テキストつらつら
イングランド再訪編
2005年2月


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よくみえないでしょうが、翼のさきっちょにピカチュウが

大荒れの初日

■大雪警報にビビる
通常、わたしの旅日記で旅の出発についてコト細かく書くことはない。が!今回は書かずにいられない、そんな大事件に遭遇してしまったのだ。うわーん!

出発の2日くらい前から、ニュースは「この冬一番の寒気団がやってきます。大雪になるでしょう」と言っていた。あまりに言われるので、ニュースキャスターのクチにスリッパをつっこんで黙らせたいほどにハラハラしていた。
いつもお世話になってる旅行代理店のOさんにも電話し「こんだけ天候が荒れるとわかっているのだし、成田に前のりできないかしら」と相談。あれこれ手配してもらったけど、正規航空券の早割りだというのに、そんなことはできねえとの回答。むむっ!!!荷物の重量制限がゆるいところが気に入り、ひいきにしているA◎Aだが、そんなに融通が利かないとは!Oさんも、他の海外のキャリアでは前のりできたことあるんですようと言っていた。チッ。まあ、天候の都合は航空会社はなんの責任も負わなくていいので、そりゃもっともな言い分だ。あきらめて祈るように当日の朝を待つ。天候の都合ならな。(これはあとに大きな意味を持つ)

時差調整生活をしていたため、1時に起床し、6時に家を出るまでにそなえる。前の日にタクシーの予約をしているも「大雪の場合はお迎えにあがれないという誓約でお受けします」と仰々しく言われていたにも関わらず、私の呪い願いが通じたのか、家をでるまで雪は降らなかった。ただしタクシーにのった瞬間横殴りの雪。ひえええええ。お願いお願い、離陸まで積もらないで!風よやんで!成田は晴れているんだから、成田まで飛べばもうどんだけ降ってもいいからぁあああ!!!

チェックイン後、待合室でずっとテレビの気象情報をみているが、JALの福岡〜羽田は欠航!ひええ。これは機内に乗り込んでも油断はできない。待たされたあげくとばないことだってある。 とにかくおまもりをぎゅうとにぎりしめて、念念念念念念念・・・そして機内へ。朝一番の成田行きはかなりガラガラ。搭乗客は50〜60人くらいだろうか?

ドアがしまり、機体が動き始める、加速、そして上昇、Gがかかる。ああ・・・おじいさん!クララが!クララが立った!機体が飛んだよ!!!もういままでの弱弱しい私にさようなら。強気でワインをのみながら(ただのジュース)雲の上の快適フライト。あ〜よかったぁ〜。散々悩んだけど、全然飛ぶじゃん!そうだよね、ちょっとの雪で飛ばないんじゃ、冬の北海道便なんか全部欠航だよ、ロシアなんか鎖国状態だよ、心配しすぎ!あははは、あはははは、あははははははあ〜〜〜〜〜〜〜・・・と、大阪上空くらいまで来た時に事件は起きた。


「がったん」(BGMにミーッミーッというスゴイ警報音)




がったんって?なにこの音?つか、目の前にぶら下がってるのって

・・・

・・・・・・
・・・・・・・・・
酸素マスク?

もう頭の中が「????」状態。前に座っていた西洋人もなみだ目でキョロキョロしている、すかすかの機内なのでざわざわもせず、その中をけたたましいエマージェンシーアラームがなり続ける。

「機体ガ急降下シテイマス マスクヲ 着ケテクダサイ」(日本語)
「機体ガ急降下シテイマス マスクヲ 着ケテクダサイ」(英語)
「機体ガ急降下シテイマス マスクヲ 着ケテクダサイ」(中国語)

以上エンドレス放送。


マスクのつけ方は覚えておきましょう(この写真は着陸後撮影)


・・・きっ、機体が急降下ぁ〜〜〜!?
CA(キャビンアテンダント)が、冷静な声でありながらも力強く「みなさま、どうぞ落ち着いて目の前の酸素マスクを強くひっぱり、口に当ててください。心配ありません。みなさまどうぞ落ち着いて・・・」と言ってる。もう確実に100回以上は乗ってる飛行機で、同じ数だけマスクのつけ方とベストの膨らませ方をを見てきたのに肝心な時になんにもわっかんね!。とにかく手を震わせながら、強めにマスクをひっぱって、口に当てた。しず〜〜かに流れてくる酸素を吸った瞬間に恐ろしさがこみ上げる。もちろんBGMは機械的アナウンスと耳をつんざく警告音。

あー、アタシ死ぬんだぁ〜。でも意外に冷静だなあ。こういうときって取り急ぎ手帳とかに遺書書くのかな。あっ、そういえば遺書は事務所部屋の引き出しに2年前の旅行の前に書いたっきりだったよ。ごめんねお父さんお母さん、あなごをよろしくね。ヒゲよ、保険金がでるので心配するな。ブラックボックスの放送はどんなかんじなのかしら。パイロットは若い声だったけど、こいつのせいかな。化けてでてやる!つか、パイロットも一緒に死ぬかな。墜落の被害を最小限にするためにやっぱ海に墜落かなあ。寒いなあ。やだなあ。暖流に落ちてね。

というのを、本気で半眼になって考えていた。悟。
その緊張状態が10分以上は続いただろうか、突然アナウンスが鳴り止んだ。はっ!!!何分かの沈黙のあと、機長自らのアナウンス。
「当機は油圧系の故障にて、機内の気圧調節ができなくなるという状態になりましたが、現在持ち直しております。みなさまご安心ください」。一堂、ホッ。しかし「そのため、当機は福岡空港に引き返しております。皆さまに大変ご迷惑をおかけしていますがご理解のほど宜しくお願いします」

・・・・・・なぬ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!引き返してる?吹雪の福岡へ!?うっそーん!
この、引き返しというのは当然今日の出国は不可能を意味している。昼の成田便にのったとしても、もう成田発ロンドン行きはとっくに飛び立ったあとなのだから。がっくしとうなだれる私。まわりの乗客も「成田行き=海外の乗り継ぎ」である場合が99%なので、みんな乗り継ぎができないとかツアーと合流できないとかざわめき始めた。私も10年以上の旅行経験のなかで、ディレイではない欠航、しかも機体不備による欠航の憂き目にあうのは初めてだ。まあこれも重ねるとめぐりあってしまう事故なのかもしれない・・・怒りよりもあきらめに染まるきあ。

しかし明日も福岡は大荒れ。どうしても今日中に成田にいきたい。もちろん、今回は天候の都合ではなく、機体整備不備という理由があるので航空会社持ちでホテルなどもすべてとってもらう。もう今日はこの時点でへとへと。だって朝1時におきて緊張と不安の連続だったのだから。
昼便まであと4時間。空港にいてもしかたないので、タクシーで家に戻る(うちから空港までタクシーで1500円くらい)。
まずは心配をかけた旅行代理店のOさんにメール、あとは現地で落ち合う友人たちにもメール、そしてこの腹立たしさを解消するために友人達にメールしまくる。出発まで、家の掃除や洗濯までこなしてしまう。なんなんだこのアクティブさは。

その怒りのメールを気の毒に思った千葉の友人が、焼肉をおごってあげる!ということだったのですこし機嫌を直す。昼便にのりこんで、CAの実演するマスクのつけ方をCAが頬を染めるほどに熱視線で見つめていた朝便のりそこねの乗客たち。メモさえ取ろうかという勢いだ。
夜、友人がエアポートホテルまで迎えにきてくれ、近くの牛角で肉三昧。散々肉を食べさせてもらって大満足。結局、今日までの時差生活も水の泡・・・きちんと12時に寝て、明日は8時に起きる予定です・・・
まあ、これもたぶん旅の厄落としに違いない!きっと、旅で起こるはずの悪いことをすべてこれでまかなったのだ。そんなふうにポジティブに考え、スナフキンのネタになるとほくそえんだ。

・・・明日こそ出国できますように・・・ぐす。



つづく。