妄想展示室:「矛と盾」

妄想放談(旧文書3)
The delusive talking / Old documents selection #3

異端の人形使い(サイト開設時)
The heretical doll user

 最近徐々に見えて来たこと。
 実は自分は『人形』を愛でているのではないのではないか?

 仮にも人形好きというのなら各種玩具メーカーからそれこそ山のように出ている既製品の人形達にもっと心動いても良さそうなものだが、私の興味ははとんどそちらに向いたことがない。既製品に目が行く時、そのキャラクター性よりも構成部品の素材や可動性、分解加工の容易さなど『パーツ』としての評価をしているのだ。
 そして、手許の人形についても出来上がった機体より再組み立て中、整備中といった出来かけの機体、あるいはこれから作業にかかる予定の機体の方に関心が向きがちである。

 入手した素材を前に、どのように手を加えるか妄想に浸る時。
 形状出しの為ブロック別に組み直したパーツにペーパーを掛けている時。
 出来上がった人形と向き合い、その映し出すミラーイメージを堪能する時よりもこうした時間の方が楽しいのだ。
 つまり・・

 私は『勝手気ままな立体物作成という行為』を手軽に楽しむための手段として人形を選択したのではないか?

 今時分ガンプラでさえ「解釈」だの「機能を想定した表現」といった意味不明のリアリティ付与が流行し、妄想の赴くまま好き勝手に造ることを良しとしない風潮がある中で、フォーマットを維持していれば多少の逸脱は認められうる、また素体に代表される素材の進歩と流通の増大で手軽になった人形という製作対象物に流れただけではないだろうか? そう考えれば既製品に目が行かないのも納得が行く。
 だとすれば、自分のしていることは正統人形好きやアートとしての人形作成者から見て冒涜行為、異端の振舞いではないだろうか。成果よりもそれを求める行為そのものに価値を認めるのは明らかに本末転倒である。
 タカラいわき工場閉鎖(2001年3月末)の報と予測される品質低下に動揺する正統人形好き達の掲示板を見ながら「出来が悪けりゃ直しゃいいじゃん、何をその位で」という印象しか持たないのも異端の証か。

 しかし、私にとって人形の楽しみとはキャラクター性を愛でることではなく造ることである以上、たとえ異端であってもこのままの状態を続けて行くのだろう。

 いかなる理屈を付けようとも所詮架空の存在は架空の存在。真のリアルとは現実要素を不用意に持ち込むことではなく、元作品の世界描写に忠実であることではないだろうか?
 巨大人型メカが「携帯火器をマニピュレーターでトリガーを引いて発射する」などと言うのは現実的に考えれば嘘の極み(各関節の累積誤差による照準線のずれは? 操縦者のトリガープル→マニピュレーター動作→火器のトリガー作動→発射まで何秒かかる?)である。また、模型においてパネルラインを彫られることが多い装甲についても無重量空間で鋳造された一枚板(及びその積層)だったり全体が対デブリコーティングされている可能性もある訳だが、それらを「考察」して造られたものを模型誌の作例等で見た記憶はない。
 もっと言ってしまえば、「考察」「解釈」などという屁理屈を付けず素直に「俺はこの方がかっこいいと思ったからこうしだんだ」と言う事はできないのだろうか?

続・異端の人形使い(2002/04/05)
The heretical doll user : part 2

 上に述べたとおり、私は自分を人形使いとしては異端に属する者と見ている。これを書いている時点で既に3年半もこの世界にいるが、その想いは初めよりむしろ強くなっている。

 ところでなぜ私は「人形使い」なる単語を使っているのか。
 人形に魅せられてしまった人々を意味するほかの単語、例えば「お人形者」とか「ドーラー」などより語感が良い−「人形好き」には遥かに劣るが−というのが1つ。※※
 嘘英語だが「Doll User」の直訳というのがもう1つの理由である。買い集めるだけのCollecterでなくただ持っているだけのOwnerでもなく、実際にいじっているUser(Player)でありたいと言う意味合いであるが、人形の使い方自体はそれほど種類が有るわけでもない

 私が自分を異端と呼ぶのは、最初の動機が普通人形使いがそうであろうと思われるものと大きく異なっているからである。
 普通の人形使いはなぜ人形に魅せられたのか。単純に可愛いもの綺麗なものとして幼少の記憶そのままに、あるいは新たに目覚めて愛でているのか、あるいはキャラクター商品の1つとして「あのこ(娘/子)」の似姿を求めるのか。

 私はいずれにも属さない。

 最初の人形がキャラクター性をほとんど持たないカスタム素体そのものであった私には当初それを愛でるつもりはなく、また漫画・アニメ・PCゲーム(主に18禁)といったキャラクター素材からも既に遠ざかっている私には既存のキャラクターを追いかけるつもりも無い。いわば可動(ここが重要)人型造形物としての人形に魅せられたといって良いだろう。手許の人形はほとんど全てキャラクターの魅力ではなくカタチの魅力で集められたものばかりだ。
 そしてこの動機の違いが他の人形使いとの間の見えない壁となってイベントや人形系Webサイトを見る度に自分を責め、どうしても他人のように使いこなすことが出来ないでいる。かといって全てを放棄してしまうのもなんとなく寂しい。

 私に見合った人形の使い方はどのようなものだろう?

 異端の示すもう1つの意味、それは「いつかは滅ぼされる」という事でもあるが・・・・

 投げ付ける・何かを叩く・文鎮代わりにするなど人形でなくても出来るものは除く。
※※(2003/09/28追加)
 「ドール」と言う言葉の語感の軽さが気に喰わないと言うのもある。