ボークス編:EG(Easy Grade)2重肘関節
Tutorial for VOLKS body: Easy-Grade double elbow joint
特にメーカー・サークル名の記載無き場合:人形本体および部品/創作造形(C)ボークス・造形村
まえおき
Introduction
最近は関節部1ヵ所あたり2つの可動軸を持つ、いわゆる2重関節の肘や膝を持ったボディが普通に市販されるようになり、写真撮影などでポーズ着けに苦労することはほとんど無くなりました。しかしEB登場当時(1999年頃)は2重膝はともかく2重肘を持つボディはなく、幾多の先達方によって改造の試みが行なわれていました。
これら「正統2重肘関節」は可動域もさることながら仕上がりもほぼ元の状態を維持しており素晴らしいものです・・が、ただ1つ
部品として関節部を(受けも含めて)2セット必要とする、つまり
関節を提供する犠牲として余計に1つボディが必要
という問題がありました。
※ 追記(2011年9月)・・既に廃れた技術ですので補足すると、「正統2重肘関節化」は2つの肘関節をぎりぎりのサイズで切って1つの関節モジュールに繋ぎ合わせたもので、ボークス系に限らずタカラ系でも使われていた手法です。
関節のないボディが1つ余るということに抵抗を感じた私は「質は落ちてもボディ1つ+アルファ程度で実現できる方式」を探すことにしました。で、出来たのがこれです。
<材料および工具>
Tools and materials
- 寿屋製ポリキャップ「球型ダブルジョイント(S)」
- Polystyrene joint part - KOTOBUKIYA "MSG poly-unit D-116: ball-shaped bouble joint (S)"
- エポキシパテなど厚盛りの効く造形材
- Forming material can use thick such as epoxy patty
- 電設用絶縁ビニールキャップ(電線に端子を圧着した後に被せるもの、内径3mm)もしくはビニールチューブ(内径3mm)少々
- Vinyl cap or tube for electrical work (3mm inner and 4mm outer diameter)
- 厚物用カッターおよびデザインナイフ
- Utility knife and art knife
- やすりおよびサンドペーパー
- File and sandpapers (#240, #400, and #800)
- プラモデル用塗料一式
- A set of paint for plastic model (I recommend GSI Creos's Mr. color.)
- プラ鋸
- Saw for plastic
- リューターおよび球型ビットもしくは小径の丸型彫刻刀
- Leutor and ball-shaped whetstone, or small gouge (narrow edge - width 3mm or under)
<EG関節モジュール>
Step 1: Make an EG joint module
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- 球型ダブルジョイント(S)にエポキシパテを盛って形を整えたあと、表面を磨いて塗装します。
腕の整形色に完全に合わせる調色はかなり難しいのですが、白肌の場合Mr. カラーの「キャラクターフレッシュ(1)」直塗りでもさほど違和感無く仕上がります。他の肌色の場合、
・普通肌・・・キャラクターフレッシュ(1)に同(2)や普通のフレッシュ、微量のブラウンを混合
・旧褐色肌・・普通肌の調色にクリアーオレンジやブラウンを微量追加
すると大体似た色になります。
<関節受け部−上腕>
Step 2: Modify upper arm
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- 肘を前に曲げる際、ノーマルのままだと関節部周辺に出ている「へり」が干渉しますのでこれを削り落とします。(基本的な削り込み参照)
<関節受け部−前腕>
Step 3: Modify forearm
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- ノーマルの関節部を球体の境目からばっさり切り落とした後、関節モジュールに合わせて「へり」を整形し、更に腕内部にある接合用のガイドピンを削り落とします。
- リューターが有ればかなり楽ですが、一旦前腕を分解してしまえば普通のカッターでも可能です。
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- がらんどうになった腕の内部にエポキシパテを詰め込みます。後で関節モジュールの差し込み深さを調整するので、余り詰めないようにして下さい。
- 詰めた所へモジュールの軸を受ける穴を作るため3mm径の棒(モジュール作成後の余りポリキャップがおすすめ)を差し込み硬化を待ちます。
- パテが硬化したら棒を抜き取り、余分にはみ出たパテを削り落とします。
<組み立て>
Step 4: Assemble arm
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- 上腕・関節モジュール・前腕を現物あわせで全体の長さと可動域を調整しながら接続します。
- なお、上腕の穴はモジュール軸の直径より約1mm大きいためテープを巻くなどして調整する必要があります。(写真ではビニールチューブを軸にかぶせています)
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- ここで便利なのが、電気工事などで使う絶縁用ビニールキャップです。先が微妙なテーパーになっているので太さ調節の手間がいりません。
- モジュールの軸にはめてから一緒に上腕の穴に押し込み、適度な硬さになる位置(大体キャップの先端3〜4mm位)で軸だけ抜いたら余分な分を切断するだけで作業が終わります。
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- これで、正統2重肘関節と比べるとかなり見た目が悪いですが広い可動域を得ることが出来るようになります。
ちなみに、整形外科のテキストをひもといてみた結果、肘関節の動作は「関節回転軸が内側にオフセットした1重の関節」が最も近いようです。現存する市販の関節部品でサイズ的に適合する物はないため、この方式で関節を作るには軸も含めたスクラッチとなり採用するのは少々厳しそうです。
実はEB-miniの肘関節はこの構造になっているのですが、27cm級にそのまま移植するにはオフセット量が不足しています。