![]() ジョルダン人情編2◆ヒッチハイクで行こう Vo.2 1999年9月27日(月)アンマン〜カラク 「マダバ!マダバ!」 叫んでいれば誰かがこのバスだよーと教えてくれる。ラクチンだ。 ビッグブラザーコンビ、まずはモザイクと教会の町マダバを目指す。 ミニバスの中は、わいわいにぎやか。わたしの必殺アラビア語会話集のおかげである。 例えば。綿あめのようなものをたくさん抱えた人が乗り込んでいるので、 まわりの人に「あの赤いものは何?」と必死に 単語をつなぎあわせたアラビア語で訪ねると、いきなり 目の前に座ってたおばちゃんが、その人にお金を払ってわたしらに プレゼントしてくれた。恐縮しまくりながら食べてみるとやっぱり綿あめ。 みんな髪の毛をさわってなにかいってたので、どうやらこちらでは、 綿あめのことを髪の毛と呼ぶのではないか、と推測。 たしかに髪の毛が集ったような感じだものねえ〜。 余談だが、私が何気ないとこで感動するのは、多目に渡してしまったミニバスの料金も、 この国ではきちんとかえってくるところだ。じいいいいいいいいいいん。 本当にこういう小さなことにイチイチ感心してしまうのが悪い癖である。 そんなちょっとした勉強と、人々の明るさ、優しさに接しながらミニバスは無事にマダバへ到着。 ![]() 色合いはなかなかキレイだが規模は小さいモザイク まずはSt.ジョージ教会へ、有名なモザイクを見に行く。 6世紀のパレスチナを描いたという古い古いモザイクは確かに美しかったが 思ったほどのものではない。とにかく西洋人団体客がひとりにつきカメラ2台を 持ってドカドカ押しかけていたのが恐かったので、30分もたたずにそそくさと 教会を後にした。 その後、ブラブラしているとデカい教会らしきところから、これまた初々しい女の子たちが わいわいと出て来ている。まあ!なんでしょうここ!ハイごめんなさいよ〜と 勝手に敷地内に入ってみる。生徒達は小中学生くらいの女の子ばかり。 私たちにすごく興味があるらしく、じいっと見られるわ、笑われるわ、 片言の英語で話しかけられるわインチキアイドルの気分。 「ここは学校?」 「そう、それは教会よ」 「中みれますか?」 「ちょっとまってね」 年長さんっぽい子が、そう言ってシスターを連れて来た。シスターはにっこり 微笑みながら教会の鍵を開けてくれた。 おおおお〜〜〜。ジョージ教会よりデカいしすごいじゃん! 教会の中はしーんとしずまり、ひんやりと涼しい。アラビア語の聖書という めずらしいものをめくりながら、のんびり過ごした。もちろん帰りは生徒達と記念撮影大会だ。 ![]() この外観に惹かれてついフラフラはいりこんだ。 さて、行けるとこまでミニバスで南下しなければならないということで、 鶏屋(生きた鶏を売る店)でシャイをゴチになったのち、ディバーンと いう小さそうな町まで進むことにする。 またこのミニバスも面白くて面白くて、明るいジョルダニアン達は、わたしたちに景色を楽しむ暇など 与えてくれない!アラビア語会話集で意味のない会話のやりとりなどをするおかげで みんなからヘンだがフレンドリーな日本人だぜ! と認めてもらえてるのかもしれない。 しかし、あいかわらずここまで、100人いたら100人から相変わらず 「おまえらは夫婦か?」 といわれ続けていた私たち。もう面倒くさいから姉弟ということに しちゃおうよ〜という私の提案から、ずっとアフ(兄弟)と 言っていたがどうも通じない。発音がかなり複雑なのだ。 このバスで出会った、元気な高校生・ムハマド(またこの名前か!)に、教えてもらった オクト(姉)という単語はアッサリ通じ、 これからの旅にとてつもなく役立つこととなった。 ちなみに、チョクはすっかり社会人のくせにずっと学生と言ってた。 しかも、ほんと学生に見えるくらい顔が幼いのでうらやましい限り。 (だって〜私が現地人に「いくつ?」と聞かれ、「19歳!」という嘘をついたとき 「それは嘘だね」とキッパリ見抜かれたんだもん。シクシクシク) ムハマドとチョクはすっかり仲良しになり、ムハマドは自分の指輪を チョクにプレゼントまでしていた。あたしも欲しい! チョクはお礼にソーラータイプの電卓を渡していた。チョクの気分を ひとことでいうとジョル日親善大使だ。くそ〜。 ![]() この子たちより年長の女生徒はやはり写真を嫌がった ディバーンはほんと〜〜〜〜に何も何もない小さな町だ。ミニバスはここで途切れる。 だが、キングスハイウェイを目指す旅行者はかなりここを訪れるのだろう。 降りた瞬間からウジャウジャウジャウジャー!とタクシーのドライバーども がやってくる。ほんと、虫みたいにウジャウジャくるのでビックリだ。 「ここからワディムジブへはタクシーしかない!」「タクシーにのれ!」「いくらなら乗る?」 わたしはモロッコでの恐怖がよみがえり、あわててその場を離れた。 (犠牲はのこされたチョクである。ふへへへ)。チョクもキレて逃げて来た。 そのとき、ムハマドが私たちにミリンダをおごってくれるという。 年下でしかも学生のムハマドにおごってなんかもらえないわよう。 もちろん断ったし、私たちがおごるよ〜と言ってもきかないのだ! 「君たちはゲストなんだからプレゼントしたいんだ!」 ムハマド・・・アンタ、輝いてるよ! しかし、その感動の3人くつろぎシーンにも、ドライバーたちは容赦なくやってくる。 おい!オヤジ!勝手に椅子にすわるな!ムハマドと三人きりにさせてよね。 客を逃がすものか、とやつらも必死である。ああー恐いわ。商売のからむアラブ人の目は やっぱり恐い!ひさしぶりの洗礼にきあも逃げ惑うばかりだ。 結局、ここで休まずにさっさとヒッチハイクをしようということで、 車をGETしようとするが、なかなか南にいってくれない。 というか、絶対的に交通量が少ない・・・なんかこれってピンチ!? 「ああー無理なのかな。やっぱりだめなのかなー」 ムハマドはおろおろして、本当に親切に 「タクシーは安いから、タクシーのほうがいいよ」 としきりに気にかけてくれる。なんだかムハマドにも申し訳ない。そして ムハマドが「もし、車がつかまらなかったらウチにこない?」と 申し出て、それもいいね〜と(予定のない旅なのでなんでもアリだ)思っていたとき。 ププー。 一台のグレーのセダンが、30mくらい前方でとまってくれた。 「うわああ!とまったよ〜」「急げ!」 私たちはダッシュ!車には、ブルースウィルス似の男性と金髪女性。 「ワディムジブに行きますか?」「行くよのってきな」 私たちは、狂喜乱舞しながら車にのりこむ。ムハマドとも固い握手をしてさよならだ。 世話になったね、ムハマド。ありがとう。 いやあ〜どうなることかと思ったよ。乗せてくれたのは、レンタカーで国内を旅している フランス人のブルーノとエリザベート。 せいいっぱい愛想をふりまきながら、車は一路ワディムジブへ。 ジョルダンのグランドキャニオンとよばれるその土地、しかとこの目でみてやろうじゃないの! ![]() ![]() 写真じゃ伝わらないかな、このパノラマ感・・・ ディバーンから車でほんの15分。いきなり目の前がパッと広がった。 「ホントだ、本当にグランドキャニオンだ(見たことないけど)」 今までの岩と石だらけの景色ではなく、マーブル模様のような地層が美しい 大峡谷のパノラマが360度広がる。うおおおお。こっ、これはすごい。 ビューポイントらしき駐車場に車をとめ、それぞれこの景色を堪能。 「専門家的にいわしてもらうと、ここは雨が降るとヤバイな。 雨がふらない土地だからこんな光景が見られるんだな」とチョク。 チョクは地質関係の仕事をしている。 「これ車のCMとかで使えそう。空撮してさ〜」ときあ。 それぞれなぜか仕事を思い出しながらのひとときとなってしまった。 そのときブルーノが、申し訳なさげに声をかけてきた。 「実は・・・私たちは一度戻るんだ。この先、君たちは誰かの 車に乗れるかな?いや、大丈夫だと思うよ、ここは観光スポットだから 僕たちのようなツーリストの車に乗せてもらえると思うんだ。ごめんね」 というようなことだ。なっ、なにい!?マジ!?と思ったがここまで 乗せていただいただけで御の字! 「ノ〜プロブレム!!ドンウォーリー!そうそう、誰かに 乗せてもらえると思う。ここまでありがとうメルシーボーク〜」と 訳の分からない英語&フレンチ単語でひたすら元気に受け答え。 心の中ではどうしよー。こんななんにもない、 誰も通らないような場所で〜〜と冷や汗だ。 エリザベートが、お詫びにとくれた水を持って彼らを見送る。 「うーん。いよいよをもってサバイバル」 「そうだね〜・・・」 すると、すぐにその駐車場にいたポリスマンが話し掛けて来た。 どうやら私たちの会話の一部始終を聞いていて気の毒に思ったらしい。 なんとポリスマンは、すぐ横に停まってるダットサンのドライバーに、 私たちを乗せてもらえないか、と交渉をしにいってくれるではないか。 嗚呼!なんて親切なんだポリスメーン!! ![]() 夕焼けを待つ、モノウゲ(を装った)きあ。 その車のドライバー、エカブ氏の話によると乗せているのはオーストリアから きた取材クルーで、彼らの国内での行動をすべて共にしているという。 自分は今彼らを待っているだけなので返事はできないが、いい人なので 問題なく乗れるだろうと言う。おお!それはウレシい! 私たちも急ぐ旅ではないので、彼らを待つことにした。しかし今すでに 15時過ぎ。そろそろ陽もかたむきかけて、彼らが乗せてくれなかったら とてつもなくマズい。心象よく印象よく接しなければ! ここで、私のプレゼンテーション能力が試されるときが来たのね。(?) 結局、そのオーストリア人のアーノルド&ハンナは とてつもなく気のいい夫婦で、なんの問題もなく私たちを乗せてくれることに なった。取材クルーというか、アーノルドがオーストリアの大手印刷会社 に勤めるカメラマンで、その取材に妻であるハンナを同伴させているという なんとも羨ましくも仲良しな夫婦だった。 「でも夕暮れのワディムジブが撮りたいから、夕暮れまで このあたりにいるよ。時間はいいのかな?」 「ノォ〜〜プロブレム!私たちも夕焼けが見たいので嬉しいです」 「そう?じゃあ行こう!さあ、乗った乗った」 ポリスマンに礼をのべ、そのビューポイントを後にする。いやあ、恵まれてる。 人との出会いにこんなに恵まれ、甘えてていいのだろうか?とさえ思う。 ![]() 気のいいアーノルド、笑顔をたやさないハンナ。 そして、アーノルドたちに拾ってもらったことを最高に感謝したのが このワディムジブの夕暮れだ。アーノルドは、すばらしいサンセットの 写真をとるため、ロケハンしながらエカブにビュースポットを聞いている。 そして、どう考えてもジモティーしかいかないような山道を登り、 ワディブジブのパノラマを楽しめる場所に落ち着いた。 ダットサンに山ほどの機材をつめたアーノルドはいそいそと三脚などを 用意してセッティング。サポートするエカブ。ハンナはニコニコとそれを見つめる。 風の音しか聞こえない。雲さえもない。もうたまらん・・・・。 真っ青な空がどんどんオレンジ色になり、 白っぽいワディムジブの峡谷がほんのりローズに染まる。 岩がつくりだす影がみるみる角度を増し、 吹く風もすこしだけ冷たく感じる。 そこにいた2時間の幸福感といったらコトバで表せない。 みなそれぞれが優しい会話をかわし、いいようのない一体感が漂う。 私はゴロリと岩に寝転んで1秒ごとにかわる風景を見ていた。 そして人間のちっぽけさとあたたかさを同時に考えていた。 自然しかないなかで、人はとてもやさしくなれる。 自然しかないから、人は人を大切にしようと思う。 ![]() ひとこと言わせてくれ、なぜそのシャツの色にそのズボンを合わせる? 満足げなアーノルドと私たちをのせ、車は暗闇をガンガン飛ばす。 今夜のお宿は城の町カラクだそうだ。 エカブに聞くと、値段もそう悪くないし私たちもその宿に泊まることにした。 ここ、ジョルダンでは友人プライスは本当に安い。 私たちが泊まったRAM HOTELは、とても 清潔で感じがよく「エカブの知り合いなら特別に」と、 エカブとチョクそしてきあの3人部屋でひとり3.5JDにしてくれた。 この部屋のレベルでその値段はまったく問題なし。エカブに感謝だ。 その夜みんなで訪れたレストランも、わいわい楽しい。 みんなで食べるゴハンはおいしいねえ! どうやらアーノルドとハンナはきあをとても気にいったらしく、 いつもバカなことばかりするきあを見ながら 「おほほ。まったくおかしな娘ねーこの子は」と ふたりで言っているのがよくわかった。だってお世話になったから 楽しい時間を過ごしてほしいじゃないの〜。なんでもしまっせ。 初めての水たばこ(シーシャ)体験もできたし、今日はとてもとても 満足な一日だ。もうお腹一杯デス。寝まス!! ここでの2つの出会いがきあたちの道程のポイントとなることとなる。 ひとりは、エカブ。 1週間後、アーノルドたちを空港におくったらすぐに戻るから 僕のガイドでワディラムに行かないか?と 申し出て来た。私たちは喜んでその申し出に飛びついたが・・・・。 もうひとりは、同じRAMHOTELに泊まっていたブラジル人パッカーの セルジオ。彼に再会し、人生の師と仰ぐまでに いたるまでに、時間はそうかからなかった。 それらの話は、また今度。 ![]() 知らないおやじから誘われて水タバコ体験。 甘くておいしかった。喫煙しててよかった。 本日の出費 ■宿代(クリフホテル) 3.5JD×2泊=6JD ■シャワー代 500F×2回=1JD ■セルビス(ダウンタウン−ワヘダット) 250F ■ジュース 100F ■チョコレート 100F ■ミニバス(ワヘダット−マダバ) 200F ■シャワルマ(ケバブサンドイッチ) 500F ■st.ジョージ教会入場料 1JD ■ジュース 100F ■ミニバス(マダバ−ディバーン)175F ■宿代(RAM HOTEL)3.5JD ■夕食 3JD 9/26編へ | 9/27編 | 9/28編へ |