後、ジャカールのメインストリートをプラついて 早々にお宿にチェックイン。

スイスゲストハウスは山小屋ロッジ風の造りである。デザインや彫刻などは、しっかり ブータンスタイルだが、それにおなじみの赤褐色の色を塗らない。 白木のニス仕上げで、いままでにみたことのないかんじの建築物だ。また、その雰囲気にブータンの色彩の小物があうあう。 フンガフンガいいながら、部屋に入ると、これまた セントラルヒーティング薪ストーブバージョンで暖かい。 トイレもちゃんと水がでるし、なによりオシャレー。 カントリー調のキッチングッズがすきな若奥様が大喜びしそうだ。

スイスゲストハウスでは天然酵母のパンを焼いているそうで、 年配の欧米人の旅行者がパンを買いにきていた。 「これにブータンチーズをのせるとおいしいんだよ」と にこにこしながら去っていったおじさん。マジで嬉しそうだよ。 わたしも楽しみだなあ、今日のごはん。ワクワクワクワク。
で、Rさん、今日の予定はなんだっけ?
「まずお寺に行き、その後お祭りに行く。ラマの長生き祭りだ」
また寺?まじで寺はそろそろいいかも・・・食傷ぎみだよ。 なんて思ってたワタシ、行ってみれば脳みそガーーンなのだ!!!


スイスGHのテラスいい眺め

室内もシンプルで清潔、快適




そのお寺、ジャンベラカンは ちいさなちいさなところであるが、とにかくすぴりちゅある。 かなり由緒あるところで、ブータン有数の歴史をもつらしい。 足を踏み入れたら、ドドドーーーーンと8人の仏陀が立っている。
写真は撮ってはいけないので、御布施をしたあと、あわててスケッチを してみた。えっ?7世紀のもの?・・・ななせいき? 鳴くよウグイス平安京、じゃなくて、虫殺しの大化の改新時代か。 天井なんか、ロウソクのススで真っ黒である。
「どう?」と訪ねられ、宗教ボキャブラリ皆無の私は 「ホーリー!ピースフル!スピリチュアルワールド!」と、 わけのわからない単語を並べ立てたです。ハイ。 とにかく清きオーラをむんむん感じることのできる場所であることに 間違いはない・・・。

さて、本日のメインイベントである。
長生き祭りはクジェラカンという所で行なわれる。 ややっ!なんだあれは!!!はためく色とりどりのダルシンが、 まるで小学校の運動会の飾りのように見える。 そして・・・・ブータンではじめて見る「ひとだかり」があった。 みんなー!な、な、なにしてんのー!? 経典を読む声がスピーカーから響きわたり、赤い袈裟を着た お坊さんが、人の波をおよいでいる。 Rはどうしてもこれに来たかったらしい。 んまっ。私たちのツアーに便乗して組み込んだわね?でかした! こんな賑やかなの、ブータンきて初めてっす。

最初は恐る恐る遠巻きにみていた私たち。Rが 「大丈夫だから、前にいってごらん。何も言われないから」
という。うーん、外国人特権? でもみんなうしーろのほうに座ってるけど・・・ま、いいか、いっちゃえ! この祭り、チベットラマが やってきて、みんなの幸せを願うお祭りらしい。 正確にはワンルン トゥィルン(WHAG LUNG THRI LUNG)という。 みな祈り、経典を唱え、一心にお祈りを捧げている。 ちらほら外国人観光客の姿もあり、みんな興味深そうにこの アジアの奥深くで行なわれている宗教儀式に酔っているようだ。


ユーミンライブin苗場。うそですけど。とにかく大賑わい、わっしょい!!
3週間ぶっ続けで行なわれるこの祭り、なんと今日が最終日。
祈るブータニーズのお目当ては、 ラマにアタマを触ってもらう、 おでこに赤いポイントを打ってもらう、 聖水をいただくためのようだ。
しかし、少年僧が祈るより私ら注目するもんだから、どうも居心地がわるい。 ごっ、ごめんなさい。さ、お祈りに集中してちょうだいな。

お菓子を配ってるお坊さん

写真をとったりスケッチしたりぼーっと様子をながめたり。 さすがに3時間ほどたったくらいからさすがに飽きてきた。 「Rさん、ラマのセレモニーはまだ?」 「たぶん5時くらいから始まるよ。もうすこしもうすこし」
となだめられた。まあよかろう。ここまできたら、 意地でもラマに触ってもらうもんね。
さて、小雨降る寒空の下、とうとう動きが!
まず、先頭は着飾った男衆の踊りと楽器隊。 その後を、仰々しいみこし?に乗せられたラマをみな担ぎ、 人並みをまんべんなくクネクネとめぐる。 ラマはハネのようなものがついた棒で みんなのアタマをわさわさとハタいている。 そのころからみんな狂乱状態で、ラマに寄ってくるもんだから ちょっとしたパニックだ。
「け、けさん負けるな!ラマもうすぐこっちくるよ!」

頭つるつるの人がえらいひと。鯉の餌付けのようだ
ずんずんラマのみこしが近づく。若手芸人並の前のめりっぷりで私の視線のレーザービームでラマをロックオン。
「ラマさん、ラマさん、日本からきたのよ〜あなたに会いに」(ウソ)
と日本語でアピール!うおりゃ〜! するとラマ、ちらりとわたしに視線をあわせ、そっけなく 頭をハタいてくれたではないか。 手をあわせ感謝をあらわし、小躍り。

みこしの後に続くオデコにポイント打ちます隊にも 日本語でアピール。ステキな笑顔も添えることも忘れずに。 そしたら、少年僧がニヤッと笑って、おでこにポチっと ブレスインポイントをうってくれた。ウキッ!やったね! けさんは、どうやら人込みにまぎれてしまい、 どちらも体験できなかったらしい。私はデカいので目立つっぽい。そらブータンには170cmの女ってそうそういなさそうだもんな〜
さっそく私も協力し、次にラマが近づきそうな列に移動し、 けさんの頭をぐいぐいつきだし、 ぶじ、赤いポイントを打ってもらうのは成功した。

そうこうするうちに、ソナムとばったり会う。
ソナムのおでこにも赤いポイントがちゃんとあるじゃないの。ぬかりないなおぬし。 Rはラマ頭ハタキを待っており、おなじくけさんはリベンジに行くというので、冷え切った私とソナムはRの車の中で待つことにした。ソナムの夢をきかせてもらったり、ボーイフレンドの話をした。私は英語はできないけど、がんばれば(←ほぼジェスチャー)意思の疎通くらいはできる。かなり疲れるんだけど、それが楽しかったりする。

外はしとしとと雨がふる。窓ガラスは寒さで曇り、 満足げに家路に急ぐ人々の影だけが、窓に映る。 お坊さんにもらったお菓子をソナムと分け合いながら 話すこの時間が、なぜか永遠に続くような気がした。 なぜかわからないけど、そんな気がして恐くなった。



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